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日( )
2010年9月30日(木)
 
砂浜の消失
 
 昨日早朝、房総半島の内房の浜、南房総の丘陵、外房の浜を回ってきた。350kmのドライブ。海に出かけるのは久しぶりのことだった。内房の浜も外房の浜も、この5〜6年間の間に砂浜がずいぶん後退した。砂浜が殆ど消滅して滅びてしまった地域もある。
 昨日訪れた浜も、昨年の同じ頃から比較すると植生のあった部分がすっかりえぐり取られ浜も広範囲に消滅していた。その結果、かつては浜に横たわっていたボートが、2mほどの高さの砂の壁から突出していた(a)。このあたりは2003年頃には20〜30mほどの幅で砂浜が広がり、ナガエノホコリタケが多量に発生していた(雑記2003.7.21)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 かろうじてナガエノホコリタケがわずか発生していた(b, c)。いつもの年ならたいてい見られるドングリタケやスナジホウライタケの姿は全くなかった。防風林とやや内陸に入った丘陵地では、わずかにイグチ類(d, i, j)やテングタケ類(e, f, g, h, k, l)が見られた。長い猛暑の影響は思いの外大きかったようで、雨が降って気温が下がってもきのこの姿は少ない。

 『初級ラテン語入門』:やっとのことで第14課 読章 III SERVUS NIGER までたどり着いた。とりあえず今月は目標達成だけれど、最終章(第34課)まではまだまだ先が長い。


2010年9月29日(水)
 
なかなか覚えられない!
 
 初歩のラテン語学習にとって最も重要なのは、名詞・形容詞・指示詞などの格変化を覚えることだ。これにはただただ暗記あるのみ。最も苦手で大嫌いな暗記・・・。しかし、覚えないことには辞書も引けない。frondisやfrondibusでは辞書を引くことはできず、frons(葉)で引かなくてはならない。でも、fronsにはfrontibusと活用する同綴語のfrons(ひたい)もある。
 同じラテン語学習といっても目的によって記憶すべき内容は大幅に異なる。種の記載文を読み書きするだけなら、名詞・形容詞の単数・複数について主格・属格の4つの変化形だけ覚えればよい。複雑でややこしい動詞の活用や指示詞の格変化は覚えなくてよい。
 名詞や形容詞の格変化の暗記には菌学用語を使っている。教科書にあるrosa(バラ)にかえてhypha(菌糸)、basidium(担子器)、myces(菌)、fructus(果実)、species(種)など。形容詞の格変化も名詞同様に、fibliger(クランプをもった)、corticalis(樹皮上に)など。何も考えず、とにかくこれらの語の格変化を何度も何度も繰り返し唱える。
[単] myces(主), mycetem(対), mycetis(属), myceti(与), mycete(奪),
[複] mycetes(主), mycetes(対), mycetum(属), mycetibus(与), mycetibus(奪)
[単] fructus(主), fructum(対), fructus(属), fructui(与), fructu(奪),
[複] fructus(主), fructus(対), fructuum(属), fructibus(与), fructibus(奪)
 手元に紙があれば繰り返し書いてみる。'rara nomina' ? 何格だっけ? 'rarum nomen' の複:主/対/呼か? 覚えたと思ったら端から忘れる。まるでザルで水をすくっているようだ。他人が10回で覚えられることであれば、100〜500回繰り返すほかあるまい。あぁ、すばらしき記憶力!

2010年9月28日(火)
 
特異な縁シスチジア群
 
 サマツモドキを捨てる前に切り刻んで遊んだ。カバーグラスに落とした胞子は非アミロイドでこれといった特徴はない(d, e)。ヒダの縁をルーペでみると何となく輝いている(c)。ヒダの断面を切ってみて納得した。大形で薄膜の縁シスチジアが花開いたように多数集生している(f, g)。側シスチジアは数も少なく、やや小振りで目立ちにくい(h)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 ヒダを押しつぶしてフロキシンで染め3%KOHでほぐした。縁シスチジア(i)、側シスチジア(j)を別々に撮影した。両者に写っている担子器には基部にクランプがある。縁シスチジアには大きなものから小さなものまである。他の組織にもクランプはある。カサ表皮は茶色の色素に染まった薄膜の細胞が匍匐する(k, l)。雑記2005年8月15日のサマツモドキは若い菌だった。

2010年9月27日(月)
 
主対属与奪 or 主属与対奪
 
 今月初め頃からラテン語を勉強し始めた。40年以上前に一度学んだことがあるが、その後ずっと触れる機会もなかったので、すっかり忘れている。格変化や動詞の活用、文体論をはじめ、ラテン語のことは何も記憶に残っていない。したがって、実質的にゼロからの学習だ。
 2009年3月27日の雑記でも書いたように、昔の教科書では格変化の配列は「主与奪」が標準だった(a)。ところが最近の教科書は「主奪」が主流となっている(b, c)。研究社「羅和辞典」の旧版(田中編:1952)では「主対属与奪」だが、新版(水谷編:2009)では「主属与対奪」に変更されている。「菌学ラテン語と命名法」では「主与奪」が採用されている(f)。
 入門書などには「主属与対奪」に基づいて語尾だけが羅列されたり(d)、語呂合わせ的覚え方までが記されている(e)。そこには第一変化名詞の語尾なら、「ア、アエ、アエ、アム、アー」とある。ところがこれは「主対属与奪」では「ア、アムアエ、アエ、アー」となる。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 困ったことに「しゅ、たいぞく、よ、だつ」と旧式の配置順を体が覚えていた。そこで教科書には有田潤著『初級ラテン語入門』(白水社 1964)を選んだ。「主対属与奪」である。記憶力は昔から人並み外れて悪かった。これがさらに老化で悪化している。目標は年内にこの教科書を習得することだが、手をつけてから既に4週間、学習の方は遅々として進まない。

2010年9月26日()
 
ぼつぼつきのこが・・・
 
早朝多摩湖畔の緑地を歩いてみた。きのこの姿はいたってすくない。大形のきのこだけを一部並べてみた。ウッドチップ上の杭の脇から出ていたイグチはカサ径20cmを超えていた(a, b)。カサ径3〜5cmのイグチは結構出始めていた。マツオウジは相変わらずよく出ているがきれいな姿のものはない(c, d)。整った姿を見せてくれたのはアシグロタケだけだった(e)。ナラタケモドキが到る処に出始めていたが、今朝の時点ではすべて幼菌ばかりだった(f)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 アカキツネガサをはじめ、小形のハラタケ属のきのこがやたらにめだった。ベニタケ類も出てきた。あと数日もすればいろいろなきのこが出てきそうな気配を感じた。

2010年9月25日()
 
スギタケモドキ
 
 採集から1週間経ったスギタケモドキを袋から取り出した。猛暑の頃と違ってきのこはグズグズになっていなかったが、きのこ虫がうようよ出てきた。おもしろ半分にヒダ側とカサ側をスキャナーに載せて黒い紙をかぶせてスキャンした(b, c)。ヒダはかなりくたびれていて、きれいな断面を切り出すことはできなかった(e)。採取した直後でも胞子紋はほとんど落ちなかった。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a) 樺に出たスギタケモドキ、(b) 採取1週間後:ヒダの側、(c) 採取1週間後:カサの側、(d) 胞子と菌糸のクランプ、(e) ヒダ切片、(f) ヒダの実質:並列型、(g) ヒダの先端:3%KOHで封入、(h) ヒダの先端:軽く押しつぶしてフロキシン染色、(i) 縁シスチジア:フロキシン染色、(j) 側シスチジア:フロキシン染色、(k) カサ表皮、(l) 担子器:フロキシン染色

 今朝は新たにヒダをスライドグラスに押しつけて胞子を撮影した(d)。保育社図鑑には、スギタケについては胞子の図があるが、スギタケモドキについては図がない。今朝は氷雨、一気に初冬がきたようだ。そろそろ都市近郊の緑地や雑木林でもきのこが姿をあらわしてもよさそうだ。

2010年9月24日(金)
 
縁シスチジアの形が面白い
 
 日光ではクヌギタケ属のきのこが多数出ていたので、そのうちの一種を採集した(a)。隣接する株にはタケハリカビ Spinellus fusiger がついていた。あまり気にせずに採集袋にいれた。今朝袋を開いてみると、すべての子実体からタケハリカビの針(胞子嚢柄)が多数伸びていた。
 タケハリカビの発生がもっとも少ない株を選んで(b)、カサと柄を縦断した(c)。その一方で胞子紋をとってみた。さいわい、きのこの胞子は落ちた。とても小さな胞子でアミロイドだ(d)。ヒダの断面をみると(e)、実質は並列型で(f)、側シスチジアはなく、縁シスチジアの有無や形はよくわからない(g)。そこでヒダを一枚寝かせて縁をみると縁シスチジアらしきものがある(h)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 ヒダの縁を切り出し、フロキシンで染めて3%KOHで封入し押しつぶした。縁シスチジアは面白い姿をしている。クヌギタケの縁シスチジアにある小突起などとは比較にならないほど大きく長い突起がある(i)。この縁シスチジア、三次元的に展開しているのでピントが合わせにくい。そこで、あらためて縁シスチジアだけを取り出して軽く押しつぶした(j)。カサの上表皮にはすでにタケハリカビが侵食しているらしく、どこまでが上表皮なのかよく分からない(l)。クヌギタケ節のきのこだろうが、それ以上のことはわからない。というより、調べるのが億劫でやめにした。
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
 ついでにタケハリカビの胞子嚢柄をルーペでみると(m)、先端に胞子嚢がついている(n)。フロキシンの中にこれを放り込んでみたあと(o, p)、押しつぶした(q)。きのこ全体がタケハリカビにすっかり侵されているので、きのこはこのあとすべて処分した。

2010年9月23日(木)
 
集生する縁シスチジア
 
 ヒメスギタケを観察して遊んだ。現地では小さな幼菌とすっかりカサを開いた成菌、その中間のものがみられた(a, b)。若い菌は、カサから柄まで表面は茶褐色の粉状塊で被われ(d, e)、触ると手に茶色い粉がついた。柄は中空でヒダの付き方は上生のようだ(c)。ヒダをルーペでみると、粉状塊がいたるところにつき、ヒダの縁には光るものが多数見える(f)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 胞子には発芽孔はない(g)。ヒダの断面を切ってみると、先端はゴミがついたようではっきりしない(h)。ヒダ実質は並列型(i)。封入液を3%KOHに置き換えて先端をみると、縁シスチジアが密集して花が咲いたように賑やかだ(j)。さらにそのまま倍率をあげると、棍棒状で波打った縁シスチジアがはっきりした(k)。側シスチジアはない。あらためてヒダの縁を2mm角ほど切り出して、フロキシンで染めて3%KOHで封入して押しつぶした。縁シスチジアが赤く染まり(l)、茶褐色のレンコン状の塊も多数みえる(m)。この壁には濃褐色の色素が沈着している。
 
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 倍率を上げて再度縁シスチジア(n)やら担子器(o)などを確認した。保育社図鑑の表現によれば、この属のきのこのカサ表皮は「毛状被または類細胞状被からなり,菌糸は広楕円形〜楕円状円柱形,または類球形〜球形の細胞で構成され,その壁には常に褐色の色素がいちじるしく沈着している」とある(p)。まさにその通りだ。柄の表面も同様だ(q, r)。

2010年9月22日(水)
 
大きいけれど未成熟
 
 先日採取したオドタケは、帰宅後直ちに胞子紋をとる処置をして、2個体だけ残し他はすべて乾燥機にかけた(雑記2010.9.20)。懸念していたとおり、胞子紋は全く落ちなかった。姿形こそ大きかったが子実体はすべて未成熟。カサ表面には汚点状のシミが散在している(a)。
 帰宅後直ちに縦断した子実体では、柄の内部は中空ではなく菌糸が綿状に詰まっていた(b)。ヒダの柄に対する付き方は上生〜弱い湾生といったところか(c)。ハラタケ形のきのこでは概してそうだが、乾燥標本になった株に生時の面影は全くない(d)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
 念のためにヒダの断面を切り出して縁をみたが、胞子は影も形もなく担子器もほとんど未成熟だった(e)。シスチジアの類はない(f)。カサ表皮には菌糸状の細胞が平行気味に匍匐している(g)。柄の表皮にも部分的に菌糸塊がある(h)。雑記2004.10.23で取り上げたオドタケはすっかり成熟していて、柄の内部は中空で、アミロイドの胞子紋もよくわかった。

2010年9月21日(火)
 
連休の日光
 
 三連休中日の日曜日(9/19)に日帰りで日光に行ってきた(雑記2010.9.20)。好天の行楽日和のためか、戦場ヶ原の駐車場には早朝am5:00既に90台以上の乗用車が駐車していた。華厳の滝周辺を中心に、奥日光は終日激しい混雑が続いていた。
 首都圏の雑木林や保護林ではいまだきのこが殆どみられないが、一部の標高1,200〜1,400mの亜高山帯では相変わらずきのこがよく発生しているようだ。意識的に探したのはオドタケとニカワウロコタケだけだったが、その合間に多くのきのこによく出会った。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 いたるところで最も多く見られたのがヒメベニテングタケ(a, b)、スギタケモドキ(c, d)、ヌメリスギタケ、ハナガサタケ(i, j)、サマツモドキ(k, l)、ヒメスギタケ(g, h)、クヌギタケだった。アカハテングタケ、ツルタケ、カバイロツルタケなどのテングタケ属もいろいろの種類がでていた。
 日光では常連のホシアンズタケタモギタケ、ヌメリスギタケモドキはいろいろな成長段階のものがみられた。ツキヨタケ(e, f)は、全般的に成長が悪い。うかつにカンバの皮をひっぱがしたため、ツノシメジがすっかり崩れてしまった。それにしても昼の華厳周辺の混雑は筆舌に尽くしがたいほどだった。たった800m進むのに車で40分が必要だった。

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