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日( )
2010年11月10日(水)
 
見ごろのスッポンタケの仲間
 
 残念ながら成長した姿は見られなかったが、たまごを何個か持ち帰った。担子器をみたことがなかったので早速のぞいてみた。柄が明瞭になっている個体(b)では担子器はまったく見られなかった。
 担子器が沢山あり、重なりすぎて担子胞子数を見極めるのが大変である。担子小柄はひじょうに短く、担子器に直接のっているようにもみえる(c)。フロキシンでは染まりにくく、担子胞子は8個ぐらいありそうである(d)。さすがに担子器と8個の胞子がついた写真は撮れない。担子器基部(e)とゼラチン質部の菌糸(f)でクランプを確認した。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 なにはともあれ、切片作りがなくつまむだけなので楽である。(Y. A.)

2010年11月9日(火)
 
スギタケ属のきのこ
 
 多摩湖畔の緑地に多数出ていたスギタケ属のきのこを顕微鏡で覗いてみた(a, b)。胞子には発芽孔はないようにみえるが、合焦位置によってはあるようにもみえる(c)。ヒダの横断面を切り出したが、スライドグラスが汚れて汚ならしく、封入液には気泡が入っている(d)。何とも見苦しい。でもこのままでも、シスチジアなどは充分観察できる。いまさら新たにヒダを切り出すのは面倒くさい。ええい、このまま掲載してしまえ。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 ヒダの先端には薄膜で棒状の縁シスチジアがある(e)。側面には側シスチジアもみえる(f)。担子器がみえるが基部の様子はわからない(g)。そこでカバーグラスの縁から3%KOHを流し込んで軽く押しつぶした。担子器の基部(h)やヒダ実質の菌糸(i)にはクランプがある。KOHで赤褐色に染まるシスチジアもある(l)。カサ表皮の菌糸の表面は螺旋状の組織に被われるが、合焦位置によっては螺旋状にはみえず、菌糸の表面に小さな顆粒がついたようにみえる(j, k)。

 どちらかといえば、スギタケよりもツチスギタケなどに近い種のようだが、よくわからない。というより調べてみるのは面倒なのでやめにした。スギタケは材上や立ち枯れからも地表からも出る。一方、ツチスギタケは材上からは出ない。地上生のスギタケをツチスギタケとして取り扱っているサイトが圧倒的に多いのは、図鑑の誤りのせいか・・・。


2010年11月8日(月)
 
旅先での観察
 
 愛媛フォーレ終了後の旅ではきのこの生態写真、スケッチ、観察記録、胞子紋とり、乾燥標本をつくるまでをやりぬいた。宿に着くとまず胞子紋をとるため、蓋が開けやすいタッパー(開閉時の振動を避けるため)の中に白い紙を敷きカバーグラスを置く(b)。白い紙にきのこ(a)の仮の名前を直接書きこんでおく。そしてスケッチ、観察記録開始である。すべてのスケッチに色を入れている時間はなかった。
 記録の終わったものから乾燥である。薄い紙袋に一種づつ入れて袋に日付、採取場所、名前を書いて乾燥機に放り込む(f)。大型、肉厚のきのこは採取しないことにしていたので一晩でほぼ乾燥した。起床後に胞子紋はチャック付きポリ袋に日付、場所、名前を記入しカバーグラスの胞子付着面を文字側にして入れる(c)。乾燥標本はチャック付きポリ袋に乾燥剤、メモをいっしょに入れる(d)。胞子紋ラベルの名前をノート(e)と、乾燥標本袋とに誤記入しないよう注意した。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 顕微鏡観察はいっさいしている暇がなかった。でも5日もやっているとだいぶ手順を覚えスムーズにできるようになるものだ。今後は観察記録をていねいにするため、その場でスケッチするというのも必要であろう。この旅で採取したきのこの記録保存の方法がみえてきたし、少し自信がもてた。しかし、酒を呑んでいる暇もなかった。(Y. A.)

2010年11月7日()
 
めっきり減ったきのこ
 
 多摩湖畔の緑地を歩いてみた。先週初め頃まではいろいろなきのこが出ていた樹林だが、今はきのこがほとんど見られない。足下には落ち葉が厚く堆積して小さなきのこは落ち葉の下に隠れてしまったようだ。落ち葉が保護色となってきのこがあってもとてもわかりにくい。
 一見なにもない落ち葉の堆積だが、よく見るとテングタケ属のきのこ(a, b)やら、スギタケ属のきのこ(c, d)が出ていた。クリタケ(d)やニガクリタケ(f)は相変わらずよく出ている。ウッドチップには、スッポンタケ仲間の卵(g, h)が、踏み固められた土にはヒメカタショウロの仲間(i, j)がみられた。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 これからの季節、華やかで大形のきのこは少なくなる。こういった時期こそ、目立たない小さなきのこや貧相なきのこ(?)をじっくり観察するにはちょうどよい季節といえるのだろう。

2010年11月6日()
 
ユキラッパタケ
 
 やっと四国で採取したきのこを顕微鏡で観察する時間がとれた。乾燥標本で顕微鏡観察するのは久しぶりである。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
  ユキラッパタケ(a)は高橋春樹さんによって記載された。胞子は涙形(b)、担子器は4胞子性(f)、クランプ(e)がいたるところにある。なんといってもおもしろかったのは傘表皮である(c)。球形の細胞(d)は匍匐性菌糸に埋もれているものが多く、基部がどうなっているのか非常に見づらかった。KOHで封入してフロキシンで染めたが組織をばらすのがうまくできなかった。私が観察した個体ではこの球形細胞の柄は短く、その内容物は確認できなかった。乾燥標本からはひだ実質がどうなっているのかはわからなかった。チャンスがあれば是非ユキラッパタケを生標本で顕微鏡観察し、乾燥標本との違いを確認してみたい。(Y. A.)。

2010年11月5日(金)
 
変な名前のきのこ
 
 日光地区で採取したシロノハイイロシメジを捨てる前に覗いてみた。Clitocybe robusta は何ともおかしな和名をもらったものだ。白の灰色シメジ、いったい何色なのだろう。1週間ほど冷蔵庫に放置しておいたら、色も褐色を帯び、すっかり虫に食われボロボロになっていた(b〜d)。
 胞子紋は少量では白色だが多量に落とすと汚黄色になる。胞子は非アミロイド(f)。ヒダを1枚スライドグラスに寝かせて縁をみても、ヒダの断面を切り出しても、どこにもシスチジアはない(g)。ヒダ実質は類並列型(g)。せっかく断面を切り出したので倍率を上げて子実層をみた(i)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 カサ表皮は細い菌糸が絡み合って平行気味に走る。担子器の基部にはクランプがあり(k)、菌糸にはクランプがある。柄の根元から基物の落ち葉にかけては、白色の菌糸が多量にまとわりついている。菌糸のクランプ写真はこの白色の菌糸のもの(l)。シロノハイイロシメジについては、かなり前の雑記でも取り上げている(雑記2005.11.1同2005.12.8同2003.11.12)。

2010年11月4日(木)
 
再び筑波植物園へ
 
 昨日は筑波実験植物園の無料開園日。秋晴れの文化の日、植物園のきのこ展は相変わらずとても賑わっている。午前10:00時には駐車場は満杯となった。ギャラリートーク(a)や自然史セミナーも盛況で面白かった。ふと見ると、科博の菌類担当者の眼鏡には、いずれも右隅にゴミのようなものがついている(b, d)。きのこのシールだった。きのこグッズが相変わらず飛ぶように売れている(e)。熊本、鳥取、石川、富山など、遠来のお客さんも多かった。展示そのものは先日(雑記2010.11.1)じっくり見ているので、昨日は別の側面を楽しむことになった。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
 11月1日は園内に多くのきのこが発生していたが、たった3日間で急に少なくなった。園内は木々が色づき秋色に溢れていた。午後は茨城県自然博物館に移動し、暗くなるまで興味深い話を聴くことができた。きのこを巡る人間模様のあやを楽しんだ一日だった。

2010年11月3日()
 
ラテン語学習覚え
 
 10月中は遠出が続いてあまり家にいなかったこともあり、ラテン語の学習は滞りがちだった。外出時も教科書は持参していたので、寝る前に酔った頭で例文を暗唱すべくブツブツとつぶやいてはいた。まるで意味不明なお経を唱えるボンさんだ。しかし、やはりシラフの時とは違う。一晩眠ると、前夜唱えたはずの例文はすっかり頭から消え去っている。
 それでも何とか10月末にはやっとのことで第17課(有田潤著『初級ラテン語入門』)までたどり着いた。全体が34課からなる教科書だから、一ヶ月半でちょうど半分ほど読み進んだことになる。年末までに読了が目標だから進捗状況は悪くない(弁解!)。
 この二ヶ月の間に、ラテン語とラテン文化、ローマ帝国史、ウェルギリウスの著作(翻訳)など副読本は何冊も読んだが、いずれも残念ながら原典・原文によるものではない。今後の課題は菌類関連・生命科学関連の頻出ラテン語彙を覚えることか。
 今日もまたこれから筑波行き。

2010年11月2日(火)
 
大きなピンク色のきのこ
 
 日光市のモミ・ミズナラ林で、赤褐色〜淡桃色のきのこが2〜6本ずつ束生し、径2〜4mの菌輪を作っていた。大形で、カサは径10〜20cm、はじめ丸山形だが成熟すると頂部がやや凹み、表面は平滑で粘性はない。柄はカサと同色、円柱状で長さ15〜20cm、太さ2〜3cm、ほぼ中実で、表面は上部がささくれ、下部は白っぽく繊維状。ヒダはやや粗で、柄に対して垂生気味の直生。若い子実体のカサは丸山形で縁が内側に巻き込む。際だった臭いはなく、変色性もない。
 
(a)
(a)
(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 胞子紋は白色で、胞子は10〜14μmと大形の楕円形で、非アミロイド。ヒダは厚く、その断面を見ると、シスチジアの類は全くみられず、ヒダ実質は散開型となっている。担子器の柄は長く、基部にはクランプを備えたものが多い。カサ上表皮は細く平滑な菌糸が並列気味に匍匐している。カサ表皮やカサ肉、ヒダ実質の菌糸にはクランプがある。
 カサと柄とは離れにくく、とてもしっかりしている。とにかく大きいので5〜6本ほど採取すると、ズッシリと重みがある。散開型のヒダ実質などから、ヌメリガサ属のきのこだろう。カサ表面にヌメリはないが、子実体にはシミなどもない。フキサクラシメジに限りなく近い種のようだ。

2010年11月1日(月)
 
筑波植物園きのこ展
 
 昨日茨城県つくば市にある筑波実験植物園で始まったきのこ展(10/30〜11/7)に行ってきた。am9:00の開館当初はまだ訪問者も少なく、展示物などに楽に近寄ってじっくりと観賞したりできた(a, b, d)。昨日のイベントは「野生きのこ展示会」。第一会場の外には天幕が張られ、早朝から野生キノコが箱から取り出されて、慌ただしく展示の準備が行われていた。
 ここ数日の間に採取されたり届いたきのこは大量にあり、これらを取り出し、皿に載せラベルに種名などを記入する作業だ。きのこがあまりにも多いため、開館時刻までに展示が間に合わなかったようだ。国立科学博物館の菌類担当者や関係者だけでは手が足りず、菌類懇話会のメンバーも加わって作業が行われていた(c)。
 
(a)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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 昼近くになると訪問者の数はうなぎ登りに多くなって、展示物や屋外天幕に近寄るのが困難な状況となった。午後、第一会場で野生きのこの解説が始まると黒山の人だかりができた(e)。第一会場のきのこイラストは一見の価値がある。しかし、第二会場のきのこアートにはさらに興味深い作品が並んでいた。きのこグッズも飛ぶように売れていた(f)。3日(休)は無料入園日。じっくり楽しもうと思ったら、午前中開館直後の早い時間帯がお勧めだ。

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