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日( )
2011年5月10日(火)
 
シャグマアミガサタケ
 
 昨日シャグマアミガサタケに会いたくて奥日光に行ってきた。例年に比較して残雪が多く、ようやくカラ松の新芽が出始めたばかりだった。桜はまだ咲いていなかった。雪の重みと強風で弱っていた樹木が、3月11日の大震災で一気に折れたり倒れたらしく、昨年までとは異なった森林風景をみせていた。大地震では中禅寺湖の水位が異常な減増をしたという。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 オオシャグマタケは発生数も少なく、まだ非常に小さかった。タモギタケの幼菌がこのところの乾燥で小さなまま干からびはじめていた。歩く先々ではシカやサルが遊歩道を悠々と歩き回っていて、人の姿をみても吾関せずとばかりそこを動こうとしなかった。

2011年5月9日(月)
 
ギリシア文字とローマ字化
 
 菌類はもちろん生命科学の用語にはギリシア語やラテン語由来のものが非常に多い。だから欧米では古くから対照用語集がいろいろ出版されている(a, b)。欧米の言語で書かれた菌類関係の論文や書籍を読む場合、こられの用語集は必須とされるが、残念ながら日本語で書かれたものは、朝比奈・清水『植物・薬物学名典範 −科学ラテン・ギリシア語法−』や勝本『菌学ラテン語と命名法』くらいしかない。
 これらに共通しているのはギリシア文字は使わず、ローマ字化した形で掲載されていることだ。日本語で書かれた用語集として松下正幸『医語関連 ローマ字化ギリシャ語集』がある。この書は「医語関連」とうたっているが、古典文芸や生命科学一般の用語も広く拾ってある。上掲の『菌学ラテン語』に非掲載の生物系用語も多数掲載されている(c〜e)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 π、θ、χをはじめ自然科学ではギリシア文字が頻繁に使われるので、ギリシア文字26字は読み書きできないと困ることも多い。その上で、ギリシア文字とローマ字との変換ルールを知ることは必須だといえる。sporeもmycologyもギリシア語由来の語なのだから。

2011年5月8日()
 
もう一つのシトネタケ属
 
 先月末いわき市で採取したシトネタケ属の子嚢菌はもう一つあった。近接する腐朽材から出ていたので、同一種かもしれないが、色味と触感が何となく違っていたので別袋で持ち帰っていた。これもやはり胞子はまったくできていなかった。そこでアルミホイールに包んで冷蔵庫に保管してあった。今朝取り出してみると、何となく表面が粉っぽくなっていた(a)。
 子実層を含めた盤の断面を切り出してみた(b, f)。側糸や褐色の色素顆粒の様子はほとんど昨日の菌と同じだった。成熟した胞子はやはりとても少ない。表面模様は尖ったイボ状ではなく、何となく網状に見える(c)。KOHで封入すると網目模様は全く見えなくなり、胞子の両端に厚みを帯びた部分が顕著となった。10分ほど放置すると胞子表面の膜は全て消失していた(e)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日見た種とこれが同一種か別種かはこれだけでは名言できないが、両者ともオオシトネタケないし近縁種のようだ。今日の子嚢菌も畑の肥やしとなる。

2011年5月7日()
 
一週間経過:シトネタケ属
 
 先月末いわき市で採取したシトネタケ属の子嚢菌は形こそ大きかったが未成熟だった。子実層をみると胞子は全くできていなかった(c)。そこで約1週間ほど、湿らせた新聞紙で材を包み込んで容器に入れて室内に放置しておいた(a)。今日の時点では、胞子を吹き上げるほどには成熟していないが、子嚢盤の縁には室内浮遊菌が菌糸を伸ばし始めていた(b)。
 腐敗が始まっては手遅れなので、カビに侵されていない子実層部分を選んで観察してみた。一部の子嚢に胞子ができている。側糸には色素顆粒のようなものが多数みられる(d, e)。数は少ないが、独特の表面模様がわかるほどに成熟していた(f〜i)。子嚢や胞子は非アミロイド(k, l)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 胞子の表面はイボ状から小円錐状の突起をもった膜に被われている。強いKOHや強酸に浸すと、この膜は溶けてしまい、胞子本体の表面に透明な膜となって漂っている(j)。すでに他の菌に犯され始めているので、胞子の噴出を待つことはできない。畑の肥やしにすることにした。

2011年5月6日(金)
 
八ヶ岳南麓にて
 
 一昨日と昨日、長野県富士見町の友人宅で遊んできた。標高1,000m八ヶ岳の南麓に位置し、ようやく遅い春が訪れたばかりで、新緑が美しかった。近隣の町営広場ではまだザゼンソウやら水芭蕉が咲いていた(a)。樹液酵母もみられた(b)。近くの休耕田の周囲ではイチリンソウが大きな群落をつくっており、アネモネタマチャワンタケが到る処に群生していた(c〜e)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
 もしやと思っていたシャグマアミガサタケは全くみられなかった。カサと柄をもったきのこはウラベニガサがみられた。帰路中央高速道路は順調に流れていた。懸念していた八王子市街地や横田基地の周辺も渋滞は全くなかったが、所沢周辺が思いも寄らぬほど激しく渋滞していた。

2011年5月3日()
 
昨日の遠州灘と東名高速
 
 昨日静岡県の遠州灘の浜を歩き回ってきた。御前崎の浜、浜岡砂丘、大須賀の浜、福田の浜、中田島砂丘の5ヶ所を重点的に観察してきた。きのこが見られたのは、中田島砂丘でごく少数のアバタケシボウズタケ(b)、浜岡砂丘防風林でのショウロ(c)だけだった。浜岡砂丘にはケシボウズタケ属の乾燥しきったものがわずかに見られただけだった。御前崎、大須賀、福田の浜ではきのこは一切みられなかった。全ての砂浜に共通していたのは、これまでの表土の上に新たに砂の厚い層が降り積もっていることだった(a)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
 驚いたのは、往復とも東名高速道の通行量の少ないことだった。平日とはいえ昨日はゴールデンウイーク期間中の一日だ。貨物車が少ないのは大震災の影響だろうが、乗用車の少ないことにも驚いた(d)。こんなに車の少ない日本坂トンネルを通行したのははじめてのことだった(e)。

2011年5月2日(月)
 
福島県産の食品
 
 一昨日福島県いわき市でシイタケ狩りをした。屋外でほだ木からミカン箱いっぱいにシイタケを摘み取った。栽培農家の主はなかなか代金を受け取ろうとせず、やっとのことで代金を押しつけるようにして手渡した。一度でも出荷停止となった農産物は放射線量の値にかかわらず売れないという。さらに県外では福島県産というだけですべてが忌避される。
 道路脇にはツクシンボウが採り頃のよい状態に生育していた。しばし野草摘みを楽しんだ。袴とりを終えたツクシンボウ佃煮にして酒の肴となった。昨夕はいわき市産の蕗、いわき市産の栽培シイタケを肴に、いわき市産の蕎麦を食べた。シイタケは生のままではとても食べきれないので、大半は干しシイタケにすることにした。
 いまや福島県産の農産物や海産物をはじめほとんどの食品がすっかり嫌われ者になってしまった。マスコミは現代の錬金術師。今秋は福島県産のホンシメジやマツタケは店頭に並ばないかもしれない。きっと美味しい野生キノコがよくとれることだろう。

 いわき市で採取したフクロシトネタケ属やチャワンタケの仲間はすべて未成熟だった。今日はこれから浜岡砂丘から中田島砂丘までの遠州灘の観察に出発。


2011年5月1日()
 
いわき市のきのこ
 
 昨日福島県いわき市の友人の所まで行ってきた。かつてウネミケシボウズタケの発生した四ツ倉の新舞子浜やその北側の久ノ浜は壊滅的被害を被った。四ツ倉に住む友人たちの住居や仕事場も被害を免れなかった。しかし新たな復興へ向けた意欲を感じて帰ってきた。
 山の林道脇ではカンムリタケが今年も姿を見せてくれた(a)。ようやく発生し始めたばかりの状態で、数も少なくまだ全体に小さい。発生は例年よりかなり遅いようだ。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 シイタケほだ場では老夫婦が摘み取り作業をしていた。一緒に話をしながらシイタケを摘み、腐朽木などに出るきのこを観察した。例年だと既に発生しているシャグマアミガサタケは全く見られない。フクロシトネタケの仲間(b, c)やチャワンタケの仲間(d, e)など子嚢菌が多数みられた。ハラタケ型のきのこでは、クヌギタケの仲間(f)やニガクリタケなどがよく出ていた。アミガサタケやトガリアミガサタケは既に発生を終えていた。ハルシメジはまだ出ていない。

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