Top  since 2001/04/24 back


日( )
2011年6月10日(金)
 
ヌメリツバタケ
 
 どうせキシメジ科のきのこだから顕微鏡で見ても面白くないだろうと思っていた(a)。まず胞子紋をとっておいたカバーグラスをみるとひだが貼り付いたようにみえる。一部をこそげとって観察するとすべて胞子でひだの組織は混入していなかった。胞子が放射状に白く、厚く、こんもりと山稜状になっているのである。あっというまに胞子が降り積もったようである。
 ありすぎの胞子が顕微鏡観察時に、やはりじゃまとなった。おどろいたのはこれだけではない。胞子(b)、担子器(c,d)、縁シスチジア(e)、側シスチジア(f)のすべてがばかでかいのである。おまけに担子器は厚膜あり、薄膜あり、隔壁ありとバラエティーに富んでいる。
 キシメジ科にしてはとんでもなくおもしろいきのこである。かさ表皮も細胞が柵状に並んでいる(g, h)。子実層托実質は並列型(i)、クランプあり(j)。担子器根元のクランプは、担子器が大きすぎて全体が入る写真は撮れなかった。
 現在はタマバリタケ科ヌメリツバタケ属となっているようだ。(Y. A.)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)

2011年6月9日(木)
 
まだら模様の頭部
 
 茨城県の城趾公園にクロノボリリュウがたくさんでていた。野外では頭部が暗紫色から黒色にみえたが(a, b)、室内でみると墨色だった(c)。縦に切ってみると柄の中央部が頭部にかなり深く入り込んでいた(d)。ルーペでみると頭部も柄も、表面がなんとなくビロード状だ(e, f)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 頭部の断面をやや厚めに切り出してみた(g)。子嚢は非アミロイドで、側糸が多数ある(h, i, k)。頭部の内側、つまり托外皮の組織が面白い。隔壁のある棍棒状の細胞が柵状にならび、なかには担子菌の子実層を思わせるものもある(i, l)。

[メモ] 池田『古典ギリシア語入門』の第二回目学習開始。読了目標は7月末。7月は遠出の予定がいくつも入っているが、初回にかなり時間をかけたから今度は多分大丈夫だろう。


2011年6月8日(水)
 
ようやく読了:古典ギリシア語入門
 
 一昨日薄暗い竹林の腐植土からでていた大形で脆いチャワンタケの仲間を覗いて遊んだ。胞子は微細なイボで表面が被われている。子嚢の上部はアミロイド。側糸は単調な紐状。子実下層、托実質、托外皮なども念のために確認した。種名の探求は面倒なのでやめにした。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨年12月に始めた池田『古典ギリシア語入門』の1回目をやっと読み終えた(雑記2010.12.2)。ラテン語の場合とは大幅に異なり(雑記2010.12.6)、目標の3ヶ月間を遙かに超えて6ヶ月を要したが、何とかギリシア語の基礎文法と基礎単語は一通り理解できるようにはなった。
 活用された語形から原形を導出して辞書を引くことはできるようになったが、文章全体の正確な理解にはほど遠い。形態論はほぼわかったが修辞法に関してはほとんど理解できていない。大学の講座もすでに4回出席しているが、修辞法で難儀している(同2011.4.15)。受講してよかったのは、ギリシア語講座の受講者に自然科学系の研究者が数人いたことだ。

2011年6月7日(火)
 
クロチチダマシに似たきのこ
 
 一昨日カンゾウタケの出ていた薄暗い林の腐食土に、暗い褐色をしたチチタケ属のきのこが多数でていた(a)。暗い林の中ではクロチチダマシに似ていると思った。ヒダの色は暗灰褐色で表面には多数の胞子が付着して白色の部分が目つ(b, c)。さらにそこに微細な菌が付着して胞子の膜すら作っている(e)。柄の基部には菌糸束状に太い菌糸がまとわりつく(d)。
 ヒダを切り出したが、側シスチジアはなく縁シスチジアの有無ははっきりしない(g)。そこでヒダをスライドグラスに寝かせて縁をみると縁シスチジアらしき組織がある(h)。KOHでバラしてみると縁シスチジアがある(i, j)。カサ上表皮は類球形の細胞が数個ずつ柵状に並び、その直下の組織は細い菌糸が匍匐している(l)。クロチチダマシではなさそうだ。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)

2011年6月6日(月)
 
いまごろカンゾウタケ
 
 仲間5名で茨城県の海浜近くの森林を歩いてきた。カンゾウタケが最盛期を迎えていた。例年だと4月後半から5月半ばが最盛期なのだが、今年はかなり時季がずれている。他にもヌメリツバタケやらオオゴムタケ、ナヨタケ属、ベニタケ属、チチタケ属、アセタケ属をはじめ、いろいろなきのこが出ていた。梅雨から夏のきのこが出はじめたようだ。 (I. A.)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 久しぶりに採取した若いカンゾウタケを生のまま和風ドレッシングで和えてみた(g)。もう一つはバターで焼き、にんにく醤油で食べたてみた(h)。連れ合いはソテーが気に入ったようである。カンゾウタケの酸っぱい味はどちらもかなり消えてしまっているがまあまあである。  (Y. A.)
 
(g)
(g)
(h)
(h)

2011年6月5日()
 
シスチジア:縁と側の確認
 
 ヒダにあるだろうシスチジアの有無や形状を確認したい場合、よくやっているのが以下に記した方法だ。ここでは先日観察したニセホウライタケのヒダを用いた。図式化するとまずヒダを一枚取り外して、スライドグラス状に置く(a, b)。次いで、カミソリで小片に切り分ける(c)。
 (A)片では縁シスチジアの有無と形状だけをみる。組織が透明で見にくいことが多いので、たいていはすぐにフロキシンで染めてしまう(d)。この後は、(A)片の縁をみて(e, f)、縁シスチジアがあるようなら押しつぶし法でバラして観察する(g)。このとき水をKOHで置き換える。
 (B)片には縁シスチジアはないわけだから、もしシスチジア様の組織があればそれは、一般的に側シスチジアということになる。これは最初から押しつぶしてバラしてしまう(i)。シスチジア風の形を探して、あるようならば倍率を上げて観察する(j)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 実際にはルーペや実体鏡などで、ヒダを見ながら、先細ピンセットで、縁細片をつまみ出して縁シスチジアを確認したのち(A)、ヒダ内部をつまみ出して側シスチジアを確認している(B)。つまりいちいちカミソリを使って切り出してはいない。ヒダの横断面を切り出して先端や縁をみても、小さなシスチジアや疎らなシスチジアはわかりにくい。そこで、この方法がとても役に立つ。

2011年6月4日()
 
ニセホウライタケの毛
 
 インターネットが繋がらなくなった原因はルータの故障だった。ルータ交換にともなって、各部屋に張り巡らしていたLANケーブルを取り除いて、ベースを無線LANに切り替えた。まるで大掃除のようだったが、有線でつなぐのはメイン機だけにしたので壁面がすっきりした。

 ニセホウライタケのカサ表面は毛に覆われ、その密度が異なるため環紋状をなしている。この毛はカサやヒダの断面を見ても実に長い(a, b)。厚膜で先端は尖り、基部近くになってようやく隔壁があり、そこにはクランプがある(e)。水で封入したときは褐色だが(c)、メルツァー試薬では黄金色を帯びた褐色になる(d)。偽アミロイドということか。KOHで封入すると緑褐色になる(e)。
 

(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 柄の表面の毛もカサ表皮のそれとほとんど変わりない。カサの毛同様に、厚膜で先端はとがり、基部ちかくに隔壁があり、クランプを持つ。水やメルツァー、KOHによる変色も同じ(f)。

2011年6月3日(金)
 
ニセホウライタケ (2)
 
 突然インターネットにつながらなくなった。プロバイダのサイトにはメンテナンス情報も障害情報もない。昨夜までは全く問題なかった。困るのはメールの送受信ができないことだ。本来は使いたくないのだが、とりあえず、ノートパソコンをちょっとあぶない公衆無線LANアクセスポイントにつないで雑記をアップした。大至急原因追及と解決策を講じなくてはならない。

 一昨日採取したニセホウライタケを顕微鏡で覗いてみた。胞子は非アミロイド(a, b)。ヒダの横断面を見てもシスチジアらしきものは見あたらない(c)。ヒダ実質は並列型(d)。倍率を上げて先端をみると、何となくシスチジアらしきものがあるようにも見える(e)。そこでフロキシンで周囲を染めてみた(f)。倍率を上げると小さいが縁シスチジアがあり、隔壁を持った胞子もある(g)。
 

(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 KOHで封入して押しつぶしてみると、縁シスチジア(h)、側シスチジア(i)があり、菌糸にはクランプがある(j)。担子器の基部にはクランプのあるものが多い(k)。カサ表皮からは剛毛のような長い毛が多数でていて、剛毛状基部の菌糸組織は錯綜していて構造がよくわらかない(l)。

2011年6月2日(木)
 
ニセホウライタケ
 
 ニセホウライタケはわかりやすいきのこだ。肉眼的観察のみでほぼ同定できる数少ないきのこのひとつだ。明褐色のカサと暗褐色の柄があまりにも対照的だ。レフ板を使わずコンパクトカメラで何枚か撮影したのだが、暗すぎる柄か白飛びしたカサのいずれかの画像ばかりだった(a)。
 引き抜いて置いたきのこを見ると(b)、カサ表面には白色の胞子紋がつき(c)、ヒダは離生気味の上生で柄の表面は毛むくじゃらだ(d, i, j)。イネ科植物の遺体からでている(b, e)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 親ヒダと子ヒダからなり、ヒダは結構厚みがある(f)。カサ表皮(g)をルーペでみると柄表面(h, j)と同じような毛に覆われている。持ち帰った標本は、乾燥してヒダの縁が内側に巻き込んでいた。今日はこのきのこのミクロの姿を見てみよう。

2011年6月1日(水)
 
きのこはまだ少ない
 
 このところフクロシトネタケ系の盤菌類を探して、広葉樹の腐朽木・伐採木を主体に探し回ったが、結局見つからなかった。そこで今朝は狭山湖畔の緑地を探してみた。全体にきのこの姿は少なく、子嚢菌類はごくわずかにナガエノチャワンタケとクロノボリリュウタケ、サナギタケらしい虫草が見つかっただけだった(i〜l)。目的のきのこは今日も空振りだった。
 キクラゲ(広義)の仲間は相変わらず多数見られた(a〜c)。ほぼ通年高い頻度で見られるにもかかわらず、ずっと見ていなかったヒメカバイロタケに久しぶりに出会った(d)。マツオウジやイタチタケの仲間、ウラベニガサは相変わらずよく出ている(e, f, h)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 久しぶりにニセホウライタケに出会った(g)。公園の日当たりのよい空き地にイネ科植物が茂っていた。そこに特徴的なわかりやすい姿で多数束生していた(g)。例年の同時期と比較すると、今年の首都圏近郊や埼玉県南部ではきのこの発生はあまり芳しくない。

過去の雑記

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2011
2010
2009 中下 中下
2008
2007 上中
2006
2005
2004
2003
2002
2001

[access analysis]  [V4.1]