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日( )


2005年8月10日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 先日奥鬼怒温泉郷で出会ったチチタケ属をあらためて覗いてみた。胞子はこの仲間にしてはかなり大きく、類球形というより広楕円形のものが多い。長径12μmを超えるものも目立つ(a)。いわゆるドライマウントで表面を見ると網目の隆起はさほど大きくない。
 ヒダを切り出して先端や側をさんざん探したが、シスチジアらしきものが見あたらない(b, c)。持ち帰った3個体のいずれにもシスチジアがみあたらなかった。担子器はかなり細長い(d)。傘表皮を切りだしてみた(e)。少し厚ぼった過ぎた。あらためて薄片を切り出してみた(f)。球形の基盤組織の上に細長い菌糸が立ち上がって並んでいる。
 胞子と傘表皮の様子からは、チチタケともヒロハチチタケともチリメンチチタケとも違う。スイスの菌類図鑑Vol.6にも、Fungi Europaei LACTARIUSにも該当する種はみあたらない。しかし、これ以上深入りすると面倒なので廃棄することにした。2個体は炒めて食べてしまった。味はいわゆるチダケそのものだった。

2005年8月9日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 八丁ノ湯の近くで採取したコケイロサラタケの検鏡データの一部からである。子嚢盤の一部を切り出した(a)。メルツァーを加える(b)と子実層の先端付近が青くなった(c)。子嚢先端の孔がきれいに青く染まる(d)。胞子には2つの油球があり、表面は僅かにざらついているように見える。子実層は絡み合い菌組織からなっている。托外皮には綿毛状の菌糸が見える(e)。拡大してみると、均一に並んでいるわけではなく、不規則に束になった部分が直立していたりする(f)。
 なお、かなり色の異なったものもいくつも出ていた。黄褐色のもの、明るい緑色のものなどから、暗緑褐色から灰色に近いものまであった。

2005年8月8日(月)
 
ドライマウント
(a)
ドライマウント
表面に合焦
(b)
表面に合焦
輪郭部に合焦
(c)
輪郭部に合焦
  オニイグチモドキ
(d)
オニイグチモドキ
オニイグチ
(e)
オニイグチ
 奥鬼怒温泉郷から持ち帰ったコムラサキシメジからは全く胞子紋がとれなかった。ヒダを切り出してみても胞子はみあたらない。タマゴタケモドキのようなキノコは一晩でどろどろに溶けて異臭を放っていた。両者ともに、対物100倍でよく見ると、胞子と思われるものが若干ある。しかし多量に見られるのは、激しく動く長さ1〜2μmほどの透明棒状のものである。
 同じく持ち帰ったオニイグチモドキは、採取時に裏面を見ると、まだ大部分が被膜に被われていて、ごく僅かに管孔部が見えていた。念のために一昼夜かけて胞子紋をとってみた。予測通りごくごく僅かしか胞子紋は落ちなかった。色など全くわからない。
 カバーグラスに採取した胞子を覗いてみると、大きさのバラツキがとても大きい。胞子表面にほとんど模様がみられないものもある。比較的胞子表面の模様が出ている部分を撮影した(b, c)。表面(b)をみると、本来のオニイグチモドキ(d)やオニイグチ(e)の胞子表面とも少し違う。

2005年8月7日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 日光国立公園・奥鬼怒温泉郷の女夫淵温泉から八丁ノ湯に続く沢沿いのハイキングコースを歩いてきた。標高1300〜1400メートルらしい。例年に比べるときのこが非常に少ない。
 大きな岩の下、水の滴る落ち落葉溜まりでコムラサキシメジが大きく育っていた(a)。暗い道ばたのブナの根本付近からはタマゴタケモドキのようなきのこ(b)、ミズナラの根本からはオニイグチモドキ(c)などが出ていたが、概してテングタケ類とイグチ類は少ない。
 ブナの森の何ヵ所かでチチタケ属のきのこを見たが、明るい色で大きく目立つものがあった。チリメンチチタケに似ているが、ヒダは粗で柄の色も傘とほぼ同じ明るい色である(d)。
 腹菌類も何種類か見られたが、ツチグリ、コツチグリが見られる同じ法面からは、いわゆるホオベニタケが多数でていた(e)。暗い樹林の中では小型盤菌が何種類も見られたが、中でも興味深かったのはコケイロサラタケだった(f)。裏面は表面よりやや白っぽい色をしていて明瞭な柄を備えている。他にも興味深い盤菌類がいくつも見られた。

2005年8月6日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 近郊にまったくきのこの姿がない。そこで昨日に続いて、最近採取してまだ手元に残っているきのこについて顕微鏡写真をあらためて撮影した。
 今朝は富士山で採取したアシベニイグチである。持ち帰った2本のうち、一本からは胞子紋がほとんど採れなかった。大きい個体の胞子紋から得た胞子である(a)。子実層托(管孔部)の実質は並行型(b)、孔口部には縁シスチジア(d)が多数ある。管孔の切り口をみると側シスチジアも見える(c)。縁シスチジアも側シスチジアもサイズにはかなりのバラツキがあった。
 ちょうど側シスチジアと担子器が同一視野に入っている部分を撮影した(e)。最初水だけでマウントして見ていたがやはり見づらい。フロキシンで染めるとコントラストがはっきりして見やすくなった。傘表皮の観察には低倍率で十分だった(f)。

2005年8月5日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 富士山から持ち帰ったバライロウラベニイロガワリは、帰宅後直ちに胞子、子実層托実質、シスチジア、柄表皮、傘表皮などを検鏡した。ほかにもいくつも同定しなくてはならなかったので、撮影のゆとりはなかった。幸い冷蔵庫の野菜ケースにまだひとつ残っていたので、これを今朝は撮影した。例によって小さな白いウジ虫がかなり蠢いていた。
 胞子紋をとるべくカバーグラスの上に傘を伏せて1時間ほど置いたのだが、落ちたのは白いウジ虫だけだった。やむなく孔口部の一部に付着している胞子を撮った(a)。子実層托実質を見るため柄に平行に管孔部を切り出した。やや散開気味の構造がみられる(b)。孔口付近をみると縁シスチジアが無数に見える(c)。フロキシンで染めてバラしてみた(d)。
 次に、柄に垂直に切って管孔部をみると担子器とともに所々に側シスチジアが見える(e)。軽く押し潰してみると縁シスチジアとほぼ同じ形でやや大きめであった(f)。柄の表面には濃赤色のシスチジアが多数みられる。傘表皮の最上部は菌糸状の組織が這っている。担子器の基部にクランプなどはない。

2005年8月4日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 先日さいたま市の見沼地区で採取したベニヒダタケの検鏡データからの抜粋である。胞子は類球形で明褐色に見える(a)。ヒダ切片を切りだした。ヒダ実質は逆散開型をしている(b)。フロキシンで染めてみるとさらに明瞭になる。
 ヒダを一枚つまみ取ってスライドグラスに寝かせた。そこにカバーグラスをかぶせて分厚いプレパラートを覗いてみた(c)。縁シスチジアが見える。フロキシンとKOHを加えて軽く押し潰してみると縁シスチジアの全体像が見える。シスチジア自体の形は同じようでも、縁シスチジア(d)に比較して、側シスチジア(e)は概して大きい。側シスチジアの大きさは非常にバラツキが大きい。
 担子器の基部にはクランプは見られない(f)。傘表皮は黄色い菌糸状の組織が這っている。それにしても、ウラベニガサ属のヒダをペチャンコにならないように薄切りするのは難しい。潰れてしまうと、ヒダ実質部の逆散開型などは全くわからなくなってしまう。

2005年8月3日(水)
 
自動生成方式
 
 [キノコのフォトアルバム] の検索データのひとつに [撮影場所リスト] がある。このファイルと索引を全面的に自動生成する仕組みに変更した。従来は一部手動処理が必要だった。
 先に風邪でダウンしたときに、夢枕で構想はできあがっていた。昨夜、これを一気に書き上げてバグ潰しをした。どうやらうまく稼働しているようなので、今朝から変更した。県別ファイルは従来は一本だったものが、一挙に19本となった。表示方法は従来と変わらない。
 あらためて、地元埼玉県のファイルが全体のほぼ半分近くのサイズになることが分かった。やがては、埼玉県に限っては、地域ごとに別ファイルを自動生成するようにせざるを得ないかもしれない。ただ、そんな頃まで「きのこ雑記」が続いているものやら。

2005年8月2日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 富士山で見かけたきのこのうち、イグチ以外のものを取り上げた。ハナビラタケ(a)は例年に比較して発生がとても悪い。多くは幼菌のままカラマツやシラビソの根本付近で乾燥しきっている。フジウスタケ(b)は全体に小振りである。小さい内に既に割れてしまったもの、柄がほとんど発達せず地表に這い蹲るように広がってしまったものなどが目立った。
 ホウキタケ類は少なく、サクラホウキタケ(c)くらいしか見あたらなかった。テングタケ科ではタマゴタケ(d)、ツルタケ(e)、テングタケなどが出ているが、ドクツルタケなどの白色系のテングタケ科きのこが全く見あたらなかった。フサクギタケ(f)、アンズタケは車中からもすぐに分かるほど頻繁に出ているのだが、全体に勢いがない。
 ベニタケ類ではクロハツ、クロハツモドキ、ツチカブリ、クサハツなどや暗緑色のベニタケなどはよく見られるが、赤色系のものはあまり見られなかった。
 なお、(a)〜(f)に掲載したきのこはすべて酒の肴となった。フジウスタケは毒茸ゆえ、確実な毒抜きをせずに食べるととんでもないことになる。

2005年8月1日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日富士山の標高1800〜2300メートル付近で涼をとってきた。気温は16〜20度で快適だった。富士スバルラインは8月31日まで一般車規制が敷かれ入れない。山梨県側を林道で入れるところまで進んで、そこから歩き回った。概してきのこの姿はとても少ない。
 7〜8種類のイグチ、ごくわずかのテングタケ科・ベニタケ科、成長の悪いハナビラタケなどが目立った。日曜日にもかかわらず、山はとても静かできのこ狩りの人たちにもほとんど出会うことはなかった。林道脇に駐車している車もとても少なかった。
 もっともよく見かけたのはバライロウラベニイロガワリである(a, b)。どっしりした風格で大きなものが多かった。切断すると速やかに青変する。コガネヤマドリとダイダイイグチが似たような色合いと姿形で混在していた。コガネヤマドリは青変しないが、ダイダイイグチは傷つけるとすぐに青変する(c, d)。撮影せず持ち帰ったイグチ類は7〜8種類ある。
 アシベニイグチ(e, f)、アメリカウラベニイロガワリウラグロニガイグチもいくつも見られたが、撮影に耐えうるような個体はとても少なかった。また発生場所も林内の暗い場所が多かった。キイロイグチをはじめ、小さな幼菌の状態で成長の止まってしまったイグチも目立った。

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