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日( )

2005年2月10日(木)
 
経時観察の難しさ
 
 「あやしいきのこ」のgajinさんが「おけら日記」の2月6日で嘆いていた。経時変化を観察するために現地で印を付けたケシボウズが、よりによって堀り取られてしまったという。現地での継続的個体観察の難しさを象徴するようなできごとである。
 多くのきのこは発生から1〜2ヶ月もすると全く跡形も無くなってしまう。しかし、腹菌類では、ミイラ状態になりながらも、長いこと胞子を放出し続けるものが少なくない。ケシボウズの仲間も同様である。なかには一年以上も経過してなおかつ発生時に近い姿を維持していることも珍しくない。
 発生時からの経時変化を観察すると、いろいろ興味深い結果が出てくる。地下を這う菌糸とホストを一緒に持ち帰ることはできない。だから、採取個体を自宅のフラワーボックスなどで現地の砂と一緒に植え込んでも、芳しい結果は得られない。
 となると、定期的に現地に通って、目星を付けた個体を観察することになる。これが非常に難しい。なまじ印等を付けるといたずらされる。実験区を設けることも現実的ではない。結局は、毎回、無事を祈って出かけるしかない。

2005年2月9日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 小川町で採取したマツカサキノコらしきものをあらためて撮影した。胞子紋は白色(f)で、顕微鏡下の胞子は無色透明でとても見にくい。フロキシンで染めてみると明瞭な姿を捉えることができる。胞子には大きなものと小さなものがあり、大きな方はフロキシンでは染まりにくい。
 ヒダ切片をフロキシンでそめてみると側にはシスチジアらしきものが見える(a)。ヒダ実質は並行型。子実層の部分を拡大すると、先端に分泌物を帯びたシスチジアが見える(b)。軽く押し潰してシスチジアを取り出してみると、先端が丸みを帯びている(c)。次にメルツァーで染めて子実層を見た(d)。担子器はとても小さい。あらためてKOHとフロキシンを使ってプレパラートを作り、担子器をバラバラにしてみた。基部にはクランプは見られない(e)。どうやらマツカサキノコとしてよさそうだ。

2005年2月8日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
 埼玉県北部の大里町からの帰途、小川町の金勝山に寄ってみた。材からは硬質菌やクロコブタケなどがでていたが、地表は落ち葉ばかりできのこの姿は全く見られない。歩くと乾燥した落ち葉がカサコソと音を立てる。
 落ち葉をどけてみると、下に紫褐色〜茶褐色の傘をもった小さなきのこが出てきた(a)。周囲の落ち葉を注意深くどけていくと、あちこちから小さなきのこがまとまって出ている(b)。掘り出してみると、松ボックリのようなものからでている(c)。掘り出して紙の上に置いてみた(d)。下部が橙色の柄に細かいヒダをもっている(e)。
 この周囲にはトウヒやメタセコイアしかない。シスチジアや胞子などから、これはマツカサキノコだろう。スギエダタケマツカサキノコモドキなどと同じ仲間だ。久しぶりに傘と柄を持ち地表(掘り出さないと球果は見えない)から発生するきのこに出会った。

 [きのこ浴衣オークション(チャリティ)] が好評を博している。収益金は、すべて日米合同菌学会に役立てる資金に充当される。取扱担当者である森林総合研究所の根田 仁さんが、ネット上で公開募集している。細矢 剛、根田 仁、吹春俊光の三氏がモデルを努めている写真は一見に値する。URLは以下の通り。
http://www.geocities.jp/neda_kinoko/index.html

2005年2月7日(月)
 
きのこが無い
 
 冬場の関東地方のカラカラ天気は今に始まったことではないが、今年もよく冷えて乾燥した毎日が続いている。近郊でふだん観察している地域は、どこも干上がったような状態のまま地面が凍っている。関東地方は、今は一年を通して最もきのこの少ない季節である。今の時期でも見られるのは、材上の硬質菌、アラゲキクラゲ、エノキタケくらいしかない。今朝の公園には、エノキタケの幼菌が倒木にへばりついた状態で凍っていた。

2005年2月6日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日は終日大阪で楽しい一日を過ごすことができた。関係者の皆さんありがとうございました。大阪では風もなく比較的暖かかったが、帰宅してみると、埼玉では北風が吹いて寒かった。
 今朝は、先日千葉県富津市の浜で採取したウネミケシボウズタケのミイラ(a, b)とドングリタケ属(d)とを覗いた。ウネミケシボウズタケは昨年11〜12月頃に発生したと思われる。胞子(c)、弾糸などのすがたは発生時のそれと変わらない。ドングリタケ属(d)の弾糸には隔壁はなく、細かくちぎれたものが多数みられた(e)。胞子(f)その他の形質からみて、ドングリタケDisciseda subterraneaとしてよさそうだ。

2005年2月5日()
 
COOLPIX9xxとリモコン
 
 顕微鏡撮影用のデジカメはいまだCOOLPIX950をメインに使っている。950まではリモコンが使えない。また、マニュアルモードで遠景(無限遠)にするとセルフタイマーが使えない。顕微鏡撮影ではしばしば、1/8とか1/15秒という状態での撮影が生じる。
 990以降の機種ならリモコンが使える。画素数も増え機能的にも改良されている。しかし機種を換えると、対物ミクロメータの撮影からスケールの作り直しなどの作業が必要になる。それが面倒で950を使っているというのが正直なところだ。
 じつは他にも原因がある。それは、リモコン装置に対する不満とモニタサイズのせいだ。リモコン装置を繋ぐと起動までに15〜20秒ほど待たされる。モニタのサイズは950までは2インチだったのが、990、995では1.8インチと小さくなってしまった。
 990を顕微鏡専用にする試みは何度かやった。エタノールでマウントしたプレパラートは時間勝負である。リモコンを繋いだ状態で起動を待っている間に、マウント液が蒸発してしまう。だから、プレパラート作成前にデジカメをスタンバイの状態にしておかねばならない。すると、リモコンがすぐにバッテリー切れを起こす。頻繁にボタン電池の交換となる。ところが、マイナス側接触部がヤワなため、簡単に壊れてしまう。
 でも現在の950が壊れたら、手持ちの990を顕微鏡専用機に回すことになる。その場合に、リモコンを使うだろうか。また、画像のきれいなOLYMPUSのCAMEDIAに乗り換えるという選択枝もあるが、当面はやはり使い慣れたCOOLPIXがよい。不満はあるが、やはり顕微鏡撮影機としてのCOOLPIX9xxは名機である。

2005年2月4日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日千葉県富津市の浜を歩いてきた。いわば定点観察。前回ここに観察に出向いたのは今年の元旦だった。元旦には何もなかったところにナガエノホコリタケがいくつか出ていた。当初ミイラに霜が降りたのだと思ったが、掘ってみると新鮮な柄がでてきた。周辺には昨年発生したミイラも散見された。気温の低い早朝だったこともあり、それらのほとんどが霜に被われていた(a〜c)。
 数時間も経つと日差しも強くなり、霜は消え、小さなケシボウズもみられた(d)。付近にはウネミケシボウズタケのミイラやら、比較的新鮮なドングリタケ属(e)もみられた。その後、マユハキタケ(f)を観察して早い時間帯に帰宅することができた。帰路の高速道路は久しぶりにとても順調だった。

2005年2月3日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 先日浜松市で採取したドングリタケ属(Disciseda sp.)を覗いた。採取したものには、何種類か混じっているようだが、今朝覗いた個体には弾糸に明瞭な隔壁があるので、ドングリタケ(D. subterranea)ではない。
 今朝はドングリタケの観察が目的ではなく、デジカメとアダプタの違いを実感することだった。比較したのは、COOLPIX950(a)とCAMEDIA5060(d)の2機種である。カメラのコンセプト、画質、画像処理の味付け、接眼レンズを含めたアダプタが異なるので、どちらがどうと言うことは単純には言えないのだが...。
 ちなみに、両機ともズームは光学3倍だが、有効画素数は950が211万、5060が510万であり、焦点合わせに使うモニターは、両機とも13万画素で、950が2インチ、5060が1.8インチである。なるべく撮影条件を近くして油浸100倍のときの画面を撮影した。
 950による画像が(b, c)、5060のそれが(e, f)。モニターで焦点合わせをするので、画面が大きい950の方が扱いやすい。ただ、COOLPIXシリーズは、990と995が1.8インチ、4500では1.5インチとさらに小さくなってしまった。
 最大ズーム位置(Tele側)で比較すると、950の映像は大きく(b)、5060のそれは小さい(e)。概して、CAMEDIAの方が像はきれいで鮮明だ。もっとも、1999年3月発売の950を2003年10月発売の5060と比較すること自体がかなり酷ではある。ただ、縮小してネットに載せられるサイズにすると両者にほとんど差異は感じられない。
 なお接眼側レンズは両者ともに10倍のほぼ等質のレンズを使用した。CAMEDIAではまだ対物ミクロトームを撮影していないので、スケールを入れることができなかった(e)。COOLPIX用に比べるとアダプタがやや高価だが、OLYMPUSのCAMEDIAシリーズはCOOLPIX9xxシリーズよりも鮮明な顕微鏡写真が撮れるかもしれない。

2005年2月2日(水)
 
デジカメゆえの問題
 
 デジカメを使って顕微鏡撮影をするようになって久しい。銀鉛フィルム時代と比較して、検鏡時の撮影枚数が格段に増えた。15〜30倍にはなろう。デジカメの場合は、残りフィルムを気にすることなくいくらでも撮影できる。したがって、ここ一番などと考えることなく、ちょっとメモしておこうかなと感じたら、何枚でもシャッターを切ればよい。悪い画像は後で消去すればよい。
 撮影枚数が増えた最大の原因は、実はまったく別のところにある。デジカメでの撮影ではコリメート法を使っているので、ピントの確認は液晶モニターで行うことになる。
 銀鉛フィルムの時代は、三眼鏡筒部に撮影装置を乗せ、その上に一眼レフボディを据え付けた。ピント確認は撮影装置から潜望鏡の様に手前に出ているレンズをとおして行う。したがって、かなり正確にピント合わせをすることができる。
 一方、デジカメでは液晶モニターを見てピント合わせをするわけだが、これがとても分かりづらい。小さな液晶画面では、はたして正確にピントがあっているのかわからない。たいていのデジカメには、光学ズームの他に電子ズームを備えている。電子ズームは撮影には全く役立たないが、ピントの確認には利用できる。少しでも画面が拡大され、細部の様子がわかる。
 しかし、いくら光学ズームも利用して液晶モニターを注視しても、はたして正確にピントが合っているのか否かは、やはりわかりにくい。そこで、その周辺で何枚も撮影することになる。微動ネジをごくごくわずかにずらしながら撮る。大部分は後で捨てることを前提の撮影である。
 撮影を終えた映像は、パソコン側の大型モニターでピントの確認をする。ピントの甘いものは容赦なく削除する。残ったものだけを保存する。10数枚撮っても残るのは1〜2枚である。胞子の輪郭部を撮影するだけでも5〜10枚、胞子表面模様を撮影するのにもほぼ同数撮る。こんな調子で、ヒダ実質部とかシスチジアなどを撮影すると、画像枚数だけがやたらに増える。
 したがって、画像をパソコンに転送したら、最初にやることはピントの甘い映像の削除である。80〜90%の映像が捨てられる。これが結構時間がかかる。こんなことに時間をかけるのは実に馬鹿げている。コストをかけずにできる何かもっと良い方法がないものだろうか。

2005年2月1日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 浜松市の中田島砂丘で採取したケシボウズの中には面白いものがいくつもあった。Tulostoma adhaerensは頭部の径に比して孔口が小さいのが特徴の一つだが、若いまま砂に埋もれてミイラ化したものがあった(a)。内部にはまだ担子器もところどころに残っていた。さらに、担子柄を付けた状態の胞子も散見された(b, c)。
 Tulostoma kotlabaeと思われる小さなケシボウズも多数あった。頭部の径は1.5〜4mmほどしかない(d)。弾糸や胞子はケシボウズタケ(T. brumale)と似通っている(e, f)。しかし最終的な同定にはSEMでの胞子観察が必要とされる。
 手元にはまだ御前崎市の浜岡砂丘で採取したもの、大須賀町のサイクリングコース脇の浜で採取した多数の個体が手つかずの状態で残っている。福田町では昨年11月21日に多数採取しているので、今回は数十個体しか採取しなかった。

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