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武蔵丘陵森林公園を歩いてきた。ここしばらく雨が続いたにもかかわらず、きのこの発生は芳しくない。ベニタケ科やテングタケ科のきのこが相変わらず多い。テングタケ科で目立ったのはタマゴタケ(a)、コテングタケモドキ(b)、カバイロツルタケ、アカハテングタケ、ツルタケダマシだった。イグチ類では、アワタケ、チチアワタケ(c, d)、ヌメリニガイグチ、ミドリニガイグチだった。 竹林ではスッポンタケ、アカヤマタケ、小型のイッポンシメジ科がよく出ている。道の脇にはあちこちでハタケシメジが花盛りだった(e, f)。その気になって集めればすぐにでも数キロは採取できそうだ。ハタケシメジの脇では何度もヤマカガシにであった。 |
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今年はコスリコギタケによくであう。今朝は10月はじめに採取したものを検鏡した。子実体は棍棒状だが、先端付近では胞子は作られず、子実層もはっきりしない。紙の上に一晩放置すると、先端から数センチ下がった辺りから基部にかけての範囲にだけ胞子紋が落ちる。ホウキタケ類やシロソウメンタケ科のきのこ一般にそういった傾向が見られる。 胞子は無色で油球の様なものが多数ある。何も染色しないで撮影するとコントラストが弱く姿がはっきりしない(d)。子実体を輪切りにして縁を見ると、濃い色の子実層がみえる(a)。拡大してみると多数の細長い担子器が並んでいる(b, c)。担子器は非常に細長く、油浸対物100倍では、視野に入りきらなかった(e)。サイズなどを計測するには対物40倍あたりを使わねばなるまい。子実層にも、子実体の髄部分にもクランプが見られる。一菌糸型である。 |
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先日都内の公園で採取したアセタケ属(a〜c)を検鏡した。アカマツ混じりのコナラ、シデ林に出ていた。ヒダは上生から湾生(b)。柄の基部はやや膨大し、白色絹糸状の菌糸に被われる(c)。 最初に胞子紋をそのまま簡易顕微鏡で覗いた(d)。水で封入すると著しいこぶ状である(e)。ヒダを切り出してみると、側にも縁にも多数のシスチジアが見える(f)。やや厚膜で先端に分泌物のクリスタル状結晶がついたものが多い。縁シスチジアの中には、先端がひょろひょろと細長く伸びているものもある(g)。子実層を見ると大きな担子器が多数並んでいる(h)。 サイズを計測したり、担子器の基部の様子を確認するために、対物油浸100倍であらためて確認した(i)。シスチジアも同じようにみた(j)。傘上表皮(k)や柄上部の表皮(l)にはとくにシスチジアは見られなかった。とりあえずコブアセタケとして扱っておいてよいだろう。 同じ林のすぐ近くには、ヒカゲシビレタケが何株も束生していた。これは、持ち帰るわけにも行かないので、胞子紋が紫褐色であることだけを確認した。本来ならば、胞子とシスチジアの確認をしないと、アイゾメシバフタケではないとの断定はできないが、過去に多数のヒカゲシビレタケ、アイゾメシバフタケやその仲間を見てきているので、まず間違いないだろう。 参考のために、かつて撮影したヒカゲシビレタケの胞子と縁シスチジアを載せておこう。縁シスチジアの多くは先端が尖った紡錘形であるが、上部や側部が分岐したような異形のものが、かなりの比率で混ざっている。 |
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昨日遠州灘の砂浜を歩いてきた。浜松市から御前崎市にわたる浜のうち、浜松市の中田島砂丘、福田町の浜、大須賀町の浜、御前崎市の浜岡砂丘の4ヵ所を重点的に夜明けから日没まで見て回った。帰宅したら走行距離は700kmを上回っていた。何種類かのケシボウズタケ属菌を中心に、ドングリタケ、カヤネダケ、ハラタケ科のきのこなどが多数みられた。 さる7月2日に同じ場所を観察したが(雑記2005年7月3日)、その折りにはケシボウズタケ類はわずかの数のミイラを見ただけだった。この3ヶ月半ほどの間に、福田町の浜以外の地域では、かなりの数のケシボウズタケ類が出ていることがわかった(a〜f)。 出会ったケシボウズ類の数は、ナガエノホコリタケTulostoma fimbriatum var.campestre(e, f)、T. adhaerensと思われるもの(c)各々数百、T. kotlabae、ケシボウズタケ T. brumale 各々数十、その他百数十個体ほどあったろうか。それらのうち計200個体ほどの標本を採取した。 不思議なことに、福田町の砂浜では、一個体のケシボウズタケ属も見ることができなかった。これは7月2日にも同じである。その他の地域では、7月3日以降に発生したと思われる子実体があちこちに群生していた。ただ、発生直後の個体は少なかった。 |
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先に日光から持ち帰ったガマホタケ属 Typhula (a)の小さなきのこを覗いた。持ち帰った日に一度見たのだが、胞子が全くできていなかった。そこで、しばらく湿り気を持たせた状態で追熟させていた。一晩スライドグラスに横たえたが、胞子紋は全くとれなかった。 子実体の高さは2〜5mm、径は0.3〜1.2mmほどの小さなものばかりである。最初水でマウントしてみたが、コントラストが弱くはっきりしない。子実層には担子器も胞子も見られなかった。そこで、フロキシンで染めて3%KOHでマウントした。 最初に輪切り(水平り)にした(b)。次に縦切り(垂直)にした(c)。子実体内部では、中心部に縦に多数の繊維が束ねられた状態で走り、そこから子実層托に散開状に菌糸が走っている。内部はゼラチン化している。脆くて小さいのでとても切りにくい。 内部の菌糸の束の周辺には、ところどころにクリスタル片がみられる(d)。菌糸はどこを見てもクランプがある(e)。偽担子器の基部にもクランプがみられる(f)。かなり探したが、担子器らしきものがみつからない。しかし、わずかに胞子らしきものはあった。 |
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昨日アセタケ属のスナジアセタケ(a, b)を観察したので、今朝も引き続いて砂地にでるアシボソトマヤタケを検鏡・撮影した。外見からアシボソトマヤタケかハリアセタケ辺りだろうと思っていた。とりあえず胞子紋だけはその日のうちのとっておいた(c)。 最初に簡易顕微鏡を使って、カバーグラスに落とした胞子をそのまま覗いた(d)。次に水でマウントして、胞子表面(e)、輪郭部(f)などを確認した。実にきれいな胞子だ。学名Inocybe calosporaの、caloは「美しい」、sporaは「胞子」である。 ヒダ切片を切りだした。低倍率ではシスチジアらしき姿はみえない(g)。やや倍率を上げてヒダ実質部を確認した(h)。さらに倍率を上げて子実層をみると、担子器(i)や厚膜シスチジア(j)が多数見える。側シスチジアは子実層から突出せず、子実層に埋もれるように並んでいる。そのため、低倍率では側シスチジアが無いかのように見える。担子器基部にもシスチジアがある(k)。 縁シスチジアも同じような形をしている。念のためにヒダを一枚とりだして、フロキシンで染めてスライドグラスにおいてみた。縁には多数のシスチジアがみえる。傘表皮にはシスチジアは見られなかった。柄上部の表皮にも同じような厚膜シスチジアが多数みられる(l)。 |
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ひたち海浜公園での菌類調査は原則として砂丘部砂地だけなのだが、12日はあまりもきのこが少ないので、クロマツ林との境付近まで観察した。松林から砂丘側数メートルのところに、松の菌根菌であるスナジアセタケが出ていた(a〜c)。柄の基部は凹頭状である(c)。なお同公園では園内のクロマツ林にも、アシボソトマヤタケなどと混在してよく発生する。 胞子紋は黄褐色(d)。スナジアセタケは胞子の形に大きな特徴がある。ドライマウントではわかりにくいが(e)、水やKOHでマウントすると、角張った類楕円形の姿がはっきりわかる(f)。ヒダを切り出すと、縁にも側にも厚膜で先端にクリスタル状結晶をつけたシスチジアが多数みられる(g, i)。ヒダ実質は並列型(h)。 傘表皮を何ヶ所か切りだしてみたが、どこにもシスチジアらしき姿はみあたらない(j)。しかし、柄の上部の表皮にはヒダのシスチジアと同じような柄シスチジアがある(k)。アセタケ属はヒダ、傘、肉、柄のいずれの部分にもクランプがみられる。担子器の基部にもある(l)。 |
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昨日は砂地生菌類の調査のためにひたちなか市まで行って来た。かなり早く到着したのでまだ事務所が開いていない。そこで、村松虚空蔵堂の外側に広がる浜を覗いてみると、コナガエノアカカゴタケがでていた(a)。東海村で出会ったのは初めてだった。 ひたち海浜公園の砂地帯ではまだ、キノコの発生はほとんど見られない。ごくわずかに、ウネミケシボウズタケ(b)、ナガエノホコリタケ(c, d)、ヒメツチグリ属、ホコリタケ属などがみられただけだった。スナヤマチャワンタケやらスナジクズタケは全く見つからなかった。 午後、茨城県きのこ博士館(茨城県那珂市戸4603、TEL029-297-0198)に寄ってみた(e, f)。キノコシーズン以外でも楽しめるよう、さらに子供をも飽きさせないよういろいろと工夫されている。 同館ではきのこの鑑定もやっている。一時間ほどみていると、サクラシメジ、ニンギョウタケ、ウラベニホテイシメジ、マイタケなど野生キノコを抱えた人々が次々と訪れる。同定の担当者は小休止もできないほど忙しく、いつまでも客足は絶えなかった。 |
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先日の日光ではヒダハタケ属のきのこがやたらに多かった(a, b)。雨の中では傘表皮にかなりのヌメリがあった。傷つけるとやがて赤褐色に変色する。 ヒダは一見しっかりしているように感じたが、非常に潰れやすい。何度も試みたが、まともなヒダ切片は作れなかった(c, d)。それでも何とか、ヒダ実質部の構造を確認することはできた。緩い散開型で、いわゆるキヒダタケ亜型である(e, f)。 縁にも側にも大型で長紡錘形をしたシスチジアがみられる(g, h)。中には3%KOHで褐変するものもある。担子器は基部にクランプを持ち、とても長い(i)。傘上表皮は菌糸がおおむね平行に走っている(j)。ヒダハタケの胞子(k)は保育社『原色新日本菌類図鑑』や池田良幸著『北陸のきのこ図鑑』では非アミロイドと記されているが、観察した個体では偽アミロイド(l)。3%KOHで封入すると淡い色になる。コットンブルーでは膜がよく染まる。ヒダハタケとしてよいだろう。 |
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マクキヌガサタケにであったのは久しぶりだった(a〜d)。これまでは、ドイツトウヒやモミなどの針葉樹林でしか見たことが無かった。一昨日の日光では、中禅寺湖畔の広葉樹林に出ていた。まさか、こんなところでマクキヌガサタケに出会うとは思っていなかった。 ハエが忙しそうにやってきては頭部のグレバを舐めている。雨に洗い流され、虫に舐められる。グレバがすっかり無くなったものも多かった(b)。時間経過につれて根本辺りから倒れるものが出てきた(c)。辺りをみるとまだタマゴが多数あった。あと数日は発生が続くのだろう。 大型のヒグマアミガサ(トビイロノボリリュウタケ)にも驚いた(e, f)。手のひらをいっぱいに広げたほどのサイズのものもあった。いずれも広葉樹の腐朽倒木から出ていた。 |
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