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日( )

2005年1月31日(月)
 
ケシボウズタケ属の分布
 
 海岸砂浜におけるケシボウズ(Tulostoma)の分布にはかなり偏りがある。過去の例では、遠州灘(静岡県・愛知県)ではT. adhaerensが圧倒的に多く、ウネミケシボウズタケ(T. striatum)、ナガエノホコリタケ(T. fimbriatum var. campestre)はほとんど採取されていない。一方、千葉県では圧倒的にウネミケシボウズタケとナガエノホコリタケが多く、T. adhaerensはごくわずかである。さらに、新潟県でもウネミケシボウズタケが多く、福島県ではいまのところウネミケシボウズタケしか見つかっていない。さらに、海辺にはケシボウズタケ(T. brumale)は思いの外少なく、これまでケシボウズタケとされていたものも、よく調べてみるとT. kotlabaeだったりする。新種・新産種、分布状態などに関してはいずれきちんとまとめなくてはなるまい。

 久しぶりにきのこの話題に、一編追加した。 ピスを使った切片作成であるが、これは菌学教育研究会の会誌「菌教通信第3号」に投稿したものに若干手をいれたものだ。

2005年1月30日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 今年は随分早くからツバキ樹下や、ハンノキ樹下にキンカクキンがでていた。自宅団地のツバキ樹下にも1月初旬からツバキキンカクチャワンタケが出ていた(a〜c)。今朝採取したものを、そのまま手でつまんで切片を作った(d)。次にピスに挟んで切り出した(e)。メルツァーで子嚢先端がきれいな青色に染まる(f)。
 このところ、時間さえあればケシボウズの胞子・弾糸ばかりみている。ケシボウズでは難しい切片作りは不要だ。気分転換のつもりでツバキキンカクチャワンタケを覗いたのだが、分厚い切片(d)や潰れた切片(e)を前にしてかえって気が重くなった。
 先日遠州灘から持ち帰ったケシボウズは、ようやく中田島砂丘で採取した群の仕分け・分別を終えた。胞子・弾糸を次々と対物40倍でチェックして仕分けする。まるでベルトコンベアー式流れ作業である。気になるものだけを油浸100倍で詳細に見る。ここ数日間だけで捨てたカバーグラスは数百枚になる。

2005年1月29日()
 
coolpix950
 
 顕微鏡専用機のCOOLPIX950がご臨終となった。購入したのは1999年3月。2001年フォーカス機構が壊れて修理した。その後再び合焦機構が故障した。しかし、無限遠には固定できた。以来ずっと顕微鏡専用機にして昨日まで利用してきた。
 顕微鏡撮影では無限遠さえ利用できればよい。最近では低画素に分類される211万画素だが、雑記の顕微鏡写真は大部分がこの950を使って撮影したものだ。2001年冬からだけでも連日30回以上、365日×30枚×4年=43800回、トータルでは7〜8万回ほどシャッターを切ったのだから、壊れても不思議はない。
 修理見積もりは18,000円。950の中古相場は11,000〜13,000円。これはもう捨てるっきゃない。もう一台の950を顕微鏡専用にした。990、995もいずれは顕微鏡専用である。これらは、何といっても最も安上がりに顕微鏡撮影ができるのだから。

2005年1月28日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 遠州灘の砂浜にはケシボウズタケ属(a〜d)、ドングリタケ属(e, f)のきのこが多い。25〜26日にかけて歩いた地域では、昨年10月から今年1月頃の発生と思われるミイラばかりではなく、比較的最近発生したもの(a)や、7〜8個がまとまって出ている幼菌(b)などもあった。
 フィルムケースや小型タッパウエアを各々数十個と、多数の紙袋を持って出かけたのだが(c)、容器の方はかなり不足をきたした。採集したサンプルは特定日ごと、採取地域ごと、さらに採取地点ごとに別の容器に入れた。一地域だけをみてもかなりの量となる(d)。
 これらの容器ひとつひとつについて、大まかに外見的特徴からいくつかのグループに分ける。次にひとつずつ検鏡して種レベルに分ける。この作業が思いの外面倒だ。新産種であれ、新種であれ、不明種であれ、これらの作業が終わらないと標本庫に納めることもできない。今朝は全体をとりあえずおおざっぱに分け採集票を添えて紙袋に入れた。

2005年1月27日(木)
 [その2]
石川のきのこ図鑑その後
 
 絶版になって久しい名著「石川のきのこ図鑑」のその後の状況について触れておこう。復刊を望む声は強く、ネット上の「復刊ドットコム」でも2002年11月4日に登録されてから、現在まで合計114票を獲得している。しかし、2004年7月21日に交渉が行われたとの表示から、現在まで進展はない。既に登録から2年以上が経過した。
 読者からの強い声に勇気づけられて、この間、著者の池田良幸さんは「(仮称)北陸のきのこ図鑑」の執筆にあたられてきた。この新著の原稿は、ようやく初稿がほぼあがり、二月下旬には再校という段取りになっている。予定では6月半ばには上梓の運びとなる。復刊ドットコムへの投票という行為はかなり大きな力となった。
 「(仮称)北陸のきのこ図鑑」は単純に「石川のきのこ図鑑」の改訂新版ではなく、基本姿勢はそのままに、地域的にも北陸一帯を対象に広げた意欲作である。保育社「原色日本新菌類図鑑(1, 2)」を補足する菌類図鑑として、日本語で書かれた必須文献となろう。

2005年1月27日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 この2日間静岡県の海岸砂浜と愛知県の石巻山を歩いてきた。御前崎市の浜岡砂丘(a, b)では非常に多くのケシボウズ、ドングリタケ、コツブタケなどがみられた。大須賀町の浜(c)でも多数のケシボウズが、浜松市の中田島砂丘(d)では各種のケシボウズが多数みられた。多くは昨年10月から今年の1月始め頃に発生したと思われるミイラである。
 愛知県豊橋市の石巻山(e)は山頂付近の石灰岩地がみごとである。ここには貴重な植物が多くみられ、石巻山石灰岩地植物群落として国の天然記念物に指定されている。一方、山頂付近は急峻な石灰岩の壁が切り立っており、岩登りのゲレンデとしても著名である(f)。山頂周辺の石灰岩地帯をぐるっと回って探索をした。結果はオケラであった。
 今日から何日間かは、持ち帰ったケシボウズ数百個の仕分けにかなりの時間を取られそうだ。今年は梅雨の頃と秋霖の頃に、再び浜岡砂丘から中田島砂丘に広がる砂地帯に、新鮮なケシボウズ等の観察に出かけなくてはなるまい。

2005年1月25日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 日曜日(1/23)に、苦労して生からヒメキクラゲを切り出したので、今朝は乾燥個体(aの左側)から再度切り出してみた。完全にカラカラに乾燥しきってしまうと、今度は堅くてカミソリの刃が立たないので、その直前の状態のものから切り出した(b)。薄切りは格段に楽である。一段倍率を上げるだけで整然と担子器が並んでいる姿がわかる(c)。油浸100倍にするとさらに明瞭になるが少しでも重なっているとやはり分かりにくい(d, e)。勢いよく押し潰すと、担子器がバラバラになった。しかし担子柄はもぎ取られ、水泡も入ってしまった(f)。ものには限度がある。

 今日と明日 (or 明後日) まで静岡県・愛知県方面にでかけるので、明日 (or 明後日) の雑記はお休みである。am3:30、ETC割引の有効な時間帯に高速に乗らねば......。

2005年1月24日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日仲間6名で、茨城県ひたち海浜公園の砂地生菌類の調査に出向いた。新鮮なきのこは無く、わずかにウネミケシボウズタケ(a〜c)・ナガエノホコリタケ(d〜f)・ヒメツチグリ属のミイラ、乾燥でややしおれたハチスタケ、チャダイゴケの仲間などがあっただけである。ウネミケシボウズタケだけは最近1ヶ月以内に発生した個体がいくつかあった。
 顕微鏡撮影専用に使っているCOOLPIX950が不調だ。[OFF] から [A](オート)に切り替えることはできるのだが、しばしば [M](マニュアル)への切替ができない。電源を落としたり、[PLAY](閲覧モード)に切り替えたりを繰り返すと、なんとか使える。数日前からこの症状が出始めた。今朝は10回ほどスイッチ切替をやって、やっとのことで [M] に切り替えて撮影することができた。いやな予感がする。次なる顕微鏡撮影専用機を準備しておいた方がよいのかもしれない。

2005年1月23日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 先日採取したヒメキクラゲはフィルムケースに入れて冷蔵庫に保管しておいたので、いまだ新鮮な生状態を保っている(a)。キクラゲの仲間は生状態から切片を切り出しすのが難しい。ふだん観察するときには、ほとんど乾燥した状態(雑記2002.12.25)やら、半乾燥状態(雑記2004.4.7)から切り出すが、今朝は全くの生状態のものからプレパラートを作成してみた。
 カバーグラスの上に1時間ほどグニャグニャのヒメキクラゲを置いておくと、無数の胞子が付着して白色の胞子紋がとれる。これを覗くとソーセージ形の胞子が見える(b)。
 表面を薄く切りだした(c)。倍率を上げると、担子器らしきものは見えるが透明ではっきりしない(d)。あらためて切片をつくり最初からフロキシンで染めた(e)。倍率を上げると担子器ははっきりする(f)。水だけのものとフロキシン染めの両者を油浸100倍で見た(g, h)。
 重なり合って担子器の形状がはっきりしないので、軽く押し潰した。すると担子器のすがたをはっきり捉えることができた(i, j)。胞子もフロキシンで染めた方が見やすい(k)。ゼラチン質に包まれた菌糸にはいたるところにクランプが見られる(l)。
 キクラゲの仲間の切片作りは、やはり乾燥〜半乾燥状態にして切り出すのが楽である。生状態からの切り出しにはピスを使ったが、ゼラチン層が邪魔をして薄切りは難しい。

 埼玉きのこ研究会のサイトが引っ越しをした。新しいURLは http://ippon.sakura.ne.jp/である。連絡をいただいたのでここに掲載しておく。「横山 元の今日もきのこ日和」もリニューアルされた。

2005年1月22日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 19日に栃木県葛生町で採取した緋色のベニチャワンタケ属のきのこを検鏡した。外見的には托外皮層には白毛は全く見られない(a)。したがってベニチャワンタケではない。子実層から外皮部分までまでを含むように切り出してみた(b)。子実層には赤色色素を含んだ側糸が多数みられる(c, e)。KOHで前処理、水洗いの後、メルツァーを加えると色素の色が緑色に変わった(d)。子嚢や胞子は非アミロイドで、胞子表面は平滑である(f)。托髄層の組織構造などほかの特徴から、とりあえずはベニチャワンタケモドキとして扱っておくことにした。

2005年1月21日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 先日はマメザヤタケ属のカンナ削りまでしかできなかったが(雑記2005.1.19)、今朝はこれを覗いて楽しめた。先日切り出したものを使い、3%KOHで前処理をし水洗してからメルツァーを注いだ。再び水洗して倍率を上げると、子嚢先端が鮮やかに青く染まった(a)。
 この仲間(Xylaria)は子嚢先端がリング状に青色に染まる。包丁を使って叩き割ったり、勢いよくカンナ削りをやったりしたせいか、子嚢殼に整然と並んだ子嚢は見られない。空っぽの子嚢やほとんど胞子を放出してしまった子嚢が多数みえる。先端の染まり方がとても興味深い(b〜d)。ガラスコップや矢羽根の様な形に染まっているものもある。
 胞子にはスリットがあるがうまく写っていない(e, f)。子嚢先端が胞子に押し広げられている姿もみられる(e)。どうやらマメザヤタケとしてよさそうだ。この仲間は採取したらすぐに切り出して検鏡しないと、プレパラート作りにひどく難儀することになる。もっとも子嚢と胞子だけを見るなら、カラカラに乾燥してからでも全く問題ない。

佐野書店から一月の文献案内がでた。「原色韓国虫草菌図譜」など興味深いものが並ぶ。

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