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埼玉県の両神山から小さな盤菌を持ち帰ったのだが、このところの多忙のため、冷蔵庫に入れっぱなしになっていた。今朝はこれを覗いて楽しんだ。地面に落ちているアザミ属の枯茎についていた(a, b)。椀の径1〜2mmほど、縁には針のようなものがあって王冠を思わせる。現地でちょっとみためには、Cyathicula属かHymenoscyphus属あたりと思った。 まずは、おきまりの子実層切り出し(c)。小さいことと、やや乾燥気味だったせいか、切り出しがなかなか上手くいかなかった。メルツァーを加えると子嚢先端の頂孔が青くなった(d)。側糸は枝分かれがほとんどなく、子実下層からまっすぐ伸び上がっている。 水でマウントした胞子には隔壁などはなく、多くの油球がみえる(e)。しかし、メルツァーを加えた状態で見ると、2〜3つの隔壁らしきものがみえ、油球の様子は曖昧になる(f)。 Cyathicula coronataに限りなく近い種なのだろうが、胞子に隔壁を持っているようにみえることから、どうやら別種かもしれない。子実下層や托実質、托外皮などの構造をいま少していねいにみれば、より詳細な情報が得られるはずだが、2個体しかないので廃棄した。 |
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先週土曜日の代休を月曜日にとったので、昨日の早朝、茨城県神栖市波崎の周辺を歩いてきた。はじめに菌懇会のSさんからの情報を頼りに、利根川沿いのサッカー場周辺を歩き回った。周辺では目的のきのこは見つからなかった。その後、海辺の砂浜を探索した後、数年ぶりに波崎のクロマツ防風林を歩いてみた。思いがけない収穫があった。 マツバハリタケにであったのは久しぶりだ(a, b)。放置されて松枯れが目立つ防風林にもかかわらず、シモコシがかなりでていた(c, d)。クロマツを中心として菌輪をなしていた(e)。写真には1/4しか写っていない。マツバハリタケもシモコシも松葉などの落ち葉の下に姿を隠していて、普通に歩いていても全く見えない。見当を付けて落ち葉をどけていくと次々にきのこが現れる。自分たちが食べるには充分な量を採取したので昼には帰宅した(f)。 そうそう肝心の浜辺だが、6年越しの念願がかなってケシボウズに出会うことができた。夜はマツバハリタケの付け焼きを肴に、ビール片手にケシボウズを検鏡した。よき日だった。 |
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埼玉県小鹿野町の標高800メートルの林道でボロボロに普及した材からズキンタケの仲間がでていた(a, b)。ちょっと見たところでは、Ascocoryne属の子嚢菌である。外見だけでは、ムラサキゴムタケA. cylichniumなのかA. sarcoidesなのかは区別はできないとされる。 子実層を切り出すと、子嚢の先端付近がやたらにゴチャゴチャしている(c)。メルツァーを加えると、どうやら子嚢先端付近の頂孔が青く染まっているようだ(d)。子実下層や托外皮層は絡み合い菌組織ないし表皮状菌組織をなしている(e)。 さらに一段倍率を上げて子嚢の先端付近をみると、紡錘形の子嚢胞子の他に小さな類球形の組織が多数みえる(f)。まるで他の菌の胞子が混入したかのようだ。子嚢先端の頂孔付近を拡大してみると、アミロイド部分がよくわかる(g)。側糸は糸状で先端がやや膨大している。 子嚢胞子は隔壁で5〜6室に仕切られ、胞子表面には小さな分生子をつけたものがある(h, i)。しばらく放置していると、分生子は胞子から分離して周囲に多数漂いはじめた(j)。低倍率で子実層付近をみたときに、やたらにゴチャゴチャしていたのは、子嚢胞子と分生子が一面に漂っていたせいらしい。これらの特徴から、これはムラサキゴムタケとしてよさそうだ。 数年前に、ムラサキゴムタケのようにみえるAscocoryneがあった。その折りは、完熟個体が得られず同定を放棄したが、胞子の特徴と分生子などを考慮すると、これもムラサキゴムタケとしてよいだろう(雑記2002.10.31)。 実はこのきのこについては、雑記で取りあげるつもりは全くなかった。しかし、昨日の菌懇会例会でたまたま話題に上ったので、とりあえず今朝その気になって記述した。 |
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先に紹介したが、平成17年度の「菌類の多様性と分類」講座の申込締切が近づいたので、再度取り上げた。講座は12月16(金)〜19(月)の4日間、筑波市にある菌学教育研究会のセンターで行われる(cf: 雑記2005.10.30)。 申込は、「同封の私製はがきに50円切手を貼って12月5日(月)必着で申し込んでください。はがきをお送りしていない方は下記にご連絡を下さい。」となっている。
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ウサギの糞から出るハチスタケは、大きなものでも頭部の径3mm程度にしかならない。また、海辺のものは山間部に発生するものに比して柄が極端に短い。しかし、持ち帰った糞を、2週間ほど適度の湿度を保ってやると、出てくる個体は長い柄をもったものばかりとなる。 今年は発生が遅く成長も悪かったので、手元にあるのは径1〜2mm程度の小さなものばかりだ。今朝は、最近採取した径1mm程度のものを切り出してみた(a, b)。 小さくても子実体はかなり堅いために薄切りは、思いの外むつかしい。久しぶりに実体鏡の下で、切り出した(c)。柄をピンセットで摘んでカミソリの刃を手前に引いて切り出した。実体鏡を使う場合は、カミソリよりも刃先の細いメスなどを使った方が作業が楽だ。 水でマウントして子嚢をみても先端の様子はよくわからない(d)。メルツァー液を加えるとたちまち孔口部分がリング状に青色になる(e)。倍率を上げてみるとさらにはっきりする。見る方向を変えるとこれは完全なリング状となっている(f)。写真(f)は先端のリングをバラして撮影した。 例年今頃になると、飽きずにハチスタケを覗いている(雑記2004.11.1、雑記2004.12.29)。胞子のスリットなどは今朝は撮影していない。 |
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先月28日に栃木県栗山村でクリタケを採取したが、ひとつだけ乾燥して残してあった。遠からず検鏡するつもりで忘れていた。何度も見ているので、軽く考えていたからだろう。 乾燥標本から切り出したヒダはやはり、生標本からのヒダとは比較にならない。撮影などが目的の場合は、なんといっても生標本だろう。しかし、並列型をなすヒダ実質や子実層の様子は乾燥標本からでもよくわかる(a)。クリソシスチジアが見えている(a, b)。 子実層には側シスチジア(c)と縁シスチジア(e, f)があり、側シスチジアの頂部には細い突起がある。側シスチジアには、クリソシスチジアとそうでないものがある。クリソシスチジアはフロキシンでは染まらない。他方はピンクに染まり(d)、特に濃く染まる内容物をもつ(c, d)。 大部分の担子器では、基部にクランプがみられるが(g〜i)、そうでないものもある(j)。乾燥標本からの傘上表皮はあまり明瞭に捕らえられなかった(k)。組織の多くの部分にはクランプが見られる(l)。なお、クリタケの胞子紋、胞子、生標本からの検鏡写真は雑記2004.11.8にある。このときは、担子器の基部が明瞭にわかる写真は掲載しなかった。 |
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群馬県中里村、同万場町から埼玉県小鹿野町、同両神村、同大滝村にまたがる山地を歩き回ってきた。この地域には、両神山、諏訪山、二子山、父不見山といった石灰岩からなる山が連なっている。早朝の峠路は雪と氷で道路も一部凍結していた。
二子山の股峠直下まで林道が延びているのには驚いた。林道脇に車をとめて、俊立する石灰岩峰(東岳、西岳)に登り、途中の石灰岩の露岩周辺をさんざん探したり、両神山上部の八丁峠周辺の石灰岩地域を探索した。寒さにまいった一日だった。帰路は車の渋滞にさんざん泣かされた。目的のきのこには出会うことはできなかった。 |
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スナヤマチャワンタケを使って遊んだ。今頃の海辺ではかなり広い範囲に見ることができる(a)。最初はおきまりの子実層切り出し(b)。ふだんならメルツァー液を加えるのだが、今朝はうがい薬のイソジンを使った(c)。多くの子嚢菌では立派にメルツァーの代用がつとまる。 今朝の主目的は、子嚢先端の蓋を撮影することだ。これまでの経験から、このままでは、蓋を開いた状態の子嚢はあまり見られない。軽く押し潰して蓋を壊すのもひとつの手である。今朝は違う方法をとった。スライドグラスの下からターボライターで炙った。 熱されることによって、子嚢の中の成分が膨張して、蓋を開き胞子を放出する。たとえ未熟な子嚢胞子であろうと、あちこちで、先端から放り出される光景にお目にかかれる(d)。胞子がすっかり放出され空になった子嚢では、先端の蓋が明瞭にわかる(e, f)。 なお、スナヤマチャワンタケを観察したり、うがい薬をメルツァー代用に使った結果などについては、過去にも何度かとりあげた(雑記2004.12.28、同2003.10.31、同2002.12.21)。 今日は群馬県の山中あるいは茨城県の海浜で観察。方向は逆だが走り出せば、どちらに行くかは気分で決まるだろう。まずは一般道を北上。 |
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山口なばの会の副会長山田詳生さん(享年54才)が、11月21日(月)午前3時、心筋梗塞により、急逝された。惜しい人がまた一人亡くなってしまった。山田さん安らかに。 先にひたち海浜公園の砂丘で見つけたアカヤマタケ属のきのこを少し検討してみた(a, b, c)。傘は4cm程度、幼菌の姿はわからないが、中央部がやや円錐状に盛り上がっている(c)。表面は軽く粘性があり黄褐色からオレンジ色で、放射状の条線がある。 ヒダは疎で湾生から離生、明るいオレンジ色で、縁はやや色が薄い(b)。柄は中実で表面には繊維状の条線がみられる。ほぼ上下同大で、ねじれなどはなく、変色性はない。 乾燥標本から切り出した。ヒダ実質は並列型。シスチジアなどはない。胞子は 12-15 x 8-12μm、広卵型から広楕円形で、平滑、非アミロイド。担子器は4胞子をつける(e)。クランプがある(f)。傘表皮は匍匐状の糸状菌糸からなる。 保育社『原色日本新菌類図鑑』にあたってみた。担子器が4胞子性だから、トガリツキミタケではない。ヒダの色が黄色系ではなく、胞子サイズが一回り大きいからトガリベニヤマタケでもない。ヒダの色がトガリダイダイタケを思わせるが、胞子サイズがかなり違う。 スイスの菌類図鑑にも該当するような種は見あたらない。ヨーロッパのキノコシリーズ(FUNGI EUROPAEI) Vol.6 "HYGROPHORUS" にも該当種はみあたらなかった。 また同じきのこに出会ったらより詳細に調べることにして、この標本は処分した。 |
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一昨日の土曜日、深夜に出発して遠州灘の浜を歩いてきた。帰宅したのは深夜で、昨日日曜日の早朝と言った方が適切な時刻だった。広い遠州灘には、砂丘もあれば(a)、延々と平らに続く広い浜(b)などがあり、浜の植生にも発生するきのこにも若干の違いがある。 倒れてはいたがコナガエノアカカゴタケにであった(c)。掘り出すと白い袋に包まれた基部が出てくるが(d)、さらに掘ると地下深い所まで根状菌糸が伸び、その先はカワラヨモギの根にからみついていた(e)。風で吹き倒されたり、バラバラになってしまったものがいくつも見られた。どこの浜でもスナヤマチャワンタケは幼菌から成菌、老菌まで多数が見られた(f)。 Tulostomaは新しいものがあちこちで疎な群をなしていた(g〜l)。先月16日には全く何もなかった場所に多くの群をみた(雑記2005.10.17)。今回は探索したすべての浜で、ここ1ヶ月以内に発生したと思われるものに出会ったが、新鮮な個体ばかりではなかった。 T. adhaerensと思える種(h)が圧倒的に多いが、T. brumale、T. kotlabae、T. fimbriatum var. campestre(k)など、何種類かが見られた。人の視点(i)とウサギの視点(j)からのナガエノホコリタケを撮影して遊んだ。頭部に小さな子実体をつけて二階建となったTulostomaが目立った(l)。なお、(l)の写真は周囲の砂を広くどけ、柄が見えるようにして撮影した。 |
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