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2005年12月10日()
 
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 マツバハリタケの胞子は、直接見る限りは明瞭に捕らえられるのだが、撮影はどうも上手くいかない。今朝は11月末に採取した個体を使って試行錯誤してみた。紙袋にいれて冷蔵庫に保管しておいた分割片は、まだかなり柔らかみを保っている。
 傘裏の針を数本カバーグラスに載せて湿気を加え一晩放置すると白い胞子紋がとれた。はじめにドライマウント(a)、次に水で封入し(b)、次にメルツァーを加えた(c)。コントラストを強調するために別の一枚のカバーグラスに採取した胞子はフロキシンで染めた(d)。
 もとが疣を持った小さな胞子であり、水でマウントしたものはコントラストに乏しい。ドライマウントの方が形がはっきりしている。メルツァーで封入したものもあまり見やすくない。フロキシン染めは階調が明瞭だ。COOLPIX990による撮影は液晶画面でのピント合わせが難しい。
 針の表面を見ると、長い菌糸の先が何度も枝分かれしてその先に子実層を作っている。KOHを使うと簡単に担子器をバラすことができた(e)。念のためにフロキシン+消しゴム法で菌糸型を確認した(f)。一菌糸型(monomitic)である(cf: 雑記2005.9.20等)。

 今日は日本菌学会関東支部のシンポジウム。タイトルは「快適な生活のための菌学」。

2005年12月9日(金)
 
COOLPIXスイバル機
 
 秋葉原のソフマップ他の中古デジカメ売り場を回ってみた。昨年の今頃まではまだ多少出物があったスイバル機構のCOOLPIXシリーズはほとんど見かけることがなくなった。今年の夏に数台のCOOLPIX950、同995を見かけた他は、以降今日まで全く見ていない。店の話では、COOLPIXスイバル機種は、入荷が少なく、陳列すると直ちに売れてしまうという。
 昨年の今頃迂闊に「COOLPIX4500は995の後継機ではない」などと書いたために、識者の顰蹙を買った(雑記2004.12.2)。その4500も、中古市場ではほとんど見かけることがなくなった。最近のYahooオークションでもスイバル機の出品はずいぶん減った。出品される品は、いずれも希望落札価格が秋葉原・新宿などの中古相場よりもはるかに高い。
 安価で楽に顕微鏡撮影のできる機種として、COOLPIXスイバル機は名機だった。4500を最後に後継機はいまだにない。外部モニター送信画像が精細でフィルタ装着溝を持ち、マニュアル操作可能なインナーズームの小型スイバル機種はもう発売されないのだろうか。

2005年12月8日(木)
 
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 担子菌の検鏡をすると、胞子、シスチジア、担子器、ヒダ実質部や傘上表皮などの菌糸の太さ・長さなどのサイズを計測することになる。担子器を例にとってみた。
 最終的に担子器のサイズを、34-44 x 6-8.5μm と記録したとする。32 x 6.2 といったように、個別具体的な数値をいくつも計測したはずである。いったいいくつ計測すればよいのだろうか。少なくとも20は必要だろう。何らかの形で公にするのであれば、さらに多く計測しなくてはなるまい。その場合、前提として担子器の全体像がわかるようなプレパラートを作る必要がある。

 素材としてシロノハイイロシメジ(a)の半乾燥標本を使った。ヒダ切片を湯でふやかしてからマウントした(b)。子実層の部分を拡大すれば、だいたいのサイズを知ることはできる(c)。しかし、担子器の基部の様子や、正確なサイズはわからない。担子器だけを取り出す必要がある。
 たとえば、子実層部分だけをフロキシンで染めて(d)、マウント液を水から3%KOHで置き換えると、カバーグラスの重みで組織が潰れる(e)。このままでも、ヒダ先端部は担子器などがかなりバラけている(f)。しかし、このままでは組織が重なり合っていて計測は難しい。
 そこで、カバーグラスの上から、柄付針の先などで、軽く圧を加えてわずかにずらすと、担子器などの組織がバラバラになる。それが、下の段の写真(g〜l)である。ステージ上でプレパラートの位置を少しずつ変えれば、すぐにでも20〜30の担子器を見ることができる。

 ここまでいけば、あとは個別に記録するだけだ。カバーグラスに強い力を与えてしまうと、組織が壊れて内容物がはみ出したり、全体が扁平に変形する。
 なお、油浸100倍レンズを使うと、ミクロメータの一目盛が0.95〜1.05μmほどになるので、400倍レンズを使っての計測よりも信頼性が高い。ただ、対物ミクロメータを使って、接眼ミクロメータの一目盛が正確に何μmなのかを予め把握しておく必要がある。[参考] 雑記2004.11.15

2005年12月7日(水)
 
寂しい公園
 
 昨日氷雨の降るさいたま市見沼区の公園を歩いてみた。寒々とした公園には、新たなウッドチップが大量に散布されていた。半年から数ヶ月前に散布されたウッドチップから、わずかにヒトヨタケの仲間、ハタケキノコなどがみられた。一部の倒木や立ち枯れには、干からびたアラゲキクラゲ、貧相なエノキタケがついていた。結局一枚も撮影せず、そうそうに戻ってきた。

2005年12月6日(火)
 
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 きのこが全くみられないので、今朝もまたシモコシの担子器をバラして遊んだ。標本のかけらはごくわずかになった。まずヒダを薄切りして、KOHでマウントしフロキシンで縁を染めた。そのままの状態でも子実層の様子は概ねわかる(a)。しかし、油浸100倍にしても担子器の基部の様子はよくわからない(b)。そこで、顕微鏡のステージに載せたまま、枝付き針の先でカバーグラスに圧を加えた。すると、たちまち子実層がバラバラになった(c)。
 低倍率のまま前後左右に位置をずらすと、担子器全体がうまく見られる場所をみつけた(d)。これを拡大すると担子器の全体像がはっきりする(e)。胞子を付けた状態の担子器を見つけることも比較的たやすい(f)。フロキシンで染めるのは、コントラストを強くするためだ。
 シモコシについては雑記2005.11.8でもとりあげたので、近々、去る10月28日に採取して乾燥標本になっているシロノハイイロシメジで担子器のバラシをやってみよう。

2005年12月5日(月)
 
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 土曜日、日の出から日没まで、千葉県内房から外房の浜、茨城県の浜まで何ヵ所か歩いてきた。11月3日以来だった(雑記2005.11.4)。このところずっと雨がない。しかし、それにもかかわらず、いずれの浜でもスナヤマチャワンタケだけは幼菌から老菌まで広範囲に発生していた(a)。すっかり干からびて折れ曲がったコナガエノアカカゴタケや、倒れた状態のものがいくつもみられた(b)。おそらく1週間から数日前に発生したのだろう。
 観察の主たる目的はケシボウズであるが、この1ヶ月の間にも新しい個体がいくつも出ていた。ケシボウズタケ(c)、ナガエノホコリタケ(d)、ウネミケシボウズタケ(e, f)、Tulostoma kotlabaeらしきもの、などなどがみられた。再び認識を新たにしたのは、たった1ヶ月でかなり風化が進み、ミイラ化が思いの外速く進むことだった。(d)のナガエノホコリタケは先月は新鮮な幼菌だったが、たった1ヶ月でコケ(or藻)すら生えている。
 波崎からの帰路、鹿島スタジアム周辺の通過にひどく難儀した。ちょうど試合終了の時刻と重なってしまったらしい。盆暮れの大渋滞を連想させられた。

2005年12月4日()
 
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(e)
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 一昨日に引き続いてシモコシの断片で遊んだ。きのこ観察にヒダの切り出しは欠かせない。15〜20μm厚に切り出せれば、ひだ実質、シスチジア、子実層などを1枚のプレパラートで観察できる(a)。30〜50μm厚になると、1枚だけでこれらの観察をするのは難しくなる(b)。
 均一の厚さに切らず、一方が薄くなるように切り出すとよい(c)。ヒダ先端が薄くなるように切ってみた。左側は50μmほどあるが、右側では10μm以下になっている。先端部は途中で失われるが、その近辺では非常に薄くなるので、楽に観察できる。縁シスチジアは別途観察する。
 プレパラート(c)の封入液をKOHで置き換えた(d)。KOHで封入するとコントラストが低くなるが、子実層や担子器などは観察しやすくなる。倍率を上げるとさらにコントラストが低くなる。
 最後に、薄切り切片(a)の封入液をKOHで置き換えた後、フロキシンで辺縁だけを染めた。組織が薄いこともあり、カバーグラスの重みで急激に変形している(e)。このプレパラートはそのまま倍率を上げていくだけで、詳細な観察ができる。

2005年12月3日()
 
(a)
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 北海道の友人からキクイモの髄が届いた(a)。百本以上入った段ボールは、三本指で楽に支えられるほど軽い。キクイモはキク科の多年草で背丈1.5〜3mほどになる帰化植物だ。セイタカアワダチソウほどではないが、埼玉県でも広くみられる。
 日常愛用しているキブシの髄と比較してみた。並べてみると表面の様子がかなり違う(b)。断面をみるとキブシは全体が均一だが、キクイモは同心円状に質の違う組織からできている(c, d)。中心付近をみると、両者ともほぼ同じサイズのハニカム構造をなしている(e)。
 キクイモのピスを用いて、シロフクロタケからヒダ切片を作ってみた。結果はうまく切り出せた。キブシと比較すると、キクイモは髄表面が剥離しやすく、弾力性に欠け、脆くて崩れやすい。ピスとしての使い勝手は圧倒的にキブシに軍配があがる。
 キクイモの髄はピスとして適切ではないが、なんとかピスの役割を果してくれる。ヤマブキやニワトコの代用になる。発泡スチロールのピスよりはよい。野生のキクイモなら誰に遠慮なく採取できる(cf: 雑記2004.7.2同2003.5.15ピスを使った切片作成)。

2005年12月2日(金)
 
(a)
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(d)
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 数日前採取したシモコシの断片を使って遊んだ。まず、カバーグラス3枚を並べて、そこにシモコシの傘を伏せて20分ほど待った。白い胞子紋がわずかずつ落ちた。
 胞子の見え方とサイズは、何を封入液に使うかでかなり大きく変化する。いわゆるドライマウント、これは原理的にも鮮明な画像は得にくい(a)。次にカバーグラスの脇から水を注入した(b)。油球の様なものも見えるが、全体に暗くコントラストも弱い(b)。
 アミロイド反応を見るために、水をメルツァー液で置き換えた。非アミロイド(c)。2枚目のカバーグラスは水で封入しフロキシンを加えた(d)。水だけだとコントラストが弱く見にくかったり、暗くてわかりにくいケースでは、一般にフロキシンを使うと鮮明に見えるようになる。
 3枚目のカバーグラスの胞子はコットンブルーで染めた。コットンブルーは染色に時間がかかる。一昼夜放置するか、ライターなどで熱する。ここでは、そのいずれも行わなかった。ライターなどで炙るとすぐに鮮明に染まるが、サイズはかなり縮まってしまう。

2005年12月1日(木)
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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 先月28日神栖市波崎(旧波崎町)の利根川沿いのサッカーグラウンド周辺では見つからなかったが、海辺の砂浜でケシボウズの発生を確認した(a, b)。帰宅後直ちに簡易顕微鏡で胞子と弾糸を確認した。どうやら、アラナミケシボウズタケの可能性が大きい。
 植生がほとんど見られない砂浜から、内陸部を通る道路や人家のあるあたりの砂地にいたるまで、スナヤマチャワンタケが広範囲にみられた(c)。砂浜海岸ではこのところの乾燥で砂が大きく巻き上げられるのか、スナジクズタケはいずれも頭部の一部だけを曝したものや、完全に砂の下に埋もれたものが目立った(d, e)。
 砂浜に続く防風林ではマツカサタケ(f)やらニセマツカサシメジがよく見られた。一方、マツカサキノコモドキは比較的少なかった。イグチやササタケの仲間がまだ結構見られる。

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