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仕事で川越の近くに行ったので、帰路保護林に入ってみた。そのつもりではなかったので、カメラはポケットにCOOLPIX SQのみ保持し、防虫スプレーも蚊取線香も持っていなかった。思いがけず、イグチ類、テングタケ類が多数発生しているのにおどろいた。 林内に入ると蚊の大群が襲ってきた。おちおち撮影などしていられない。写真はかろうじて撮影したものだ。テングタケ類ではシロオニタケ(a〜c)、フクロツルタケ、ドクツルタケ、ツルタケ、カバイロツルタケなどがみられた。イグチの仲間で目立ったのはキアミアシイグチ(d, e)、ミドリニガイグチ(f)、ヤマドリタケモドキ、クリイロイグチ、ダイダイイグチなどだ。 蚊の襲撃が凄まじくて、出会ったきのこの大部分は撮影できなかったが、イグチ類とテングタケ類がとても多く、真夏を感じさせた。所沢近辺はきのこはほとんどなかった。 |
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微小なニカワ質のきのこは検鏡にもシビアなものがある。今月26日に採取したニカワアナタケを顕微鏡で覗いてみた。胞子紋を採取するために、室内でカバーグラス上に数時間放置した。カバーグラスを見ると50〜65x 6〜8μmくらいの線虫の様なものが無数に蠢いていた。落下胞子はとても少なく、満足な姿の胞子は得られなかった。線虫の仕業らしい。 室温が高すぎるようなので、冷蔵庫野菜ケース内で一晩胞子紋を採取し直した。今度は線虫らしきものはわずかしか落ちずに、胞子がたっぷり落ちていた。メルツァー液を加えた。アミロイドである(a)。カバーグラスの片側から水を注ぎ、反対側に濾紙をあてて溢れるマウント液を吸い取った。いわば水洗いである。すると胞子内部があらわになった(b)。 担子器は透明で、水でマウントしてもコントラストが弱く撮影には耐えられない。フロキシンでも染まらない。そこで、コンゴーレッドをあらたに加え、水を3%KOHで置き換えた。担子器はコンゴーレッドでもわずかしか染まらない(c, d)。菌糸組織にはクランプが無数にみられる(e)。子実層にはあちこちに面白い形のシスチジアがある(f)。 |
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日光から持ち帰った(オオダイ)アシベニイグチ?を精査してみた。孔口は黄色だが、触れると青変する。現地で切断すると、傘肉や柄は緩やかに青変した(a)。持ち帰って二日後再度あらためて切断してみた。更に緩やかに政変した(b上)。現地で切断した部分は黄褐色に変色していたが、触れると青変した(b下)。ここまでは22日のことだ。 胞子からはミヤマイロガワリなのか、アシベニイグチなのか判定できない(c)。管孔部を縦切りにして(d)、孔口部をみると多数の縁シスチジアが見える(e)。縁シスチジアのサイズにはかなり幅がある(f)。次に管孔部を横切りにした(g)。やや倍率を上げると側シスチジアが見える(h)。形や大きさは縁シスチジアとほぼ同様である(i)。 念のために担子器を確認し(j, k)、傘表皮を検鏡してみた(l)。これらの所見から、このイグチはどうやらミヤマイロガワリとしてよさそうだ。 |
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仲間6名で日光を歩いてきた。今回の目標は二つ。ひとつは、ツノシメジの撮影と、きれいな姿の標本の採取。もうひとつは、ニカワウロコタケの標本採取だった。ツノシメジはかなりの数を確認して、整った姿の標本をいくつか採取することができた(a〜f)。 ニカワウロコタケの写真は、山渓「フィールドブック きのこ」p.207に載っているが、国内でツノシメジの掲載された書籍は、大作・吹春共著「きのこワンダーランド」(山と渓谷社 2004.9)しかない。そのp.8に掲載された写真は若い菌だけである。そこで、今日は、ツノシメジの成菌(a, b)やヒダ、柄の部分が分かるような写真(e, f)をアップした。 遠くから一見したところ、スギタケの大きな個体のようにみえる。まるでお化けスギタケといった姿をしている(c)。しかし、ヒダは真っ白(e)、胞子紋も白。柄には毛むくじゃらのソックスをはいたような特徴がある。なお、顕微鏡下の姿は先週月曜日の雑記2005.8.22に取り上げた。 |
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秩父地域の皆野町の知人から「緊急連絡」があったので、他の予定をやりくりして行って来た。数日前からキヌガサタケが次々に発生しているとのことだった(a)。一昨日の台風11号による激しい風雨の中でも7〜8個が発生したという。グレバが洗い流されて黄色の頭部をさらした個体が多数みられた。マントに陽があたると鮮やかだ。竹林には、他にもニカワアナタケ(b)、キイボカサタケ(c)、スジオチバタケなどが多数でていた。 帰路小川町の自然公園に寄ってみると、いろいろなイグチが7〜8種類みられた。オニイグチモドキ(d)、ベニイグチ(e)、ヤマドリタケモドキ(f)、ニガイグチモドキ、クリイロイグチ、コガネヤマドリ、ウツロイイグチなどがみられた。特にベニイグチが非常に多く、小さな幼菌から、若い菌、大きな成菌など10数個が大きな群れをなしていた。 |
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スギタケ属らしいきのこを日光から持ち帰った。道路脇の針葉樹から横向きに一個体だけでていた(0)。材はウラジロモミかカラマツらしい。傘径8〜10cm、傘表皮はピンク色で、ササクレだった黄色の繊維状鱗片に被われている。中央部に突出は無く、やや凹んでいる。傘の縁は内側に反り返っている。ハナガサタケの傘をピンク色にした様なイメージである。 柄は硫黄色で、表面は傘表皮と同様の鱗片に被われている(1)。柄にはツバやその痕跡はない。ヒダは密で柄と同色。傘肉や柄の内部も硫黄色である。持ち帰った個体の傘に3%KOHをたらすと暗赤色に変色した(2)。柄やヒダでも柄の内部でも同じく暗赤色化する。 胞子は表面が平滑な空豆型(3)で、偽アミロイドである(4)。3%KOHで封入すると赤褐色味が増した(5)。ヒダを一枚切り出した(6)。縁にも側にもシスチジアがありそうだ。全体がゼラチン化しており、ヒダ実質が並列型であることは分かるが、クランプの有無ははっきりしない。傘肉、柄でもクランプの有無は確認できなかった。 新たにヒダを一枚スライドグラスに置き、3%KOHで封入すると縁シスチジアが多数みえる(7)。一部にクリソシスチジアもある。サイズと形の確認のため高倍率でみた(8)。同じような形の側シスチジアがある。3%KOHで封入すると、側シスチジアには内部が明褐色に染まるもの(クリソシスチジア)とそうでないものとの2種ある(9)。クリソシスチジアはフロキシンでも染まりにくい(10)。担子器(11)やら傘表皮などを確認した。 傘の色などはハナガサタケとはかなり違った印象を受けるが、ミクロの姿はハナガサタケそのものだ。保育社『原色日本真菌類図鑑I』掲載(No.361)にハナガサタケとして掲載されているものが、ちょうどこれと同じようなものだったかもしれない。 |
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台風11号が接近して荒れるとの予想だったので、明け方の秩父往復は断念した。しかし、台風の進行速度がかなり遅いらしく、今朝はひどく静かだ。スジチャダイゴケをとりだした。 冷蔵庫に入れておいたスジチャダイゴケはかなり乾燥が進んでいた。15日に長野県菅平で採取したものだ。コップ(殼皮)の底の方にペリジオール(小塊粒)がこびりついているものを半分に切ってみた(a)。ペリジオールも内部が分かるように一緒に切断した。ペリジオールの下側からはへその緒(funiculus)が出ていて殼皮の内層に繋がっている(b)。最初にスジをもったコップの部分を切断してみた。殼皮は、外皮・中皮・内皮の三層からなっている(c)。 ペリジオールのひとつをつまんで薄切りにした。外被膜と小粒膜、そして無数の胞子群がみえる(d)。胞子は厚膜の楕円形(e)。フロキシンで染めると内部がよく染まる。担子器を確認しようとフロキシンでそめて3%KOHを使って組織をバラしてみたが、徒労におわった(f)。まだ頭部が開いていない丸い幼菌の状態でないと担子器の確認はできないようだ。 |
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日光から持ち帰ったアケボノアワタケを検鏡した。肉は白色で、柄の基部は黄色みを帯びている。切断したり傷つけても変色はしない(a)。胞子はニガイグチ属によくある類紡錘型(b)。最初に管孔部を縦切りにした(c)。管孔部実質は散開気味に組織が平行に走っている(d)。 次に管孔部を横切りにした(e)。生のままで切ったので薄切りはできなかった。倍率を上げても側シスチジアらしきものは見えない(f)。縁シスチジアは発達している(g)。紡錘形やら棍棒状のものがある(h, i)。担子器の基部にはほとんどクランプは見られない(j, k)。 担子器が胞子を射出する瞬間を見たいと思って、管孔部を薄く横切りにした。マウント液は何も使わず、そのままスライドグラス上に置いてそのまま観察した(l)。水でマウントしてカバーグラスをかけてしまうと、自然な射出は行われない。 胞子のくちばし状突起(hilar appendix)基部付近にできるブラーの小滴(Buller's drop)が膨潤する様を確認したいと思った。胞子を4個つけた担子器を選んだ(l)。数十秒おきに覗いてみたが、10分くらい経過したとき、担子器が残りひとつになっていた。更に10分くらいのち、もはや担子器はひとつもついていなかった。射出されたとおぼしき胞子はやや離れた位置にあった。 顕微鏡から離れている時に胞子の射出が行われてしまったのだろう。今回も、胞子射出の瞬間は見られなかった。ブラーの小滴も確認できなかった。 |
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先の日光で出会ったきのこから数多くであったものを取り上げた。今年もオオカボチャタケがあちこちによく出ている(a)。大きなものでは株の径40cmを超える(b)。ミズナラの切り株(a)、倒木、老木(b)のいずれにもみられた。立ち枯れにマスタケが朝日に輝いていた(c)。ニカワウロコタケをつけたハルニレのすぐ脇、ふと見ると目の前のミズナラにヘビがいた。 タモギタケは新鮮なもの(d)よりも、バクサレた姿をさらしているものが多かった。今の時期ホシアンズタケはほとんどが小さな幼菌ばかりである。ミズナラの林ではテングタケ類、イグチ類が多数みられた。特にヒメベニテングタケ(e)、カバイロツルタケ、ツルタケ、ベニテングタケ、アカハテングタケが多かった。イグチの仲間で最も目立ったのはアケボノアワタケ(f)、(オオダイ)アシベニイグチ?、アワタケ、キッコウアワタケなどである。概してきのこはよく出ていた。 |
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今朝は久しぶりに顕微鏡の整備。プリズムに付着していた埃をとった。以下は昨日のこと。 日曜日、のんびりとビールを飲みながら、日光から持ち帰ったツノシメジを顕微鏡で覗いた。胞子紋は白色、胞子はアミロイドである(a)。ヒダをスライドグラスに押し当て付着した胞子をみた(b)。未熟な胞子がかなりある。当たり前ではあるが、アミロイド反応の判定やサイズ測定はやはり落下胞子を使わねばならない。 ヒダ切片を切りだした(c)。ヒダ実質は並行型(d)。子実層には担子器ばかりがみえる(e)。側シスチジアはみあたらない。念のためフロキシンを加え探してみた(c'、d')。ヒダの先端部には縁シスチジアが見えた。実質部の組織にはクランプがある。 新たにヒダを一枚切り出して、スライドグラスに横たえ、フロキシンを加えて縁をみた(f)。縁シスチジアが無数に見える。ヒダの縁だけを残して、新たに3%KOHを加えて軽く押し潰した。縁シスチジア(g)、担子器(h, i)等があちこちにバラバラになって見えた。 傘表皮に無数にみられるツノのようなササクレだった組織をみた(j)。この部分の組織にもクランプが多数みられる(k)。柄の表面のササクレも同様である。さらに、傘肉、柄の肉部分の組織にも一様にクランプがある(l)。いつの間にかビールの酔いが回って眠っていた。 |
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環境省 菌類絶滅危惧 要検討種のチェックを目的に日光を歩いてきた。今回の発生確認目標はツノシメジ、キヌオオフクロタケ、ヤチヒロヒダタケ、オドタケ、フサハリタケ、ザボンタケ、チョレイマイタケ、カバノアナタケ、ニカワウロコタケ、ホシアンズタケなどである。いずれも一度は日光でみているものだ。結論としては、昨日はツノシメジ(a〜c)、ニカワウロコタケ(d〜f)、ホシアンズタケ、カバノアナタケに出会うことができた。 標本として持ち帰ってきたのは、ツノシメジとニカワウロコタケだけだ。ツノシメジはやっと発生しはじめたばかりらしい。カンバの堅い樹皮を破ってでてくる。ニカワウロコタケが今の時期に発生しているとは思ってもいなかった。ニカワウロコタケはハルニレの老木や立ち枯れ、倒木などから発生する大型菌で、最盛期は9月後半である。 とりあえずこれらの両者とも国立科学博物館に標本として納めることになる。遠慮がちにごく一部だけを採取してきたので、自己検鏡用のサンプルはごくわずかしかない。 |
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