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2005年9月30日(金)
 
LED照明
 
 少し前のことになるが、「あやしいきのこ」のgajinさんがブログ「顕微鏡日記 2005/09/06(火)」で、ミラーの代わりに高輝度白色LEDを使った照明のことにふれている。通販を利用して組立キットを購入して作る安価な方法が紹介されている。一見されたい。
 たいていの学習顕微鏡は内蔵光源をもっていない。このため昔から、簡易照明装置が使われてきた。これはすぐに高熱となるので、プレパラートを放置しておくと、煮えてしまう。LEDなら試料が煮えることはないし、青色フィルターも不要で、とても明るい。
 gajinさんの入手された単眼顕微鏡は、わが家のOlympus製品と同型である。パーツを購入して工作するのが最も安上がりである。1,000円もかからない。自信がなければLEDヘッドライトを使うとよい。バンドを捨て本体だけにして、簡易照明の位置に置くだけである。
 LEDのヘッドライトはたいてい単四電池を3本使う。連続40〜100時間ほど使える。一般に明るすぎるので、紙なり不透明プラスチックでフィルタを作るとよい。簡易照明装置よりもはるかに鮮明な像が得られ、100V電源もいらない。

2005年9月29日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 コナラの倒木に、ミミナミハタケ属のきのこがついていた(a, b)。胞子紋は白色(c)。カバーグラスに採った胞子紋をそのまま見た(d)。とても小さく表面がざらついている。微細な疣のようだ。水でマウントする(e)。小さく類球形で、アミロイドである(f)。
 ヒダを一枚切り出して薄切りにした(g)。切り出しにしくじって横に倒れてしまったのかと思った。ヒダの実質部が長い繊維状組織からなり捻れたような姿をしている。フロキシンで染めて倍率を上げてみる(h)。実質部はひどく錯綜している(h)。
 ヒダの縁はマツオウジのように鋸歯状をしている。この部分をそのまま覗いてみた(i)。ヒダの長手方向に対して垂直に長い繊維状の組織が走っている。倍率を上げるとこれは明瞭に分かる。菌糸にはクランプがあり(k)、微細な気泡に満ちた細長い菌糸(gloeohypha)で溢れている(j)。骨格菌糸があり、二菌糸型(dimitic)である。
 側シスチジアは見あたらないが、縁シスチジアはある。担子器の長さの1.5〜2.0倍ほどあり、先端が尖っていたり、しわくちゃの台形をしている。担子器の基部にはクランプがある(l)。
 イタチナミハタケLentinellus ursinusに似ているが、ヒダの縁が鉅歯状がである。なお、イタチナミハタケ類似菌については、雑記2003.6.13同2004.5.26同9.26でも取り上げている。イタチナミハタケそのものについては、雑記2003.10.8にある。

2005年9月28日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日はただ生態写真と切断面だけしか載せなかったので、ベニハナイグチの検鏡データを載せておこう。胞子紋にカバーグラスを載せただけの状態(いわゆるドライマウント)(a)と水で封入(b)した場合とでは、全体のサイズやらQ比(縦長/横幅)がかなり違ってくる。
 管孔部実質の菌糸(c)を確認してから、孔口周辺をみた。縁には棒状のシスチジアがみえる(d)。柄に近い部分にはKOHで濃色に着色されるシスチジアもある。管孔部の側にもシスチジアがあり、これは縁シスチジア(e)よりやや小さめであった。傘表皮は細長い菌糸組織からなる。型通り担子器も基部まで確認した(f)。
 これらの顕微鏡写真はCOOLPIX990を使った。以前950を使っていた時はリモコンが使えず、シャッターを切るときに気を遣ったが、990ではその問題は解決した。ただ、リモコンを継いでスイッチオンにすると、しばしば起動までにかなり待たされる。これも不具合なのだろうか。
 今日は午前中にLAN環境を復活されて、数ヶ月前の状態に戻してしまったPCの各種設定を数日前と同じ状態に整備しなくてはならない。メールを普通に使える環境の確保が最優先だ。

2005年9月27日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 先週の土曜日(9/24)、台風で荒れる阿武隈山系で、五葉松の樹林帯を歩いた。足下にはイグチが無数に出ていた。特に目立ったのはゴヨウイグチとベニハナイグチだった。強い風雨の中で傘をさしながらベニハナイグチだけを多数撮影した(a〜f)。
 あまりにも雨が強いので一眼レフは出さずに、もっぱらCOOLPIX995を使った。autoによる合焦機構がかなり不調であり、いつになってもレンズの動きが止まらない。やむなくマニュアルフォーカスを使っての撮影となってしまった。
 COOLPIX995のマニュアルフォーカスは、あらかじめ想定距離を決めて、その距離にあわせて、カメラを前後にずらせて液晶画面でピント確認をする。ところがピントを判断する液晶画面のできが悪い。はたしてピントが合っているのやら否やがよくわからない。
 やむなく、カメラを数センチずつ前後にずらせて何枚も撮る。普通の雲台ではこの操作ができない。三脚ごと前後にずらすしかない。これがひどく面倒くさい。おまけに、無駄に多数撮影することになる。それらの中に一枚でもピントが合っていれば儲けものである。結果は70枚ほど撮影して、ピントが合っていたのは5〜6枚だった。

2005年9月26日(月)
 
アカダマスッポンタケ
 
 土日に福島県まで行って、菌類の生態・環境調査の手伝いをしてきた。今年も日本特産の子嚢菌センボンキツネノサカズキが発生し始めた。台風の影響による強い雨風に悩まされたが、幼菌からみごとな個体までみることができた。今年もまた出会えたことを喜んで現地を後にした。
 帰宅してみて驚いた。北海道石狩海岸で25日(日)にアカダマスッポンタケ Phallus impudicus が採取されたという。かつて、新潟で松田一郎氏が採取されて以来、久しく報告の無かった幻のきのこである。このきのこを探し初めて10年になるが、いまだに出会えないままである。
 この間に副産物として、コナガエノアカカゴタケなどに出会うことができたが、アカダマスッポンタケはいまだ大きな宿題のひとつであった。発見者とも直接電話で話し、採取に携わった腹菌類の専門家糟谷大河氏とも話をして間違いないことを確認した。  アカダマスッポンタケなどの写真は、糟谷大河氏のHP「きのこのねどこ」の「ささやき」に、明日掲載されよう。

2005年9月24日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 9月9日〜13日に青森県で出会ったきのこのうちから、いくつかを列挙してみた。たいていの砂浜で見られたのは、スナジクズタケ(a)、カヤネダケであった。いくつかの浜ではザラミノシメジ属(b)のきのこも見られた。浜近くの防風林ではたいていのところにヤグラタケ(c)が多数みられた。下北半島三沢市の淋代海岸ではウネミケシボウズタケ(d)が発生していた。
 山間地ではズキンタケ(e)、ヌメリツバタケモドキ、カメムシタケ、ホオベニタケ、ノボリリュウタケ、ハタケシメジ、チチタケ、コフクロタケなど多くのきのこに出会った。
 八甲田山中腹の合子沢公園では多くの種類を見たが、シロソウメンタケ科のキノコがとてもよく目立った(f〜j)。シロソウメンタケ(f)、ムラサキナギナタタケ(g)、ナギナタタケ(h, i)、シラウオタケなどである。八甲田山蔦温泉近くのブナ林ではみごとなエゾハリタケが高い位置についていた。COOLPIX995不調で、ピントのあった写真を撮ることはできなかった(j)。
 今日はこれから遠出をして外泊となるので、明日の雑記はお休みである。

2005年9月23日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 久しぶりに、所沢市の航空公園と三芳町の保護林を歩いてみた。航空公園には微小な落ち葉分解菌とハラタケ科の菌しかみあたらなかった。三芳町の保護林には、ムラサキヤマドリ(a)やハナガサイグチ(b)がいくつも見られた。よく見るとチチタケ(c)、シロフクロタケ(d)、ナラタケモドキ(e)、ベニタケ科、アセタケ類も何種類か見られた。
 大きなアカヤマドリ(f)が遠目にもよくわかるほど多数出ている。妙なことに、傘の縁から液化しているものや、管孔部が液化してしまって、まるでしなびた傘の様な状態になった個体がやけに目立った。その一方では、虫に食われて傘の大半を失ったものや、大きな塊状になって転がっている個体も多い。

2005年9月22日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
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(h)
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(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 先に東北から持ち帰った乾燥標本から、今朝はそのミクロの姿をあらためて撮影した
 9月10日に青森県下北半島の浜辺近くの松林内でニシキタケを採取した(a, b)。硫酸第二鉄、グアヤク、フェノールなどの試薬類と顕微鏡を持っていったので、宿で試薬による反応とミクロレベルの確認は済ませておいた。しかし、撮影は全くしていなかった。宿で乾燥してそれを持ち帰ってきた。今朝その乾燥品を取り出すと若干の面影がまだ残っていた。
 現地でスライドグラスとカバーグラスに胞子紋をとった。胞子紋はやや色がついていた。まずこのカバーグラスをメルツァーで染めて撮影した(c)。こういった乾燥標本からはきれいな姿のヒダ切片などを切り出すことはできない。ヒダを一枚取り出してメルツァーで染めた(d)。
 低倍率で見ても、ヒダの先端付近(e)と側(f)にシスチジアが見られる。油浸100倍にすると胞子をつけた担子器がみえた(g)。あらためて、乾燥標本からヒダを一枚切り出し、3%KOHで封入しフロキシンを加えた。担子器(h)、縁シスチジア(i)、側シスチジア(j)を撮影した。
 担子器の基部の様子を確認したり、シスチジアなどのサイズを測るには、組織をバラバラにしてしまった方がやりやすい。乾燥標本なので、5%KOHにヒダ先端付近を5分間ほど浸してから軽く押し潰した。バラバラになった担子器があちこちに見えた(k)。
 傘表皮の組織を3%KOHでマウントしてみたが、透明でわかりにくい。そこでフロキシンを加えて倍率を上げてみた(l)。細長い菌糸の壁がところどころゼラチン化している。

2005年9月21日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 9月9日に青森県十二湖のブナ帯でウラムラサキシメジを見た(a〜c)。千葉や都下の公園、スギ植林地ではしばしば見かけるが、ブナ林で見たのは初めてだった。生状態で1週間以上もたすのは難しいので、その夜宿で直ちに乾燥した。乾燥標本というものは、一般に元の面影はほとんどないことが多い。乾燥したウラムラサキシメジも例外ではない。
 胞子紋は現地で白い紙とカバーグラスに直接採った。ヒダは紫色でも胞子紋は白色である。まずは水も何も使わず覗いてみた(d)。十字形をしていることが明瞭に分かる。水でマウントするとちょっと分かりにくい(e)。非アミロイド(f)。フロキシンで染めると形や内部が明瞭になった(g)。この胞子の場合、ドライマウントがもっとも形を明確に把握できる。
 乾燥標本からきれいなヒダ切片を切り出すのは難しい。とりあえず切り出した。ヒダ実質は並列型で子実層には薄紫色の側シスチジアが見える(h, i)。担子器やシスチジアのサイズを計測するために、あらためてフロキシンで染め、KOHでマウントした後やや時間をおいてから軽く押し潰した(j, k)。縁シスチジアも側シスチジアも同じような形でサイズも似通っている。
 カラカラに乾いた傘表皮を切り出してみた(l)。傘表皮やヒダ切片は生状態の時に観察するのがもっとも明瞭に分かる。顕微鏡による観察は、できることならばなるべく生状態のときに行なうと良い状態のプレパラートを作成できる。

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