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日( )
2013年9月10日(火)
 
はたして胞子に隔壁はあるのか?
 
 キシャモジタケ(Microglossum rufum)と思われるきのこである。昨年は10月22日、今年は6月18日に最初の発生を確認した。今井三子は「北海道帝国大學農学部紀要第45巻4号」に M. rufum の胞子には5−7の隔壁があると書いている。しかし、いつ見ても隔壁と確信できる胞子には出会えず、今年もまた出会えなかった。
 昨年は晩秋から追いかけだしたので、時間切れのため隔壁の確認ができなかったのかと思っていた。そこで、今年は6月18日から8月4日まで追いかけてみた。
 現地で一週間ごとに採取したものと冷蔵庫で「追培養」したもので隔壁形成を追ってみた。現地で腐敗寸前になっているもの、冷蔵庫でかなりくたくたになって腐敗寸前になっているもの迄を観察してみた。このくたくたになった個体はともかく臭くて臭くて鼻をつまんで観察した次第である。なのに隔壁だといえる胞子にはついに出会えなかった。後半シーズンに再挑戦である。
 成熟しても隔壁が形成されない別種のきのこをみていたのか。あるいはキシャモジタケは隔壁を形成しないのではあるまいか。同じ仲間のマツバシャモジタケ(M. viride)の「追培養」の胞子観察も同じような経緯をたどった。やはりくたくたになったきのこまで追いかけたが隔壁形成を確認できなかった。今井三子はマツバシャモジタケも3−4の隔壁を作ると書いている。
 冬ごもりの時期にじっくりと文献にあたりたいと思っている。  (Y. A.)
 
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 いわき市の自宅周辺ではきのこの発生が止まったままだ。昨日の石森山でも、腐敗しきって異臭を放つクサハツ系のきのこ、カワリハツ様のきのこ、ヤグラタケアカイボカサタケといったようなものが少数見られただけだった。 (I. A.)

2013年9月9日(月)
 
奥秩父稜線はきのこが豊富
 
 先週の金曜日(9/6)は暗いうちにいわき市を出発して、奥秩父の金峰山と国師岳の間の稜線(標高2,200m前後)を歩いた。亜高山帯ではきのこの発生が悪いと聞いていたので、各種のきのこが豊富に出ていることに驚いた。
 登山道脇のダケカンバとモミ主体の斜面には、ヤマドリタケ(a, b)、ショウゲンジ(c, d)、ヤマイグチ(e, f)、キナメアシタケ(g, h)、ムクゲヒダハタケ ヒダハタケ(i, j)、マムシフウセンタケ(k, l)をはじめ、1時間半ほどの散策で出会ったきのこは30数種に及んだ。
 この日は、土曜日の富士山合同合宿に参加のため西湖根場民宿村の白かば荘に向かい、三重県や兵庫県からの仲間と宿で合流した。途中通過した甲府盆地はとても暑かったが、西湖周辺は涼しくて快適な陽気だった。
 
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 土曜日の富士山合宿には予定通り17名のメンバーが集まった。富士山の標高1700〜2000mあたりではきのこの発生は芳しくなかった。それでもショウゲンジはじめ、ヤマドリタケやクロカワも含めてかなりの数のきのこが採取された。夜は白かば荘で楽しい宴となった。
 日曜日(9/8)の朝食後に解散となり帰宅の途についた。車のエアコンが突然故障したため、雨の中を窓を開けて高速道路を走り続けた。騒音が激しくて車内では会話は全く成立しなかった。エアコンが壊れるほど酷使された哀れな車(スバル フォレスター)は走行24万Km。車検整備をしてあと2年乗るつもりだったが、廃車にすることを決断せざるを得なかった。

2013年9月6日(金)
 
乾燥標本で確認できた!
 
 7月1日に須賀川市の翠ヶ丘公園で採取したきのこである(a, b, c)。記録の整理をしていて縁シスチジアと担子器の観察不足に気付いた。標本番号が記載シートに書かれていなかったが、ちょっと気になるきのこだったので保存していないはずがないと思い探してみた。やはり乾燥標本にして大事にしまってあった。
 肉眼ではわかりにくいがルーペでみるとひだに縁取りがあることがわかる。縁シスチジアは褐色、薄壁(d〜g)。側シスチジアは無色、厚壁で鈎状突起がある(f, h)。かさと柄にシスチジアはなく(i, k)、子実層托実質は逆散開型である(f)。かさの菌糸と縁シスチジアの基部でクランプを確認できた(j)。胞子は楕円形(l)、担子器は4胞子性である。
 保育社『原色日本新菌類図鑑』と竹橋さんの「ウラベニガサ属のモノグラフ」(『北海道産ハラタケ類の分類学的研究』)、青木実さんの『日本きのこ図版』などを参照した結果クロフチシカタケとしてよいようである。
 乾燥標本のお陰で不十分な記録の補充ができ同定することができた。  (Y. A.)
 
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 7日(土)、8日(日)は三重県きのこグループ主催の富士山合同合宿に参加。混雑する首都圏を通過したくないので、今夜から宿泊することにした。これから出発(am3:30)。 (I. A.)

2013年9月5日(木)
 
突風と豪雨の中で
 
 昨日はいわき市でも那須の北部でも何度か凄まじい豪雨に見舞われた。そんな中昨日早朝、冠水した道路にタイヤを滑らせハンドルをとられながら走り、那須連山北部のミズナラ林まで出かけてきた(なにもこんな天候の日にわざわざでかけなくても・・・アホの極み!)。
 イグチに限ってメモを残しておこう。ハンノキイグチがいたる所に多数でていた(a〜e)。雨のためかどの子実体も、カサ表面のヌメリがとても強かった。老菌の管孔部に触れるとたちまち青変するが(e)、若い菌では青変性は弱く(c)、子実体を縦断しても青変しない(d)。
 ハナガサイグチは幼菌から老菌までみられたが(g, h)、雨に打たれて多くの子実体で柄が泥に汚れていた。アメリカウラベニイロガワリ、ウラグロニガイグチ(f)、アカヤマドリ(i, j)なども随所にみられたが、多くは柄やカサ肉などを虫に食われていた。カサ径8〜12mmほどの小さなアワタケ属のイグチも見られた(k, l)。雨が激しくなったのでam9:00前には引き上げることにした。
 
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 久しぶりにウナギを食べたいと思い、那須から雨の中150km程の行程をいわき市の老舗まで急いだ(昼の特別定食なら2,000円)。昼の開店時刻30分ほど前に到着したが、駐車場がすっからかんだ。近づいて看板下をみると「定休日」とあった。とたんに疲れがどっと襲ってきた。

2013年9月4日(水)
 
ベニタケ類が多数出てきた
 
 国内各地の広い範囲で雨が降っているというのに、いわき市ではこのところずっと雨が降っていない。9月だというのに日中の気温は少しも下がっていない。それにもかかわらず、近郊の神社林にはベニタケ属やイグチ類などが出はじめた。
 アシナガイグチ(a, b)、ハナガサイグチ(b)が再び発生し始めた。ただ、高温高湿度のためか、アシナガイグチの多くが成菌になる前にカビに侵されている。アイタケ(d)、ヤブレベニタケ(e)、クロハツはじめ、他にも数種類のベニタケ類が出てきた。
 広範囲にわたって大量に群生しているのは、見かけがカワリハツやチギレハツタケなどによく似たベニタケだ(f)。このベニタケは硫酸鉄を塗布して30分経過しても、鮭肉色にも青色にも変色しない。ケシロハツ、チチタケなどのチチタケ属も何種類も出てきた。
 
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2013年9月3日(火)
 
Cordyceps遊び:ハナヤスリタケ
 
 先日福島市で採取したハナヤスリタケを切って覗いて遊んだ。セピア色の子実体はまだ未熟だったが(a)、他の子実体は十分に熟していた。結実部である頭部(c)を切ると(d)、埋生型の子嚢果が現れた(e, f)。子嚢先端の形を明瞭に捉えられないものかと、メルツァー、フロキシン、コンゴーレッド、コットンブルーなどで染めてみた(g〜j)。子嚢頂部は組織が分厚くなっているので、これらの色素類では染まらないようだ。
 顕微鏡を覗いていると、次々に細長い一次胞子が飛び出したり、あるいは頭部が捨て去られて、細い紐状のものが視野いっぱいになる。そして、それらが次々に離れて二次胞子となっていく。何とも面白い。柄の基部がホストのツチダンゴに着いた部分を切ってみても、殼皮の内部に侵入しているようには見えない。ツチダンゴの内部は真っ黒で、胞子が充ち満ちている(l)。
 
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2013年9月2日(月)
 
きのこの姿まるでなし
 
 近郊100km圏にきのこの姿がほとんど見られない。というより全くないといってよいほどだ。昨日早朝に川内村まで行ってセンボンキツネノサカズキの成長具合を確認してきた(a〜f)。先日確認したときより若干成長しているようだが(雑記2013.8.23)、成菌にはまるでほど遠い。
 村内の複数ヵ所を探索してみたが、成長途上のセンボンキツネノサカズキ以外にはきのこの姿は全くみられなかった。帰路寄ってみた富岡町の高線量地帯の自然公園にもきのこは全くみられなかった。数日前から、この夏、最も暑い日々が続いているようだ。
 
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(f)
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 田圃では稲の穂がすっかり色づいてきた。稲刈りが近いことを感じさせられる。雨不足のため、自宅脇の小川がすっかり干上がっている。

2013年9月1日()
 
黒いストッキングを履いたきのこ
 
 ニワタケは肉眼だけで簡単に名前にたどりつける数少ない特徴的なきのこだ。カサ表皮はなめし革のようで、柄は真っ黒な毛に被われて、ヒダの基部とは明瞭な区切りがある。この仲間、つまりヒダハタケ属は、たいてい胞子は偽アミロイドで、コットンブルーで胞子壁が染まる。ヒダにシスチジアはなく、ヒダ実質が散開型というのも特徴の一つとなっている。中でもこのニワタケに関しては、毛むくじゃらで真っ黒な柄と明瞭な境界をなす明るい色のヒダが印象的だ。まるできのこが黒いストッキングをはいているかの様だ。
 
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(a, b) 子実体、(c) 子実体断面、(d) ヒダと柄、(e) 柄の毛、(f) 胞子:水封、(g) 胞子:メルツァー、(h) 胞子:コットンブルー、(i) ヒダの断面、(j) ヒダ実質:散開型、(k) カサ表皮、(l) 担子器

 昨夜も暑くて寝苦しい夜だった。いわき市や郡山市ではきのこがほとんど見られないが、仙台では公園にいろいろなきのこが出ているという。この違いは何だろうか。

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