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2014年8月29日(金) 今現在のセンボンと印象的だったきのこ
 一昨日の川内村でセンボンキツネノサカズキの現在の様子を確認した。前回確認したときと比較してやや大きくなっている(雑記2014.8.18)。最大の株のサイズは左右の幅が30mmほどになっていた(a)。それにしても雨に濡れたきのこの姿はあまりパッとしない(a〜f)。
 この日印象的だったきのこをいくつか取り上げた。イグチが花崗岩から直接出ていたり(g)、すっかり腐朽した立ち枯れの材から出ていた(h)。イロガワリキヒダタケに出会ったのは初めてだった(i, j)。ヤグラタケがオキナクサハツから出ていた(k)。クロハツ類の表皮が腐敗して剥離したのだろうと思ったのだが、よく見るとそうではなかった。すぐ脇にはまだいかにもオキナクサハツと分かるきのこの上に小さな白色の塊がいくつも載っていた。橙色の大型のホウキタケ類が暗い斜面の中でとても鮮やかだった(l)。
 
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 今日から31日まで富士山。恒例の富士山合宿だが、今年はベニタケ研究会と合同になった。川口時代と違っていわき市から富士山までは遠い。まだ真っ暗な内の出発となる。


2014年8月28日(木) どこもかしこもイグチだらけ
 昨日午前中、雨の中傘をさして川内村の定点観測地点を歩いた。大型イグチがあまりにも沢山でていることに驚いた。特に多かったのがヤマドリタケモドキ(o)とシワチャヤマイグチ(g, h)、アシベニイグチ系の大型イグチだった。アシベニイグチ系のイグチは少なくとも4〜5種類は見られたが、持ち帰り品には限りがあるので、今回はほとんど採取しなかった。
 次いでやたらに多かったのがベニイグチ(a〜c)、キアミアシイグチ(i, j)、ミドリニガイグチ(k, l)、ニガイグチモドキ(m, n)、ハナガサイグチ(p)、アシナガイグチ(f)だった。セイタカイグチ(d, e)は比較的少なかった。ヒメヌメリイグチ(q)やオニイグチ(r)もいくつか出ていた。
 イグチ類以外ではテングタケ属のきのことクヌギタケ属のきのこがやたらに目立った。採取したイグチ類で標本を持ち帰るためのアイスボックスは二つともいっぱいになってしまった。
 
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 帰路、家のすぐ近くの石森山経由で自宅に戻った。途中数ヶ所で観察したが、ヤマドリタケモドキ以外のきのこはほとんど見られなかった。概してきのこの発生は悪い。
 夕方になって雨が止んだので3時間ほど庭の草刈り。多数の小石をはねたせいで、火花を出してチップソーのチップがほとんどすっ飛んだ。ナイロンカッターの方が適切だった。


2014年8月27日(水) テングノメシガイの仲間ふたつ
 テングノメシガイの仲間は現地で同定することはほとんど不可能だ。顕微鏡で剛毛の有無、頭部の粘性、胞子の隔壁の数、側糸の形状などを確認する必要があるからだ。
 剛毛の有無については現地でルーペを使って知ることができる。粘性の有無は触ってみればおおよそ分かる。胞子や側糸については顕微鏡を見なければわからない。この仲間は未成熟でも多量の胞子紋を落とす。未成熟の胞子には液胞はあっても隔壁がほとんどない。

 川内村で採取した真っ黒な棍棒(a)をカバーグラスの上に寝かせておくと、一晩でカバーグラスが胞子で黒々となった。長さは1〜2cmだが十分成熟しているようだ。胞子には七つの隔壁がある(b, c)。子実層をみると、長い剛毛があり、側糸は棒状で先端がやや曲がり太くなっている。子嚢先端はアミロイドだ。典型的なナナフシテングノメシガイTrichoglossum walteriだろう。

 一方亜高山帯のミズゴケの中から出る真っ黒な棍棒は長さが10〜16cmほどあった(g)。これも数時間でたっぷり胞子紋が落ちた。胞子はナナフシテングノメシガイのそれよりややズングリムックリしている(h, i)。さらにこちらには剛毛がない(j)。側糸は上部が数珠玉のようになっている。子嚢先端のアミロイドもやや弱い。Geoglossum sphagnophilumだろう。これはG. glabrumのシノニムとされ、川村清一がタマテングノメシガイという和名を与えている。
 

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 昨日は終日雨だった。このところの陽気はまるで秋霖の前倒しのようだ。


2014年8月26日(火) アシナガイグチとウツロイイグチが大発生
 海浜の寺社林の遊歩道を歩いてみた。ここ3週間ほどきのこはあまりみられなかったが、昨日はいたるところでアシナガイグチとウツロイイグチにであった。今年二度目の大発生だ。シロオニタケも再び大発生の兆候がみられた。そこで、いろいろなポーズをとるアシナガイグチを掲げてみた(a〜f)。ウツロイイグチは成菌(g)ばかりではなく幼菌(h)もあちこちで見られた。
 この寺社林でコゲチャイロガワリに出会ったのは初めてだった(i〜k)。他にもハナガサイグチ(l)やアシベニイグチ系のイグチ数種、ミドリニガイグチ、アカヤマドリ、ヤマドリタケモドキなども見られた。イグチ以外ではツルタケ、カバイロツルタケ、テングツルタケ、ハラタケ、キツネノカラカサの仲間、ナラタケモドキなどが見られた。
 
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 昨夜から雨が降り出し、今朝はよく降っている。庭の脇の小川の水位が心配だ。昨日の内に庭の半分ほどを草刈りしておいたよかった。何といっても猛暑と湿気のためか草の伸びがとても早い。草の間に出ていたきのこを草刈機の刃で多数ギロチンした。


2014年8月25日(月) 久しぶりに、生標本からミズゴケタケを検鏡
 採取したきのこは基本的にすべて検鏡するが、検鏡画像を撮影するのはそのうちのごく一部に過ぎない。沢山のきのこを持ち帰った時はとにかく忙しい。まずはカサの一部を切り取ってカバーグラスに載せ胞子紋をとる処置をする。残りはたいてい直ちに乾燥機にかけてしまう。
 その際に断片の一部から胞子と縁シスチジアだけを押しつぶし法で検鏡して最少限の確認をする。一枚のスライドグラスを消毒用アルコールで拭いては、流れ作業的に次々に別のきのこを検鏡する。だから「今日の雑記」を書く時点ではまだ正規の記録はできていない。
 手元に生きのこがないときや気が向いた時には、生の状態でヒダ断面やカサ表皮まで見ることになる。脆くて小さな生標本からの切り出しは難しい。薄片を切り出して検鏡・撮影し記録を記すにはかなりの時間が必要だ。だから、そこまでやるのは週に一、二度くらいだろうか。

 押しつぶし法でミズゴケタケを見ると、縁シスチジアが何とも楽しい姿をしている。そこで、久しぶりに生状態から薄片を切り出して撮影してみた(雑記2012.8.9同2009.7.9)。
 発芽孔の有無は一般に濃硫酸で封入するとわかることが多い。しかし、ミズゴケタケにあってはそれでもよくわからない(d)。ヒダの一部をスライドグラスに寝かせて、KOHで封入して軽く押さえて縁を見ると、縁シスチジアの有無と形は比較的楽に分かる(e, f)。
 ヒダの断面を上手に切り出せたとしても、水などで封入するときに気泡が入ることは多い(g)。しかし、水泡が入ろうとシスチジアの形などは分かるものだ(h)。わざわざあらためてヒダ断面を切り出すには及ばない(i, j)。断面切り出して最も難しいのはカサ表皮かもしれない。ミズゴケタケの場合は、菌糸が平行に走りクランプも豊富に見られる(l)。
 

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 それにしてもミズゴケタケのヒダはとても脆くて、ちょっと触れただけで簡単につぶれてしまう。ピスに挟むともうそれだけでペシャンコだ。実体鏡の下で切るにしても、未使用のカミソリを静かに落として切るしかない。ミズゴケ生のきのこは取り扱いがやっかいだ。


2014年8月24日() 標高1,600mの湿原にて
 昨日吾妻連峰の標高1,600m、湿原に続く遊歩道を歩いた。小径の法面にミズゴケと苔類が広がり、そのすぐ脇に新鮮なセンニンタケが出ていた(a〜c)。湿原に至るとミズゴケのなかからテングノメシガイの仲間や(d〜f)、ミズゴケノハナ、ミズゴケタケ、ミズゴケタケモドキなどが多数出ていた。ツゲの樹林にクロカワのように見えるきのこがあった(g)。掘り出してみると白色のヒダ(h)。若いヤギタケだ。ヤマイグチの仲間(i, j)やテングツルタケ(k, l)をはじめ、イグチ類が3〜4種、ツルタケやカバイロツルタケなどのテングタケの仲間が5〜6種、オキナタケの仲間2〜3種がみられた。でも例年の同時期に比較するときのこの姿はとても少なかった。
 
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 二本松市の岳温泉近くで以前から気になっていたうどん屋に入った。後で分かったことだが、岳温泉に住む親戚の獣医から話に聞いていた店だった。美味かった。山の上は気温18〜20度ほどで涼しかったが、いわき市に戻ると28度ほどあって日向は暑かった。


2014年8月23日() ちょっと変わった環境に出たPluteus
 川内村の川畔で胸高の位置から上部がやや立ち枯れ気味の樹木の根元付近のコケのなかからPluteus(ウラベニガサ属)がでていた(a〜c)。奥日光でもしばしば倒木近くの地表からでる姿をみている。Pluteusというとボロボロに腐朽した材上に見ることが多い。しかしここも奥日光同様そういった環境てはない。肉眼的にはPluteusそのものだが、本当だろうかと思い持ち帰った。
 胞子は心持ちウラベニガサ(P. atricapillus)より小さい。ヒダの断面を切り出してみると(e)、厚壁で先端が分岐した独特の姿の側シスチジアがあり、ヒダ実質はやや逆散開型をしている(f)。ヒダの先端には薄膜で棍棒状の縁シスチジアが見られる(g)。
 ヒダの一部をフロキシンで染めて縁をみた(h)。縁シスチジア(i)、側シスチジア(j)をバラバラにしてみると、その全体像がはっきりする。カサ表皮も縦断してみると(k)、色素を帯びた菌糸が並列気味に匍匐している(l)。どうやらウラベニガサ節のきのこに間違いない。
 
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 きのこ標本を入れるチャック付きポリ袋4種類800枚と採集用紙袋1400枚を、東京浅草橋のシモジマに注文した。いわき市に転居して二度目の注文になる(一度目は2012年10月)。


2014年8月22日(金) 那須連峰北部:イグチの仲間が大発生
 郡山市や福島市など福島県の中央部は通称「中通り」と呼ばれているが、この地域はいわき市など太平洋側の「浜通り」と比べると、夏の暑さは筆舌に尽くしがたい。
 このところ浜通りではきのこの姿がほとんどないが、中通りではきのこがよく出ていると聞く。同じ中通りでも高原地帯に行けば少しは涼しいだろうと思った。そこで那須連峰の北部に当たる西郷村と下郷町のブナ混じりのミズナラ林を歩いてみた(標高800〜1200m)。
 どこに行ってもイグチ類がやたらに目立った。特にヤマドリタケモドキ(a, b)、アカヤマドリ(c, d)、ミドリニガイグチ(e, f)は足の踏み場に困るほど出ていた。それも若くて大きな子実体が多い。きっと次の土日にはキノコ狩りの人たちの格好の獲物になることだろう。
 ハナガサイグチ(g)、シワチャヤマイグチ(h)、アシベニイグチ節のイグチ(i, j)も多数みられた。しかし、名前のよくわからない大型のイグチ類が多数見られた(k, l), (m, n), (o, p), (q, r)。
 
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 樹林の中を歩いているときは涼しかったが、日向にでると暑かった。さらに東北道の矢吹インター周辺では、日陰でじっとしていても熱中症になるのではないかと思った。


2014年8月21日(木) 勿来周辺はほとんどきのこなし
 猛暑の中、いわき市最南部 勿来周辺の緑地を歩いてみた。どこに行ってもきのこの姿はほとんどない。かろうじて出会ったのはシロウロコツルタケ(a)、空色の小さなイッポンシメジ属(b)、シビレタケ属の大きな株(c)、ヒナアンズタケだけだった。
 あまりに暑いことときのこが少ないこともあって、四時川の畔で虫草探しを試みた。先月末に虫草祭で観察会が行われた近くだ(雑記2014.7.27)。川沿いはすこし涼しかったが、肝心の虫草はカメムシタケとハエヤドリタケ(d〜f)しか見つけることができなかった。さんざん探したが、ヤンマタケには今回もお目にかかれなかった。
 
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 リンクページに兵庫県の小学六年生 和田匠平くんのサイト「(和田匠平の) 楽しい! きのこワールド!!」を追加した。菌類や生き物の基礎知識も豊富で将来が楽しみだ。


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