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昨日さいたま市の秋が瀬公園を歩いてみた。きのこはほとんどなく、わずかにアワタケ属、キツネノカラカサ属、ホウライタケ属の3種類を見たのみである。このうち、アワタケ属Xerocomusとキツネノカラカサ属Lepiotaだけを持ち帰った。 今朝はLepiota(a, b)を調べてみた。柄にはツバの痕跡がわずかに残っていた。胞子紋は白色。胞子を水で封入するとかなり見にくい(c)。フロキシンを加えると姿が明瞭になった(d)、いわゆるクサビ形で、偽アミロイドである(e)。はじめにヒダを切り出した(f)。 子実層托実質は並列型で、縁シスチジアがある(h, i)。傘中央部は柵状被だが(j)、辺縁部やササクレだった部分では様子が異なる(k)。担子器の基部にはクランプを持つもわずかにあったが、多くはクランプをもたない(l)。クリイロカラカサタケとしてよさそうだ。 あまりの熱さで思考能力も麻痺してしまっている。これから標高の高い所に涼をとりに行ってこよう。さて、中央道に向かうか東北道に向かうか、決断は気分だ。 |
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多くのきのこは乾燥標本から切り出した方が、生標本からの切り出しよりも遥かに楽である。きれいなプレパラートを作りたければなおさらである。見たい部分をおおざっぱに切り出し、それを指先でつまんで、表面を削ぐようにカミソリをあてればよい。ルーペなり実体鏡を使えばさらに楽である(雑記2006.7.26)。乾燥標本はしっかりしているので、指先ではなくピンセットなどでつまむこともできる。また、カミソリの切れ味もそう簡単には落ちない。 しかし、「今日の雑記」の写真は大部分が生標本からのものである。目的が、"きれいなプレパラート" を作ることではなく、観察・同定のために "確認できればよい" からだ。とはいうものの、たまにはきれいなプレパラートを作成して、きれいに撮影したいと思うが、現実はなかなか思うようにはいかない。きれいなプレパラートは、年に数回ほどしか作れない。 一昨日投稿したアバタケシボウズタケ(仮)とタネミケシボウズタケ(仮)についての原稿は、とりあえず受け付けられた。素案はずっと前に書き上がっていたのだが、投稿規定に則った形にするのが億劫でしばらく放置状態だった(雑記2003.12.13)。 |
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カメムシタケといえば、どこででも見られ、少しも珍しいものではない。今週初めの鬼怒川遊歩道の道脇には、ハナサナギタケとともにあちこちで見られた(a)。いくつか掘り出してみた(b)。ふだんよく見る楕円体ではなく、細長いひも状の頭部をもつものがあった(c, d)。これはやや赤味が強く、頭部は二股に分かれていた。 カメムシタケを覗くのは久しぶりだ(雑記2002.9.19[その2])。最初に縦に(e)、次に横に(f)切ってルーペで見た。次に縦断面(g)、横断面(h)を顕微鏡で覗いてみた。子嚢果は斜め位置で、子座に埋もれている。孔口は細かい点状に分布している。念のために子嚢の頂部を確認した。(i)は3枚の画像の寄せ集めである。バラバラになった二次胞子は意外と少なかった。 ひも状になった頭部の表面は分生子らしきものに覆われている(d)。清水大典「冬虫夏草図鑑」によれば、カメムシタケの不稔型と記されている。この頭部を切ると内部には白い髄がみられる(j)。これも念のために横断面を顕微鏡で覗いてみた(k, l)。 これまでカメムシタケは多数みているが、不稔型に出会ったのは初めてだった。バラバラになった採集品は、団地の樹下に撒いて処分した。 |
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切片作りで実体鏡を使うことはなかった。小さなものを扱う場合、ルーペを手に持って切るか、ピスを用いることが多い。これまでは、このやり方でほとんど用が足りてきた。 先日鬼怒川遊歩道からミズゴケの仲間を持ち帰った。ミズゴケ類は同定の難しい仲間らしい。とにかく、ひたすら顕微鏡観察である。小さな葉の細胞やら、茎の表皮細胞を細かく観察しないと節レベルにすら到達できない。甘い見通しはたちまちうち砕かれた。 長さ1mmほどのミズゴケの葉を一枚(a)、ピンセットを使ってピスに挟んだ。目的は横断面での細胞の構造確認である。葉は一層の細胞からなり、厚みは15〜25μm。これより薄く切らねばならない(b)。切り出し幅が葉の厚みを越えていると、切片が倒れてしまい横断面の確認はできない。最初にふだんの要領で切り出すと、なんと50μmもの厚みがあった(c, d)。きのこの子実層托実質やシスチジアの観察であれば、この厚さに切れば充分である。 単体で断面を出すのは難しいので、複数の葉をピスに挟んで切った。これだと30μmほどの厚みがあっても何とか横断面を確認できる(e)。さらに薄切りにしたい。そこで、一枚だけをピスに挟んでヘッドルーペを被って切り出した(f)。15〜20μm厚、これならば、横断面での透明細胞と緑色細胞との配置などがよく分かる。ウロコミズゴケSphagnum squarrosumのようだ。 久しぶりに非常にシビアな切片切り出し作業となった。コケでの練習は、そのままきのこにも通用する。視力の低下を痛切に感じるこの頃、実体鏡下での切り出しを練習しなくてはなるまい。実体鏡下での切り出しは難しいが、慣れれば10μm以下に切るのもそう難しことではないという(保育社「原色日本蘚苔類図鑑」p.380)。 |
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日曜日に鬼怒川遊歩道の腐朽木から束生して出ていたきのこを調べてみた(a, b)。写真で不明な部分を補足すると、傘径12-20mm、傘表皮に粘性なし。胞子紋は暗褐色、柄の基部に白色菌糸を持つ群あり。傘表皮やヒダに3%KOHをたらすと、暗赤色になる(c)。 胞子には発芽孔がみられる(d)。ヒダを切り出した(e)。ヒダ実質は並列型(f)。ヒダの先端には縁シスチジアがある(g, h)。柄の上部にも柄シスチジアがある(i, j)。縁シスチジアと似ているがやや大きい。傘表皮は匍匐状の組織からなり、ところどころに傘シスチジアがある(k)。 担子器は4胞子をつけ、基部にはクランプがないものが多いが、クランプをもつものもある(l)。傘、柄、ヒダのほとんどの組織には至るところにクランプが見られる。 保育社「原色日本新菌類図鑑」の検索表(p.20-23)をたどると、フウセンタケ科に落ちる。ついで、フウセンタケ科の検索表(p.212-213)をたどると、10'まではたどれるが、その先該当する属が見あたらない。この時点で保育社の図鑑にあたることを放棄した。 次にスイスの菌類図鑑Vol.5の検索表にあたった(p.22)。するとSimocybe属に落ちる。そこでSimocybeの検索表(p.39)にあたると、No.394のS. centunculusが引っかかってきた。そこでNo.394の記載を読むと、かなりよく似ている。ただ、図の胞子には発芽孔はない。 あきらめてSinger "The Agaricales in Modern Taxonomy, 4th ed." のSimocybeの項に目を通した(p685-687)。それによるとSimocybe属の基準種はS. centunculusであり、属の定義には「発芽孔はない(しかし、ときおりslight discontinuityがある)」となっている。 フウセンタケ科の文献は手元にはほとんどない。これ以上の深入りはしないことにした。このきのこは、どこにでもよく見られるのだが、今回も不明のままである。 |
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今日8月15日は、日本菌学会関東支部のワークショップと観察会の締切日である。参加しようと思って忘れている向きもあろうかと思うので、念のために採集日の今日最終の案内を載せておこう。メールかファックスで申し込めば今日中まで大丈夫である。
先日栃木県の鬼怒川遊歩道で見たホウキタケ型のきのこの胞子だけをチェックした。いずれもコットンブルーで染めてある。(a)のきのこは一見するとフサヒメホウキタケによく似ている。しかし、胞子がまるで違う。フサヒメホウキタケの胞子は丸くて小さくアミロイドである。 |
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昨日栃木県の鬼怒川温泉から川治温泉にまたがる鬼怒川遊歩道を歩いてきた。お盆で渋滞する東北自動車道だったが、渋滞の合間を縫ってタイミングよく走ることができた。目的の那須高原南部まで行くことはあきらめたが、鬼怒川遊歩道を楽しむことができた。 全般的に乾燥がひどく、きのこの姿はとても薄かった。ホウキタケ型のきのこをいくつか見ることができた(a〜c)。ウスタケは何ヶ所かに出ていた(d)。イグチの仲間は意外と少なく、ヤマイグチ(e)、キッコウアワタケ、ハナガサイグチくらいしか見られなかった。多くの材がカラカラに乾燥しており、材上に出ていたきのこはごく僅かであった(f)。 |
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ちょうど一週間ほど前の8月6日に採取したオオミノクロアワタケは、その日の夜に胞子紋をとった後、とりあえず冷蔵庫の野菜ケースにほうりこんだ。採取直後に同定のため簡単な検鏡はしたものの、記録やミクロの撮影などはまったくしていなかった。 冷蔵庫から強い腐敗臭がするので開けてみると、オオミノクロアワタケを入れた紙袋がビショビショになっていた。きのこはドロドロに溶けて、袋の中ではたくさんのウジ虫が蠢いていた。この間の猛暑と高湿度のために、冷蔵庫のなかで急激に腐敗が進んだのだろう。 胞子は先に採取した胞子紋から楽に撮影できた(a)。しかし、きのこを持ち上げるとすぐに崩れてしまう。直ちに捨ててしまうつもりだったが、念のために撮影を試みた。管孔を2本なんとかつまみ出し、縦に半分にして切ったが、管孔部実質の観察はむりだった(b)。 シスチジア(c)、担子器(d)等はどのみちKOHで潰してしまうから、ドロドロになった個体からでも特に問題はない。ただ、ほとんどの担子器がバラバラに散らばり、基部の組織から切り離されていた。カサ上表皮を水(e)とKOH(f)で何とかみられたのが不思議なくらいである。 撮影後オオミノクロアワタケは台所ゴミと一緒に処分した。夏の暑い時期のきのこは、持ち帰ったら直ちに乾燥するか、早めに観察・記録をしてしまうことが必要だ。 |
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さる8月5日サーバー機に直接アクセスできなくなったことを契機に、自宅サーバーを全面廃止して今日で一週間になる。この機会にPC関連の仕事も廃業して、OS・言語・システム・管理関係の書籍をほとんど処分した。やや淋しいが、25年分の垢を落としたことになる。[少しばかり残念なこと] |
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先の雑記(2006.8.4)でヒメカバイロタケ?(a)としたきのこを調べてみた。「?」を付したのは、(1) KOHをかけるとヒダ実質はもちろん、カサまでが暗赤変する(b, c)、(2) ヒダに顕著な脈絡膜がある(b)、(3) 明瞭なシスチジアをもたない、からである。 マツの切り口から束生してでていたので、遠目にはヒメカバイロタケに見えた。しかし、ヒダを見るとどの個体にも連絡脈があり、ヒダ切片をKOHで封入すると暗赤変した。地上生でないからキチャホウライタケではない。シスチジアを持たず、柄は平滑だから池田仮称のカブダチキチャホウライタケ(「北陸のきのこ図鑑」No.261)でもない。 胞子はアミロイドのように見える(d)。ヒダ切片を探しても、子実層にシスチジアは見られない(e, f)。カサ上表皮は菌糸が平行に走っていて、色素の粒点がみられる(g)。柄の表面は平滑で、他の組織と同じくクランプが多数みられる(h, i)。担子器の基部にはクランプを持たないものが多いが、一部にクランプを持ったものもある。 |
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