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ハラタケ属は苦手である。見沼地区にある公園のウッドチップでいつもみているにも関わらず、種名がわからないものがいくつもある。名無しなのか新種なのか、あるいは、もっと素朴に同定能力がないのか、それもわからない。だからなるべく持ち帰らないようにしている。 先週間違ってザラエノハラタケを持ち帰ってしまった(a)。やむなく検鏡したが、その結果をメモしておくことにした。胞子をいわゆるドライマウント(b)、水(c)、メルツァー(d)で封入してみた。偽アミロイドである。発芽孔の有無はちょっと分かりにくい。 ハラタケ属が苦手な理由のひとつが、生標本からの切片作成が思いの外難しいことにもある。たまにうまく切り出せても、カバーグラスを被せた途端に潰れてしまう。そこで、封入する水をやや多めにしてカバーグラスを浮かせるようにすると潰れにくい(e)。 子実層托は並列型なのだが、切り出し方によっては分かりにくい(f, g)。子実層を眺めるのも意外と難しい(h)。しかし、カサ上表皮の観察は簡単である。カサの表皮は楽に剥け、案外しっかりしているので切り出しは楽である(i)。菌糸は平行に走っていて、ところどころで立ち上がった部分がささくれ立ってみえる。 |
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先日埼玉県三芳町で採取したサケバタケ(a)のミクロの姿を記しておくことにした。ヒダはひどく褶曲していて癒着したり分岐している(b)。これが観察を困難にしている。カバーグラスに落とした胞子紋をそのまま見た(c)。水で封入したが輪郭が何ともはっきりしない(d)。アミロイド反応はマイナス(e)、フロキシンで染めても輪郭部はあまり明瞭にはならない(f)。 ヒダは幅が狭くて脆い上に、褶曲が甚だしい。切片切り出しは今回も失敗である(g, h)。過去に何度も試みているが、ヒダ実質部の切り出しは一度たりとも成功したことはない。生標本からの切り出しはひどく困難でも、乾燥標本からだと楽に切り出せて実質部の観察ができる種がある。ヒダハタケの場合はどうであろうか。これまで一度も試みたことはない。 図鑑にはヒダ実質は散開型とある。固定・脱水・包埋、ミクロトームによる切り出しといった面倒な処置をせずとも確認できるはずである。今回の試行でもダメだったが、是非とも自分の目でヒダ実質部の構造を確認したいと思う。 |
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このところ関東地方ではきのこの影が薄い。一方、持ち帰って調べたきのこについてのメモは放置されたままである。後日の覚えとしてこれらも時折載せることにした。 米沢市の山の中で色鮮やかなムラサキホウキタケにであった(a)。周囲はいたるところにサナギタケが大発生していた(b, c)。多いところでは、一平方メートルの中に50本以上でていた。ムラサキホウキタケと混在して発生しているものもある(d)。ムラサキホウキタケは24時間経過すると、かなり退色して茶褐色味が増した(e)。しかし、胞子紋は全く落ちなかった。 ムラサキホウキタケを顕微鏡で覗いてみた。幼菌だったのか、子実層をみても胞子はほとんど見られず、担子器の数も少ない(f)。髄の部分の組織にもクランプはない(g)。数少ない担子器を確認するためにフロキシンで染めてみた(h, i)。ところどころにわずかな数の胞子が見られた(j)。形はホウキタケ型でも、ムラサキナギナタタケ等と同じシロソウメンタケ属のきのこだ。 |
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昨日仲間5人で山梨県白州町の雑木林などを歩いてきた。このところ、関東地方では全般的にきのこの姿が非常にすくない。しかし、昨日歩いた地域では、特定の範囲ではあったが、イグチ類、テングタケ類、チチタケ類を種類、量ともに見ることができた。 広く何ヶ所でもみられたのは、アカヤマドリ(a)、キアミアシイグチ(b)、ニガイグチモドキ(c, d)、オオミノクロアワタケ(e, f)、タマゴタケ(i)、コテングタケ(j)だった。中でも最も多数であったのはニガイグチモドキであり、幼菌から成菌、老菌にいたるまで一通りみることができた。 一方、一見ニセアシベニイグチのようだが、全く青変性がなく、柄の肉が黄色で、変色性のないイグチもあった(g, h)。また、ササクレシロオニタケらしき菌(k)、チチタケ、ヒロハチチタケなども広範囲に見られた。ニワタケが面白いすがたをみせてくれた(l)。 |
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ジュズタンシキン属のきのこを検鏡する機会があった。材上生ということだけで、色や外見に関わる生状態のデータがなく、手元にシロキクラゲ科の文献がないこともあり、種名の同定までは至らなかった。興味深い形をした担子器を持つので、メモしておくことにした。 ジュズタンシキンという科名は、保育社「原色新日本菌類図鑑II」p.229-230に非常に簡単に記されている。それによれば、シロキクラゲ目Tremellaの一つの科で「担子器は数個が連鎖して形成される」とある。科の学名Sirobasidiaceaeとか属の学名Sirobasidiumも記されていない。 Sirobasidium属の設立が1892年、Sirobasidiaceae科の設立が1895年というから、けっこう歴史のある属だ。さらに、1962年には小林義雄氏によってSirobasidium japonicumという新種が記載されている(日菌報 1962, Vol. IV, No.2, 29-34)。身近に比較的よく見られるきのこなのだけれど、なぜかほとんどのきのこの図鑑には掲載されていない。 先週検鏡した乾燥標本は、神奈川県葉山町と宮崎県延岡市で最近採取された2個体だった。担子器の形態などから、両者は別種のように見えるが、ここでは、敢えて区別せずにジュズタンシキン属の担子器と胞子を順不同で並べてみた(a〜f)。 いろいろな倍率で撮影し、フロキシン(ピンク)とコンゴーレッド(橙色)で染めた。なお、水なりKOHで封入しただけで染色しない状態では、透明なために、詳細はほとんど分からない。 |
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7月31日に福島県いわき市で出会ったテングノメシガイの仲間をチェックしてみた(a, b)。大きさや頭部の形はいろいろだが(c)、よく見ると表面は毛だらけである(d)。ルーペで見ると一面に剛毛で覆われていることがよく分かる(e)。 子実層を切り出してみると、その様子はさらに明瞭である(f)。全体に未熟な若い個体ばかりだったらしく、胞子紋もほとんど白色で子嚢胞子は十分成熟していない(g)。胞子のサイズにはとても大きなバラツキがあるが、いずれも隔膜が15あることがわかる(h, i)。 子嚢にはまだ褐色なっていない未熟胞子ばかりがみられた(j)。側糸には隔壁があり、先端がわずかに膨らんでいる(k)。剛毛は子嚢などに比べて非常に大きくほとんど黒色である(l)。どうやら、これはテングノメシガイ Trichoglossum hirsutum としてよさそうだ。 |
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埼玉県三芳町の保護林を覗いてみた。きのこの姿は異常に少ない。そんな中でやたらにめだったのは、フクロツルタケとミドリニガイグチだった。他にも数種類のイグチ類が見られたが、いずれもひどくカビに侵されていたり、虫に食い荒らされていた。 今朝は、気紛れにミドリニガイグチ(a〜c)の胞子(d)、管孔部実質(e)、カサ上表皮(f)を撮影した。ミドリニガイグチは何度も検鏡しているので、今さら撮影という気分にはなかなかなれず、義理で撮影したような形となった。担子器はいちおう撮影したが、シスチジア、孔口部の横断面、管孔部の縦断面などは撮影しなかった。 他に見たのは、ザラエノハラタケ(g, h)、サケバタケ(i, j)、ヒメカバイロタケ?(k, l)などである。少し前には何種類かのベニタケ属、チチタケ属が見られたのだが、昨日はほとんど見なかった。 |
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去る7月17日に埼玉県長瀞町で、ひどい雨の中でキヌガサタケを観察した(雑記2006.7.18)。その折りに、タマゴをふたつ持ち帰ってきた(a)。そのうち一つは切断して、タッパウエアに収めて冷蔵庫に保管した。キヌガサタケのタマゴを持ち帰ったことはすっかり忘れていた。 一昨日(8月1日)の夜になってようやく思い出して、これを取りだしてふたを開けてみた(b)。外皮膜が破れゼラチン質が露出していた方(a の左側)から、頭部が覗いていた(c)。どうやら冷蔵庫の中で成長していたらしい。このあとどうなるのかを確かめることにした。タマゴを取り出してビショビショに湿らしたティッシュペーパーにくるんで立てておいた(d)。 昨日(8月2日)朝、柄が伸張していたが、ゼラチン質に邪魔されアーチ状になっていた(e)。カッターでゼラチン質に切れ目をいれしばらく放置した。20分ほど経ると、頭部がやや立ち上がり、マントが拡がりはじめていた(f)。さらに数十分後、頭部の縁あたりのマントに注目してみた(g)。マントは十分に開くことなく、全体の姿に大きな変化はなかった。 一方、7月17日に切断したタマゴは、全体に大きくなっていたが、柄の伸張などはなかった(h)。外被膜が今にもはち切れそうになので、これを外してゼラチン質に切れ目を入れた。するとゼラチン質が反転して頭部が曝け出されたので、濡れティッシュの上に立てておいた(i)。これは半日経過した後もほとんど変化はみられなかった(j)。 キヌガサタケは2週間冷蔵保存したタマゴからでも開花(?)する。開花調整ができるわけである。そういえば、以前ほぼ1ヶ月間冷蔵庫に保管しておいたコナガエノアカカゴタケが、濡れティッシュの上で柄を伸ばし、赤色の篭を開いたことがあった。 |
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日本菌学会関東支部の [第19回 菌学ワークショップ・第19回 菌類観察会] の申込締切が近づいた。関東支部会員にはE-mailか文書が届いていることだろう。定員いっぱいの場合は会員優先だが、非会員でも参加できる。多量の迷惑メールに紛れて見落としている会員もあろう。一方、非会員はその詳細を知ることができないので、ここで紹介しておくことにした。
ワークショップ: 2006年9月7日(木)〜9日(土) |
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7/28〜7/30まで仙台合同合宿に参加した。そのあと、米沢市南西部の山、福島県西部の山の中を歩いた。ひさしぶりにこの4日間ずっとケータイの圏外にいた。 仙台市の泉が岳周辺でひどい雨のなかテングノメシガイの仲間を採取した(a)。頭部は黒褐色で柄は明るい赤褐色である。ひどい雨に叩かれたせいか、表面がやや崩れていた。さらに一晩経過すると全体がほとんど暗黒褐色になった。 30〜40分ほどカバーグラスに放置しておくと多量の胞子がおちた(b)。ほとんどは隔膜が3つしかない(c)。子実層には剛毛などは一切なく、ルーペーで見ても平滑そのものである。子実層を切り出してみると、黒い胞子を収めた子嚢と側糸しかみられない(d, e)。側糸の先端はいずれも球状になっている(f)。手元に資料がなく種名までは落とせない。 なお、仙台市の泉が岳周辺では、ナナフシテングノメシガイ Trichoglossum walteri や、テングノメシガイ T. hirsutum など剛毛を持ったタイプもみられた。 |
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