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今朝の雑記は、昨日慌てて観察したきのこ2点のメモ。愛媛の海浜生のきのこの最後の二つである。両者とも冷蔵庫の中ですっかり干からび、もはや原型を全くとどめていない。子実体の写真は受取り時に撮影、胞子紋もその時点で採取したものだ。 二つともAgrocybeフミヅキタケ属と思われる。比較しやすくするために、同じパーツを同一順に並べて配置した。子実体の外見とサイズはかなり異なるが、ミクロの姿はよく似ている。 両者の胞子紋(c, c')の色味が違ってみえるのは、きのこの成熟度と撮影条件が影響しているようだ。胞子(d, d')、側シスチジア(e, e')、傘上表皮(f, f')、担子器(g, g')などはとてもよく似ている。両者ともヒダ実質は並列型(h, h')で、クランプがある。おそらく、ともに名無しだろう。 |
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愛媛海浜 No.4 |
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愛媛海浜 No.5 |
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愛媛の海浜で採取されたきのこを観察した。仮番号No.3はカヤツリグサ科の植物の根茎から発生している(a, b)。きのこ自体はかなり強靱である。受け取ってから日が経ったので、乾燥して丸まって小さくなっている。ヒダの薄切りはうまくいかなかった(c)。 ヒダ実質は類並列型(d)。鹿の角のような形をした縁シスチジアがある(e〜g)。菌糸にはどこにでもクランプがある(h)。担子器の基部にもクランプがみられる(i)。傘の上層は、菌糸が織られた様な形で平行気味に走っている(j)。カヤネダケかその近縁種だろう。 |
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もう一つの仮番号No.1のきのこ(k, l)についてのメモ。胞子(m)は非アミロイドだが、ちょっと見た目には弱アミロイドのようにみえてしまう(n)。ヒダ実質は並列型(o)、側シスチジアはなく縁シスチジアだけがある(p, q)。 傘の上皮層は細胞状から子実層状被をなしている(r)。菌糸にはクランプがある。乾燥して干からびたものでも、湿気を与えると元の姿に近い状態になる。Marasmius ホウライタケ属 Sect. Leveilleani シワホウライタケ節のきのこのようだ。 |
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雨の日光を歩いてきた。埼玉県川口市の自宅を出るときはかなり強い雨が降っていた。日光でも事態は変わらなかった。朝のバスには他には一人も乗客がなく貸し切り状態だった。雨具上下を着て、リュックにはカバーを被せ、傘をさして歩いた。 キイロスッポンタケが多数群生していた。雨のためにグレバがすっかり洗い流されてしまったものが多い(a, b)。ホシアンズタケもようやく顔を出しはじめた(c, d)。雨のせいかヒダキクラゲがやたらに目立った(e, f)。オオシャグマタケは成熟個体がわずかにみられたが、テンガイカブリやオオズキンカブリはもはや一個体も見られなかった。 ヒラタケが多数でていたが、タモギタケは最初の発生が終わって、次の幼菌が多数出始めていた。10年ぶりくらいに若いマスタケを食用に持ち帰った。カンバの老木が倒壊して、その高い所についていたカバノアナタケの菌核が一面に散乱していた。大きなものは優に100Kgはある。20Kgほどの塊を持ち上げてみたが、とても持ちかえる気にはならなかった。 カメラをリュックから出すことは遂になかった。雨具のポケットに入れた簡易カメラが唯一の撮影機材だった。午後の早い時間帯に帰宅していた。 |
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5月中に「顕微鏡下の素顔」に数十種類のデータを追加した。一方で、2004年8月の事故でデータが失われた種について、少しずつ見直しをすすめてきた。この事故では、形態的記載と顕微鏡的記載のすべて、さらに大部分の検鏡写真を失っている。これらベースとなるデータが失われているにもかかわらず取りあげられている種が23種もあった。 詳細に調べていけばまだあるのだろうが、とりあえずこの23種はすべてネット上から削除した。これにともない、ミクロの姿を扱った種数は192から169となった。一方「キノコのフォトアルバム」掲載種についても、掲載写真のうちオリジナル画像の失われた約1,000枚を削除した。今後見直しがすすめば、更に削除対象は増えることになる。
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所沢の航空記念公園に寄ったが、きのこは意外と少なかった。ウッドチップベースの地表に白くもろいキノコが乾燥状態で多数みられた(a, b)。胞子紋は暗褐色(c)。 とりあえずヒダを切り出した(d)。子実層托実質は錯綜しつつも類平行型のように見える(e)。縁シスチジアは風船状(g)、側シスチジアはフラスコ型が多い(f, h)。20〜30の担子器を確認したが、いずれの基部にもクランプはなかった(i)。傘上表皮は細胞状から洋梨状(j)。 胞子には明瞭な発芽孔があり(k)、濃硫酸で赤褐色に変色する(l)。3%KOHでは緑褐色に変色する。コナヨタケに近い種のようだがはっきりしない。採取時から既に乾燥しきっていたので、これはそのまま台所ゴミとして処分した。 |
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さいたま市の公園のウッドチップから、ザラミノシメジ属と思われる白いきのこが出ていた(a)。当初採取する気はなかったので、メモのつもりでの撮影である。昨日愛媛の砂浜で採取されたザラミノシメジ属を取り扱ったので、何となく気になって結局持ち帰ってきた。 ヒダを切り出して(c)、倍率を上げると特異な姿の側シスチジアが見えてきた(d)。フロキシンで染めて、あらためて同じことをしてみた(e, f)。ヒダ実質は並列型。胞子紋は白色。最初はいわゆるドライマウント状態で胞子を見た(g)。水を加えると画面が鮮明になる(h)。メルツァー反応はアミロイド(i, j)。メルツァー液を加えた後、水洗いをした。輪郭部をみると様子が違って見える。 傘肉や柄、ヒダなどにクランプはみられない。担子器の基部にもクランプはない(k)。傘上表皮の組織はやや平行気味に菌糸が走っている(l)。コザラミノシメジだろう。 |
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愛媛県の K.I. さんから、海浜砂地で採取されたきのこが何種類か届いた。そのうちの一つを検鏡した。外見からは、コザラミノシメジなどによく似た姿をしている(a)。胞子紋は白色(b)。胞子を水で封入してみると、微疣に被われている(c)。メルツァー液で封入するとアミロイド反応を示した(d, e)。この時点でMelanoleucaザラミノシメジ属であると推定される。 複数個体の何ヶ所かのヒダを何度か切り出してみたが、どれにもシスチジアが見あたらない。したがって、国内未知種ということになる。子実層托実質は並列型(f)。ヒダ実質にも傘肉にも柄の組織にもどこにもクランプはみられない。子実層をみても担子器などの基部にもクランプはない。念のためにバラしてフロキシンで染めて確認した(h)。 かさ上表皮は色素粒を含んだ菌糸が平行に走っている(i)。柄の表皮を上部、中部、下部と調べてみたが、いずれにもシスチジアやそれらしき組織はみられない(j)。北陸のきのこ図鑑No.166に奈良仮称としてスナジコザラミノシメジが掲載されているが、これは槍型の縁シスチジアを持つとされる。スイス菌類図鑑にあるM. stridulaという種が比較的よく似ている。 |
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筑波の菌学講座会場近くのあぜ道で、去る5月20日に気紛れに採取したきのこがいくつかあった。今朝はそのうちの一つを覗いてみた(a, b)。紙袋に入れたまま放置しておいたので、いずれも干からびて小さく丸まってしまっていた。沸騰している薬缶の注ぎ口にキノコを近づけて、水蒸気をあてると少しばかり生状態に近い姿に復帰した。 胞子紋は白色(c)、胞子(d)は偽アミロイド(e)なのだが、水洗いするとまるで色が変わった(f)。ヒダ実質は並列型(g)。ヒダをちょっとみたところ、シスチジアの類はないようにみえた(h)。倍率を上げると、側シスチジアのような組織が見える。先端が丸く蓮根の様な形だ(i, j)。担子器の基部にはクランプがある(k)。ヒダ実質や傘肉など他の組織にもクランプがみられた。傘上表皮は菌糸が平行に走っているようにも見えるが、やや錯綜しているようにも見える(l)。 手持ちのいくつかの検索表からは、どの属に落ちるのかよくわからない。徹底して調べてみるか、それともこの段階で放棄するか迷った。時間もない、ゴミとして捨てることにした。 |
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新鮮で比較的柔らかで綺麗なカミウロコタケが出ていた。コウヤクタケ科やタコウキン科はめったに持ち帰らないのだが、あまりにもきれいだったので珍しく持ち帰ってきた。 子実層を切り出して水で封入した。低倍率でも独特のシスチジアが並んでいる姿をみることができる(b)。倍率を上げるとこのシスチジアは子実下層から伸びていて(c)、先端にクリスタル状の結晶を多数付着させている(d)。このままの状態で子実層表面付近をみると、担子器らしきものが見えるがはっきりわからない(e)。バラしてみるとよく分かる(f)。 次に3%KOHで封入した。たちまちシスチジア頭部のクリスタル状の結晶は溶けて見えなくなってしまった(g, h)。フロキシンを加えて軽く押し潰すと、子実層がバラバラになる(i)。菌糸には薄膜のものと厚壁をもったものがあるが、いずれも隔壁を持つ。したがって原菌糸だけからなる一菌糸型である(j)。担子器の基部にもクランプはない(k, l)。胞子は成熟したものが少なかった。カミウロコタケについては、雑記2003.9.30でも取りあげている。 |
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筑波で行われた日曜日の菌学講座は、小田貴志(a)さんによる「テングタケ属の分子系統および形態観察」。午前中はテングタケ属についての話(c)。基本的なことから始まって、分子系統からみたテングタケ属の全体像や生物地理学など、たっぷり3時間ほど興味深い話があった。 なぜ分子系統なのか、分子レベルの形質を利用した分類の特質、その具体的な手法などを、初心者でも分かるように楽しく理解できる内容だった。分子系統からみた形態形質の話や、パワーポイントで表示される画面は、数年前の記憶を鮮明によみがえらせてくれた。 午後は、標本による形態観察が行われた(c〜e)。教材はすべて、小田さんの持ってこられた乾燥標本である(f)。参加者は、午前中の話に対する質疑等や、観察に伴う疑問などを、相互にやりとりしながら、顕微鏡観察に取り組んでいた。小田さんありがとうございました。 |
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昨日は菌学教育研究会主催の菌学講座に参加してきた。午前中は長岡科学技術大学の宮内信之助氏(a)による「新潟県のきのこ」。新潟県は南北に長く樹種も変化に富んでいる。ドクササコを始め興味深い話題がいろいろと提供された(b, c)。午後からは菌学教育研究会の布村公一氏(d)による「菌学教育研究会事務局を10年間担当して」で、過去10年間の研究会の歩みを聞くことができた(e, f)。 昨日、今朝と「顕微鏡下の素顔」に、エノキタケ、オオカボチャタケ、オオシトネタケ、オオワライタケの4つを加えた。取扱種は今現在、174になった。 |
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