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静岡県掛川市で行われる遠州灘ケシボウズ合宿に参加のため、11月19日と11月20日は、「今日の雑記」を休みます。 |
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カミソリとピス(a)だけで薄い切片を切り出せる人もいる(b)。しかし、よほど慣れないと、30μm以下の厚さに切り出すのは至難の業だ。ピスを使って、徒手だけで切り出すには一定の習熟が必要だ。「キノコカッター」にはこだわらずに、従来から使われてきた道具の改善策を考えるのもよいだろう。そのひとつが携帯用の簡易ミクロトーム(c)の見直しだ。 |
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簡易ミクロトームを使を使えば、切片の切り出しは格段に楽になる。先に使い捨て注射器(d)を使う方法を紹介した(「きのこの話題」→「ピスを使った切片作成」)。他にも、長ナットを利用したものや、硬質塩化ビニル管を利用したものなども、考案されている。 市販品の卓上ハンドミクロトームでは10μm単位で繰り出し量を調整できる。写真(c)の簡易ミクロトームは、故池田和加男氏によって数十個ほど限定製作されたものだ。(株)ミツトヨ製マイクロメータヘッドを使い、1μm単位で繰り出し量を調整できる優れものだ。 しかし、これらの簡易ミクロトームにも問題が多く、必ずしも使いやすいとはいえない。せっかく簡易ミクロトームを持っていても、それを使わずに、ピスを指先に摘んでそれを直接カミソリで切っている人が多い。早い話、自分でも長いことそうだった。 今日から静岡県で行われる遠州灘合宿(いわゆるケシボウズ合宿)に参加するため、明日と明後日の雑記はお休みである。 |
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泊まりで外出する場合、しばしば小型の単眼顕微鏡をもっていく(a)。接眼レンズ(j)にアダプタ(k)をつけてデジカメで撮影もする(b)。さらに使い勝手をよくするために、いくつか簡単な改良をしている(雑記2005.9.30、同2002.8.10)。 クレンメル(ステージ固定用のクリップ)(c)をメカニカルステージ(d)に交換するだけで作業効率が抜群によくなる。これは大学のゴミ捨て場で拾った顕微鏡からの流用だ。次に反射鏡(e)をLEDライト(f)に交換すると、光源確保に苦労しないで済む。ふだん使っているものは、LEDヘッドライトの頭部に、小さな穴を二ヵ所あけ、ミラーホルダーに挟み込んだだけのもの(g, h)。乾電池式なので電源コードは不要だし、LEDゆえ電池の持ちがとてもよい。 以前はクリップ式の小型LED照明装置をよく使っていた(i)。顕微鏡の鏡筒部を傾けると光源位置がずれるので、位置と角度の調整が必要だ。LED光源の明るさを調整するには、フィルムケースの底部分を使うのが簡単だ(l)。 |
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先に「コケカッター」(a)をキノコの切片作りに使えるや否やを検証してみた(「きのこの話題」→「コケカッターでキノコを切る」)。結論は「キノコには向かない」だった。キノコを切るのであれば、キノコカッターなるものを考えた方がよかろう、そう感じた。 実体鏡を使い慣れていれば、こういった道具は不要だ。では、キノコカッターなるもの、どういう状況を前提に考えたらよいのだろうか。コケカッターのように、実体鏡の下で使うのか、あるいは、実体鏡を使わずに切り出すことを前提に考えたらよいのだろうか。 |
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包埋などを伴う大がかりな装置を使う方法は考慮の外に置くとして、実体鏡を使わないとすれば、徒手切片ということになる。乾燥標本は直接指で摘んで切ればよい。したがって、ここでは、生きのこの切り出しを目的とし、厚みの目標値を15〜30μmとする。さらにランニングコストを考えると、切り出すための器具は入手の楽なカミソリの刃ということになる。
きのこの顕微鏡観察の教科書(*)などでは、いろいろなやり方が紹介されている。カミソリ2枚を一定幅に保って切る(b)、あるいは、指先の爪をガイドにして切る(c)、スライドグラスを2枚使いずらして切る(d)、などである。さらに図解はされていないが、ミクロトームを使う方法などにも言及している。いずれの場合でも何枚か切って、最も薄い切片を用いる。 * Maria Teresa Basso "Manuale di Micoroscopia dei Funghi" 2005 Liberia Mykoflora Alassio, Italia
2枚のカミソリを使う方法(b)をヒントにキノコカッターを作れないだろうか。要は2枚のカミソリ刃を、安定して一定幅(15〜30μm)に保てさえすればよいことになる。ところが問題は、2枚のカミソリ刃の間隔である。15〜30μmとは具体的にどんな幅なのだろう。
単純にカミソリをそのまま2枚重ねて試料を切ると、100μmの幅の切片を切り出すことになる。カミソリの厚みは100μmだからだ(e)。15〜30μmどころか、ベタ2枚重ね法では、これより薄い切片を切り出すことは理論上できないことになる。 |
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さいたま市の秋が瀬公園を歩いてみたが、柔らかいきのこは一つもなかった。出会ったのは、関心が薄くふだんほとんど観ることのない硬質菌ばかりだった。それらの中に、触るとまだ柔らかい新鮮なものが数種類有った。今朝は菌糸型やクランプの有無などを確認するゆとりが無かったので、2種だけを、とりあえずそのまま掲載することにした(a〜c, d〜f)。 | |||||||
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このところ顕微鏡はもっぱらコケ観察でしか使っていない。コケ標本を保管するスペースを確保するため、きのこ標本を整理していたら、プラスチックケース一箱分の標本がダメになっていることに気づいた。今年の暑さのせいだろうか、カビと虫にやられていた。 |
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春先に交換した乾燥剤はすっかり色が変わっていたし、樟脳はすっかり消えていた。これでは、内容物がダメになるのも当然だ。ケシボウズ以外の、多くのハラタケ目を捨てるハメになった。例年だと年に2回ほど乾燥剤と樟脳を入れ替えればよかった。 新産種として報告しようかどうしようか、そう思いつつ放置していた多くの標本を廃棄することになった。200種ほど捨てた。残ったのは文字による記録だけである。標本のない記録には何の価値もないので、記録そのものも一緒に捨ててしまった。 |
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先に神奈川県川崎市で採取したツチヒラタケ(a, b)は、胞子紋がごくわずかしかとれなかったので、再び胞子紋をとりなおした。泥の付いたヒダを軽く水で洗い流して、スライドグラスに傘を伏せた状態で冷蔵庫に一晩放置した。今度はたっぷり胞子が落ちた。 水で封入すると透明でとても見にくいので、すぐにメルツァー液を加えた(c)。非アミロイドである。フロキシンで染めると非常に見やすくなった(d)。ヒダは思いの外、切り出しが面倒だ。厚壁をもつ側シスチジアがみえる(e)。倍率を上げると先端に結晶構造がみえる(f)。 ヒダの縁には小さめの縁シスチジアの首がみえている(g)。薄膜で細長い首の先端に結晶物をつけている(h)。側シスチジア(i)に比較するとかなり小さい。担子器の基部には多くがクランプを持っていた(j)。傘表皮は菌糸が平行に走っている(k)。 今回観察したツチヒラタケは、これまでにみたものと比較して、いくつか興味深い点がある。一つは、薄膜で先端に結晶をつけた縁シスチジアを持つこと、さらに、傘肉の部分の組織が数珠を繋げたような形の菌糸を多数含むことである。Hohenbuehelia geogenia の記載には、これについては触れていない。変種か品種とした方がよいのかもしれない。 |
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菌学教育研究会つくばセンターで行われた菌学講座に参加してきた (a)。昨日は神奈川県キノコの会会長の城川四郎氏(b)による「ヒダナシタケ目硬菌類の分類入門」(c)。午前中は主に座学(c)。受講者各自に配布された18点の硬質菌(d)を中心として、この日観察する標本類30数点について、肉眼による観察、顕微鏡観察のポイントなどについての話があった。コフキサルノコシカケとオオミノコフキタケについての話が興味深かった。 午後からの顕微鏡実習では、オオカタウロコタケのすりこぎ状糸状体、キヌハダタケ・ツリバリサルノコシカケの剛毛体などを確認した。多くの受講生が活発に質問しながら観察に取り組んでいた(e)。時間はたっぷりあり、標本は各自に配布されているので、プレパラートを40枚ほど作ることができた。数多くの標本について、菌糸型の確認やら特徴的な組織を確認することができた(雑記2003.9.18、同2003.9.20)。久しぶりに硬質菌ばかりを検鏡した一日だった。 |
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今日と明日は筑波で行われる菌学講座に参加のため、「今日の雑記」を休みます。 |
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