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2006年9月20日(火)
 
(a)
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(b)
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(c)
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(k)
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(l)
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 先日川俣で採取したヒロハアンズタケ(a)についての覚書。ヒダは何回か二叉分枝し、縁はかなり厚みがある(b)。特徴的な臭いはない。胞子紋は白色。
 胞子に発芽孔などはなく(c)、偽アミロイド(d)。コットンブルーで胞子の膜がブルーに染まる(e)。フロキシンでは胞子膜はそまらない。ヒダの切り出しは予想以上にやっかいだった。あまり薄く切るとバラバラになってクルクルと丸まってしまう。厚いと横に倒れてしまう。
 あきらめて適度な厚みでヒダを切り出した(f)。縁付近のヒダ実質の様子は不明だが、ヒダ全体はほぼ並列型をなしている(g)。縁にも側にもシスチジアはない。菌糸はどの部分にも明瞭なクランプがある(i)。担子器の基部はクランプがあったり、なかったりである(j, k)。傘上表皮はやや立ち上がり気味に交錯した菌糸が見られる(l)。これらの菌糸にもクランプがある。

2006年9月19日(火)
 
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(j)
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(k)
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(l)
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 気温は下がり雨がよく降ったにも関わらず、さいたま市の秋ヶ瀬公園ではきのこの発生は芳しくない。道ばたにフミヅキタケ属の小さなきのこが一つだけでていた(a, c)。引っこ抜いてみると柄の基部に黒くて柔らかい菌核がついている(b)。どうやらタマムクエタケらしい。
 胞子には発芽孔がある(d)。小さく柔らかいヒダはとても切り出しにくい(e)。子実層托実質は並列型(f)。縁シスチジアは長い首をもったフラスコ型(g)。タマムクエタケで面白いのは側シスチジアである。多くはフラスコ型で先端が指先のように分かれている(h〜j)。
 担子器の基部にクランプは見られなかったが(k)、組織にはあちこちにクランプが見られる(l)。傘上表皮や柄の上部にもシスチジアが見られる。菌核の内部には八面体のクリスタル片が多数みられる。タマムクエタケは顕微鏡で覗いて楽しいきのこである(雑記2003.7.23)。
 そういえば「キノコのフォトアルバム」にはタマムクエタケは掲載していない。今日の生態写真もそうだが、まともな画像がひとつも無いことが、非掲載の最大の理由だ。なぜか、タマムクエタケに出会うときはまともなカメラを持ち合わせていない。

2006年9月18日()
 
(a)
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(l)
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 仲間4人で、栃木県の鬼怒川温泉から川治温泉、川俣温泉方面を歩いてきた。予想以上にきのこの発生は悪く、例年とは様子がかなり違う。それでも遊歩道などを歩いてみると数十種類のきのこに出会うことができた。それらのうちから一部を取りあげた。
 シロオニタケ(a, b)、タマシロオニタケ(c, d)、ヘビキノコモドキ(e, f)をはじめ、コテングタケモドキ、タマゴタケなどのテングタケ科のきのこがよく出ていた。夏のきのこ最盛期である。イグチ類は少なく、6〜7種くらい出会ったろうか。ヒポミケスに犯されたものが目立った。
 アカイボカサタケ(g)、ワタカラカサタケ?(h)、シロソウメンタケ(i)、ヒロハアンズタケ(j)、キツネノエフデ(k)、コケイロサラタケ(l)などが印象的だった。川俣温泉のアルカリ泉で体をほぐして帰ってきた。天候が芳しくなかったのに、どこの観光地も意外と人出が多かった。

2006年9月17日()
 
(a)
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(e)
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(f)
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 スジチャダイゴケで遊んだ。雨のなか飛び出し損ねて臍の緒を中途半端につけたままのペリジオールがあった。そのまま乾燥させると面白い姿になった(a)。まず、チャワンの頭部がふさがった若い菌を切断してみると、ペリジオールを保護するように白い膜がある(b)。次に、ペリジオールをすべてはじき出した殼皮を切り開いてみると(c)、外側の毛は縁にまでしっかりとついている(d)。ふだんならペリジオールを切断して胞子を観察するのだが、今朝は趣向を変えて、殼皮の部分を薄切りにしてみた(e)。三層からなっていて、最外層には毛が生えている(f)(雑記2005.8.25)。
 
 
 
(g)
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(h)
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(i)
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 この雨で近場ではツネノチャダイゴケが今を盛りと多数発生し始めた。まだ表隔膜が剥がれていない若い個体が大部分で、一部の成菌は雨でペリジオールがすっかり飛び出したものばかりだった。同じくハタケチャダイゴケも多数みられるようになってきた。

2006年9月16日()
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
(e)
(f)
(f)
 先日持ち帰ったベニチャワンタケモドキは未熟個体でほとんど胞子紋は落ちなかった。材についた状態のまま3日間ほど追熟を行ってみたが、やはり成熟まではいたらなかった。
 とりあえずチャワンの一部を切り出してみた(a)。托髄層は絡み合い菌組織、托外皮層には毛は生えていない(b)。子実層を見ると、胞子は表面が平滑で、側糸は色素顆粒を持ち細長い糸状である(c)。メルツァー液を加えると、側糸の色素顆粒は緑色を帯びた(d)。油浸100倍対物レンズで見るまでもないが(e)、子嚢は非アミロイドである(f)。
 
 
 
(g)
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(i)
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(k)
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(l)
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 同じ日に持ち帰ったキミミタケモドキはさらに未熟で、胞子は全く採取できなかった。子嚢盤外側はところどころ赤色の部分がある。触れた部分も何となく赤みを帯びた(g)。柄はかなり偏心していて、子嚢盤中心部の托髄層はとても厚みがある(h)。
 念のために子実層を切り出した(i)。封入していた水を3%KOHで置き換えると、すっかり色抜けしてしまった(j)。再び水洗したのちメルツァーを加えた(k)。子嚢先端は非アミロイドであるが、胞子が全くできていなかった(l)。

2006年9月15日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
(f)
 一昨日巡った林道の脇には、小型のきのこがいろいろ出ていたが、腰痛と激しい雨のためにほとんど撮影できなかった。秋のきのこがようやく出始めたという様子を感じた。かろうじて撮影でき、何とか見られる画像から一部を取りあげてみた。
 アンドンタケらしき腹菌がいくつかでていたが、雨で潰されたりくずれたものばかりだった(a, b)。カメムシタケをはじめ冬虫夏草も何種類かみられたが、ギロチンをせずに楽に掘り出せるものにしか手を出さなかった(c, d)。
 ノボリリュウの仲間、ズキンタケの仲間をはじめ、子嚢菌が種類も量もかなりみられた。ベニチャワンタケモドキ、キミミタケモドキらしき色鮮やかなチャワンタケが雨の中で印象的だった。両者とも未熟で胞子はほとんど落ちなかった。
 この雑記を書いている最中に、13日に持ち帰ったアンドンタケの卵が、冷蔵庫に放り込んだ紙袋の中で開きはじめていることに気づいた。あわてて、外に出して紙袋から引っ張り出して、紙コップに置いた。その間にもどんどん開いてしまった(開き始め全開状態基部)。

2006年9月14日(木)
 
(a)
(a)
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(b)
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(d)
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(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日、東京・埼玉・群馬県境周辺の石灰岩地を巡ってきた。終日雨だったので、撮影はなかなか思い通りにはいかなかった。レンズに水滴がついたりで、撮影した画像の80%ほどはそのままゴミ箱行きとなった。リュックの中も衣類もすっかりビショビショだった。
 先月は全く出ていなかった場所で、ウロコケシボウズタケがでていた(a〜c)。頭部に雨粒があたると、尖った口から黄褐色の胞子を吹き出していた。このところ、海浜にもあまり出かけていないので、野外でケシボウズをみたのは実に久しぶりだった。
 林道脇に多数のスジチャダイゴケが出ていた(d〜f)。暗い上に、保護色なのでなかなか分かりづらい。雨粒が茶碗の中に落ちると、碁石型のペリジオールが勢いよく飛び出していく。カップの中から次々と飛び出していく様は非常に興味深い。見ている間にもカップの中は空っぽになっていく(d)。若い菌は内部の壁も白く、上面は白い膜に覆われている(f)。

2006年9月13日(水)
 
(a)
(a)
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(e)
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(f)
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 今月はじめにいくつものきのこを採取したが、観察する時間がなく、大部分はそのまま冷蔵庫に保管しておいた。今朝見ると、多くが虫に食われたりドロドロに溶けてしまっている。
 山梨県白州町の森で9月2日、いくつかのキクバナイグチ属 Boletellus に出会った。腰痛がひどく生態写真は撮影できなかった。その一つを今朝やっと覗くことができた(a, b)。採取時の紙袋に入れたまま冷蔵庫に放置したが、どうやら無事だった。その袋の内側についていた胞子紋の一部をかき取って、水で封入した(c)。アーモンドを思い起こさせる隆起がある(c)。
 管孔部を一部切り取ってスライドグラスに置いた。3%KOHで封入すると胞子も明るい色になった(d)。落下胞子ではないので、未熟胞子が多数見える。縁シスチジアは意外と少なかった(e)。傘上表皮は面白い組織からできている(f)。フロキシンを加えると見やすくなった。どうやら予測通りアヤメイグチのようだ。

2006年9月12日(火)
 
(a)
(a)
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(b)
(c)
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(d)
(e)
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(f)
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 日本菌学会関東支部によるワークショップに引き続いて、観察会が長野県菅平で開催された。天候の影響なのか、きのこの発生は芳しくなかった。腰痛をこらえて撮影したのは4点のみであった。ハナイグチ(a)、ロクショウグサレキンモドキ(b)、ホソヤリタケ(c)、フェムスジョウタケ(d)である。採取された中にはツノシメジなど注目すべきものもあった。
 国立科学博物館では再来年に菌類展が予定されている。細矢博士が全国を忙しく飛び回っているが、アマチュアの協力なしでは展示用標本はなかなか集まりにくい。これはといった標本を採取したら、細矢博士にメールで連絡してほしい([お知らせ] 参照)。
 日本菌学会関東支部の観察会については触れないつもりだったが、気さくな細矢博士の横顔を紹介するのもよかろうと思い、写真を載せることにした。専門の微小盤菌を真剣にルーペで覗く姿(e)、デモ用ビデオを撮影している姿(f)の二コマを取りあげた。

2006年9月11日(月)
 
(a)
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(f)
 先週木曜日(9/7)から始まった日本菌学会関東支部によるワークショップ「菌根:外生菌根を中心に」に参加してきた(a)。講師は信州大学農学部の山田明義博士(b)。非常に有益で楽しい3日間を過ごすことができた。
 はじめに菌根について基礎知識などの講義があり、その後全員でフィールドに出て菌根の確認と採取をした(c)。菌根の構造を確認する作業では、アカマツ、シラカバ、ベニバナイチヤクソウ、シャクジョウソウという代表的な4種類の材料が使われた。
 アカマツの菌根(d)やシラカバの菌根は、扱いが比較的楽であるが、イチヤクソウやシャクジョウソウは思いの外難しかった。採取してきた材料を使って、全員で菌根の確認をした(e)。他人のプレパラートでハルティッヒネットをみたことはあっても、自分で作った切片で確認したのはこれが初めてだった(f)。きのこに接するのに、新しい楽しみがまたひとつ増えた。

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