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昨日、所沢まで行ったので、ついでに航空記念公園に寄ってみた。このところの雨のおかげでか、ウッドチップ菌ばかりではなく、イグチやベニタケ、チチタケなどの菌根菌がかなり出始めていた。今朝覗いてみたのは、そのうちウッドチップ生のきのこ2種類(a, d)。 先日ハナオチバタケを覗いて楽しんだが(雑記2006.6.15)、これも黄色型のハナオチバタケだろうと思った(a)。胞子を覗いてみるとかなり大きい(b)。どうやら、ハリガネオチバタケらしい。外見だけでは、ハナオチバタケとハリガネオチバタケは区別が困難だ。このキノコもハナオチバタケ同様に、縁シスチジアと傘表皮に、箒型の組織がみられる(c)。 今ひとつはツチヒラタケである(d)。昨年までは、大きな群をなして発生し、4月頃から見られたのだが、今年はやっと見ることができた。胞子は特にかわったところもないが(e)、厚壁の側シスチジアが特徴的で面白い(f)。この側シスチジアの先端にはクリスタル状の結晶がみられるが、KOHなどでマウントするとすぐに溶けて消えてしまう。 |
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わが国でみられるケシボウズは、多くが類球形の胞子を持ち、表面に疣やら網目をもったタイプが多い。つい最近、これらとは全く違った形の胞子をもったケシボウズがみつかった(6/10 滋賀県)。外見はウロコケシボウズタケ(c'')やナガエノホコリタケ(a'')とよく似ているが、タネ型の胞子を持っている。SEMの10,000倍でみると表面はほぼ平滑で、平べったいタネ型ではなく、スポイトやピペットにつけるゴム乳頭をやや膨らませたような形をしている。 |
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ケシボウズタケ属はどれも同じような姿(a''〜f'')をしていて、見慣れないとどれも同じに見えてしまう。胞子を観察することは必須だが、光学顕微鏡の対物40倍では、よほど見慣れていないと違いはわかりにくい。油浸100倍にするとかなりの精度で違いがみえる(a〜f)。 胞子にはいくつものタイプがある。きちんとした報告はいずれ行うつもりだが、今朝は手元のサンプルのうちから、任意にいくつかを気紛れに並べてみた。(a)はアラナミケシボウズタケ(ナガエノホコリタケ)、(b)はケシボウズタケ、(c)はウロコケシボウズタケ、(d)はウネミケシボウズタケ、(e)はアバタケシボウズタケ[仮]、(f)は未報告種(三重県津市)の一つである。 先入観を持ってみてしまうと、(a)と(c)、(b)と(e)はOM(光学顕微鏡)レベルでほとんど同じに感じしまいそうだが、SEM(走査型電子顕微鏡)でみると、(a')と(c')、(b')と(e')はかなり違う。しかし、よくよく観察すれば、OMでもこれらの違いは楽に見分けることができる。 (f)のケシボウズの胞子は、OMでは平滑に見えても、SEMで10,000倍にすると表面に微細な突起を持っている。しかし、国内で採取されるものでこういったタイプは非常に珍しい。 ここに掲げた以外にも、わが国には何種類かのケシボウズが知られている。複数種が単一標本として扱われているケースもありうる。ケシボウズの仲間は、外見だけで同定できない。 |
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きのこを検鏡する場合にピンセットの選択は重要である(a)。もちろん、耐熱性があり酸やアルカリに強いことは当然として、すぐに先端のかみ合わせが狂うようなものは論外である。ヒダや管孔をもったきのこを取り扱うときには、細身で先端が丸味を帯びたものを使っている(b)。内側に滑り止め用の溝を掘ったタイプも利用している(c)。 一方、ケシボウズタケ属やヒメツチグリ属などの場合、孔口部の形状を崩さないよう、胞子・弾糸などの採取にあたっては、頭部の横っ腹にピンセットを突き刺してつまみ出している。標本をなるべく傷めないよう、先端が細くて鋭くとがったピンセットを使っている(d)。 一度に多数を扱う場合には、その都度アルコールで拭き取って次の個体に移る。滑り止めの溝を切ったタイプでは、ていねいにエタノールで拭き取ったつもりでも、たいてい溝の部分に胞子が残ってしまう。一個体扱う都度に洗わなくてはならないので効率が悪い。 それに対して、先端も鋭く内側も平滑なタイプはかなり使いやすい。ただ、いくら平滑に見えても、拡大して見ると無数のスジ状の凹凸がある(e)。いずれにせよ、頻用するピンセットは時々砥石で研いで使うことになる。 |
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デジカメのありがたさは、顕微鏡写真を撮っているとき痛感する。デジカメで撮影する場合、とにかく何枚でも撮影して、あとで不要なものを削除すればよい。三眼鏡筒部にデジカメを固定し、AC電源を使っている。記憶媒体は64MBのCF、FINEモードで40枚撮れる。撮影条件を常に一定にしておけば、異なる種でも直感的に比較できる。また、対物40倍、油浸対物100倍のスケールを作成しておけば、後日でもサイズの確認は簡単にできる。 デジカメで撮影するようになったのはサラリーマン時代。メモと画像からは、後日それを元に描画もできる。これは、はからずも青木実氏のやりかたと同じであった(雑記2004.8.14)。「日本きのこ図版」にあるミクロの描画は、非常に精細で多岐にわたっている。これらは、おおくが、早朝のわずかな時間に撮影された写真とメモに基づいて描かれたものだ。使われた顕微鏡は非常にお粗末なものだ(雑記2004.2.14、同2004.12.23)。 |
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日光で見るマツオウジはたいていツバを持っている。6月10日(土)持ち帰った個体は既にカラカラに乾いている。とりあえず胞子を見た(a, b)。メルツァー液を加えると、まるで胞子が小さくなったかのようにみえる(b)。内容物が変色して、胞子の膜が透明になっている。 ヒダ実質は異様な構造をしているが、なかなか明瞭な姿を撮影することができない(c)。ヒダの側、子実層の部分を見ると単純に担子器が並んでいる(d)。ここで興味深いのは、昨年同時期にやはり日光で採取したマツオウジの子実層と担子器である。 昨年のマツオウジでは、担子器の小柄、つまりsterigma(複数形はsterigmata)が非常に長く、子実層表面から長く突出している。このため、低倍率でみるとまるで側シスチジアが多数あるかのように見える(e)。今年の個体ではそういったことはない(d)。 担子器をバラしてみると、このことは顕著にわかる。今年の個体の担子器(f, g)に対して、昨年の個体の担子器(h, i)は、sterigmaが圧倒的に長い。なお、傘上表皮の組織は両者ともほぼ同じような構造をしている(j)。 |
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数個体を使って一晩試みたにもかかわらず、ハナオチバタケの胞子紋はほとんど落ちなかった。いずれもまだ若い菌ばかりだったのだろうか。数は少ないがとりあえず、胞子の姿はわかる。フロキシンを加えると見やすくなった。 ヒダ切片は予測通りうまく切り出すことはできなかった(a)。それでも何とかヒダ実質の様子はわかる(b)。ヒダの先端には面白い形の縁シスチジアがある(c)。バラして(d)、フロキシンで染めてみた(e)。箒状というより、モグラの手、あるいはツメの伸びきった足を見ているようだ。 菌糸にはクランプがある(f)。側シスチジアは単純な姿をしている(g, h)。傘表皮は傘肉と明瞭な組織的違いが見られる(i)。これも倍率を上げてみると、縁シスチジアと同じような箒状の組織が無数に見られて面白い(j〜l)。なお、KOHで封入すると黄褐色になる(k)。 |
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シロキクラゲの子実層をグニャグニャの生状態から切り出すのはやはり難しい。ピスに挟むと、壁面にへばりついて、せっかく薄切りにできてもうまくはずせない。実体鏡の下でもトコロテンの薄切りをするかのようだ。やはりキクラゲの仲間をていねいに観察しようと思ったら、いったん自然乾燥させたものから切り出すのが賢明だ(雑記2006.1.26、同2006.5.10)。 とりあえず、生状態のものをルーペを使って切りだした(a)。フロキシンを加えると子実層の部分が染まって見やすくなる(b)。倍率を上げると、担子器が明瞭に捉えられる(c, d)。そのままでは、担子器の観察ができないので、5%KOHを使って担子器をバラしてみた(e)。2室ないし4室のタマゴ型の担子器から柄をだして、その先に担子器をつける(e)。 菌糸はどこをとらえても、明瞭なクランプがみられる(f)。押し潰して作ったプレパラートでもこれははっきりわかる(g)。ただ、菌糸が潰れて太くなっている。胞子は類球形から卵形をしている(h)。水だけでもよいが、フロキシンで染めた方が目が疲れないで楽だ(i)。胞子をよく見ると、普通に発芽するものもあれば、酵母状に分裂するものなどがあって興味深い(j)。 |
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三芳町の多福寺近辺の保護林でシロキクラゲに出会った。このきのこはキクラゲの仲間では興味深い特徴を持っている。顕微鏡で見ると面白いので持ち帰ってきた。ふと、足元をみるとハナオチバタケがあちこちに見られた。このきのこも、傘表皮と縁シスチジアが箒状の面白い組織を持っているので、「覗き」を目的に持ち帰ってきた。 このほかにもいろいろなきのこが出てきた。ベニタケ属、チチタケ属、テングタケ属などの菌根菌やら、ハラタケ属などの腐生菌がいろいろと見られる。ヘビキノコモドキ?(c)、ザラエノハラタケ(d)、ウスキモリノカサ(e, f)などがあちこちに多数でていた。まずは、シロキクラゲとハナオチバタケの顕微鏡下の姿を楽しんでみることにしよう。 |
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土曜日の日光では多くの小型菌類に出会った。そのうちからテングノメシガイの仲間についてのメモ(a)。採取して持ち帰ったものには、未成熟のものから子実層がボロボロになった老菌まであった(b)。友人の言うように確かに「絵にならないきのこ」である。 頭部の子実層面はちょっとみると、ビロード状で平滑、柄には粒点のようなものが見られる。ルーペで柄(c)と頭部(d)を覗いてみた。頭部表面には、ルーペでも胞子が見える。実体鏡で子実層をみると、多数の子嚢が突出している様子がわかる。 未成熟の子嚢胞子に、節はみられず組織に濃度の違いがある(e, f)。同一個体から成熟した子嚢をとりだした(g, h)。胞子の隔壁は7〜15ほどで、多くは15節をもっている。さらに、同一子嚢にそれらが入り交じっている。また、側糸は隔壁を持ち先端が丸くなっている(h)。 子実層にはどこにも剛毛はなく、成熟子嚢と未成熟子嚢が混在している(i)。メルツァー試薬を加えると、子嚢先端が青く染まる(j)。これは、未成熟でも成熟子嚢でも同様である(k, l)。どうやら、テングノハナヤスリGeoglossum peckianum Cookeとしてよさそうだ。 |
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数日前に急に思い立って、昨日日光に行ってきた。タイミングよく、ヒロメノトガリアミガサタケがちょうど出始めた時期だった。背丈12〜18cmほどの成菌(a)ばかりではなく、10cm前後の若い菌もあった(b)。周囲には頭部がやっとでき始めた幼い菌もみられた(c)。 タモギタケはまだまだ次々と発生している。あちこちで大きな群落や、大きな株に出会うことができた(d, e)。ツバを持ったマツオウジも、カラマツやストローブマツなどの切り株や倒木から出始めた(f)。ホシアンズタケは綺麗な個体に出会うことはできず、アミガサタケは既に今年の発生時期は終わってしまったようだった。 カバノアナタケの菌核が相変わらずそのままだったのには驚いた。キイロスッポンタケも先月末同様、大きな群を作って発生していた(雑記2006.5.29)。 |
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