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一昨日キヌガサタケのタマゴの切断面(a)を取りあげたので、ここで他のスッポンタケタイプの腹菌類の切断面と比べみた。タマゴの切断面(縦断面)をよく見ていると、成菌の姿を連想できるものがあり興味深い。いずれも外皮の直下はゼラチン層である。 キヌガサタケに続いて、スッポンタケ(b)、コナガエノアカカゴタケ(c)、キツネノタイマツ(d)、ツマミタケ(e)、カニノツメ(f)である。かつては、このほかにもキツネノロウソク、コイヌノエフデ、マクキヌガサタケ、サンコタケなどの縦断面の写真もあったのだが、残念ながらデータ消失のため、もはや手元にない(雑記2004.8.1、同2004.8.2、同2004.8.3)。再び切断面や担子器などの写真も撮りたいと思うのだが、肝心のきのこに、なかなか出会う機会がない。 |
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典型的な姿をしてれば、ハナビラダクリオキン(a)とコガネニカワタケ(k)を見間違うことはない。先週末の日光で出会った黄色いゼラチン状のきのこは、いずれとも判別しにくいものが多かった。結果的に6ヵ所くらいから10個体ほどを持ち帰った。典型的なもの(a)を一つ、残りはすべていずれとも区別しにくい形態と色をしていた。 今回持ち帰ったものは、すべてハナビラダクリオキンだった。胞子を検鏡してみた(b)。水で封入すると分かりにくいが、フロキシンで染めると隔膜で仕切られている様子がよくわかる(c)。対物40倍でもコンデンサをやや絞り気味にすると隔膜は明瞭に捉えられる(d)。 子実層を切り出して低倍率でみた(e)。対物40倍で子実層の様子はよくわかるが(f)、フロキシンを加えると担子器の形まではっきりする(g, h)。対物100倍にすれば、音叉型をしたアカキクラゲ科特有の担子器をはっきり捉えられる(i, j)。 一方、シロキクラゲ科のコガネニカワタケでは、子実層を低倍率でみた時点で、すでにかなり様子が異なるが、担子器の形がまるで違う。ここではシロキクラゲの担子器を例示してみた(l)。ちなみに、コガネニカワタケの検鏡写真は2004年夏に失っており、手元にない。 |
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昨日、仲間5人で埼玉県長瀞町まで行ってキヌガサタケをみてきた。am7:00頃から9:20頃までキヌガサタケの成長を観察した。折悪しく強い雨がずっと降り続いていた。衣類はビショビショ、傘をさしても布を通して雨が滴となって落ちてくる有様だった。 背負っていたザックは内側までしっかり濡れてしまった。やっとのことで何枚か撮影することができた(a〜d)。現地で掘り出したタマゴのうちの一つは、つかんだ途端に外皮がズルっと向けてしまった(e)。切断面をみると、グレバの部分は基部にまで及ばず、マント部分が基部に向かって層をなし、全体として外皮・ゼラチン層・頭部・マント・柄の5層からなっている(f)。複数の個体を切断してみたが、根状菌糸に繋がる基部の部分がいずれも赤紫色をしていた(f)。 |
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昨日の日光は、湿度こそ高いものの気温は低く快適であった。広い範囲でホシアンズタケをみることができた(a, b)。今年は例年より発生のピークが遅いようだ。タモギタケは相変わらず、次々と発生している(c)。カラマツの根本に目をやると、ハナビラタケが散見される(d)。ほかにも、キイロスッポンタケは2ヶ月前と変わらず新鮮な個体をみることができた。倒れたカンバの脇では、相変わらずカバノアナタケが周辺に転がったままだった。 日光市に降りると、イグチの仲間がいろいろと出ていた。ムラサキヤマドリは若い個体(e)から傘の径20cmを超えるものまでみられ、まさに最盛期だった。ヤマドリタケモドキが数十本群生している姿は圧倒された(f)。大きなものは傘の径が30cmを越えていた。ほかにも少なくとも5〜6種類のイグチ、テングタケの仲間、ノボリリュウをはじめ小型の子嚢菌、何種類もの冬虫夏草に出会うことができた。 撮影すれば調べねばならない。よく知っている一部のきのこを除いて、調べるには持ち帰らねばならない。この暑さの中で多くのきのこを調べる元気はない。したがって、撮影したきのこは少なく、持ち帰ったきのこはさらに、ごくごくわずかである。 |
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近場のシイ・カシ主体の雑木林からイグチを持ち帰った(a)。傘表面はビロード状でクリ褐色、滑りはない。管孔は淡黄色で(b),傷つけるとわずかに青変するが(c)、やがて褐色になる(d)。柄はほぼ傘と同色だが、上部が淡色でわずかに網目状(b)。胞子紋は淡い黄色。 菌糸にはクランプがあり、胞子は紡錘状類円柱形で(e)、5%KOHで封入するとやや細身になるが、色などは変わらない。管孔部実質はヤマドリタケ亜型(f)。縁シスチジア(g, h)、側シスチジア(i, j)ともに中央部が軽く膨らんだ紡錘形。担子器の基部にはほとんどクランプは無い(k)。傘表皮の組織は、短い菌糸が絡み合ったような構造を示している(l)。 いくつかの検索表であたりをつけようとしたが、どこにもうまく落ちてくれない。属名にまでたどり着けない。今朝はこれから日光である。不明イグチに関わっている時間はない。手元に置いておくと面倒なので、これは廃棄処分することにした。 |
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今月末の7/27〜7/30に、全国のアマチュア菌類研究者・愛好家が集う一大イベントが、仙台キノコ同好会の協力を得て、仙台市泉が岳で行なわれる。幼菌の会が提案し、菌類懇話会をはじめ、各地のきのこ研究会から100名以上の参加が予定されている。 その会場で青木 実著「日本きのこ検索図版」が、製作実費で希望者に頒布されることになった。「 非売品」として扱うことになった経緯については、「きのこ屋」さんの「くさびら日記」の「音声ファイル その3(7月12日)」、「音声ファイル その2(7月1日)」、「音声ファイル(6月24日)」でうかがい知ることができる。製作部数は200部で、仙台会場での配布は100部。残りの100部についても、既にかなり予約が入っている。増刷りなどの予定はない。
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昨日の早朝、千葉県内房の富津市の浜辺を歩いてきた。砂浜にきのこは殆ど見られず、ごく僅かにややミイラ化したケシボウズの仲間がみられただけだった(a, b)。前回同地点を観察した6月5日には、少なくとも地表には何も見られなかった。最近40日の間に発生したものか、数ヶ月前に発生したが砂に埋もれていたものか、昨日の標本を見た限りでははっきりしない。孔口、外皮、胞子、弾糸などを見る限り、ケシボウズタケ T. brumale の可能性が高い。 まだ日差しの弱い早朝に外房へも回って見ようと思っていたのだが、あまりの熱さにグロッキー気味となり、内房の浜だけを観察して朝のうちに帰宅した。 |
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今の時期は、顕微鏡観察が難しいきのこがいろいろ出る。昨日夕方、埼玉県三芳町の雑木林からツルタケ、キツネノハナガサ等を持ち帰った。自宅に戻って紙袋を開くと、いずれも汚らしく水分が浸みだし、すっかり潰れて紙袋にへばりついていた。 あらかじめアイスボックスなどを用意してから採取すれば、自宅に帰り着くまで、傘やヒダの形を維持できるのだろうが、なかなかそううまくはいかない。したがって、いまだまともにヒダ切片を切り出せたことはない。今朝は、潰れたヒダから切り出しを試みた。 |
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ツルタケ |
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最初にツルタケからとりかかった(a)。胞子の観察だけは楽にできる(b, c)。問題は、ヒダ切片と傘表皮だ。テングタケの仲間は、ただでさえヒダ実質の切り出しは難しい。 グショグショに潰れているので、ピスは使えない。実体鏡の下で切ろうと試みた。しかし、重なったヒダをうまく切り離せなかった。やむなく、きのこの傘全体を台所の容器に水没させて、その中にカミソリを持ち込んで数枚のヒダを一緒に切り出した。 数枚のヒダ切片が表面に浮かび上がってきたので、その一枚を筆ですくい上げてスライドグラスに拾い上げた(d)。散開型のヒダ実質は崩れている(e)。傘が開いたばかりのしっかりした成菌ならば、うまく切り出すことはできるのかもしれない。担子器は、KOHで封入して軽く押し潰せばよいので、グショグショのヒダからでも、簡単に確認することができる(f)。 |
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キツネノハナガサ |
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キツネノハナガサにはほとほと参った(g)。このきのこは、野外でもちょっと強い風が吹くと簡単に倒れて傘も潰れてしまう。持ち帰った時、すでに傘表皮とヒダとの区別はつかなかった。適当に一部をつまみ出して胞子をメルツァーで封入した(h)。 つぎに、ヒダらしき所を何とか薄切りしてみた。数枚のヒダが重なっていたが、ひだ実質は並列型らしい(i)。薄膜の側シスチジアがある(j)。縁シスチジアの確認は楽だった(k)。KOHとフロキシンを使って担子器などを確認したついでに、側シスチジアを撮影した(l)。 今朝取り扱ったきのこやイグチ類、キクラゲ類などは、乾燥標本から切り出して観察するのが常道だ。ただ、自分たちに感心のあるごく一部のきのこ以外は原則として標本を残さないので、観察は基本的にすべて生標本から行うことにしている。なかには、今日取り扱ったきのこのように、生状態のままでは、プレパラート作成そのものが非常に難しいものもある。もっとも、乾燥標本から切り出しには、またそれなりの別の難しさがある。 |
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このところ、近場の公園や雑木林、笹藪などでロウタケをよくみる。目に付くのは汚肌色で、たいてい小さな虫がうようよしている。若い菌では、食べ残したヨーグルト、あるいは腐った牛乳を、草の根本にかけ捨てたようなすがたをしている(a〜c)。こんなものを初めてみたら、とてもきのことは思えず、手を出すのを躊躇してしまうだろう。 それを久しぶりに持ち帰ってきたので、とりあえずに胞子紋をとった。水(d)、メルツァー(e)、フロキシンで染め(f)て見た。グニャグニャなので子実層を切り出すのは案外やっかいだ(g)。倍率をあげると担子器が見えたが、未成熟かつ透明なために目が疲れる(h)。 あらためて成熟していそうな部分から子実層を切り出してフロキシンで染めた。担子器や側糸のようなものが多数みえる(i)。4つの部屋に分かれた担子器からは、それぞれの部屋から各々一つ担子柄が伸びる(j〜l)。この担子器をみると、シロキクラゲ科だと納得できる。シロキクラゲの担子器などとよく似ている(雑記2003.9.28、同2006.6.14)。 |
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一昨日川崎市で行われた菌懇会例会で、苔類の間からテングノメシガイの仲間が多数でていた(a, b)。表面には多数の剛毛がみられる。切断面を実体顕微鏡でみた(c)。子実層には子嚢と剛毛をはっきり捉えることができる(d)。メルツァー液を加えると子嚢先端がアミロイド反応を示した(e, g, h)。胞子の隔壁は、3つや5つもあるが、大部分が7つである(f)。 川崎市の例会の場では、検鏡結果からナナフシテングノメシガイ Trichoglossum walteri と採集票に書いた。しかし、顕微鏡の汚れなどのためか、側糸の構造を明瞭に確認できなかった。そこで、最終的には、Trichoglossum sp.と修正した。 今朝あらためて、側糸を確認してみた。先端がカーブし、やや縮れたようになっているところもある(i, j)。剛毛は80〜120μmもある。やはりこれは、ナナフシテングノメシガイとしてよさそうだ。この仲間は、顕微鏡観察なしでは同定はできない(雑記2006.6.12)。 |
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