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「キノコのフォトアルバム」の更新には面倒くさい作業が伴う。撮影した画像をアップするだけであれば、手間はさほどではない。一定のサイズに縮小した本体と、そのサムネイルを作成し、撮影年月日・場所のテキストとあわせてアップすればよい。 面倒なのは、その何枚かの写真追加に伴うインデックスの作成作業である。インデックスは、月日別・場所別・科別・学名順など、各々和英があるので計11種類となる。たった1枚の写真を追加しただけでも、これらのすべてに手をいれる必要がある。 作業を単純化するために、一つのプログラムでこれらすべての索引が更新されるようにしてある。ところが、対象となる写真はすでに数万点を超えている。同じ数だけサムネイルもある。したがって、索引作りには膨大な量のソート作業が必要となる。これが非常にメモリを食う。メモリ搭載量の少ないパソコンだと途中でハングアップしてしまう。 写真の総数が1万点程度の時までは、プログラムの実行時間は数分から10分くらいだった。しかし4万点を超える頃から20分以上かかるようになった。そこでソートのアルゴリズムを変更しプログラム改良した。6万点を超えた現在、それでも7〜8分を必要とする。 たった1枚の画像の追加でも、50枚の追加でも、インデックス作りの手間は同じである。しかも、その作業量と作業時間は、1枚でも50枚でも変わらない。おのずと、まとめて作業をすることになる。図鑑的要素の強いサイトで更新頻度が低いのにはもっともな理由がある。 今日は泊まりででかけるので、明日の雑記はお休みである。よいお年を! |
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昨日早朝から午前中にかけて、奥多摩南部の石灰岩地帯、とくに養沢川周辺を歩いてきた。気温は終始零度以下で、川の水しぶきがかかるようなところでは、枝が氷って綺麗な姿をみせてくれた(a, b)。今回も、目的のきのこには出会うことはできなかった。一部の硬質菌を除くと、きのこの姿はほとんど見られず、わずかにチャムクエタケ近縁種や成長の悪いニガクリタケしか出会うことはなかった。いずれも凍っていて触るとヒダが割れてしまった。 今にも消え入りそな草茫々の林道をドン詰まりまで進むと、沢の上流の湿地にたどり着いた。そこでは糸のようなコケが、あちこちの木の枝から長く垂れ下がり、足下の落ち葉には、到るところに微小な葉上着生苔が着いていた(c, d)。きのこが全くないので、この微小苔類のついた葉を7〜8枚ほど持ち帰った。きのこがないときはコケの観察も結構楽しいからだ。 |
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12月27日の雑記で、アルバムへの掲載基準について書いたが、自らの同定能力を超えたきのこが扱われることはない。いくら調べても同定できないわけであるから、たとえ和名があってもそこにたどり着けない。したがって、アルバムに掲載されることもない。また、日本新産種など学名はあっても和名のないものは原則として掲載しない。だから仮称のまま掲載するのは、すでに広く使われているなど、あくまでも特定のものに限ってきた。 さらに、掲載されたキノコは、必ずしも発生時期を正しく反映しているわけではない。その一例がウッドチップに発生するキノコである。ウッドチップからは、季節に関係なく、雨さえ降ればほぼ通年発生するきのこがいくつもある。雨すら無関係に発生するものもある。 シロフクロタケ、クズヒトヨタケ、ハタケチャダイゴケ、ハタケキノコなどはその好例である。シロフクロタケは4・5・10〜12月、クズヒトヨタケは1・5・6・9・10月、ハタケキノコは5・7・10・11月に取りあげている。ハタケチャダイゴケに到っては2〜4月以外のすべての月に掲載されている。しかし、これらは、ほぼ毎月見ているのだが、たまたまそのときの気分で撮影したに過ぎない。 また、「ご禁制品」、つまり法令で取り締まり対象となってしまったきのこは原則としてとりあげない。かつては10種類ほど掲載してあったが、法令施行にともなって、削除した。一部がわずかに残ってしまっているが、これらの画像を追加することはもはやない。 |
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12/25日に高尾山で採取したニガクリタケを覗いてみた(a)。いままであまり認識していなかったが、KOHを足らすと傘表皮だけではなく、ヒダも茎も褐変する(b)。胞子紋は暗紫褐色だが、胞子を水で封入すると胞子紋と似たような色に見える。胞子は平滑で発芽孔を持っている(c)。これをKOHで封入すると胞子の色が明褐色に変わる(d)。 久しぶりにニガクリタケのヒダを切り出した(e)。水をKOHで置き換えると、色が褐色に変わるとともに全体が扁平になった(f)。ヒダ先端には鈍頭棍棒状の縁シスチジアがある(g, h)。ヒダの側にはクリソシスチジアが見られる(i, j)。 組織にはクランプがあり、担子器の基部にもクランプがみられる(k)。傘上表皮は、クランプがあり表面に粒点状の色素を帯びた菌糸が平行に走っていて、その下には偽柔組織のような構造がみられる(l)。ニガクリタケは過去にも何度か観察しているが、傘やヒダ、柄などにKOHをたらして変色性を確かめたのははじめてだった(雑記2006.3.30、同2005.11.15、同2003.3.3)。 |
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10月31日以降「キノコのフォトアルバム」をずっと更新していない。11〜12月にも、エノキタケ、ヒラタケ、ハタケキノコなどには出会っているが、新鮮味がないので掲載していない。他にも、現在までアルバムに掲載したいきのこがほとんどないことによる。「キノコのフォトアルバム」への掲載は、原則として次の3つの条件を満たすものに限定してきた。
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昨日都民のオアシスとして親しまれている高尾山を歩いてきた。山頂の案内はそのままだが(a)、周囲は正月に備えて到るところで工事が行われ、薬王院は初詣の準備で忙しい。小さな社もすっかり正月に備えて模様替えしている(b)。 きのこの影は薄い。沢沿いの湿った地域にのみわずかにきのこの姿がみられる。ニガクリタケは時期を問わず見られる(c, d)。腐朽してコケに被われた杉の立ち枯れから小さなきのこが出ていた(e, f)。胞子紋は白色で、胞子は非常に小さく、平滑な卵形でアミロイド。このふたつが昨日見た数少ないハラタケ目きのこだった。 それにしても高尾山の表参道(1号路)の急なことには驚いた。高尾山には最近5年ほどのあいだに数十回ほど訪れているが、表参道を歩いたのは数十年ぶりのことだった。下ってみてこんなに急だったことをはじめて知った。 |
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一昨日千葉県内房の浜で出会ったケシボウズについての補足的メモである。従来は、しばしば水をかぶったり、常時湿っている場所ではケシボウズの仲間はほとんどみられなかった。ところが、思いがけない場所で出会ったのが土曜日だった。 内房に限らず外房でも、浜の一画には藍藻類のイシクラゲ Nostoc commune に被われた一帯が広がっている。こういった場所は、しばしば海水を被ったり、低地で湿気が高く、常時ジメジメしていることが多い。乾燥を好むケシボウズはこういった場所ではあまりみられない。 これまで、千葉に限らず多くの海浜でイシクラゲをみているが、イシクラゲが広く分布する場所でケシボウズを見たことはなかった。一昨日驚いたのは、乾燥してかさぶたのようになったイシクラゲの間から、ケシボウズタケ(c, d)がかなり多数でていたことである。ここは11月3日にも観察しているが、そのときにはブヨブヨのイシクラゲしか見られなかった。 さらに11月3日には何もなかった場所に、いくつものナガエノホコリタケ(or アラナミケシボウズタケ)が発生しているのを確認した(a, b)。写真は1週間以内に発生したと思われる個体で、外皮の剥離が不完全で頂孔は開口しておらず、柄は太くしっかりしていた。また、Tulostoma kotlabaeと思われるものも、新たに発生していた(e, f)。 |
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昨日の早朝、千葉県内房の浜を歩いてきた。今年は12月に入ってもとても暖かい日々が続いているが、さすがに早朝の海辺は寒く、一面に霜がおりていた。浜のうちでも比較的風の通らない場所には、スナヤマチャワンタケが出ていた。 一方、一面に霜で真っ白になった場所では、つい最近発生したと思われるケシボウズタケ属のきのこがかなり出ていた。いずれも、頭部は霜ですっかり被われていた。ナガエノホコリタケ(or アラナミケシボウズタケ)は、最近1週間から1ヶ月ほど前に発生したようだ(c, d)。小さな姿のケシボウズタケ(or T. kotlabae)は1ヶ月から2ヶ月ほど前に発生したと思われる個体がやけに目立ち、つい最近発生したと思える個体は少なかった。 早朝には風がほとんどなく、気温もマイナス2〜3度で穏やかな海だった。太陽が昇ると急激に気温はあがり一気に4〜6度となった。そして、たちまちのうちに霜はとけてなくなった。 |
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昨日の雑記で、「押し潰し観察」とは、「組織をバラして観察」することに他ならない、と書いた。基本的には、組織の形状をなるべく変形せず、サイズ変化を最小限に保ったままバラすことが理想となる。しかし、目的によっては、形態変化は全く問題とならない。 その典型的な場合が、硬質菌における菌糸型の確認だろう。原菌糸だけから構成されているのか、あるいは、骨格菌糸や結合菌糸をもっているのか。この確認が目的であれば、菌糸が潰れて扁平になろうと、直線的な菌糸が渦を巻き捻れても、それは問題とならない。 厚膜菌糸は、潰れても厚膜のままである。隔壁を持った菌糸は潰れても隔壁を持っている。だから、潰れようと捻れようとかまわない。いかに観察しやすく薄く広げるかがポイントとなる。
菌糸型の確認については、過去の雑記で執拗にやっているので、それを参照されたい。 |
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タマキクラゲを使って押し潰しをやってみた。関東地方では今の時期どこでも見られる。最初に、グニャグニャの生から切り出した(a, b)。生からの切り出りはかなり難しい。だから、そのような馬鹿げたことに無駄な労力を費やすよりも、(半)乾燥状態にして切り出すのが賢明だ。(半)乾燥状態からならば、(a)、(b)程度の厚さに切り出すのはとても簡単だ。 |
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せっかく薄切りができても、そのままでは担子器の観察は難しい(c)。目的を担子器の形態観察としてみた。最初から薄切りなどせず、敢えてハサミで適当な厚みに切り取った(d)。もっと厚くてよい。これをベースに組織をバラした。なお、以下すべてフロキシンで染めている。 キクラゲの仲間では厚いゼラチン質に邪魔されて、簡単には組織をバラせない。割り箸の先で、カバーグラスを左右に細かく動かして、組織を広げるように力を加えた。すると、菌糸部分とゼラチン部が分離する。そこで、カバーグラスを外して、ゼラチン部分をピンセットで取り除いてから、再びKOHを加えてカバーグラスをかぶせた。この状態で検鏡したのが(e)、(g)である。 再び軽い力で、カバーグラスを左右に揺するように力を加えて、組織を均質に広く薄く伸ばした。再び検鏡してみると、重なり合っていた担子器はバラバラになった((e)→(f)、(g)→(h))。ゼラチン質の厚い層がなくなった分だけ、重なり合いを解消するのが楽にできる。 適度の加圧で組織をバラせばよいのだが、「適度の加圧」には慣れが必要かもしれない。そこで、力を加えすぎるとどうなるかを示してみた。少し力が強すぎると、組織の内容物が外に飛び出しはじめる(i, j)。さらに力を加えると、次々に破壊が進む(k, l)。 「押し潰し観察」とは、「組織をバラして観察」することに他ならない。潰してペシャンコにしてしまったり、組織を扁平状態にしてしまうことは、避けなくてはならない。そのためにも、「潰す」のではなく「バラす」つもりで、圧を加えることが必要だ。 |
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薄片を切り出さないと顕微鏡観察の難しいものは多い。しかし、押し潰さないと観察の難しいものもある。シスチジアや担子器のサイズを測るには、薄切り切片では難しい。また担子器の基部のクランプの有無や、硬質菌の菌糸型の確認をするには、押し潰しによるプレパラートが必須となる。問題は、押し潰しをするときの力加減と方法だろう。 「押し潰し」とはいっても、組織を破壊してしまったり、形態を大幅に変えてしまっては、寸法を計測したりできない。押し潰す目的は、観察しやすいように組織をバラすことにある。したがって、組織をバラバラに分解しやすくするための工夫が必要となる。 水で封入したものに力を加えると、組織がバラされる前にペシャンコに潰れてしまう。したがって、押し潰し観察では基本的にKOHで封入することになる。3〜5%程度を使うが、硬質菌の菌糸型の確認であれば、10〜20%の方が楽なことも多いようだ。次に、カバーグラスの上から力を加える。組織を破裂せず、重なり合わぬよう、力の加え加減と方向に注意が必要となる。ふだんやっている方法を以下に記してみた。
最初に、上から軽く力を加える。これだけで組織がバラバラになるきのこもある。KOHの濃度を上げると、弱い力ですぐに全体がバラバラになる。その反面、シスチジア先端の結晶物等はすぐに溶けて消失してしまう。また、担子器の柄もKOH濃度によっては消失してしまう。 |
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