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2006年5月10日(水)
 
キクラゲ類のこと (a)
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(b)
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 キクラゲ類は雨の後でないとなかなか見つけにくい。持ち帰っても、ポリ袋やタッパウエアなどに入れっぱなしにしておくと、すぐに腐ったり雑菌に侵されてしまう。雨後の現地で瑞々しかったもの(a)も、一日室内に放置しておくと、ペシャンコになってしまう(b)。しかし、ペシャンコになったものでも、再び水没させてしばらくすると、元の姿に復元する。
 キクラゲの仲間の取扱いについては、雑記2006.1.26にも記したが、ここにも別の一節を収録しておこう。青木孝之氏が「くさびら 第10号」(1988)に投稿された記事の一部である。
(前略)
ごく一部の種を除いては、本菌群の同定は野外での観察のみでは基本的に不可能である。前述のとおり、子実体の外形は種の分類の形質としては不十分なものであり、同定の正確さを期すためには、子実体断面の顕微鏡下での観察がぜひとも必要となる。
(中略)
 採集したばかりの材料はかなりの水分を含んでいる場合が多いので、乾いた新聞紙やペーパータオルなどにつつむとよい。ビニル袋は水分がぬけにくく、蒸れやすいので、子実体は急速に腐敗する。
 採集を終えて、宿その他に持ち帰った材料は1つ1つ包みを解いて、できる限り風乾する。十分な乾燥が必要であるが、乾燥した状態で数ヶ月生きているので、熱はかけるべきではない。液浸標本より乾燥標本のほうがはるかに保存性がよいため、子実体が付着している基物ごと適当な大きさに切断して、表本箱や標本袋に収めることが勧められる。採集記録は必ず添付しておく。
(以下略)

2006年5月9日(火)
 
(a)
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(b)
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(c)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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 先日千葉県九十九里浜の防風林に多数出ていたイグチの仲間を覗いて楽しんだ。2時間ほどで緑褐色系の胞子紋がとれた(a)。まずは、カバーグラスに採取したものをそのまま(b)、ついでエタノールで封入してみた(c)。水で封入すると若干黄色みが強くみえるがサイズは変わらない。
 大きな孔口部は薄切りがやりにくい。最初に簡易顕微鏡にデジカメを押しつけて撮影した(d)。拡大してみると、子実層には胞子が団子状にかたまっていた(e)。更に倍率を上げると担子器らしき姿もみえてくる(f)。管孔の縁には縁シスチジアがところどころに束生している(g, h)。
 3%KOHで封入してフロキシンを加えて組織をバラした。縁シスチジアは結構細長い(i, j)。担子器の基部にはクランプは無い(k, l)。傘表皮は平行に菌糸が走る。傘肉、柄などの組織にもクランプは見つからなかった。なお、きのこを熱湯に通すと赤紫色に変色した。アミタケとしてよさそうだ。キノコ本体とメモ用紙裏に採取した胞子紋は捨てた。

2006年5月8日(月)
 
(a)
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(b)
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(k)
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(l)
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 ゴールデンウイークの3日に日光のモミ林で、ゼラチン質で黄橙色のきのこを採取した。一見したところまるで、ズキンタケを思わせるような姿である(a, b)。今朝はこれを覗いてみた。
 子実層をみると、子嚢菌ではなかった。どうやらアカキクラゲ科のキノコらしい(c, d)。胞子はソーセージ型で、隔壁で仕切られた4つの細胞からなる(f)。それぞれの細胞からは分生子ができ始めているものもある(e)。担子器は成熟すると音叉の様な形になり(g)、基部にはクランプが見られる(h)。クランプはゼラチン質部分の菌糸にも見られる(i)。
 何とも興味深い組織が見られる。菌糸の先が枝分かれして、その先にウチワあるいは電球のような形の組織が付いている(j)。フロキシンで組織内部を染めてみた(k)。次にコンゴーレッドで組織の外側を染めてみた(l)。これは何なのだろうか、Dacrymycesにはない特徴だ。

2006年5月7日()
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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 昨日千葉県の内房の浜から初めて、外房の浜を数ヶ所、茨城県の浜を観察してきた。走行距離480km。前回千葉に出向いたのは2月12日だったので、2ヶ月弱経過している。この間に、内房の浜では小さなケシボウズタケ属のきのこが多数発生していた(a, b)。
 外房九十九里の浜では、この間にはケシボウズタケ属はほとんど発生していなかった様子で、ウネミケシボウズタケのミイラだけが見られた(c)。発生から数ヶ月経過している。砂浜に近いクロマツ防風林樹下には、イグチの仲間が多数でていた(d, e)。
 茨城県の浜では砂丘が大きく移動していて、数ヶ月前にナガエノホコリタケの見られた場所はすっかり砂の下だった。数ヶ所の神社に寄ってみたが、カンゾウタケはまだ幼菌がやっと発生したばかりだった(f)。切断面にシモフリ模様はあるが、胞子は全くできていなかった。

2006年5月6日()
 
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(l)
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 5月4日の午後、栃木市にある出流山満願寺の奥の院(l)周辺を歩き回った。周辺は石灰岩地帯であり、奥の院に祭られる観音様は鍾乳洞の石筍である。目的のきのこには今回も出会えなかったが、スギの腐朽木からフクロシトネタケがでていた(a, b)。
 フクロシトネタケの子嚢胞子は、両端の嘴状突起と表面の疣状ないし網目状の模様が特徴的である(c, g, i)。側糸は先端がやや膨大して、黒褐色の色素顆粒がみられる(c)。胞子を水で封入して、そのまま(g, h)、あるいはフロキシンで染めて(i, j)みる限りは、胞子の両端の尖った嘴状突起は明瞭である。しかし5%KOHで封入するとにわかに様子が変わる。
 子実層をフロキシン入り5%KOHで封入してみた(d, e)。ちょっとみたところ、嘴状突起もみえず、胞子も平滑に見える(e)。しかし、よくみると、胞子表面には膨潤肥大したような透明な被膜がみえる(f)。さらにKOH濃度を高くすると、その被膜のようなものも全く見えなくなる。なお、コンゴレッドで染めると、嘴状突起の部分と表面の一部だけが染色された(k)。

2006年5月5日()
 
(a)
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(e)
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(f)
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 仲間7人で日光を歩いてきた。予測通り3日の高速道路の渋滞は凄まじいものがあった。ほぼ同じ時刻に首都圏を出たにもかかわらず、一般道を利用して行ったOさんは、am7:00には現地に到着し、東北自動車道を使ったメンバーが到着したのはam9:00過ぎだった。
 この冬の積雪の多さは、日光も例外ではなかった。シャグマアミガサタケの発生状況はとても悪い(a, b)。若い菌が多く成熟個体は少なかった。オオシャグマタケも同様で、まだ小さなものや未熟個体ばかりだった(c, d)。
 オオズキンカブリは、まだほとんど出ておらず、ごくわずかに小さな幼菌が一部にみられたのみであった(e)。テンガイカブリにいたっては、柄を伸ばした個体は一つも見られなかった(f)。これらが、本来の大きさに成長して成熟するのはまだ10〜2週間ほど先になるのではあるまいか。

2006年5月3日()
 
(a)
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(c)
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(e)
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(f)
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 オオズキンカブリといえば、巨大胞子と2胞子性子嚢で特徴づけられる。先日採取してきたものにも、未熟個体から完熟個体までいろいろあった。未熟個体では胞子が形成されていない。老熟個体では、整った子実層はほとんど見られず、子嚢はバラバラになっている。
 胞子の巨大さは、一度見てみるとびっくりする。普通のルーペでも胞子を確認できる。顕微鏡でも、対物4倍(a)、同10倍(b)、同20倍(c)で十分観察できる。一般のきのこのように油浸100倍レンズでみると、一つの胞子だけで視野は一杯になってしまう(d)。
 胞子が巨大だからだろうか、一つの子嚢に胞子は普通二つしか入っていない(e)。中にはやや小振りの胞子を3つないし4つ含んだものがたまに見られる。側糸は、隔壁を持った細長い均一の太さの紐状をしている(f)(雑記2004.4.15同2003.4.29同2002.4.20)。

 今日から明日、友人等と日光に出かけるので、明日の雑記はお休みである。シャグマアミガサタケは確実に出ているだろうが、テンガイカブリタモギタケはどうだろうか。

2006年5月2日(火)
 
(a)
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(j)
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 見沼地域に連なる川口市北部に、わずかな原野が保護地として残っている。夏のような暑い午前中、保護地の草地に小さなきのこがポツンポツンと(孤生)いくつか出ていた(a, b)。外見からはナヨタケ属を疑わせる。草地に続く焼け跡からも同じきのこが出ていた。
 胞子を水(c)、3%KOH(d)、濃硫酸(e)で封入してみた。ヒダを切り出した(f)。ヒダ実質部は心持ち平行気味に錯綜している(g)。側にも(h)、縁にも(i)薄膜のシスチジアがある。フラスコ型、便腹型、紡錘形などをしていて、側シスチジアの方がやや大きい(j)。シスチジアの先端付近は細かな泡で濁っている。担子器の基部にクランプはなく(k)、傘上表皮は楕円形やら球形の組織が並ぶ(l)。どうやらウスベニイタチタケの近縁種らしい(雑記2004.11.4同2003.4.20)。

 平成18年度「菌類の多様性と分類」 前期講座締切が近づいた。ハガキによる申込が原則で5月10日必着となっている。講座内容などの概略はお知らせにも書いた。事務局の布村氏か近藤氏に連絡すれば申込ハガキを送ってもらえる。ハガキによる申込が間に合わないなど、期日近くになった場合は、メールで受け付けてもらえるようだ。

2006年5月1日(月)
 
(a)
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 近場の公園のウッドチップから今朝もシロフクロタケが出ていたので持ち帰った。少々痛み始めており、黄色みがかり全体にかなり水っぽい。ヒダを切り出したが、ヒダの側に小さな水泡ができてしまう(a)。顕微鏡に載せたまま、カバーグラスの縁からフロキシンを注ぐと、縁が赤く染まった(b)。倍率を上げてひだ実質を見ると、きれいな逆散開型の組織がみえた(c)。子実層には担子器がきれいに並んでいるが、基部の構造はわからない(d)。水での封入はここまで。
 再び顕微鏡に載せたまま、カバーグラスの縁から5%KOHを注いだ。フロキシンも追加した。カバーグラスの反対側に吸い取り紙をあてて余分な液を取り除いた。顕微鏡を覗いたまま、スライドグラスを枝付き針で軽くつつくと、組織がバラバラになって、シスチジアや担子器の全体像をみることができた(e, f)。サイズ計測は油浸100倍対物レンズで行う(g, h)。
 胞子を眺めた。最初は対物40倍(i, j)、次に油浸100倍(k, l)。(i)と(k)は、マウント液なしの状態を模してみたものだ。やってみると分かるのだが、いわゆるドライマウント状態で鮮明な映像を得るのは意外と難しい(雑記2005.5.23)。

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