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北海道の海浜生菌類の調査のため、10月8日から10月15日まで、「今日の雑記」を休みます。カメラ・顕微鏡は担いでいきますが、目的地周辺はいずれもネット接続環境の全くない地域ゆえ、日々の更新は無理と判断しました。 当初は、6日夜の出発のはずだったのだが、台風16号の影響で予約していたフェリーが欠航となってしまった。このため、出発を一日ずらすことにした。 |
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本来なら今朝は苫小牧行きフェリーの中にいるはずだったのだが、台風16号の影響で欠航となってしまった。このため、急遽この雑記を記すことになった。北海道への出発は、フェリーが無事に動いてくれれば今夜になる。
海浜で出会ったヌメリツバタケについてのメモである。砂浜の草地に捨てられたブナ科枯れ枝からでていたもので、海水をかぶって濡れていた(a, b)。まさか、こんな環境にヌメリツバタケが発生しているとは思いもよらなかった。水しぶきをかぶる環境である。 |
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「お知らせ」に菌学教育研究会「菌類の多様性と分類」後期講座の日程を掲載した。11月10日(金)〜13日(月)につくば市の研究会施設で行われる。研究会の会員には先月既に案内が届いているようだが、非会員でも参加できる。申込締切は10月30日(ハガキ必着)となっている。
久しぶりに「キノコのフォトアルバム」をじっくりと見る機会があった。ここには、撮影を開始した1999年5月から最近までの画像が掲載されている。いわゆる「きのこ狩り」には全く関心が無いし、関心のあるきのこにも強い偏りがあるので、きのこ一般の発生傾向を反映したものとはなっていないだろう。当然のように、そう思っていた。 今夜大洗港から出発、夕方には川口市を出立しなくてはなるまい。目的は北海道の海浜生菌類の調査。多少気になるのは台風の接近だ。フェリーが欠航にならなければよいのだが。 |
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海辺の砂地に出るきのこの検鏡は難しい。先日持ち帰ったナヨタケ属のキノコを調べるのにひどく難儀した(a, b)。胞子紋は3年前のものと同じく黒褐色(雑記2003.6.9)。胞子もその時のものと同じように見える(c)。濃硫酸で封入すると胞子の壁や発芽孔が明瞭になった(d)。 砂地生きのこでいつも手こずるのはヒダ切片の切り出しだ。何回も切り出しを試みたが、結局今回もやはり上手く行かなかった(e)。微細な砂粒がカミソリの刃をすぐにボロボロにする。おまけにナヨタケ属のヒダはとても脆くて潰れやすい。 子実層托実質は並列型(f)。ヒダの側には厚膜で先端にクリスタル結晶を帯びたシスチジアが見られる(g, h)。縁シスチジアには2種類あり、側シスチジア同様のタイプと、薄膜で先端に結晶をもたないものとである(i, j)。担子器は面白い形をしている(k)。傘上表皮は類球形の組織が不規則な層をなしている(l)。 3年前の砂地生ナヨタケ属(雑記2003.8.15)と検鏡結果はほぼ符合する。ちなみに、スナジクズタケ P. ammophila (Dur. & Lev.) Orton には、先端に結晶構造をもったシスチジアはなく、胞子に関しても、類菱形ではなく卵形をしている。このきのこは、発生環境や姿形はスナジクズタケそっくりだが、スナジクズタケとは別種のPsathyrella属菌である。千葉の海岸にはとても多い。 |
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ニクアツベニサラタケと同じ腐朽木についていたオオゴムタケはそのまま捨てるには忍びないので、遊ぶことにした。普通の観察記録は、雑記2002.10.6、同2006.6.8参照。 |
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子実層染色 |
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子実層を切り出して水で封入するだけで充分観察できるが(a)、この際なので何枚か切り出して、メルツァー(b)、コンゴーレッド(c)、コットンブルー(d)、フロキシン(e)で染めてみた。コットンブルーによく染まるようだ。なお、子嚢頂端周辺は非アミロイド。 |
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胞子表面 |
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油浸100倍対物レンズで、子嚢先端付近の成熟した胞子を眺めてみた。保育社「原色日本新菌類図鑑(II)」に「(子嚢胞子)表面にはコットンブルーで青色となる疣状突起があり」とあるが、水(f)でも、メルツァー(g)でも、コンゴーレッド(h)でも、コットンブルー(i)で染めたものとあまり変わりない。フロキシンで染めた場合は表面の疣はみにくくなった(j)。
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子嚢の蓋 |
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顕微鏡を覗いていると、突然子嚢胞子が飛び出してくる場面にしばしば出会う。その周辺をみると子嚢の蓋が開いている。そこで、子嚢先端の蓋が明瞭に分かるものばかりをいくつか集めてみた(k〜o)。すべてフロキシンで染めたものである。 |
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外縁の毛 |
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オオゴムタケの托外皮層や子実層の外縁には暗褐色の毛が多数生えている。これをピンセットではぎ取って(p)、その一部を拡大して覗いてみた(q〜t)。合焦位置を徐々に下げて、毛の表面から輪郭部までをみられるようにしてみた。 なお、一般に顕微鏡観察では、微動ノブで合焦位置を少しずつ変えながら全体像を把握するのが原則であり、焦点を固定したまま観察する場合がむしろ例外的なものだ。 |
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チチタケの仲間の検鏡はどうにも苦手である。どの部分を切り出しても、乳液のせいか、カミソリが直ぐに切れなくなってしまう。たまたま、先日ウズハツを持ち帰ってしまったので、仕方なしに検鏡した。ウズハツであることの確認が目的だった。 とりあえず胞子を水(a)とフロキシン(d)でみたあと、お決まりのメルツァー液で表面の突起を確認した(b, c)。ここまではカミソリは不要なので気が楽である。覚悟を決めてヒダ切片を切りだした(e)。側シスチジアが明瞭に分かる。カミソリが乳液でベットリする。 子実層托実質を確認したのち(f)、フロキシンを加えると側シスチジアが明瞭に染まった(g)。再び切片を切り出すと乳液が出てきて、子実層も紫色に変色した(h)。フロキシンで染めて3%KOHで置き換え、シスチジアと担子器のサイズを計測した(i)。 担子器はとても大きいので、油浸100倍対物レンズでみると、やっとのことで視野に入った(j)。傘表皮を切り出そうとしたが、カミソリの刃を替えないとダメだった。水でみた傘表皮は何がなんだかまるで分からない(k)。改めて、3%KOHとフロキシンを使って確認した(l)。 |
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先週千葉県内房の浜でであったケシボウズについてのメモである。ケシボウズの写真を載せるのは久しぶりだ。定点観測をしていた場所には、新たにナガエノホコリタケが数十個体ほどでていた(a, b)。柄が太くしっかりしており、強くつまむと汁が出るから、発生から2週間は経っていないだろう(d)。頭部にコウボウムギらしき植物が貫通しているものもあった(c)。 ケシボウズタケ Tulostoma brumale と T. kotlabae は相変わらず混在して発生し続けているようだ(e)。さらに、これまでは見られなかった場所でウネミケシボウズタケ T. striatum がいくつも出ていた(f)。内房の浜とは対照的に、外房では一つの個体も見られなかった。 |
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キシメジ属のきのこは顕微鏡で見ても単調で、あまり面白みはない。たいてい、胞子は単調、シスチジアはない。だから、いくら顕微鏡を覗いてみても、同定の手がかりになるようなものはほとんど得られない。軽い毒があるとされるカキシメジを覗いてみた。 胞子は小さく非アミロイド(a)。ヒダ切片を切りだしていくら見ても、どこにもシスチジアなどはない(b)。子実層托実質は並列型(c)、ヒダの先端にも特筆すべきことはない(d)。粘りけのある傘上表皮は、組織が匍匐状から類平行型に走っている(e)。担子器の基部には、時折クランプをもったものも見られるが、多くはクランプを持たない(f)。 カキシメジは比較的しっかりしているので、ヒダ切片などを切り出したりする練習にはよいかもしれない。このカキシメジは非常に程度が良かったので、ゆでこぼして食べてしまった。しかし、普通は中毒するので、わざわざ食べるなどすべきではない。 |
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