Top  since 2001/04/24 back


日( )


2006年9月30日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 先日持ち帰ったシロオニタケ(a)とタマシロオニタケ(g)についてのメモである。この雑記にメモとして残したつもりだったのだが、すっかり忘れていたので今朝アップしておくことにした。
 この両者については、光学顕微鏡レベルではほとんど区別することができない。胞子は両者ともアミロイドであり(b, h)、子実層托実質も散開型である(c, i)。水で封入すると実質部にエアが残ってしまい、なかなか上手く実質部を撮影することができない。
 担子器(d, j)、ツバの組織(e, k)、傘上表皮(f, l)ともに、両者の違いを認識させられるような違いはみられない。ただ、今回観察した個体に関しては、タマシロオニタケの担子器には、全般的に大きなものが多かった。この両者の区別に関しては顕微鏡は全く無力であった。

2006年9月29日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日久しぶりに千葉県の内房と外房の海浜を歩いてきた。砂地の植物は例年になく元気がよく、とても9月末とは思えない。海浜でも蚊の襲撃に悩まされた。
 内房富津市の浜ではコナガエノアカカゴタケが多数出ていた。ざっと数えて30数個体はあった(a〜f)。砂の中から出てきたばかりのもの(d)やら、背丈15cmほどのもの(b)、カゴの網目の数が5つほどしかないもの(f)や、カゴが異様に大きなものなどもあった。一ヶ所でこれほど多数の個体に出会ったのは実に久しぶりのことだった(雑記2002.10.25)。
 他にはナガエノホコリタケ、ウネミケシボウズタケ、ケシボウズタケ、スナジクズタケなどがでていた。また、浜に通じるイネ科植物の中に捨てられた広葉樹の枯れ枝からはヌメリツバタケが多数でていた。外房の浜ではきのこの姿は一切みられなかった。

2006年9月28日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 ニクアツベニサラタケについては、長年気になっていることがある(a)。子嚢胞子表面にみられる長径に沿った縦スジのことである。いったんそれは脇において、とりあえず胞子紋から採取した胞子(b)、子実層(c)なども撮影した。子嚢胞子頂部は非アミロイド(d)である。
 落下胞子の表面に合焦してみても、なかなか胞子表面のスジはよくわからない。ふだんスジを確認できるのは、子嚢の内部に入った状態で、なおかつ子嚢胞子表面に合焦したときだけであった。今朝もそれをいくつかの染色剤を用いてやってみた。
 水で封入しても何となく縦のスジは分かる(e, f)。フロキシンとKOHでは少し明瞭になる(g, h)。コンゴーレッドも効果は薄い(i)。コットンブルーはまるで無駄だった。ハーバード大学の標本サイトには縦スジのみられる画像がアップされている(光学顕微鏡像SEM画像)。微分干渉顕微鏡を使うなり、斜光照明を工夫すれば、この表面模様を明瞭に捉えられるのだろうか。
 側糸を確認していると、子嚢の頂孔が開いている姿がやけに目立ったので、側糸の撮影を兼ねて、開いた頂孔を何枚か撮影した(j〜l)。以前の雑記(2003.10.28)では、胞子表面のスジを確認できなかったために、ニクアツベニサラタケではないとしているが、この判断は誤っている。

2006年9月27日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 栃木県で採取したカレエダタケを冷蔵庫に入れたまま忘れていた。けさは、二ヶ月ぶりに再びカレエダタケを覗いて楽しんだ(雑記2006.7.24)。カレエダタケにこだわるのは、担子器の二次隔壁について、長いこと思い違いをしていたからである(同2006.7.23)。
 改めて胞子を水(b)、メルツァー(c)、フロキシン(d)、コンゴーレッド(e)で封入してみた。次に担子器をいくつも確認することにした(f〜l)。多くの担子器には二次隔壁はない(f, g)。二次隔壁を持つと言われれば、そのようにも見えるケースもある(h)。誰がみても明瞭な二次隔壁を持つ担子器は全体からみれば数パーセントから十数パーセントである(i〜l)。

 近場でも、わざわざ遠出をしてもきのこがとても少ない。したがって撮影しない、持ち帰らない。一方、以前持ち帰ったきのこが、まだ何種類も冷蔵庫に入ったままになっている。へたをすると、「雑記」はしばし退屈な検鏡メモばかりになってしまうおそれが大きい。


2006年9月26日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 例年ならきのこ最盛期というのに、ここ関東地方ではきのこの影が薄い。先週の日曜日に持ち帰ったきのこがまだいくつか残っているので、今朝はそのうちからワタカラカサタケのように見えるきのこ(a, b)を調べてみた。冷蔵庫に保管したおいたものをみた。
 この仲間は外見だけでは判断を誤りやすい。胞子紋は白色。最初に水で封入したが目が疲れる(c)。フロキシンで染めると明瞭になった(d)。偽アミロイドである(e)。
 持ち帰って日にちが経っていることもあり、ヒダ切り出しはなかなかうまくいかない(f)。子実層托実質は並列型(g)。ヒダの縁には偽担子器のようにも見える縁シスチジアがある(h, i)。担子器の基部にはクランプを持つものが多かった(j)。傘上表皮は匍匐性のもの(k)やら、立ち上がって絡み合ったようなものが混ざり合っている。ワタカラカサタケとしてよさそうだ。

2006年9月25日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 先日ハナホウキタケかもしれないと思って持ち帰ったきのこのメモ(a)。現地でみたときはハナホウキタケだろうと思ったのだが、子実層を傷つけても変色しなかった。枝の部分にFeSO4をかけると、少しずつ青変しはじめた(b)。したがって、ホウキタケ属には間違いない。
 胞子をコットンブルーで染めると、表面は疣に覆われている。地上生で一菌糸型、クランプを持つ(f)ので、Laeticolora亜属であることは間違いない。保育社「原色日本新菌類図鑑」(II, p95)を単純に適用すると、コホウキタケ Ramaria botryoides に落ちる。しかし、どうもおかしい。
 ホウキタケの仲間にまで手を出すと収拾がつかなくなる。Ramariaに関する文献もほとんど持っていない。そうなると、この標本は仙台のAさんに送るのが適切という結論になった。

2006年9月24日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日、秩父の武甲山中腹の石灰岩地を歩き回った。林道や杉林ばかりではなく、石灰岩採掘跡も目を皿のようにして歩いたのだが、目的のきのこには出会うことはできなかった。発生時期が違うのか、あるいは、たまたま探した場所では発生しないのか、今はまだ分からない。
 途中で出会ったきのこでは、ハラタケ属、キツネノカラカサ属の両者が圧倒的に多かった。美味しそうに見えるカキシメジ(a, b)やウズハツ(c, d)が大きな群落を作っていた。例年だと、多くの優秀な食菌が発生するのだが、昨日はそれらには全く出会うことはなかった。
 秩父地方でも、きのこは種類・発生量ともに非常に少なく、上記の他によく目立ったのはベニチャワンタケ(e)、ニクアツベニサラタケ(f)であった。写真(f)の左下にはオオゴムタケがみられる。先週金曜日の神奈川県小田原でも同じ状況であった。ニクアツベニサラタケとオオゴムタケとはかなりの頻度で同じ倒木から発生するようだ。

 今日は川崎市で菌懇会の例会。夕方からは、高橋春樹さんを囲んでの懇親会も予定されている。先週金曜日は仕事を抱えていたので、神奈川県博メンバー主催の懇親会には出られなかったが、今夕は安心して参加することができる。


2006年9月23日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 数日前、橙色のキクラゲの仲間を持ち帰った(a)。外見からはシロキクラゲ科なのかジュズタンシキン科なのか、あるいはアカキクラゲ科なのかわからない。
 子実層の表面は汚れていて、切り出したところ、かなり夾雑物が多い(b)。担子器の形は4室に仕切られたタマゴ型なので、アカキクラゲ科の線は消えた(c, d)。担子器が繋がっていないのでジュズタンシキン科でないことも分かった。
 シロキクラゲ科やジュズタンシキン科であれば、担子胞子は酵母状発芽をする。小さなタッパウエアにカバーグラスを置きそれに子実体を載せて蓋をした。こうして、二日ほど冷蔵庫の中に放置しておいた。予期した通り、カバーグラスに落ちた胞子はかなり発芽していた(e)。
 水封状態では目が疲れる(e)。フロキシンコンゴーレッドで染めると非常に見やすくなる。菌糸には明瞭なクランプがいたるところにみられる(f)。シロキクラゲ科までは落ちるが、コガネニカワタケなのかヒメキクラゲモドキ、あるいはそれ以外のものか、結局わからなかった。

2006年9月22日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 さる9月13日に群馬県からアンドンタケのタマゴを持ち帰った(雑記2006.9.15)。腐敗防止のために、タマゴを紙袋に入れたまま冷蔵庫の野菜ケースに入れておいた。翌々日早朝(9/15)には狭い紙袋の中で窮屈な姿で開き始めていたので、あわてて紙コップに移し替えた
 その日以降、紙コップの上半分を切り除いたものに、開き初めのアンドンタケを据えて、上に透明な容器を被せて冷蔵庫に保管しておいた。今朝みると良い状態をそのまま保っている(a)。プラスチックの蓋を取り除いてみると、新鮮な状態をそのままである(b)。参考のために胞子(c)、子実体の腕(d)、タマゴの皮表皮(e)を並べてみた。組織中には至るところにクランプがある。腹菌類は冷蔵庫の中で案外長持ちするのかもしれない。

 今日は昼から、神奈川県小田原の命の星・地球博物館。11月15日まで、特別展「ふしぎな生きもの 菌類〜動物? 植物? それとも?〜」が行われている。関連講座として「キノコの分類学セミナー中級編」(13:30〜14:30)もある。


2006年9月21日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 久しぶりにアカイボカサタケを検鏡した。小型のイッポンシメジ類は、とても脆くてヒダ切片や傘上表皮の切り出しが思いの外難しい。アカイボカサタケもその例に漏れない。
 最初にカバーグラスに採取した胞子紋をそのまま覗いた(b)、次にそこに水を加えた(c)。どんなきのこでも胞子の観察は簡単だ。ヒダを一枚切り出してみた(d)。やはり薄切りはできなかった。ヒダ実質は並列型(d)、縁シスチジアは薄膜の大きな棍棒型(f)。
 縁シスチジアをフロキシンで染めると見やすくなった(g)。油浸100倍対物レンズでみると、視野の中に入りきらなかった(h)。3%KOHでバラしてフロキシンで染め、担子器などを確認した(i, j)。大きさにはかなりのバラツキがあり、基部にクランプは見られない。
 傘上表皮は菌糸が平行に走っていて(k)、ところどころで斜めに立ち上がっている。柄の表皮は単純に細長い菌糸が平行に揃って並んでいる(l)。傘、ヒダ、柄のすべてに、多数の色素顆粒を帯びた菌糸がやたらに目立った。

過去の雑記

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2006
2005
2004
2003
2002
2001

[access analysis]  [V4.1]