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2007年1月10日(水)
 
薄切り練習 (1)
 
 昨年夏頃から、視力が極度に悪化し、指先の硬化・麻痺もかなり進んだ。このため、最近ではかつてのように気楽にプレパラートを作ることができない。意識して練習しないと切片作成もままならない。そこで、昨日はもっぱらプレパラート作成の練習で終わってしまった。
 
  
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
 きのこがないので練習にはコケを使った。昨年12月29日に東京の石灰岩地帯で採集したリボンゴケ(a) Neckeropsis nitidula である。茎の長さ2〜3cm、幅3〜4mmほどで、丸くて薄い葉が扁平に、表裏各2列についている(b)。葉の厚みは細胞ひとつの幅だから、15〜20μmくらいだろう。傘径数ミリの微小なクヌギタケ属のヒダよりはるかに薄い。
 葉は長さ1.5〜2mmほどであるが、この横断面(d)を切り出すことが目標だ。切る位置は、ブルーの線で示した部分で(c)、目標は15μm厚以下。これ以上厚いと試料が倒れてしまって、横断面の観察ができない。実体鏡を使わずに、ニワトコのピスを使うことにした。
 葉を数枚取り外して、ピスに挟み込んだ。これが意外と難しい。小さくて軽い葉は、少しの風でも飛び去ってしまう。そこで、ピス断面を水で湿らせる。そこに、先の細いピンセットで葉を置いていく。生きのこでは、もともと湿り気があるので、ヒダや傘表皮をピスに置くのは楽にできるが、潰さないように挟み込む難しさがある。
 ピスに試料を挟み込むまでが一仕事である。しかし、問題はこれからだ。まず試料を挟み込んだピスの端を切り捨てる。ついで、ピス断面に「表皮」を削ぐようにカミソリをあてる。「切ろう」と意識すると、引きずって組織を潰したり、厚い切片しか切り出せない。「表面近くを切る」のではなく、「表皮を軽く削ぐ」気持ちでカミソリをあてることだ。

2007年1月9日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 満願寺周辺は杉植林ばかりなので、秋に出向いてもきのこの種類は少ない。日曜日に持ち帰った一部のきのこをメモしておくことにした。傘と柄のあるきのこ(a, b)は、一晩経過しても胞子紋が全く落ちなかった。コガネニカワタケ属菌(c)は、隔壁で仕切られた丸い担子器丸い胞子をもっていた。小さな塊状の黄褐色の子嚢菌(d)は、長楕円形の胞子をもっていた。
 柄がなく傘で基物に着いた小さなきのこ(e)は、傘径2〜4mmほどの大きさ。このきのこを観察してみた。一晩かけて採取した胞子紋は白色だが、きのこ本体は点のように小さくなってしまった。胞子は非アミロイドで、キクラゲのようなソラマメ型〜ソーセージ型をしている(f)。
 実体鏡の下で、なんとかヒダを取りだしてスライドグラスに置き、メルツァー液で封入した(g)。縁シスチジアはなく、担子器の基部にはクランプはない(h, i)。実質部や傘部の菌糸にはクランプが豊富にみられる(j)。この小さなきのこは全体がゼラチン状である。シジミタケ属 Resupinatus の仲間なのだろうか。採取個体が少なかったので標本は残さず処分した。

2007年1月8日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
 昨日栃木市にある出流山満願寺(いづるさんまんがんじ)の奥の院周辺を歩いてきた。満願寺の周辺は一大石灰岩産地で、鍾乳洞がいくつもあり、周辺には石灰工場が立ち並んでいる。この地域で石灰岩生のキノコを探し回ったが、成果はゼロだった。
 昨日出会ったきのこはとえいば、小さなものばかりだった。腐朽木から出る小さな白いきのこ、柄が退化して傘で材に背着したきのこ、鮮やかな黄色のキクラゲの仲間、チャダイゴケの仲間、そして多年生の硬質菌ばかりだった。さらに、烈風と雪の洗礼を受けた。
 杉の枝が多数振り落とされていた。暖冬のせいだろうか、杉の花がずいぶんと大きくなっていた(a, b)。花粉をまき散らすのもそう遠くはなさそうだ。スジチャダイゴケが苔むした腐朽木からでていた(c)。すぐ脇ではこけの(胞子嚢)が綺麗な姿をみせていた(d)。

2007年1月7日()
 
文字化け
 
 「キノコのフォトアルバム」を構成するすべてのきのこ基本ファイルに、一律に言語指定コードを追加した。おまじないの一行は次のコードだが、単にこの一行を追加しただけで、特定ページの文字化けはどうやらなくなった。やむをえず字種はSHIFT-JISに固定した。
    <META HTTP-EQUIV="content-type" CONTENT="text/html; charset=SHIFT_JIS">
 
 これまで、なぜか特定のブラウザによって文字化けをするページが40ほどあった。アオイヌシメジ、ウラムラサキシメジ、オドタケ、キヒダタケ、コウタケなどである。Netscape、Firefox、Opera、Safari、Mozilla、Galeon、Konquerorなどでは、ちっとも文字化けしないのに、何故かIE(Internet Explorer)では特定のファイルだけが文字化けをするという現象に悩まされていた。さらに悪いことに、IEのバージョンによっては、「表示」→「エンコード」で「日本語(自動選択)」を選んでも、文字化けが解消されなかった。文字化けの理由はいまひとつはっきりしなかった。
 昨年12月に、IE6からIE7にバージョンアップした。特定ファイルの文字化けという現象は解消されているかと思ったが、いっこうに変わらなかった。そこで、あきらめて昨日、上記のおまじないコードを一律に付加した次第である。なお、IE7になって表示がさらに遅くなった。

2007年1月6日()
 
久々のアルバム更新
 
 久しぶりに「キノコのフォトアルバム」を更新した。2ヶ月ぶりだろうか。とはいっても、ハマシメジを新たに加え、他に昨年10〜12月に撮影したきのこを加えただけである。昨年も海浜以外に出かけた場所といえば、日光くらいなので、新たに追加するきのこはほとんどない。
 海浜砂浜にも多くのきのこが出るのだが、それらの大部分は名無しである。いつも見ているきのこでも、それらの大部分が未報告種(新種・新産種)であり、とうぜん和名などもっていない。したがって、アルバムに追加する対象とはならない(雑記2006.12.27)。

 それにしても暖かい正月だった。昨年とは大違いだ(雑記2006.1.7)。埼玉県南部では昨年12月中頃に、早くもツバキキンカクチャワンタケが見られた。今年もすでに結構大きくなっている。


2007年1月5日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 元旦の外房海浜はひどく乾燥していて、4〜5日前の雨が嘘のようだった。いつもなら見られるドングリタケ、ウネミケシボウズタケは影も形もなかった。ただあちこちにウサギの糞があり(a)、よくみると干からびたハチスタケがついていた(b)。
 ルーペで拡大してみるとハスの実というより、円錐状の疣を多数帯びたボールのようだ(c)。二つに切ってみた(d, e)。丸くて肌色の子座の中に、子嚢殼が埋まっている。子嚢殼の中には多数の子嚢が入っているが、それ全体は袋に入っている。
 二つに切ったものでは、左側(c)には袋がみられ、右側(d)には、子嚢殼の硬い最外皮が凹んで見える。袋の中を顕微鏡で見たが、既に子嚢はほとんど崩れてしまっていて、スリットを持った胞子しかみられなかった(f)。子嚢頂端のアミロイド反応や子嚢の姿は、過去に何度か取りあげてきたので、視点を変えて遊んでみた(雑記2004.11.1同12.29同2005.11.26)。

2007年1月4日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 先日館山市の防風林で採取したハマシメジ(a)についての検鏡データをメモしておこう。胞子紋は白色、胞子を水封すると大きな油球のようなものがみえる(b)。でんぷん反応は非アミロイド(c)。ヒダを切り出してみた。小さな砂粒を多数噛んでいるので面倒だ。
 ヒダの縁(d)にも側にもシスチジアはない。ヒダ実質は並列型。傘上表皮は色素を帯びた菌糸が平行に走り、所々でそり上がっている(e)。担子器の基部にはクランプは見られない(f)。海浜砂地生のきのこの検鏡では、ミクロレベルの砂粒を如何に排除するかが大きなポイントだ。

2007年1月3日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 安房 館山市の平砂浦には広大な砂丘が広がっている。ここの砂浜は、砂の動きが激しいために、多くの海浜生植物がすぐに砂に埋もれて枯れてしまう。それもあるのだろうか、ケシボウズの仲間はこの地域では未だ見つかっていない。
 12月31日にもここを重点的に歩いてみたが、砂浜にはただひとつとしてキノコの姿はなかった。やむを得ず、クロマツ防風林の中に拓かれた遊歩道を歩いてみた。遊歩道脇、さらにその近くのマツ樹下には広範囲にハマシメジが発生していた(a, b)。
 ハマシメジとクマシメジをめぐっては多くの議論があるが、ミクロレベルで両者を比較しても差異はほとんどない。もっぱら、形態的な差異のみでハマとクマとは区別されているように思える。ここでは、とりあえずハマシメジとした。柄の上部にクモ膜の痕跡がみられるからだ(b, c)。しかし、傘の色合いや、細繊維状の柄に注目すれば、クマシメジとするのが妥当かもしれない。
 クマシメジにしろハマシメジにしろ、やや小形で柄の細いものは、傘の中央がイチメガサ(市女傘)の様に突出し、表面がササクレているので、まるでアセタケ属を思わせる。しかし、白色の胞子紋を確認すれば、アセタケ属でないことはすぐに分かる。
 他にはアカヤマタケ属(d)、マツカサキノコモドキ(e, f)、キシメジ科菌(e の左手前に転がったキノコ)等がみられた。なお、(e)に写っているキシメジ科菌は、マツカサキノコモドキと同じマツの球果から発生していた。これはヒダがやや疎であるが、柄の表面模様と基部の菌糸の様子、さらにシスチジア、傘表皮はニセマツカサシメジそのものだった。

2007年1月2日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
 12月31〜1月1にかけて、仲間5人で千葉県の房総半島の浜をグルッと回ってきた。年末の31日早朝出発して、東京湾アクアライン経由で千葉に入った。アクアラインは通行料があまりにも高額なのでこれまで一度も通過したことはなかった。「海ほたる」で仄かに明かるくなってくる朝を迎えた後、千葉県の内房の浜に入った。
 内房の浜は全体にかなり乾燥気味だった。しかし、ケシボウズの仲間(a〜c)やスナヤマチャワンタケ(d)、フミズキタケ属(e)などが発生していた。ケシボウズの仲間は、最近3週間ほどの間に、ケシボウズタケ Tulostoma brumale、T. kotlabae、T. fimbriatum var.campestreなどが新たに出ているのを確認できた。この日の夜は、南房総の宿に泊まった。

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