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日( )

2007年6月19日(火)
 
図鑑の胞子サイズ (2)
 
 先日の雑記で、封入液を変えて胞子表面の疣長の変化の様子をみた。水で封入したときよりもKOHで封入したときの方が、疣が長く見えるように感じた。
 図鑑はたいてい研究者が執筆している。研究者は、ふつうは乾燥標本をもとに数値をはじき出している。乾燥標本を観察できるように「戻す」にはKOHやアンモニアが使われることが多い。一方、アマチュアはたいてい生標本でサイズを計測している。
 生標本を水で封入したときのサイズと、乾燥標本をKOHなどで戻して計測した時のサイズには、多少の差異が出る。これが「多少」とか「若干」といった範囲であれば問題ない。ところが、種によっては、これが大きな違いを生ずることがある。
 生状態のキツネタケ属でも、水で封入した場合より、KOHで封入した場合の方が、胞子表面の疣が長くなる。乾燥標本のキツネタケ属でやってみると、さらにこの差異は大きく出る。
 キノコの胞子サイズを計測するなら、対物レンズは100倍を用いる必要がある。この場合、接眼ミクロの1目盛は1μm前後となる。ところが、対物40倍レンズでは、接眼ミクロ1目盛は、2.5μm前後である。2.5μm以下の数値は目見当で計測しているわけだ。

2007年6月17日()
 
図鑑の胞子サイズ
 
 昨日は奥秩父の東大演習林 大血川地区の標高650m付近を歩いた。きのこの発生はあまり芳しくない。スギ林でヒロメノトガリアミガサタケが発生していた。最盛期は6月13日だったというが、昨日は20cmを超える個体が倒れていた。コケのマットには小形菌が多数出ていた。

 多くのアマチュアが利用している保育社『原色日本新菌類図鑑』では、胞子の径は、原則として胞子表面の突起(疣、刺など)を含んだ大きさである。しかし、刺を除外したサイズが記されている種もある。そのことが具体的に明記されていないので混乱と誤解が生じやすい。
 ちなみに、先日観察したヒメキツネタケモドキ Laccaria tortilis の項を開くと「胞子は球形,径10〜15μm,とげは高さ1.5〜2μm」となっている。この数値を刺を含んだ径と読めば、刺を除いた径は、3〜4μmほど小さくなり径7〜11μmとなる。しかし逆に、刺を除いた径だと読めば、胞子の径は13〜19μmとなる。  径7〜11μmというと、キツネタケモドキの胞子サイズに近い(同図鑑I p.63)。スイスの菌類図鑑では、"Spores ........, 11.3-12.8μm across (excluding spines)." と、このあたりの表現は明確である。ひとつの図鑑だけに頼るのは危険である。


2007年6月15日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 一昨日さいたま市の見沼で出会ったミドリスギタケについてのメモ。若い菌の裏面には明瞭なツバがある(a)。もしミドリスギタケであれば、傘にKOHなどのアルカリをたらせば黒変するはずである。やってみると、確かに黒くなった(b)。
 胞子紋は汚黄褐色で、スライドグラスにとったものを、ドライマウント(c)、水(d)でみた。封入液を使わずに見る(ドライマウント)と、画像は汚らしいが、胞子表面の模様などはよくわかって面白い。微疣に覆われていることがよくわかる(c)。
 ヒダの切り出しには、簡易ミクロトームを使った(e)。簡易ミクロトームの扱いに慣れると、何枚も切らなくても数回でかなり薄い切片を作成できて面白い。ヒダ実質は並列型(f)。次に、ヒダを1枚ピンセットでつまんで、KOHで封入して縁をみた。縁シスチジアが無数に並んでいる(g)。倍率を上げると暗くなるので、軽く押し潰してみた(h)。
 ヒダをKOHで封入したものにフロキシンを加えて、さらに組織をバラしてみた。縁シスチジア(i)、担子器(j)、クランプ(k)などが明瞭に捉えられた。担子器の基部にはクランプがある。傘表皮の構造を見るにも、傘表面を薄く削いで、簡易ミクロトームに挟んで切り出した(l)。

2007年6月14日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日、ツブエノシメジがでていないかと思い、さいたま市の見沼にある公園にでかけた。出ていることは出ていたが、小さいし状態もあまりよくない(a)。ほかにはオオホウライタケ(b)、ミドリスギタケ(c)、ナヨタケ属(d)、ツマミタケ(e)、ハタケチャダイゴケ(f)などがみられた。

 明日から菌学講座のため、月曜日(6/18)まで筑波。とりあえず、明日は車で出発となりそうだ。


2007年6月13日(水)
 
(m) (n) (o) (p) (q) (r)
ヒメキツネタケモドキ ジャガイモタケ属
 昨日の雑記で取りあげたヒメキツネタケモドキを観察しているときに、胞子の刺の長さが封入液によって変化するように見えた。実際に伸びたのかどうかは分からない。
 昨年4月に行われた折原貴道氏による「ジャガイモタケとOctaviania属の分類」ゼミを思い出した(雑記2006.4.18)。その折り、印象的だったのが「ジャガイモタケの刺(疣)が封入液によって伸長する」という話だった。7月には採取したジャガイモタケ属で確認してみた(雑記2006.7.5)。
 その話を思い出したので、ヒメキツネタケモドキの胞子を異なった薬液で封入してみたのだが、結果は、やはり水で封入した場合よりも、3%KOHやアンモニアで封入した時の方が疣(or刺)が長く見える。見やすいように、ヒメキツネタケモドキの胞子はすべてフロキシンで染めたものを並べた。右の二つの黄褐色の胞子は昨年7月にみたジャガイモタケ属の胞子だ。

 折原氏だが、鳥取大学大学院でジャガイモタケ属菌をテーマに研究されている。ジャガイモタケ属菌の子実体は、6月頃から発生し始めるという。もし、ジャガイモタケ属の子実体と思われるきのこを見つけたら、氏に連絡し、現物を送付してほしいとのことだ。

[折原氏連絡先:E-mail] h-berg-f@ocn.ne.jp

2007年6月12日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 6月9日、日光領域で高速道路のサービスエリアに小さなキツネタケの仲間があった(a, b)。傘径は6〜12mm、柄は1.5〜2.5cm×1〜1.8mm、ヒダの付き方は上生と垂生気味の個体があった。傘表皮は湿時は条線があるが、乾燥時には白色味を帯びて目立たない。
 胞子紋はほとんど白色。胞子をドライ(c)、水(d)、メルツァー(e)で封入してみた。ほぼ球形で、際だった疣ないし刺に覆われている。胞子表面に合焦すると疣に見えるが、輪郭部に合焦すると刺といった方がふさわしく見える。胞子サイズは疣を含めると11.5〜14.5μm。
 最初にヒダを実体鏡の下で切りだした(f)。35〜40μmほどの厚さだ。切り出したヒダ切片はカミソリにへばりついたので、面相筆でスライドグラスに落とした。簡易ミクロトームでも切り出してみた。20〜25μm厚に切り出せたのだが、スライドグラスに落とすときにしくじって、先の方が捻れてしまった(g)。ヒダ実質は並列型。倍率を上げると、柄を2つ持った担子器がみえた(i)。
 あらためて、ヒダを3%KOHでバラしてフロキシンで染めてみた。柄を2つもった担子器が多く、3つないし1つだけの柄をもったものもある。担子器の基部にはクランプがある。菌糸にはクランプがあり(k)、傘表皮の組織は、菌糸が平行に走っている(l)。
 いくつかの検索表にあたってみた、いくつかの図鑑で、Laccaria tortilis、つまりヒメキツネタケモドキに落ちた。ヒダの付き方と、傘の開き具合などがやや気になるが、ヒメキツネタケモドキとしてよいだろう。なお、採取時は激しい雨のために、裏面は1個体しか撮影できなかった。ヒダが垂生気味についたものは持ち帰った時には形がすっかり崩れてしまっていた。

 最近は面倒くささが先に立って、「キノコのフォトアルバム」未掲載種であっても、このところずっと追加していない。3月中に2度ほど手を入れたが、それ以前も以後も放置状態なので、取扱種は627種のままで、そこから少しも増えていない。


2007年6月11日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 土曜日(6/9)に日光で出会ったヒロメノトガリアミガサタケのメモを残しておくことにした(a〜d)。激しい雨の合間にかろうじて撮影したこともあり、出会った個体のうちのごくごくわずかしか撮影できなかった。皮肉なもので、とても綺麗で典型的な姿をしている個体に出会った時に限って、雨風が激しくとてもカメラを構える状態ではなかった。
 昨日の雑記にも書いたとおり、今年の「ヒロメ」は全体に小ぶりである。大きなものでも、15cmほどしかなく、多く8cm以下である。それでも、褐色やら黒色、黄色、白色といろいろな色のものを見ることができた。発生場所もかなり広範囲に及んでいた。
 「ヒロメ」ではないが、大型のアミガサタケ(広義)にはよく出会った(e, f)。激しい雨に叩かれて、30分ほど見ている間にも、少しずつ頭部が崩れ、いくつかは倒れてしまった。雨の小降りになる一瞬を待って、やっといくつかのきのこを撮影できた一日だった。

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