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日( )

2007年9月30日()
 
検索表を使ってみた (2)
 
 昨日の観察結果に基づいて、保育社図鑑の検索表にあたってみた。[ハラタケ目の科の検索表] はp.20〜23にある。番号で [1.] から [24.] までである。[1.] からはじめた。
 「球形細胞の集団を含」まず、「もろく割れやす」くないから、[1.] は飛ばして [1'] に移る。すると、[2.] へとある。子実層托実質は並列型だから [2'] に該当し、[10] へ飛ぶ。胞子は角張っていないから [10'.] に行き、[11'] → [12'] → [13] へと導かれる。ヒダはロウ質ではないから、[13'] → [14'] → [17'] → [18] へと飛ぶ。傘の上表皮層は膨らんだ細胞を構成要素にもつから、[19'] → [20'] → [21] へと導かれる。[21] の項目はそのまま該当するから、右端をみると「モエギタケ科」と判定された。科まで絞られると少し楽になる。
 そこで、p.190のモエギタケ科に移り、[属の検索表] にあたってみる。[1.] では、胞子紋は黄土色で発芽孔は不明瞭だから、[1'] のスギタケ亜科となり、[5.] へ導かれる。子実体は偏心生ではないから、[6.] へ行く。[6.] の内容を読むと、ヒメスギタケ属とあり、観察結果とほぼ一致する。したがって、p.210のヒメスギタケ属に飛ぶ。
 ヒメスギタケ属についての説明を読むと、そこに記された属の特徴は、観察結果とほぼ一致する。さらに、日本産は1種とある。これは、この図鑑が出版された1987年時点での話だから、それ以降に日本新産種が追加されているかもしれない。その件はいったん棚上げとする。
 とりあえず、No.369のヒメスギタケについての説明を読むと、観察結果と概ね一致する。あらためて、図鑑の図版ページ(Plate 52)の図をみると、だいたい似たような姿をしている。多分、昨日観察したきのこはヒメスギタケ Phaeomarasmius erinaceella でよいのだろうと思う。持ち帰った時には、傘や柄の表面の刺状の鱗片はかなり脱落していて、直接図版をみても、とてもヒメスギタケには見えそうもなかった。保育社の図鑑はやはりよくできている。

2007年9月29日()
 
検索表を使ってみた (1)
 
 ボロボロに崩れた広葉樹の切り株から、小さな汚褐色のきのこがでていた(a, b)。ふと気が向いたので、何となく持ち帰ってきた。過去に何度か見ている気はするが、まともに観察したことはなかった。したがって名前は知らない。名前が分かるかどうかは別としても、図鑑の検索表を利用すれば、少なくとも科名までは判明することが多い。やってみた。まずは観察からだ。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 たった1日で見た目が随分変化した(c)。変色性はなく特徴的な臭いはない。傘は径1〜2cm、円錐状丸山型で、縁に被膜の破片が付着し、表面に粘性はなく汚黄土色で、刺状〜粒状の消失しやすい鱗片に覆われる。ヒダは比較的密で、柄に上生し、縁は明色で微細な鋸歯状。柄は2.5〜3cm×2〜3mm、細い棒状で中実、上部に消失性のツバがあり、下部には傘表皮と似たような消失性の鱗片に覆われる(a〜d)。胞子紋は黄土色。ここまでは肉眼的観察。
 次に顕微鏡を覗いた。胞子は 7〜9×4〜5μm、楕円形〜ソラマメ形、平滑で発芽孔などはない(e)。ヒダを切り出してみた(f)。ヒダ実質は並列型で、側シスチジアはなく(g)、棍棒状の縁シスチジアがある(g)。縁シスチジアは束生し、先端が膨らみ、波打ったものが多い(h, k)。傘の表皮は球形細胞がほぼ柵状に並ぶ(i)。表皮の一部に色素粒を帯びた大きな薄膜の細胞があり、これが鱗片を構成している。柄の表皮細胞からはクランプを持った繊維状の組織からなり、一部に傘表皮と同様な大きな球形細胞が見られる。担子器には基部にクランプをもったもの、持たないものがある(l)。担子器と縁シスチジアは、3%KOHで軽く押し潰し、フロキシンで染めてみた(k, l)。

2007年9月28日(金)
 
保育社図鑑の検索表
 
 保育社の日本新菌類図鑑では、冒頭に「菌そしてきのことは」とあり、ハラタケ目について [肉眼的特徴と観察要点]、[顕微鏡的形態]、[子実体の菌糸構造] ・・・と続き、最後に [分類] という項目があり一通りの基礎概念の説明がされる。全体でもたかだか23ページに過ぎないが、この図鑑で最も大切だが、最も読まれないのがこの部分らしい。
 特に使われないのが、[ハラタケ目の科の検索表](p.20〜23)だろう。「きのこの姿をみれば、すぐに科などわかるから不要」、「こんなややこしいものをみるのは面倒だし骨がおれる」、「何でもかんでも二分法で分けられるもんじゃない」といった理由をしばしば聞く。しかし、そういう検索表があること自体を知らない人はもっと多い。
 どの科に属するのだろうかと見当もつかないものを手にしたとき、この「科への検索表」はとても役にたつ。ただ、この検索表をたどるには、きのこについての基礎概念と顕微鏡観察が前提となっている。そのために、きのこについての基礎概念や、図鑑で使われる基礎用語などが、この表に先立ってp.1〜19までに説明されている。

2007年9月27日(木)
 
う〜ん、難しい
 
 昨日再び、現地で発光するツキヨタケの撮影を試みた。明るいうちに被写体の場所を覚えておき、暗くなってからそこに行って撮影した。倒木に出たツキヨタケを被写体に選んだが、なかなか上手くいかない。はじめにフラッシュをたいてピントを確認した(a)。ISO感度とシャッター開放時間の兼ね合いが今ひとつ分からず、明るすぎたり暗すぎたりして、先日と同様にすべて失敗だった。最後の一枚は何故か赤色になってしまった。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
 ふだんメモ写真しか撮ったことがないので、まともな写真を撮ることの難しさをあらためて感じさせられた。終電との兼ね合いもあり、ゆっくりと何枚も撮影することはできなかった。みっともない惨めな画像だが、今朝はそれをそのままアップした(b〜d)。

2007年9月26日(水)
 
傘表皮の構造
 
 先日秋ヶ瀬公園から持ち帰ったキツネノカラカサ属(a)が冷蔵庫の野菜ケースに放置されていたので、これを覗いてみた。採取から何日も経過している割には、比較的良い状態で保たれていた(b, c)。直感的にはワタカラカサタケではあるまいかと思っていた。
 胞子紋は白色、胞子は強い偽アミロイド(d, e)で狭い紡錘形、18〜20 × 5〜6μm。ヒダを一枚取り外して、適当なサイズに切って、フロキシンで染めてスライドグラスに寝かせた(f)。縁シスチジアは棍棒状(g)。形態とミクロの構造は、ワタカラカサタケを示唆している。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 もし、ワタカラカサタケであるとすれば、傘表皮の構造をあらためて確認したいと思っていた。ワタカラカサタケの「傘表皮は柵状」と書かれた図鑑が多い。しかし、これまでワタカラカサタケだと思ってきたきのこの多くは、傘表皮が柵状組織ではなかった。
 最初に傘の中心と縁との中程の表皮を見た(i, j)。表皮は菌糸が横に這っている。次に傘中央部の濃色の部分の表皮を見た(k, l)。これをみると、密集した柵状に見える。傘中央部のごく一部だけしか柵状の表皮は見られない。ワタカラカサタケであれば傘表皮の大部分が柵状なのだろうか。そうであれば、これはワタカラカサタケに似ている別種のきのこということか。

2007年9月25日(火)
 
指名手配: ツブエノシメジ
 
 筑波大学大学院の糟谷大河氏が新鮮なツブエノシメジの提供を求めている(「きのこのねどこ」→「ささやき:9月20日」。氏は、ツブエノシメジの生態学的研究をしていて、分離培養と子実体形成試験のために、ツブエノシメジの生の子実体を必要としている。
 以下 [ささやき] より(一部補足)
(1) まず,メールなどでご連絡頂きたく存じます.不在の時に届くと腐敗しますので.
(2) 甚だしい虫食いがあったり,腐敗が進行したきのこ,また,すでに乾燥した子実体は,分離培養ができませんのでご遠慮下さい.
(3) 子実体の送付方法は,こちらから差し上げる返信メールにしたがってください.
(4) 採集記録(年月日,採集地,採集者,周辺の環境)を必ずお教えください.
(5) 関東近県では,日程が合えば,直接,採集と現地の観察に赴きたく思いますので,まずは,子実体を採集&発送される前に,メール等でご連絡ください.
(6) 糟谷大河氏のメールアドレス: tkasuya@sakura.cc.tsukuba.ac.jp

 
昼光下
  →
(a)
(a)
(b)
(b)
夜闇下
  →
(a')
(a')
(b')
(b')
 昨夜持ち帰ったツキヨタケを、テーブルの上に置いて、室内のすべての灯りを消して暗闇の中に置くと、綺麗な蛍光色を発していた。雨の降る暗闇では、ツキヨタケの発光撮影は失敗したが、自宅で撮影したものは綺麗に写っていた。雨の夜の撮影はやはり難しい。

2007年9月24日()
 
ツキヨタケ最盛期
 
 ブナ林のキノコの発生状況を知るために、群馬県の山の中を訪れた。ツキヨタケが最盛期を迎え、到るところに大群落を見ることができた。例年なら既にかなり成長しているはずのムキタケ、ブナハリタケはまだほとんどみられない。イグチの仲間、テングタケの仲間がよく目立つ。しかも、どちらかといえば夏のキノコとされる種類が多かった。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日のツキヨタケだが、例年と比較して興味深い特徴がいくつかあった。ツキヨタケといえば、ふつうはヒラタケ型(偏心生)である。しかし、倒木に生えたものでは、中心生のものがとても多かった(e)。また、老成して大型になっても、かさの色が茶褐色のままで、紫褐色ではない。
 昨日は明るいうちの観察ばかりではなく、pm7:00過ぎの真っ暗な森での淡い発光を楽しんだ。雨のために、淡い光はとても弱かったが、幻想的な世界を楽しんだ。苦労して撮影した発光するツキヨタケは、すべて失敗で、画像が写っているものは一枚もなかった。  

2007年9月23日()
 
アセタケの仲間
 
 秋ヶ瀬公園で倒れていたアセタケを持ち帰ったので、とりあえず覗いてから処分することにした。目視での観察から、柄は上下同大で、基部にも膨らみなどはない。柄の表面は上部はざらついた繊維状、下部はほとんど平滑(a)。胞子をみると平滑である。
 アセタケの場合胞子の観察は、水かKOHで封入して観察するだけでよいのだが、面白半分に、ドライ(c)、エタノール(d)、水(e)、メルツァー(f)で封入してみた。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 胞子が平滑なので、アセタケ亜属となる。次にヒダを切り出して(f)、シスチジアをみた。側シスチジアはなく、縁シスチジアは薄膜で棍棒状(h)。この時点でザラツキトマヤタケ節となる。保育社図鑑だけを頼りに、種の見当をつけてみた。形態から、オオキヌハダトマヤタケ、キヌハダトマヤタケ、シラゲアセタケの三つが候補に上る。いずれも、胞子は形も大きさも似たり寄ったりだ。
 キヌハダトマヤタケは、柄の基部が膨らみ、縁シスチジアも小さい。頂部に白毛のないシラゲアセタケはいくらでもあるから要注意だ。シラゲアセタケなら、傘表皮に斑点状に付着した外皮跡があるはずだ。となると、オオキヌハダトマヤタケの可能性が大きくなる。

2007年9月22日()
 
冠水の後遺症
 
 さいたま市の秋ヶ瀬公園は荒川の河川敷にある。先の台風で園内の広い範囲にわたって冠水したが、いまだにその後遺症から抜け切れていない。2時間ほど園内を歩き回ったが、一部の硬質菌を除けば、ほとんどきのこの姿がない(e)。植物の葉は、土砂に洗われた証拠を残すかのように、白い砂粒に覆われている(a)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 ごくごくわずかにみられたのは、チャツムタケ属(b)、キツネノカラカサ属(c)、アセタケ属(d)だけだった。アセタケ属は誰かが引っこ抜いて捨てたのか、直立したものはみあたらなかった。
 例年だと、色々なきのこをみられる一体では、夏の暑さを反映してか、草木が背高く茂り、冠水で汚れた葉を曝し、あちこちでヒガンバナが咲いていた(f)。

2007年9月21日(金)
 
カワリハツ ?
 
 カワリハツには、多分、何度も出会っているのだろうけれど、いつも自信がもてない。今朝も近場の雑木林からそれらしききのこを持ち帰ってきた(a)。基本的にベニタケ科やチチタケ科には手を出さない方針だが、標本を残さない前提で、楽しむつもりで少しだけ観察してみた。
 図鑑にあるように、湿っているときは傘に軽い粘性があり、ヒダは白色でやや密、傘の縁部および中心部に向かって狭くなる(b)。傘表面には条線などはない(c)。柄は白色で上下同大または下方に向かって細くなる(d)。胞子紋は白色。
 胞子はおきまりのメルツァー試薬で封入する。類球形で表面には細かな疣と少数の連絡糸がある(e)。胞子サイズ・縦横比は複数図鑑に記された範囲とほぼ一致する。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 ベニタケ科のきのこをを専門的にやっている人は6〜9種の試薬で呈色反応をみるらしい。面倒なので、硫酸第一鉄(FeSO4)、グアヤク(guaic)、フェノール(phenol)の3品だけしか使わない。胞子紋とる作業と同時に、傘表面とヒダに試薬をたらして20分ほど放置する。
 その間に、ヒダを切り出して(f)、ひだ実質の球形細胞をみたり(g)、縁シスチジア(h)や傘表皮(i)を確認することにしている。胞子、シスチジア、傘表皮は、カワリハツに似ている。これらの観察が終わる頃には、たいてい呈色反応が現れている。
 硫酸鉄をかけてしばらくは無反応だったが、時間経過とともにわずかに褐色味を帯びた(j)。グアヤクはかけるとすぐに緑青色にかわった(k)。フェノールは数分は無反応だが、5分ほど結果したあたりから急にワイン色に変わった(l)。
 カワリハツなら硫酸鉄でわずかに青変するという。問題のきのこはカワリハツではなく、チギレハツタケの可能性が高いことになる。観察済みのきのこは外でコナラ樹下に捨てた。

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