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久しぶりにさいたま市見沼区にある自然公園に行ってみた。相変わらずすさまじい頻度でウッドチップを広範囲に散布している。しかし、このところのカラカラ陽気と高温のせいか、ウッドチップ上にも、ハラタケ型のきのこは一つもみられなかった。 |
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コフキサルノコシカケが、その名の通り粉をふいたように、自らの傘の上ばかりではなく、周辺の草や土をもチョコレート色に染めていた(a)。キノコ本体を割ると子実層断面が出てきた(b)。次に、刃物で縦切りにした(c)。今朝は菌糸型(miticシステム)ではなく、胞子を並べた(e, f)。最初にドライマウント(e)、次に水で封入した(f)。胞子表面と輪郭部に合焦したものとを一枚にまとめた。 これの胞子写真をみると、図鑑類に書かれた胞子とは違っている。ドライマウントの写真はまだしも、水封の胞子写真は、図鑑には描かれていない透明なベールに包まれている。 |
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この透明ベールは、放出されてから日の浅い新鮮な胞子では30%KOHで封入してもみられ(g)、古い胞子では失われしまうのか、明瞭には捉えられない(h)。新しい胞子でも、KOH中に長時間放置すると見えなくなるようだ。 | |||||||
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きのこの担子器・シスチジアの形態やサイズ等を正確に観察するには、組織を潰さないように上手くバラすことが必須となる。その場合、3〜5%程度のKOHを使うのは常識となっている。さらに、境界を明瞭にするためフロキシンなどの染色剤が使われる。 |
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蘚苔類の世界でも、スギタケの仲間(a, b)では、同定にあたって微細な構造が問題とされる。このところ「今日の雑記」はお盆休みとして、きのことは全く関係ない話題をメモってきたが、今朝の話題は、キノコ世界の手法をコケに流用したところうまくいった事例だ。
スギタケの仲間には、一般にラメラといって、葉の腹面(上を向いた面)にキノコのヒダ(ラメラ)のような構造物がある(c, d)。コケ世界では薄板という訳語が使われる。このラメラの頂端細胞の構造が、同定に大きな影響をもっている(e, f)。この部分の観察抜きでは同定は困難だ。 |
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ところが、ラメラの縦断面の様子を確認するのは難しい。ラメラを一枚だけ切り出したり取り外すのは、簡単にはできない。コケ世界に首を突っ込んで既に1年が経過する。当初は、スギゴケ仲間の葉は、横断面ばかりではなく、苦労して縦断面(i)をも切り出して観察していた。 途中から考えた。要は、ラメラを一枚横に寝かせてそれを観察すればよいわけだ。一般に生物組織はKOHで繋がりが弱くなる。担子器を観察するときの手法が使えるのではないだろうか。3%KOHで葉の一部をマウントして、カバーグラスの上から圧を加えて組織をズラしてみた。 キノコの場合とは圧の加え方と方向がやや異なるが、この方法は上手くいくことがわかった。まず、コケの葉の中央に走る太い部分(中肋という)を捨てる(j)。これを3〜5%のKOHで封入して、上にかぶせたカバーグラスの上から軽く左右にズラしながら圧を加えた。 ラメラがバラバラになった(k)。これを実体鏡の上でていねいにほぐすのもよし、そのままさらにカバーグラスを適当な厚で左右にずらすと、ラメラの縦断面がはっきりとわかるようになる。すると、ラメラの縦断面が明瞭に捉えられる(l)。ラメラ先端の様子がはっきりと分かる。 写真を撮るのでもなければ、これで充分だ。文章で記すと長いが、この作業に要する時間は、せいぜい30〜40秒にすぎない。ラメラの縦断面を撮影するのであれば、実体鏡のしたでラメラを数本だけバラして撮影すればよい。ラメラ一枚を縦切りにする労力と技術にくらべれば、こんなに簡単なことはない。 思いがけないところで、きのこ観察で培った技術は他の世界でも生きることがわかった。もっとも、コケ世界でも、キノコ観察で培った技術はそのまま役立っている。 |
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昨日川崎市の生田緑地まで行った。新鮮で綺麗なベニイグチ、すっかり干からびきったキクバナイグチ、比較的新鮮なオキナクサハツなどが採取されていた。連日のカラカラ陽気の高温下でよく出ていたものだ。久しぶりに、特徴的な胞子を楽しんだ。 蘚類の仲間にホウオウゴケ属 Fissidens という分類群がある(a)。茎の左右に偏平に2列に葉をつけ(d)、葉は中肋を境に片側が2枚に分かれ茎を包んでいる(b, e)。中肋とは葉の中央の脈を指し、中肋を境に茎を包む側の2片を腹翼、反対側の1片を背翼といっている。 |
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この仲間の同定には、葉の横断面を切り出す必要がある(c, f)。簡易ミクロトームは、こけの葉の切り出しには抜群の力を発揮する。きのこのヒダと違って、多少強く両側から押さえても潰れない。ただし、きのこのヒダよりは薄く切らねばならない。 この仲間にも、肉眼では区別が困難なものがある。キャラボクゴケ Fissidens taxifolius とコホウオウゴケ F. adelphinus はその代表ともいえる。どちらもありふれたコケだ。 キャラボクゴケの腹翼の細胞には、中央に1個の乳頭がある(c)。いっぽう、コホウオウゴケでは、3〜4個の小さな乳頭がある(f)。この乳頭の様子以外で、種を同定する決定的な決め手はないようだ。ルーペだけで同定するのはちょっと難しそうだ。 そういえば、きのこでも、キヌハダニセトマヤタケ Inocybe paludinella とキヌハダトマヤタケ I. cookei という紛らわし和名のアセタケ属がある。paludinella の胞子はコブ状突起がありシスチジアは厚壁、cookei の胞子は平滑でシスチジアは薄膜だったっけ。 |
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肉眼ではほとんど同じにみえるが、実は全く別種。こういったことは、アセタケ属 Inocybe などでは日常茶飯事だ。胞子をみなければ種の推定すらできないこともある。傷つけたときの変色性が、分類にあたって大きな特徴とされている種もある。 | |
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ぎっくり腰のためフィールドに出られず、このところ、手元にたまっているコケ標本を観察していた。コケシノブ科 Hymenophyllaceae のシダ植物によく似た蘚類にシノブゴケ科 Thuidiaceae がある。なかでも、シノブゴケ属 Thuidium のコケ(a)は、肉眼的にはどれも同じようにみえる。 コバノエゾシノブゴケ Thuidium delicatulum とオオシノブゴケ T. tamariscinum もよく似ている。この仲間は、大きな茎葉と小さな枝葉をもっている。大きいといっても長さ1.2〜1.5mm、小さな枝葉は長さ0.3〜0.7mm。おのずと観察には顕微鏡が必須となる。 小さな枝葉の背面には、各々の細胞に牙状の突起がひとつある(f)。このため、枝をルーペや顕微鏡でみると、葉がざらついてみえる(b, d)。この枝葉の先端に位置する細胞の状態が問題とされる(c, e)。細胞表面が平滑(e)か、あるいは牙状突起をもっている(c)か。 はたして、枝葉先端の細胞の状態が安定した形質なのかどうか、そんなことに疑問を感じつつ、何枚もの葉の先端細胞を観察していた。そういえば、きのこでも、変色性・色・臭いなど標本に痕跡が残りにくい形質が種の同定基準とされているケースがあったっけ。 |
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例年冬の間は、ほぼ毎日自宅ベランダから、雪を被った富士山を見ることができる。でも、夏場は滅多に姿をみせてくれない。今年は厳しい暑さが続いているが、ここ連日夕方になると決まって富士山のシルエットがみえる。暑さの割には空気が澄んでいるということだろう。 |
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久しぶりに、ベランダの手すりに肘をついて富士山のシルエットを撮影した。少し前までは、ひどい腰痛のため、手すりに寄りかかっても、安定してシャッターを切ることはできなかった。レンズを望遠側にすると、皮肉なことに、手前に病院の看板が写っていた。 今朝は、プレパラートを50枚以上作った。でも、使ったスライドグラスは1枚、カバーグラスは2枚だけだった。顕微鏡写真も80枚ほど撮影した。コケ観察だ。キノコだとこうはいかない。 |
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2001年4月24日以来ずっと踏襲してきた「今日の雑記」の表示パターンを少し変更した。といっても、ちょっと見た目にはほとんど変化はない。 |
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これまでは、画像ファイルがある場合、原則としてタイトルはなく、年月日のすぐ右側にサムネイルが配置されていた(a)。今後は、年月日の右側にはタイトルなどが配置される(b)。
腰痛がひどくてフィールドに出られないので、「雑記」を構成するプログラム群を見直した結果だが、すっかりHTMLタグを忘れていることに気づいた。 |
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日本菌学会関東支部観察会の申込期限8月25締切(必着)が近づいた。長野県菅平高原で、9月15日(土)〜16日(日)に実施され、初日午後には、森林総研の根田 仁博士によるセミナーが行われる。[ハラタケ類の類縁関係] と [菌類の文献調査] は、遠くまで出向いてでも受講するに値する。なお、JR上田駅から菅平までは送迎してもらえる(要 事前連絡)。 観察会・懇親会も楽しめるが、根田博士によるセミナー受講を主目的に参加するのもよいだろう。少し意識の高いアマチュアに焦点をすえた内容となっているそうだ。 関東支部による観察会は、従来より会員のみならず、広く一般のアマチュアにも門戸を開いている。宿泊費、セミナー受講料、観察会参加費を含めて16,000円(非会員)だ。
照会・申込先は、以下の担当幹事となっている。 |
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「今日の雑記」は [お盆休み] だが、今後のための備忘録を残しておくことにした。話題は、きのことは一切関係ない。去年後半と今年は、何回か長距離の夜行バスを利用した。金欠病の身には、料金の安い夜行バスの存在は非常に力強い味方といえる。 夜行バスでは、長時間同じ姿勢でじっとしていなくてはならない。腰痛症傾向を抱えている者はとりわけ要注意だ。先日、京都まで往復とも夜行バスで行って来た。悪いことに、宿舎のベッドが柔らかいスプリングだった。床に寝る物理的空間はなかった。 やむなく、ベッドで眠った。マットレスや布団は使わなかった。起床時、何となく腰に違和感があった。そして、帰りの夜行バスを降りたとき、腰の違和感はさらに強くなっていた。一昨日、ちょっと図鑑を片手で持ち上げた。腰に激痛が走り、そのまま動けなくなった。 往路が夜行バスならば、帰路は列車・飛行機・船などを利用するようにせねばなるまい。ひどい腰痛を起こせば多方面に支障が生じて、結果的にかえって高くつく。 |
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しばし、きのこ観察と雑記のアップは「お盆休み」とすることにした。 理由は二つ、昨日ぎっくり腰をやってしまい、しばらくは、早朝のきのこ観察に出かけることができない。車の運転席も自転車もダメだ。 いまひとつは、先月採取して以来、放置したまま全く観察・記録していないコケ標本が10数点手元に残っていることだ(こけ雑記)。 いずれにせよ、数日は自宅でおとなしくしているほかなさそうだ。手元標本の観察や、記録などを整理するにはちょうどよいのかもしれない。 |
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