Top | since 2001/04/24 | back |
|
||
「キノコのフォトアルバム」に新たにクモノスアカゲヒナチャワン Arachnopeziza aurelia を追加した。今年初めてのアルバム追加である。クモノスアカゲヒナチャワンという和名は、大谷義雄博士が "Notes on Some Interesting Cup-fungi in Tsukuba Academic New Town" 科博紀要5巻2号(1979) で "Kumonosu-akage-hinachawan.(New Name)" と提唱されたという。 アルバムのインデックス修正に伴い、年月日の記録が誤ったままだったファイルを4つほど修正した。ホシアンズタケ、コツブタケ、キヌガサタケ、ムラサキヤマドリタケだが、昨年撮影したにもかかわらず、なぜか2007年と誤っていた。 所用で川崎市の生田緑地まで行ったので、ついでに2時間ほどていねいに歩いてみたが、傘と柄をもったキノコや中型盤菌にはひとつも出会えなかった。落ち葉を掻き分けていくと、小さな盤菌が何種類か見つかった。それが昨日出会ったすべてだった。 |
||
|
||
先日の雑記(3/23)に取りあげた赤色の小さなチャワンタケ(Arachnopeziza aurelia)には、クモノスアカゲヒナチャワンという和名が与えられているらしい。直接文献にあたって確認していないが、大谷義雄博士による命名だとのことである。兵庫のNさんから教えていただいた。なお、Nさんは、北海道のSさんと共に青木実「日本きのこ図版」研究の第一人者である。 あらためて、きのこ雑記の「資料コーナー」に置かれた「学名→和名便覧」にあたってみると、クモノスアカゲヒナノチャワンタケとなっていた。さらに、同便覧で次の行にはArachnopeziza leonina (Schw.) Dennis にもクモノスヒナノチャワンタケという和名がついている。 この「学名→和名便覧」「和名→学名便覧」は、7〜8年ほど前に作成されたが、作成の経緯をすっかり忘れている。どういう経緯で、どの範囲の文献から和名を採録したのだろうか。これらの記録は、過去ハードディスクのクラッシュの折りに、すべて失っている。 |
||
|
|||||||||||||
先日千葉県君津市の山で、落ち葉をどけてカシタケを探していると、小さな赤い盤菌を見つけた(a)。5年前にやはり千葉県の長柄町で出会って以来のことだった(雑記2002.2.26)。 2002年に長柄町で出会ったものと同じく、径0.6〜0.8mm、高さ0.5〜0.7mmほどで、托外皮には針のような毛が密生している(b)。乾燥すると毛が外皮に貼り付いて様子が変わる(c)。子実体の下には白色〜淡橙色の菌糸マットが拡がるが、濡れると透明になって見えにくい。 縦に切ってみると、白色で厚い托実質の上に子実層がのっている(d)。プレパラートを作ってみた(e)。メルツァー液を加えると全体が褐色になってしまった(f)。倍率を上げて子実層を見ると、子嚢の先端が青色を呈しているのが分かる。油浸100倍にした(i)。 メルツァー試薬でマウントしたままでは、全体が褐色になってしまうので、水洗いして再度子実層をみた(h)。油浸100倍にすると、子嚢の頂孔が鮮やかな青色に染まっているのがわかる(j)。水だけで封入してみた頂孔とは大違いだ(k)。胞子には隔壁が3つみられる。 托外皮から出ている針は、細い菌糸が束になっているようだ(l)。Arachnopeziza aurelia らしい。arachno-は「クモの巣状の」という意味だから、クモノスチャワンタケといったところだろうか。ひょっとして既に和名がついているのかもしれないが、今は調べる気力をほとんど失っている。 |
|||||||||||||
|
|||||||
早朝埼玉県の川口市を出発して、千葉の海に出向いた。予想通り、海浜砂浜にはきのこは全くでていなかった。Tulostoma fimbriatum var.campestre(ナガエノホコリタケ)(a)、T. brumale(b)、T. kotlabae(c)のミイラがかなり見られたのみだった。 海辺にきのこがないので、隣接する君津市の山にはいった。シュンランが盛りをむかえていた。スダジイの近くのシュンランの根本の落ち葉をかき分けると、カシタケがいくつも出てきた(d〜f)。他にもチャワンタケの仲間、アカヤマタケ属のきのこなどを見ることができた。 帰路、田圃の畦でツクシンボウを摘み、新鮮な凾つけた苔類を観察し、のどかな一日を過ごすことができた。夜、シュンランの酢の物、カシタケの刺身、ツクシの佃煮を味わって楽しんだ。 |
|||||||
|
|||||||
茨城県の鹿島でカシタケを観察していると、他にもいくつかのキノコにであった。ニガクリタケ、ツバキキンカクチャワンタケ、ハナビラニカワタケ(or コガネニカワタケ)、アミヒラタケ、クロハナビラタケなどがかなり出ていた。 それらのうちから、クロハナビラタケ(a)を覗いて楽しむことにした。このきのこは希薄なKOHをかけたり浸したりすると、紫色の色素を滲出することで知られる(ionomidotic反応)。KOHがあれば、簡単にキクラゲ類のクロハナビラニカワタケとは簡単に区別できる(b)。 標本はカラカラに乾燥していたので、そのまま切片を作ろうとすると粉々に砕けてしまう。そこで、20分ほど水に浸すと、水が茶褐色に染まった。子実体が適度に柔らかくなり、楽に切り出すことができる。それでも薄くきるのは難しくうまくいかなかった(c)。 子実層は片面だけにあり、托髄層は絡み合い菌組織からなり、かなりの厚みがある(d)。胞子はソーセージ形でとても小さく、側糸の先端は鈎状に曲がったものが多い(e)。メルツァー液で封入しても子嚢先端は青くならない(f)。 |
|
|||||||||||
せっかくカシタケを採取してきたので、食べてしまうだけではなく、少しは観察しようと、若い菌とやや呆けた菌の両者を残しておいた。実に久しぶりのきのこ観察である。 昨夜から今朝にかけて採集した胞子紋は白色だが、思いの外少ししか胞子が落ちていない。それでも、メルツァー液で封入して観察することができた。例によって胞子表面と輪郭部に合焦した写真を撮影した(a)。念のために、スケール入り画像も撮った。 簡易ミクロトームを使ってヒダを切り出してみた(b)。手にピスを摘んで切り出すときと違って、ミクロトームの穴径にみあったピスを探すのに多少てまどった。細めのピスしか手元になかったので、キッチンペーパを細帯状に切り、それをピスに巻いて径を調整した。 倍率を少し上げると、子実層や托実質がよくわかる(c)。さらに倍率を上げると担子器なども明瞭に捉えられる(d)。そのままカバーグラスの脇からフロキシンを注い。担子器などがさらにはっきりした(e)。しかし、担子器の基部などの確認は別の方法がよさそうだ。 ヒダの一部をつまみ出して、3%KOHで封入し軽く押し潰してから、フロキシンを加えた。さらにこれを軽く押し潰した。子実層がバラバラになり、線香花火をみているようになる(f)。この中から、担子器の基部が現れているところを見つければよい(g)。 今朝は傘表皮も簡易ミクロトームを使って切りだした。水で封入したところ小さな気泡を多数いれてしまった(h)。カバーグラスの端から3%KOHを注ぎ、反対側から濾紙で水を吸い取り、全体をKOHで置き換えた。全体のコントラストが弱くなり、組織は潰れ色が抽出された(i)。倍率を上げると、傘上表皮の組織を観察することができた(j)。 |
|||||||||||
|
|||||||
今日、久しぶりに茨城県のシイ林を歩いてきた。カシタケが最盛期を迎えていた。幼菌から老菌まで一通りに出会うことができた(a〜e)。あまり新鮮なので、観察はやめてきのこ狩りに変更した。帰宅してからは、持ち帰ったカシタケ30数本をゆでて(f)、そのまま刺身で食べた。ベニタケ属とは思えない歯ごたえのある感触で、美味しいきのことの評判通りである。 今日は、早朝千葉県香取市の香取神宮の杜を散策した後、茨城県の鹿島神宮の森を歩き回った。カシタケには、2004年4月初めに呆けた個体を見はしたが、まともな姿の個体は2003年以来のことだった(雑記2003.3.31)。カシタケは一般的にシイの落ち葉に隠れて、掘り出さないと見けることは難しい。初心者にはまず見つけることのできないキノコだろう。 |
|||||||
|
|||||||
群馬県上野村で林道脇の岩壁から出ていたウロコケシボウズタケについて、忘れないうちにメモを残しておくことにした。写真(a), (b)は、それぞれ2005年4月、2006年9月に撮影したものだ(雑記2005.4.5、同2006.9.14)。この時はケシボウズのついていた岩盤を直接確認せず、周辺の岩層を確認して石灰岩だろうと思っていた。一方で、本当に石灰岩だろうかとずっと疑問だった。 先日(3/4)、この場所を訪問してみると、写真(b)の2個体がすっかり白色の痩せたミイラとなってそのまま残っていた。ミイラはそのまま放置して、へばりついていた岩石に希硫酸をかけてみた。石灰岩なら発生するはずの炭酸ガスの泡が全く出ない。周辺の岩も同じである。 ここの岩盤は、多分石灰岩ではない。とりあえず、ケシボウズミイラのすぐ脇から岩石を一部採取した。近々専門家に岩石の種類を調べてもらうつもりだ。「ウロコケシボウズタケは石灰岩ないし石灰岩質の土壌に出る」という「常識」はこのところかなり怪しくなってきた。
せっかく上野村まで行ったので、天然記念物の鍾乳洞「生犬穴(おいぬあな)」を訪ねた。今や訪れる人もほとんど無いのか、道は草とコケに被われ、道標も心許ない。地図上の表示地点に近づくと頭上高いところに、大きな石灰岩の割れ目がみえるだけである(c)。しかもそこに達する道はほとんど崩壊している(d)。林道脇を探すと、古い看板がうち捨てられている(e)。どうやらこの場所に間違いない。やっとのことでたどり着くと、穴の入口はすっかりさびきった鉄の格子で封鎖してあった。許可を取ったケービングクラブのメンバーなどしか入れないようだ。 |
|||||||
|
||
便利で有用なのはわかってはいたが、昨年までは簡易ミクロトームは日常ほとんど使わなかった。せいぜい月に1〜2回程度だったろうか。面倒くさいというのが、最大の理由だったが、ピス径によって使い勝手が大幅に変わってしまい煩わしくもあった。 今年に入ってから切片作りは、10回中2〜3回は実体鏡の下で、1回ほどピスを手に持って切り出すが、たいていは簡易ミクロトームを利用している。慣れの問題なのだろうが、今では、かつてのような煩わしさを感じなくなってきた。 使い捨て注射器利用の簡易ミクロトームですら、徒手切片作成に比べたら、雲泥の差で楽にプレパラート作成が可能である。次のようなことに配慮すると比較的上手くいくようだ。
|
||
|
||
今年になって何度か簡易ミクロトームのことについて触れた(雑記2007.2.6)。そして、プレパラート作成にあたっては、意識的に簡易ミクロトームばかりを使い、安価に入手できるカッターなどもいろいろと試してきた(同2007.2.16)。 寒い時期ということもあり、生キノコが少ないので、ミクロトームは蘚苔類とキンカクキンなどで使ってみた。ピスを摘んで、それを利き手に持ったカミソリで削ぐように切る「職人芸」に比較して、安定して楽に薄切りできることがよく分かった(こけ雑記)。
こんな当たり前のことを今更のように書くには理由がある。キノコを楽しむには顕微鏡が必要だ。小さな胞子の表面模様などをみるには、油浸100倍対物レンズは必須である。そうなると安い学習用顕微鏡ではものたりない。しかし研究用の生物顕微鏡は高価である。 |
||
|
|||||||||||||
さいたま市に行く用事があったので、ついでに2月22日にみたトガリアミガサタケの様子を見に出向いた(雑記2007.2.22)。昨日こそ嵐のような強風が吹き荒れたが、それまでずっと降雨がなかった。そのためか、小さなまま老成してしまったようだ。この10数日の間に少しでもお湿りがあれば、もう少し成長したことだろう。2月22日に2〜5mm程度だった個体は、ほとんどが干からびて死滅していた。新たに発生した個体はひとつも見つからなかった。他には、埼玉県南部でも、モクレンとコブシのキンカクキンが発生し始めた。 | |||||||||||||
|
|||||||||||
昨日群馬県神流町(旧中里村)から埼玉県神泉村、皆野町を歩いた。シャグマアミガサタケ、ウロコケシボウズタケには出会えなかったが、ベニチャワンタケと思われるものに出会った(a)。すでに2月初めにも出会っているが、そのときは、まだ子実層がほとんどできていなかった。昨日採取したものは、子実層もできていたので、久しぶりに顕微鏡でキノコを覗いてみた。 子実体の縦断面をみると、托髄層がとても厚い(b)。実体鏡でみると色鮮やかだ。久しぶりに子嚢菌の子実層をみた(c, f)。メルツァー液を加えると、側糸に含まれる色素顆粒が赤色から青緑色に変色する(h, d, g)。托外皮の部分には白色の毛のような組織が層をなしている(e)。 久しぶりのキノコだったので、これまでと趣向を変えて、子嚢基部あたりの膜の厚さを観察してみた。普通に切り出した切片で焦点位置を変えれば、膜の厚さは概ね分かるが、今朝は、違った方法でやってみた。子実層に平行に薄く、青色線のあたりを切り出してみた(i)。子嚢と側糸の横断面を撮影してみた。何度も使ったカミソリ刃だったこともあり、組織をやや引きずっていて、膜厚などがやや幅広になっているようだ。 |
|||||||||||
|
||||||||||||||||||
菌学教育研究会の講座「菌類の多様性と分類」の詳細が発表された。それによれば、平成19年度前記講座は4日間で、6月15日(金)〜18日(月)となっている。研究会の専用施設筑波センター(茨城県つくば市筑波字外輪町2074番地3〜4)を会場に実施される。講座受講の申込〆切は6月5日(必着)となっている。照会先は下記の通り
[講座概要] (敬称略)
|
||||||||||||||||||
|