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☆! | 求む! ツブエノシメジ | !☆ |
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つくば市で行われる講座に必要な生キノコ教材を入手するため、昨日川越の保護林に行ってみた。ベニタケ属、チチタケ属、フミズキタケ属、ツエタケ属、等々を採集することができた。マツ混じりのコナラ林を歩いているとき、大形でしっかりしたきのこに遭遇した。 |
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カサの径は15cmを超え、太くしっかりした柄をもっている(a, b)。ヒダは直生で非常に密、柄に近い部分は縁が褐色に色づいている(c)。柄の表面は段だら模様を帯び、基部は膨大している。掘り出して、手に取ってみるとズッシリと重みがある。とりあえず持ち帰ってきた。 胞子紋は採らなかったが、ヒダの色などから白色であろうと推定される。全体の形を壊さないように、ヒダの一部をピンセットでつまみ取って、スライドグラス載せて胞子をみた(d)。ついでこのヒダの横断面を切り出した(e)。予測通りシスチジアはない。ヒダ実質は並列型(f)。 今度はヒダの一部をフロキシンで染めて3%KOHで押し潰した。担子器の基部にはクランプを持ったものと無いものがある(g, h)。菌糸にはクランプがある(i, j)。キシメジ科のキノコであることまではよいにしても、これはいったい何だろうか? これから筑波行き。今日から菌学講座が始まる。ゆとりをもってam6:30には出発だ。ごとうび(五十日)だが、道路が混み合わないことを祈って出発しよう。 |
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先日コケ観察にでかけた折り、キノコを2種持ち帰った。今朝、採集したコケの観察中に、持ち帰ったキノコがあったことを思い出した。すっかり忘れていた。2種ともすっかり腐敗し、キノコをいれた袋はビショビショに濡れ、あまりの臭さに鼻を摘みながら作業をすることになった。現地で写真を撮ってしまったので、とりあえず捨てる前に、簡単な観察だけでもしておこう。
ひとつは、苔むしてボロボロになった倒木から出ていたナミハタケ属のキノコだ(a, b)。胞子紋は白色、胞子は小さな球形でアミロイド、表面は微細な粒点覆われているようにも見える(c)。 |
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ヒダを切り出して、メルツァー液で封入してみた。ひだ実質は並列型だが、実質部は非アミロイドだった(d)。ヒダ面にメルツァー液を垂らしても変色しない。カサ表皮やカサ肉、短い柄、ヒダ実質など、各部分から何ヵ所かを切り出して、フロキシンで染めてからKOHで封入して組織をバラしてみた。どの部分も原菌糸のみ。つまりmonomiticだ。ということは、少なくともイタチナミハタケではないことになる。では、何だろうか? 既にキノコはボロボロで白いウジ虫がウヨウヨしている。これ以上の探究は止めることにした。
いまひとつは、マット状に一面コケに覆われた場所で、ヒナノヒガサなどと一緒に出ていたきのこだ(0)。現地では、フユノコガサあるいはヒメコガサかもしれない、そう思った(1, 2)。 |
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胞子紋は茶褐色。胞子を、ドライでみたり、水道水で封入してみると、どうやら微イボに覆われている(3, 4)。コケの葉を切り出す要領で、実体鏡の下でカサとヒダを一緒にして切りだした(5)。別途、小さなヒダを注意深く取り外して、ピスに挟んで切ってみた(6)。 ひだ実質は並列型で、縁シスチジアや側シスチジアは便腹型〜フラスコ形で、縁シスチジアはひどく少ない(7, 8)。カサ表皮はゴチャゴチャしてはっきりしない。柄の表面を顕微鏡でみると、柄シスチジアがある(9)。観察結果が示しているのは、フユノコガサでもなければ、ヒメコガサでもないことだ。ケコガサタケ属だろうが、これも異臭とウジ虫に探求心を阻害された。
長さ1.5〜2mmほどのコケの葉の横断面を切り出しながら、ついでにキノコをみたのだが、2種類とも外見上からの推定とは違う種類だった。日常的にも、ちょっと見には図鑑などの写真と似ていても、胞子やらシスチジアを見ると、全く違うことがしばしばある。 |
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今のところまだ、ニコン顕微鏡の三眼鏡筒に一眼デジカメを固定できる直筒が見つからない。やむなくこれまで使ってきた専用撮影装置を、接続アダプタつまり「単なる固定具」として使っている(a)。撮影にあたっては、コントローラの電源をオンとして、メインダイヤルをMANUALとし、RELEASEボタンを押して、撮影装置を「常時開放」状態にせねばならない。 顕微鏡撮影にはライブビューカメラ:オリンパスE-410を使用することにし、従来のD100は処分した。E-410は現在最も安価に入手できるライブビューカメラだ。ライブビューの実現方式はミラーがパタパタうるさい、いわゆる「Bモード」だが、液晶画面でのピント合わせはとても楽だ。 ライブビューとはいっても、いわゆる「Aモード」による方式では、ファインダを覗いた時と同じように、液晶画面に干渉縞やフレア、ゴーストが現れるので(雑記2008.1.18)、正確なピント合わせが難しくなる。顕微鏡撮影用にライブビューカメラを利用しようとする場合は注意が必要だ。 撮影用カメラの変更にともなって、取扱画像の比率もフォーサーズ(4:3)の600×450ピクセルに変更した。したがって、これまでの3:2比率の画像(565×375ピクセル)もこれが最後となる。 |
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顕微鏡撮影用のカメラを変更すると、過去の画像データから胞子などのサイズを計測するときに、混乱を起こしやすい。だから、対物ミクロメータを撮影した画像が重要となる(d, e)。撮影機種や画像のデータは "exiftool" で読み出し(b)、計測にはその機種で撮影した対物ミクロメータを使う。日常的には、計測には簡易スケールを利用することになる(c)。 | ||||||
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今の時期、都会の公園や雑木林、山の中、海浜の防風林など、いろいろな場所に広くみられるきのこにダイダイガサがある。濃色のもの(a)から淡色のもの(b)まで、色や形の変化に富む。こういうありふれて、特徴的なキノコは誰もていねいに観察しようとはしない。 |
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昨日身近な場所で採取したので、久しぶりにダイダイガサを顕微鏡で覗いた。胞子はレモン型で、非アミロイド(c, d)。KOHで封入すると透明になる。ヒダ実質は、類並列型〜類散開型(e)、シスチジアは先細の棍棒やフジの実の鞘のような形をしている(f〜h)。 カサ表皮を構成する細胞が興味深い。やや厚膜で洋梨のような形をした細胞があるかと思えば、非常に厚膜でヘラのような形の細胞が縦に連なる(i, j)。このヘラのような厚膜の細胞列にはしっかりとクランプがある(j)。カサ肉や柄、ヒダ実質などにもクランプがある(l)。 担子器の柄(steriguma)は、3%KOHで封入するとほとんど見えなくなってしまった。アルカリに溶けてしまったようだ。担子器と偽担子器のいずれも、基部には明瞭なクランプがみられる(k)。 類似の紛らわしいキノコが他になく、同定のやさしい、ありふれたキノコについては、ていねいに観察する機会は少ない。胞子やカサ表皮組織などの図が、せっかく図鑑などに載っているのであれば、一度くらいは確認してみるのも面白いかもしれない。 |
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6月の第一週の土曜日(6/7)に日光で採取したオオワライタケをやっと処理することができた(a)。標本の大部分は帰宅後直ちに乾燥器にかけがた、一個体だけ冷蔵庫に放り込んだままだった。しっかりしたキノコなので、幸いまだ何とか採取時の面影が残っていた(b)。 |
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カサ表面に3%KOHをたらすと、すぐに赤黒色に変色した(b)。胞子表面はイボに覆われるが、合焦位置によっては、そのイボが繋がっているかのようにみえる(c)。縁シスチジア(d)を見るためにヒダを切り出した。採取から長い時間が経過しているので、子実層托実質は少し崩れ始めている。しかし、並列型であることがわかる。担子器の基部にはクランプがある(e)。カサ表皮は菌糸が平行気味に匍匐している(f)。カサ肉などほとんどの部分にクランプがある。 きのこのヒダ断面などを薄く切り出そうと思ったら、なるべく新鮮なうちにやるのがよさそうだ。採取から時間が経つと、ヒダは水っぽくなったり、干からびたり、虫やカビにやられて、崩れてくる。冷蔵庫保管も1週間以上経過すると、かなり水っぽくなる。 |
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昨日は、早朝に千葉県内房の富津市の浜を歩いた後、内房の山間部に入り鹿野山、久留里城址公園、市原市民の森、大多喜県民の森を歩き回って、夕方になって外房の蓮沼海浜公園の砂地を歩いた。走行距離は概ね350kmだったが、早朝4:30に自宅を出発して、千葉の浜まで一般道を走り続け、その後も、よく走り、よく歩いたので、思いの外疲れた。 内房・外房の浜ではほとんどきのこの姿はなく、わずかにスナジホウライタケやアミスギタケはあったものの、主目的のケシボウズは少数のミイラしかなかった。海浜以外の場所では、いくつものきのこに出会ったが、全般的にきのこは例年より少ないように感じた。 |
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駐車場周辺や公園の草地にはヌメリガサ科 Hygrophoraceae の脆くて小さなきのこが多数みられた。種類も7〜8種類ほどあった(a〜f)。防風林下にはアミタケ、ハツタケ、クロハツ、ヤグラタケ、キツネタケ、ウラムラサキなどが目立った。
持ち帰ったベニタケ属(0)を覗いてみた。昨日早朝に採取してから、まる一日紙袋に放置したために、かなり乾燥し、カサ表皮の一部は紙袋内側に貼り付いていた。その部分を切り取らないと、紙袋から外せなくなっていた(1)。表皮はとても剥がれやすい。 |
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シスチジアには、中程に隔壁をもったものが多かった(6, 7)。担子器は、丸っころい細胞の上に乗っている(8)。カサ表皮を切りだしてみた(10)。分かりにくいので、フロキシンで染めて3%KOHで封入してみた(10, 11)。スイスの菌類図鑑にあるRussula emetica (ドクベニタケ) の検鏡図とよく似ている。なお、硫酸第一鉄(→ピンク色)、グアヤク(→明灰緑色)、グフェノール(→淡赤色)等の試薬による呈色反応もやってみたが、色変写真は撮影しなかった。 | |||||||||||||
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顕微鏡撮影には、長いことNIKONのCoolpix9xxシリーズを使っていたが、昨年7月にNIKONのD100に変更して、ほぼ1年弱が経過した。メーカー純正のデジタル撮影装置を使えば、鮮明な画像を楽に得られるのだが、非常に高価で個人が購入できる価格ではない。 D100を利用することにしたのは、コントローラを含めたフィルム式の顕微鏡撮影装置が、安価に多数出回ってきたことによる。かつて50〜120万円したものが、Yahoo!オークションなどで、1万円前後で入手可能となった。若干の改造が必要なケースもあるが、カメラ装着部がニコン標準のFマウントのタイプならば、そのままデジタル一眼を装着できる。ニコンのデジタル一眼の中では、D100は現行機種や中古機種を広く見渡したとき、顕微鏡撮影には絶好の機種だった。ありがたいことに、千葉県立中央博物館のFさんが人柱となってくれた。 ところが、昨年1万円弱で入手した専用撮影装置は、別途入手した撮影用レンズとの相性が悪くて、正確なピント合わせに苦労してきた。微妙なところでピントが甘いのだ。そこで、しばらく前から、ライブビューカメラのOlympus E-410を追加して、両者を比較しながら使ってきた(a, b)。 |
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D100では、カメラ側はマニュアルでBULB状態とし、すべての操作を専用コントローラ側で行う。コントローラの潜望鏡による合焦は気休めに過ぎず、正確なピント合わせが難しい。撮影結果をモニタリングしながら、合焦点付近で何枚もの無駄撮りをせねばならない。さらにコントローラの露出はフィルム基準なので、最適値を見いだすには試行錯誤が避けられない。 一方、E-410ではAC電源を使えないことが最大の欠点であるが、カメラ側のプログラムモードが使えるので、絞り開放状態における露出(シャッター速度)はほとんど気にしないですむ。コントローラは開放状態にして、カメラ側ですべての操作を行う。ピント合わせは楽だ。 ニコン系三眼部の鏡筒に合う直筒があれば楽だ。オリンパス顕微鏡の三眼部であれば、Vixenの直筒を利用できるが(雑記2008.1.24)、ニコンの鏡筒に流用できる市販品はなさそうだ。しばらくは、現在の撮影装置をアダプタとして使うことにした。 |
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先月フクロシトネタケらしき子嚢菌の胞子を検鏡したが(雑記2008.5.22)、試薬によっては判断を誤りがちなケースがあるので、メモを残しておくことにした。さらに、子嚢菌の場合、十分に成熟した個体を調べないと、子嚢胞子の表面模様や形が未完成でやはり判断を誤りやすい。 先の子実体は採取時には全く未成熟であったが(a)、やく1ヶ月ほど追培養した結果、胞子を放出するまでに成熟した(b)。以下の観察はすべて完熟個体の胞子で行ったものだ。 |
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最初にドライ、つまり封入液を使わずカバーグラスをかけただけの状態で胞子をみた(c)。胞子表面には、隆起して、部分的に網目状となった模様がみえる。これに水道水を加えた(d)。胞子の表面模様は疣にも網目にもみえる。胞子の両端には顕著な嘴状突起がある。 水道水で封入したものにフロキシンを加えた(e)。特に変化はなくメリットもなさそうだ。最初からアンモニアで封入してみた(f)。表面模様や嘴状突起はドライや水道水と同じようにみえる。アンモニア水は弱アルカリだから、弱いアルカリであれば、変化はないのだろうか。 ところが、3%KOHで封入すると胞子の様相が一変した(g)。表皮部分や嘴状突起が消失している。どうやらこの胞子の表皮や嘴状突起は弱アルカリでも溶けてしまうらしい。フロキシンを加えて再確認してみた(h)。ごく一部の胞子にだけ表皮と嘴状突起がわずかに残っていた(i)。30%KOHを使うと、表皮や嘴状突起は直ちに全くなくなってしまった。 コットンブルーで封入した場合も、大部分の胞子では、表皮部分が大きく膨潤してしまった(j)。希硫酸で封入してみると、水道水で封入した場合と同様に、表面模様や嘴状突起に変化はない(k)。ところが、濃硫酸を使うと、これまた30%KOH同様に、表皮部分と嘴状突起は完全に失われてしまった(l)。濃硝酸でも事態は同じだった。 乾燥標本などから胞子を確認する場合、最初にドライないし水で観察をしないと、判断を誤るケースが多々ある。この場合、子嚢胞子の表皮部分と嘴状突起は、同じ弱アルカリでもKOHでは溶けて消失し、アンモニアでは溶けないで残る。さらに、弱酸では消失しないが、強酸ではすっかり溶けてなくなってしまう。これとよく似た現象に、担子菌のシスチジア先端の結晶構造、担子器の先端のステリグマ(担子柄)などが、弱アルカリや弱酸などで溶けてしまうことがある。 |
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コガネヌメリタケは美しいキノコだ。先週土曜日(6/7)の日光で採集した株は、翌朝同定に必要な最低限の検鏡だけをしたが、撮影はせず冷蔵庫に放り込んでおいた。今朝取り出してみると、かなり乾燥していたが、まだいくぶん生っぽい状態も残している。カサ表面や柄にはまだわずかながら粘性が残っている。 |
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ヒダの柄に対する付き方は上生(a)。ヒダの縁は黄金色に縁取られる(b)。ヒダの断面をルーペでみた(c)。実体鏡でみると側シスチジアがあることがよくわかる(d)。カサの部分はかなりゼラチン化している(e)。最初にヒダを一枚スライドグラスに寝かせて縁をみた(f)。黄金色の縁シスチジアが無数にあり、ひだの他の部分とは明瞭に異なった色をしている。
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ヒダを一枚切り出して縁をみると、紡錘形の縁シスチジアや、子実層に埋まった状態の側シスチジアがある(g)。おやっ、と思ったことがある。これまで、コガネヌメリタケのヒダ実質は並列型だとばかり思っていた。あらためてよくみると、並列型にしては変だ(h)。あらためて複数個体から、何枚ものヒダを切り出してみた。いずれも緩やかな逆散開型をしている(i)。 縁シスチジア(j, k)はいずれも黄金色をしたものばかりだが、側シスチジアは透明のものと黄金色の両者がある(l, g)。透明のシスチジアはフロキシンによく染まるが、黄金色のシスチジアは、フロキシンに染まることなく、あまり色に変化はない(l)。 |
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予期に反して、担子器の基部にはクランプのないものが大部分だった(m)。基部にクランプを持ったものは比率にして10%もないように感じた。カサの部分は表皮の下はやや厚いゼラチン質が占める(e, n)。カサ表皮は細い菌糸が匍匐状態で連なる(o)。この菌糸には明瞭なクランプがある(p)。子実層やカサ肉などにもクランプはみられる(q)。胞子は、先週帰宅後に直ちに採取した胞子紋から、こそぎ落として水で封入してみた(r)。 クヌギタケ属 Mycena の仲間に、子実層托実質が逆散開型のものがあるとは思ってもいなかった。Singer の The Agaricales には、コガネヌメリタケ節のキノコについて、ひだ実質が逆散開型といったような記述はなかったような気がする。 |
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後悔先に立たずとはよく言ったものだ。先週の土曜日(6/7)にキララタケとおぼしきキノコ(a, b)を採取した。帰宅後、採取時の紙袋に入れたまま、冷蔵庫の野菜ケースに放り込んでおいた。その時は、夕食後に直ちに検鏡するつもりだった。アルコールが入る前まではそう思っていた。 今朝、冷蔵庫から異臭がするので、開けてみるとキノコを容れた紙袋が元凶だった。キノコの大部分は黒い汁に被われ、カサやヒダはかなり溶けていた。それらの中に、かろうじて原形を保っている株が一つだけあった(c)。カサやヒダは触れた途端に崩れてしまう。 |
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何とかヒダを一枚ピンセットで摘んで、スライドグラスに触れ、直ちにどけると、黒い汁がベッタリついた。この汁には胞子が多量についていた(d)。ついで、おそるおそる、カミソリでカサの一部を切ると、透明で大形の側シスチジアがみえる(e)。実体鏡ではさらに鮮明に見えた(f)。 無駄な抵抗と思いつつ、実体鏡の下で切り出しを試みた。開封したばかりのカミソリでちょっと触れただけでも、簡単に崩れてしまう。カバーグラスを載せると、ヒダは倒れたり、つぶれてしまった(g)。それでも、なんとかヒダ実質(h)や子実層(i)をみることができた。 ヒダを一枚スライドグラスに寝かせてそれを顕微鏡で覗いた。一つの担子器には4つの胞子が整然とついている。担子器同士がぶつかりあわないよう、うまい位置に配置され綺麗な模様をなしている(j)。明瞭に見えるのは上側の面についた担子器上の胞子、ボケているのは下側の面の胞子をみているからだ。油浸100倍レンズにしても、胞子の発芽孔などはよく見えなかった(k)。なお、カサ表面の細胞は類球形の細胞が柵状に並んでいるように見えた(l)。
ヒトヨタケ属 Coprinus のキノコは、採取時に成菌だけでなく幼菌を持ちかえることが必須だ。胞子紋は成菌から短時間で採取できる。5〜10分もあれば十分だ。ヒダやカサ表皮を観察するなら、幼菌に対して試みないとうまくいかない。カサの開いていない幼菌でも、シスチジアやひだ実質はほぼ完成している。一晩も放置すれば、もはや致命的で、詳細な観察は望めない。 |
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