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日( )
2008年11月20日(木)
 
イタチタケ近縁種
 
 雑木林の広葉樹切り株の近くにナヨタケ属のきのこが出ていた。ちょっとみためにはイタチタケのように思えた(a, b)。この仲間は短時間で多量の胞子を落とすので、カバーグラスをヒダの下に5分ほど放置すると暗紫褐色の胞子紋がとれた。
 胞子の形はイタチタケを示唆している(c)。濃硫酸で封入すると、スレート色になる(d)。ヒダの断面をみると、側シスチジアはなく、ヒダ実質は並列型(e, f)。横断面からは縁シスチジアの有無や形態はハッキリしなかった。
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
(f)
(g)
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(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 あらためてヒダを一枚スライドグラスに寝かせて縁を見た(g)。何となくイタチタケの縁シスチジアと異なっている。やや小振りで、薄膜のシスチジアばかりではなく(h)、厚壁のシスチジアが多数混じっている(i, j)。担子器(k)やカサ表皮の様子(l)はイタチタケと変わらない。

2008年11月19日(水)
 
海浜とはいっても・・・
 
 海浜を歩くといった場合、三つの選択枝がある。
(1) [防風林帯] 関東地方などでは防風林にはクロマツが使われている。クロマツ林にはシモコシやマツバハリタケ、ショウロなど第一級の食菌が発生する。世間で一般に海浜できのこというと、この一帯を指すようだ。
(2) [防風林の外の植生帯](b) ここにはハマボウフウ、ハマニンニク、コウボウムギ、ハマヒルガオなどが繁茂する。ハラタケ属、フミズキタケ属、ホウライタケ属、ザラミノシメジ属などのハラタケ類、アカダマスッポンタケ、アカダマノオオタイマツ、ナガエノホコリタケ、などの腹菌類やガマホタケ属、ケシボウズタケ属などが発生する。
(3) [植生帯の縁から漂流物が漂う一帯](a) ここにはスナジクズタケなどのナヨタケ属、スナヤマチャワンタケ、ザラミノシメジ属などが発生する。漂流物の材からはヒラタケ、シイタケなどもしばしば発生する。スナヤマチャワンタケは、上記(2)にも発生する。ザラミノシメジ属も同様だ。
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
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(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 海岸に行った場合、いつも歩くのは上記(2)であり、中でも植生が薄くなって(3)に近い一帯だ。浜を往復する場合、往路は(2)を探索し、復路は(3)を歩くことが多い。(1)の防風林は、単に目的地にたどり着くために通過する。長居をすることは滅多にない。
 先日の房総歩きでも、同様だった。(2)の地帯に出ていたケシボウズの仲間を一部撮影した。(c)の菌はイシクラゲの間に幼菌もあった。採集品を並べてみた。(d), (e)は頭部の径3〜5mm程度の小さなもの。(f)は発生から1ヶ月ほど経過した大形のケシボウズだ。
 内房では(1)の防風林が幅広く、(2)や(3)の領域は、外房などに比較するとずっと狭い。外房九十九里から鹿島灘にかけては、防風林帯は比較的幅が狭いが、その外の植生が汀線まで大きく広がっている。したがって、この広い一帯を探索して歩くにはかなりの時間と根気が必要となる。外房でケシボウズを探索するなら、十分に時間をかける必要がある。

2008年11月18日(火)
 
スッポンタケ遊び
 
 スッポンタケは、臭いグレバを伴う頭部を取り除くと、第一級の食菌となる。白い柄の部分は熱を通すとコリコリし、ちくわのような感触となる。幼菌の時はグレバの強烈な匂いはほとんどない。卵状の幼菌を熱湯で茹で上げると、ピータンの様な感触となる。
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
(e)
(f)
(f)
 頭部を現し始めた卵、頭部先端を覗かせ始めた卵、まだ全く裂け目のない卵をいくつか持ち帰ってきた(a)。このまま植木鉢などに置いて、ときおり霧吹きなどで水気を補うと、成長して一人前のスッポンタケとなる。成長の様子を撮影して楽しむこともできる。
 成長するにつれ、頭部のグレバの強烈な匂いも強くなる。室内で成長を観察するのはやめにした方がよさそうだ。ただ成長する姿を眺めても、キヌガサタケの成長と違ってたいした感激を得ることはできない。縦切り(c, d)、横切り(e, f)で内部の様子を観察する方が面白い。

2008年11月17日(月)
 
ありふれたきのこ
 
 同定のための観察では、ポイントだけを検鏡して撮影まではしない。そのため、ありふれたきのこは多くが検鏡画像無しとなる。たしかセンボンイチメガサも検鏡画像は撮影していない。そこで、きのこ鍋に入れずにとっておいた個体を使って、今朝撮影した。
 乾くとカサ表皮のヌメリは全く無くなり、周辺部の条線も消えてしまった。柄上部のツバは繊維状ないし綿クズ状で、すぐに消失してしまう(b)。柄はツバより下では繊維状でササクれ、内部は中空。ヒダは直生(c)。胞子を水道水(d)とKOH(e)で封入した。KOHで封入すると蜂蜜色となる。胞子は非アミロイド。時間が経過しているのでヒダ切片は綺麗な姿では切り出せなかった。
 
(a)
(a)
(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
(k)
(l)
(l)
 ヒダ実質は並列型(f)、側シスチジアはなく、縁シスチジアがある(g)。ヒダの横断面を切り出すまでもなく、ヒダを一枚スライドグラスに寝かせ縁をみると、縁シスチジアの有無は分かる(h)。
 フロキシンで染めKOHで封入し、カバーグラスの上から軽く押し潰してくと、シスチジア(i)や担子器(j)がバラバラになる。担子器の基部にはクランプをもつものともたないもの両者がある。菌糸にはクランプがあり(k)、カサ表皮には菌糸が平行に走っている(l)。

2008年11月16日()
 
狭山湖南岸の自然公園で
 
 昨日、東京都の水源地村山貯水池の狭山湖南岸を歩いた。ほとんどきのこは無いだろうと思っていたのだが、予期に反して多数出ていた。ヒラタケ(a)、クリタケ(b)、センボンイチメガサ(c)、ムラサキシメジ(d)、ヤマブシタケ(e)、スッポンタケ(f)をはじめ、チチタケ属、イタチタケ属、ホウライタケ属、ウラベニガサ属、アカヤマタケ属などのきのこに出会った。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 短時間、狭い範囲を歩いただけなのだが、思いがけずいろいろなきのこに出会うことになった。画像を掲載したきのこ(a〜f)は、きのこ鍋の主役となった。

[昨日の雑記の補足] ニオイオオタマシメジを「今日の雑記」でとりあげたのは、2002年10月11日以来のことだった。そのときは、コガネタケ(g)とともに、近くに出ていた菌糸塊(h)だけを取り上げて、塊の表面に出はじめていたきのこの様子(i)は掲載しなかった。当たり前だが、あらためて発生し始めたニオイオオタマシメジをみると、一昨日撮影したものとほとんど変わらない。
 

(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)

2008年11月15日()
 
久しぶりのニオイオオタマシメジ
 
 昨日、神奈川県のYさんの案内でAさんと一緒に、ニオイオオタマシメジを観察する機会を得た。ベースとなるコガネタケの菌核は3つほど残っていたが(a〜c)、多くは最盛期を過ぎていた(e)。その一方で、若くて小さな子実体が発生し始めているものもあった(d)。最も大きく成長していたものは、高さ3.5cm、カサ径1.5cmほどになっていたが、成長途上でそのまま固まってしまったような印象を受けた。それでも柄表面のササクレとカサ表皮の特徴は残っていた(f)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
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(e)
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(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
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(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 ヒダは直生(g)、シスチジアは無く(h)、ひだ実質は並列型(i)。ヒダの側をよく見ると胞子をつけた担子器がある(j)。押し潰して担子器をよく見ると、基部にはクランプがある(k)。カサ表皮は黒っぽい菌糸が匍匐している(l)。独特の匂いは強烈だった。なお、胞子紋は全く落ちなかったので、成熟した胞子の写真を撮ることはできなかった。
 昨日みた菌糸塊は、竹しんじさんの「ドキッときのこ」→「きのこ探して」11月8日に書かれているニオイオオタマシメジと同じ菌糸塊だろう。最盛期はその頃だったようだ。5日経過しているが、ほとんどのきのこは未成熟なまま乾燥してしまっていた。

2008年11月14日(金)
 
砂浜のザラミノシメジ属
 
 防風林の外の植生帯には、しばしば何種類かのザラミノシメジ属がよく見られる。それも植生帯の端から漂流物が漂う一帯に及ぶことが多い。先日も房総半島の浜辺で、ザラミノシメジ属のきのこが出ていた。大きなものでは、カサ径10cmを超える。紙袋に入れたまま冷蔵庫に放置してあったので、今朝これを覗いて楽しんだ。
 
(a)
(a)
(b)
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(c)
(c)
(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 ザラミノシメジ属ゆえ、胞子表面にはアミロイドの粒点がみられる(d)。ひだ実質は並列型(f)、低倍率だと縁シスチジアの存在が不明だが、倍率を上げると縁にも側にも針状のシスチジアがあることがわかる(g〜j)。例によってカサ表皮(k)と担子器(l)も撮影した。
 プレパラート作成にあたっては、海浜生のきのこの常で、例によってミクロレベルの砂粒に悩まされた。シスチジアの形が面白い。類球形〜楕円形の基部をもち、そこから針状に伸びた形をし、先端には結晶構造がついている。

2008年11月13日(木)
 
もう届いた!:海外注文書籍
 
 11月4日に注文した蘚苔類の用語集 "Mosses and Other Bryophytes, An Illustrated Glossary Second Edition" が一昨日もう届いた(雑記2008.11.4)。注文からちょうど1週間足らずだ(a, b)。送料のところに "shipping" とだけ記されていたので、てっきり船便だろうから年内の受取は無理だろうと考えていた。注文時、送料が40ドル(ニュージーランド)はちょっと高いなぁと感じたが、届いてみて納得した。航空便の送料だったわけだ。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
 2年前に初版(c 左側)を購入した時は、送料抜きで4万円以上したのに、今回の購入価格は航空便送料込みで8,000円で済んだ。このところの急激な円高もそろそろ天井に達したのだろうか。2年前の相場で購入したらやはり5万円以上となることだろう。
 第2版は初版と比較すると116ページ増え、写真や解説が大幅に改訂され、写真はより美しく、解説は詳細になった(d)。第2版は2006年発行なのに Amazon.com では未だ初版しか扱っていない。その初版の価格も最近の為替レートを反映しておらずかなり高価だ。
 菌類関係の専門書などを購入する場合、佐野書店やグリーン洋書を利用する一方、海外の書店や版元に直で注文してきた。Amazon.com や丸善、紀伊国屋などは高いのであまり使わない。今は、この円高のおかげで、海外に直で購入するのが最も安いようだ。

2008年11月12日(水)
 
スナジクズタケ:砂粒との格闘
 
 海浜の汀線近くから植生帯までの浜には、ナヨタケ属、フミズキタケ属、ザラミノシメジ属などがよく見られる。千葉県房総の浜では、今の時期はスナジクズタケが特に多い。
 スナジクズタケはたいてい単生だが(b)、時には束生して綺麗な株をつくることもある(a)。発生環境がとても興味深い。発生する地域は、スナヤマチャワンタケよりもさらに汀線に近い(c)。汀線ギリギリ、植生は全くなく、海水を被る場所に発生することも珍しくない。
 海浜生のハラタケ類では、ヒダに無数の砂粒が付着しているのが普通だ(d, e)。胞子紋をとったり(f)、顕微鏡で観察するにあたっては、如何にして砂粒を避けるかに頭を悩ますことになる。スナジクズタケでもこの問題に悩まされる(雑記2007.12.8同2005.12.13)。
 
(a)
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(c)
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(e)
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(i)
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(m)
(m)
(n)
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(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 胞子を水道水(g)、KOH(h)、濃硫酸(i)で封入した。ヒダ切片を数枚切り出すと(j)、剃刀の刃はボロボロになった。ミクロレベルの砂粒の仕業だ(r)。ヒダ実質は並列型(k)。切片の側には薄膜で紡錘形のシスチジアが見える。切片からは縁シスチジアの様子はわからない。
 そこで、ヒダを一枚スライドグラスに寝かせて、フロキシンで染めて縁を覗いた(m)。縁シスチジア(n)、側シスチジア(o)は、いずれも薄膜で先端には結晶構造などはみられない。担子器は短くて丸味を帯びている(p, r)。カサ表皮は洋梨型やら柔組織のような細胞が柵状に並ぶ(q)。
 夏から晩秋の頃、海浜砂地には、しばしばスナジクズタケとよく似たナヨタケ属のきのこが出る(雑記2006.10.5同2003.8.15)。これらは、乾燥すると頭部のひび割れ方が若干違うが、湿っている時などはスナジクズタケとそっくりだ。胞子の確認が大切となる。

2008年11月11日(火)
 
スナヤマチャワンタケの発生環境
 
 千葉県、茨城県の海浜ではスナヤマチャワンタケが多数発生し始めた(a〜d)。興味深いことに、汀線から漂流物の散乱する植生のほとんどない一帯とか、やや内陸側の背丈の低い疎な植生帯にかけての地域に、圧倒的に多く発生している(e, f)。これらは大潮で風の強い時などは海水をもろに被る場所でもある。もちろん、植生の豊かな一帯にも発生しているが、スナジクズタケなどと一緒に、圧倒的に海水を被る場所によく出ている。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 スナヤマチャワンタケの検鏡は砂粒との格闘である(雑記2003.10.31同2007.12.3)。すでに何度も取り上げているので、今朝は検鏡写真などは取り上げなかった。

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