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火曜日に久しぶりに静岡県遠州灘の浜を数ヶ所歩いた。気温こそ高かったが、非常に風が強く、飛ばされてくる砂粒が顔に当たる。以前同じように風の強い日に、しゃがみ込んでケシボウズ撮影をしていた。カメラの電源をオフにしたときマクロレンズから「ジャリジャリ」「ゴリゴリ」といった異音が聞こえた。いやな予感がしたが、そのままザックにしまった。 数日後、先の異音のことはすっかり忘れてカメラをもって出た。電源オンにして焦点を合わせようとしたが、どうあがいても合焦してくれない。そんなときに限ってレンズは他に持っていない。カメラを被写体に近づけたり遠ざけたりして何とか数枚を撮影した。数日後、このマクロレンズはオリンパスセンターに入院となり、結構な治療費を取られた。 |
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今回は一眼レフは持ち出さず、RICOHのGX100を使った。アダプタにフィルタをつけると、いわばインナーズームとなるので、砂粒がいくら飛散しても気にする必要はない。 せっかくカメラを準備したものの、ここ2ヶ月ほどの間に発生したとおぼしきケシボウズがない。中田島砂丘でも(a, b)、浜岡砂丘でも(c, d)状況は同様だった。アバタケシボウズ、ナガエノホコリタケ、ケシボウズタケ、ドングリタケのミイラが少々見られただけだった。帰路高速道路のサービスエリアからみた富士山がやけに印象的だった。 |
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三重と滋賀の県境にある藤原岳は、鈴鹿山系北部の名峰として知られ、田中澄江「花の百名山」に数えられる山だ。近畿百名山の中でも超人気の山だという。山体の多くが石灰岩層からなり、南面には石灰採掘場が広がっている。 先週土曜日〜日曜日、菌輪の会の皆さんと楽しい時を過ごした。宿泊した菌輪館の正面には藤原岳が聳えている(a)。日曜日の午後、Mさん、Tさん、Sさんらの案内で、三重県側の麓にある藤原岳自然科学館を訪問した。かつて藤原岳ではウロコケシボウズタケが採取されている。 |
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自然科学館を訪問したのは、そのウロコケシボウズタケを確認するためだった。収蔵庫には、きのこの乾燥標本と液浸標本があった(b, c)。ウロコケシボウズタケはたった一本だけが、液浸標本として保存されていた(d)。同定は吉見昭一氏という。 ハラタケ類の乾燥標本は、その多くが虫やら黴のために、ほとんど全滅状態に近かった(e)。ローカルな科学館の例にもれず、ここでも、収蔵庫には温度・湿度管理の設備はなく、専従の学芸員はいない。人も予算も極度に不足しているため、当然ながら標本の管理は不可能に近い。ウロコケシボウズタケは液浸標本だったため、カビと虫からは守られていた。 |
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先日三重県で何年か前に採集したという液浸標本を見せてもらった。夕方6:00頃から飲み始め夜10:00近くになり、十分出来上がっていた。高さ15センチほど、発生時の面影がよく残ったよい標本で、トガリフカアミガサタケだということだった。見た瞬間、頭部子嚢盤の形と柄の様子から、トガリフカアミガサタケではなくオオズキンカブリタケだと思った。
「これって、トガリじゃないよ。オオズキンカブリだよ。間違いない」 アルコールはたっぷり入って十分できあがっていた。液浸瓶の口を開けて頭部からピンセットで微小片をつまみ出してプレパラートを作った。かなり酔っているので、KOHが見つからないとか、スイッチオンにしたのに顕微鏡の照明がつかないとか、いろいろあった。やっとのことで顕微鏡を覗くことができた。視野にあったのは、予期したものとはまるでちがっていた。
「ありゃあ、胞子が八つ入ってる。オオズキンじゃなかい!」 酔いが一気に消えていった。この日の昼間、「過去の記憶と思い込みできのこの名前をつけてしまう愚」について話をしたばかりだった。しっかり実践してしまった。思い込みの怖さ、少しでも怪しいと思ったら、ていねいに確認する必要を改めて肝に銘じた夜だった。 |
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今am2:30、早朝というより深夜に近い時間帯だが、これから三重県に向けて出発。東名高速東京インターをam4:00前に通過して深夜料金で走ることになる。残念ながらまだ、高速料金1,000円という恩恵にあずかることはできない。今月28日以降になれば、土日祭日は明るくなってから出発してもよいのだろうが、高速道路は慢性渋滞になるんじゃないだろうか。当然のように事故も増えるだろう。土日の高速利用に関してはいまから先が思いやられる。 それはともかく、今日明日は三重県、そのあとは愛知・静岡県で菌類と蘚苔類の観察をすることになる。今夜は久しぶりに友人等と宴会か。 |
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4月に行われる日本菌学会関東支部の講演会が興味深い。例年総会に引き続いて行われる講演会や冬のシンポジウムは、親学会ではなかなかできないテーマや視点で鋭く核心に迫ることで知られる。今回は昨年の日本菌学会第52回大会で行われた種の定義と問題に関するシンポジウムを踏まえて、あらためて「種とは何ぞや?」について考える機会を設けたという。 この機会に参加して、改めて「種」について考えてみてはいかがだろうか。詳細は、下記「日本菌学会関東支部」の公式サイトを参照されたい。非会員の参加も歓迎だという。
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昨日、さいたま市のトガリアミガサタケのシロに行ってみた。ここでは十数年来2月末から3月はじめの頃には必ずトガリアミガサタケが見られた。昨年夏工事の重機がシロの土や落ち葉を根こそぎ掬いだしていた。周囲の樹木もかなり伐採された。樹林をつぶして建物を造るようだ。 予想どおり、トガリアミガサタケは全く見られなかった。もう少し季節が進めば、わずかの生き残りがきのこを作るかもしれない。一方、他人の家の庭で近づけないこともあって撮影などはしなかったが、さいたま市の別の場所ではトガリアミガサタケがかなり大きく成長していた。いよいよ盤菌の季節が始まったようだ。 |
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日曜日に栃木県の石灰岩峰で採集した茶褐色の菌核菌はその日の内に検鏡したが、撮影はしなかった。今朝、改めてプレパラートを作って撮影した。キンポウゲ科につく菌核菌(a〜c)と杉の枝葉につく菌核菌だ(d〜f)。後者は前者より子嚢も子嚢胞子も小さい。 |
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キンポウゲ科につく菌核菌はアネモネタマチャワンタケとしてよいと思うが(雑記2003.4.13)、杉の枝葉に着く菌核菌は、子実層托実質が円形菌組織ではないから、2年前の2月に観察したものとは違うのかもしれない(同2007.2.15)。 杉枝から出た菌核菌は円盤の径が8〜15mmと比較的大きいので、そのまま手でつかみ、直接カミソリをあてて切り出したが、やはり薄くは切れなかった(d)。ピスを使うなり、実体鏡の下で切り出せば、薄く切るのはずっと楽だろう。そのまま倍率をあげても暗くて見にくいので、改めて簡易ミクロトームで薄切りし、それを軽く押しつぶしてメルツァーで封入した(e, f)。 |
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