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落枝に白くて繊細な小さなきのこが着いていた。背着生で柄はなく、カサの背側頂付近で枝についている(a, b)。あまり考えずに何気なく採集してしまった。紙袋に入れて数日放置して置いたところ、すっかり縮れて硬くなっていた(c)。カサの表面は白毛でおおわれている。
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白色の胞子紋が落ちた。胞子の姿は明瞭で(d)、非アミロイド(e)。乾燥状態だったので、楽にヒダの横断面を切り出せた。フロキシンで染めてみると、縁シスチジアがあり(g)、縁にも側にも、槍の穂先のような厚壁のペグがある(f, h)。担子器にはステリグマ(担子小柄)が二つしかない(i, j)。菌糸にはクランプがある(k)。カサ上の白毛はすべて骨格菌糸からなっていた(l)。
もう一つの白いきのこは、地上生の菌根菌。白色のアセタケだ(m, n)。アセタケは、きのこ狩りの人たちには全く顧みられることのない、つまらないきのことされている。外見が似通っていたり、名無しのきのこも多く、同定には顕微鏡が必須とされる仲間だ。 |
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ひと目みたとき、デコボコの胞子をもったきのこだと感じた。シロトマヤタケならば胞子は平滑な楕円形、シロニセトマヤタケなら胞子はデコボコ。他にも白色で別種のアセタケもあるようだ。ここには掲げなかったが、柄の基部の様子、シスチジアの高倍率像、カサ表皮、柄の表皮などの様子から、シロニセトマヤタケのようだ。直感は当たりだった。 | |||||||||||||
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久しぶりに埼玉県南部の保護林を歩いてみた。イグチ類、テングタケ類、ベニタケ類、チチタケ類などの大形のきのこが多数出ていた。今週前半の夕方から夜にかけての激しい雨のため、柄やヒダが泥だらけで撮影に耐えないきのこが多かった。特にテングタケの仲間は、強い雨に倒されて崩れてしまったものが目立った。
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最も多く発生していたきのこはイタチタケの仲間、次いで赤色や白色、紫褐色、緑褐色のベニタケ類、そして白色や褐色のアセタケ類だった。泥汚れの比較的少ないものを選んで、少数だけ撮影して採取したが、帰宅してみると大形菌だけで20種類以上もあった。 ヤマドリタケモドキ(a)、ムラサキヤマドリタケ(b)、アカヤマドリ(d)は蹴飛ばされたり、ひっくり返されて汚れきったものが多かった。アケボノアワタケらしき菌は脱色されたような色のものばかりだった(c)。テングタケ属(e)、ツエタケ属(f)も多くの種類が出ていた。 ベニタケ類は少なくとも10種以上みたが、ひとつも持ち帰らなかった。チチタケ類では、ヒロハシデチチタケ(g, h)、チチタケ(i, j)、ヒロハウスズミチチタケ(k, l)だけを持ち帰った。アセタケ属、アカツムタケ属、モエギタケ属、ハラタケ属のきのこは、ほとんどがひどい泥を浴びていた。 |
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コケの間から小さな橙色のきのこが多数出ていた(a)。コケはコバノチョウチンゴケ、きのこはヒナノヒガサのようだ(b)。ハイゴケやコツボゴケなど多くの蘚類の間からでるようだが、スギゴケ類や葉状体苔類のゼニゴケの間からは出る姿はあまり見かけない。 ヒダは典型的な垂生だ(c)。この部分を見ていて、妙なことを思いついた。カサを輪切りにすること、さらに、ヒダの基部の柄にかかった部分で横断面を切り出して遊ぶことにした。それに先だって胞子を確認して、ヒダを一枚スライドグラスに寝かせて縁を見た。胞子は非アミロイドで(e)、ヒダの縁には薄膜のシスチジアがある(f)。 |
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カサと柄の横断面を切り出す位置を決めた(g)。青色線の部分で横断面を切ると、リング状の部分(h)と突起のついた楕円形(i)が現れた。縁シスチジアも側シスチジアも同じような形をしている(k〜m)。カサにも柄にも、ヒダのシスチジアと似た形のシスチジアがある(n, o)。
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菌糸にはクランプがあるが、低倍率でみるとちょっとわかりにくい(p)。ヒナノヒガサを覗いて遊んだのは一年ぶりのことだ(雑記2008.6.10)。そういえば、放置して久しい「顕微鏡下の素顔」もヒナノヒガサのミクロの姿は載っていない。 | |||||||||||||
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先日狭山湖畔で採集したカワリハツ?(a)は、ヒダの間に小さな羽虫が無数に潜んでいた。帰宅後に室内で袋から出すと、虫が一斉に飛び出して、テーブル一帯がゴマをまき散らしたようになった。慌てて再び袋を閉じてベランダに持ち出したが、すでに後の祭りである。 2cm角ほどの小片を二つ残して、大半はポリ袋に放り込んで捨てた。今朝は、この小片がまだ冷蔵庫に残っていたので、最終処分をする前にいくつか確認してみた。すでに何日か経過しているので、かなり痛んでいたが、呈色反応はカワリハツを示唆していた。 |
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ベニタケ類については、検鏡に先立って、硫酸鉄、グアヤク、フェノールの3点による呈色反応を見ることにしている。今朝は呈色反応の結果は撮らなかった。ヒダを一枚フロキシンで染めて縁をみた(c)。縁シスチジアがある(d, i, j)。小片からヒダ断面を切り出してみた(e)。ヒダ実質の球形細胞はまだ崩れていない(f, l)。カサ表皮は水で封入したものはとてもわかりにくい(g)。フロキシンを加えて、水をKOHで置き換えると、特徴的な姿が現れた(h)。 たぶん、広義のカワリハツとしてよいのだろう。何度見ても、どれが純正カワリハツなのかいまだによく分からない(雑記2007.9.21)。 |
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広葉樹林に赤色のベニタケの仲間が出ていた(a, b)。ヒダとカサ肉、柄の三ヵ所に、グアヤク、硫酸鉄、フェノールをふりかけた。試薬滴下直後には色の変化はあまりなかった。5分ほどすると、グアヤクを滴下した部分がわずかに赤みを帯びてきた(c)。 呈色反応試験をしたヒダなどはしばらく放置して、その間に胞子(e)をみた。ついで、ヒダを一枚取り外して、スライドグラスに寝かせ、フロキシンをたらして縁をみた。縁シスチジアらしきものが見える(f)。とりあえずヒダ横断面を切り出してみた(g)。 |
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ヒダ断面の先端付近には透明薄膜の縁シスチジアらしきものがある(g, h)。ヒダの微小片を押しつぶして、縁シスチジア(i, j)、担子器(j)などを確認し、カサ表皮の様子を水(k)とフロキシン+KOHでみた(l)。呈色反応試験開始から、すでに15分ほど経過していた。 先ほど呈色反応をみるため試薬を滴下したものをみると、グアヤクの部分が濃緑色に、フェーノールの部分が暗紫色に変わっていた(d)。硫酸鉄を振りかけた部分はほとんど変化が無かった。さらに30分経過しても色の変化はなかった。カサ肉、柄でも反応は同じだった。 呈色反応を確認する場合、滴下数分後の色変だけをみると、グアヤクで赤変、硫酸鉄とフェーノールには無反応といった、誤った判断に陥ることになる。 |
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昨日は菌類懇話会の例会。久しぶりに川崎市の生田緑地に出向いた。青少年科学館のきのこ観察会の日でもあったため、菌懇会員は参加者の案内役を勤める必要があり、ゆっくりと撮影している暇はほとんどなかった。多くの種類のきのこがみられた。 |
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イグチやテングタケの仲間の大きなきのこも姿をみせていた。アメリカウラベニイロガワリ(a, b)やイボテングタケ、ハタケシメジ、シロキツネノサカズキ、フジイロチャワンタケなどもみられた。その一方で相変わらずイヌセンボンタケ(c, d)や、イタチタケ、ムジナタケなどもあった。多孔菌の仲間は、筑波大学院生の早乙女さんあてに発送された。 | |||||||
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ふだん胞子紋をとるのに、きのこから小片をハサミで切りとって、プラスチックケースに並べたカバーグラスに置いて蓋をする。ケースひとつで4〜6種の胞子紋がとれる。きのこが多いときはこのケースを重ね、冬期以外は冷蔵庫に入れて、数時間から一晩放置する。かつてはスライドグラスに胞子紋をとって、それを長いこと保存していたが今はやっていない(雑記2008.3.14)。
先日千葉県で採集したウスタケの仲間(a, b)は、胞子紋をとるための小片を残して、すべて鳥取に送ってしまった。今朝はその小片から胞子と子実層、担子器を眺めてみた(c〜f)。 |
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胞子の表面には微細なイボがあるようだが、水封ではわかりにくい(c)。ウスタケやホウキタケの仲間の胞子検鏡には、コットンブルーが必須だ。コットンブルーで染色すると胞子表面の模様が鮮明に浮かび上がってくることが多い(d)。 胞子をコットンブルーで封入しただけでは、表面が染まるまでに一晩ほどかかる。反応を促進するために、ふつうはスライドグラスの下からターボライターなどで炙る。胞子が煮える直前まで、つまり、液がジューッと音を立てる直前まで熱する(雑記2004.1.25、同1.21、同1.24、同1.27)。 |
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昨日東京都の水瓶のひとつ多摩湖・狭山湖周辺の緑地を歩いてみた。多くのきのこがいろいろと出始めていた。ベニタケ、チチタケの仲間が圧倒的に多く、7〜8種類ほど確認した(a〜e)。テングタケ科のきのこにはひとつも出会わなかった。相変わらず、ムレオオイチョウタケがよく出ている(f)。写真のものはカサ径18cmを越えていた。
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腐朽木やウッドチップからも15〜20種ほどのきのこを確認できた(g〜l)。このほかにも、ベニヒダタケ、ヒイロベニヒダタケ、ダイダイガサ、サケツバタケ、アセタケ類、フミヅキタケ類、ナガエノチャワンタケ、ノボリリュウタケ、クロノボリリュウタケ、など多くのきのこを確認できた。これらのうち、10数種を持ち帰った。
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ヒトヨタケの仲間(j, k)は一晩経過した今朝になると、成菌はカサがドロドロになり、幼菌の大部分は開いてつぶれていた。ザラエノヒトヨタケらしき菌(j)から胞子紋をとるのはやめにした。ただ、若い菌がいくつか残っていたので、それらからヒダを切り出して遊んだ(m〜r)。 実体鏡の下で、ヒダをカサごと切り出した(m)。カサ表皮は、球形細胞が縦に繋がり、それが柵状に並んでいる(n)。側シスチジアは薄膜で大きく(q)、縁シスチジアは嚢状のものが多数群れている(p)。ヒダ実質は並列型(n, o)。担子器も捕らえておくことにした(r)。 |
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今年は実によくムレオオイチョウタケ属の大形菌に出会う。5月には埼玉県川越市の保護林と狭山湖畔の自然公園で、6月は埼玉県三芳町の保護林と千葉県君津市の公園でと、都合4〜5ヵ所で出会っている。先日の房総半島内部の公園からは一部持ち帰った(a)。 しっかりしたきのこなので、ヒダの横断面切り出しはとても楽にできる(d)。実体鏡下での切り出し練習にはもってこいのきのこといえる。むろん、ピスで挟んで簡易ミクロトームでも楽に切れる。ヒダ実質は並列型で(e)、シスチジアの類は見られない。 |
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胞子はほぼ平滑で、弱いアミロイド(f, g)。カサ表皮は菌糸が錯綜している(h)。担子器の基部にはクランプがある(i)。カサ表皮からカサ肉、ヒダ実質、柄のどの部分を見ても、多数のクランプがある。ここではカサ表皮のクランプを掲げた(j)。ムレオオイチョウタケでよいと思う。 | |||||||||||
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相変わらずカンゾウタケがよく出ている。一昨日の千葉でもスダジイの老木の根元をみると、遠目にも赤い色がよく目立った。成熟すると、当初の鮮やかな赤色は失せて赤褐色となる。十分成熟した個体をひとつ持ち帰った(a)。子実層面に目を近づけると、それだけでも子実層部がパイプの集合体であることがわかる(b)。ルーペや実体鏡で見るとさらに明瞭にわかる(c)。少しでも乾燥すると隣接するパイプが分離してくる(d)。
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きのこの横断面はまさに霜降り肉そのもので(e)、子実層の基部は硬いゼラチン状の層で、しっかりとカサ肉についている(f)。パイプをバラバラにするには、子実層の基部をピンセットでつかむと楽に一本ずつにすることができる。 胞子は非アミロイド(g, h)。管孔部を横断面で切り出そうと試みた。乾燥状態であれば誰にでも楽に切れるのだが、生状態では非常に困難で、やはりうまくいかなかった(i)。担子器の基部にはクランプがあり(j)、子実層托やカサ肉にも高い頻度でクランプがみられる(l)。各パイプの先端や内側にはシスチジア様の組織が多数ある(k)。カンゾウタケを顕微鏡で覗いたのは4年ぶりのことだった(雑記2005.5.26)。 |
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