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同定目的のために、カサ表皮やヒダなど、きのこの薄片を切り出すとき、面倒くさいためしばしば [めくら切り] でごまかしているが、やはり実体鏡の威力は絶大だ。実体鏡を使わないまでも、せめてピスに挟んで切るなり、簡易ミクロトームを使わねば、とあらためて感じた。
シラガゴケ属 Leucobryum の蘚類の葉は、透明な細胞が背腹から中央の葉緑細胞をサンドイッチ状態で挟み込んだような構造をしている。同定のためには、葉の横断面をチェックする必要がある。まだ夜明け前の暗い中で、ホソバオキナゴケ Leucobryum juniperoideum と思われるコケの葉の横断面を切り出した。
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最初に千切りの要領でカミソリを次々とあてた。いわゆる [めくら切り] だ。薄めのものを選んで顕微鏡で覗いたが、厚みが不均一らしく、部分的にしかピントが合わない(b)。同定目的ならこれで十分だが、検鏡画像を撮影するつもりだったので、もう少し綺麗な画像が欲しい。 あらためて、実体鏡の下に葉束をおいて、両眼で手元を見ながらカミソリをあてた。眼下には次々と多数の薄片ができあがった(c, d)。顕微鏡の低倍率でみても、結構いけそうだ(e)。先ほどと同じ倍率にすると、より広い範囲でピントが合うことを確認できた(f)。 振り返ってみると、[めくら切り] では、画像(a)の青色部分(約2mm)に対して何度も刃をあてていた。切片には、薄いものもあればやたらに厚いものもあった。一方、実体鏡の下では、黄色部分(0.3mm弱)に対してカミソリの刃を5〜6回あてていた。精度がまるで違う。 |
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近場の公園を歩いてみた。11月20日以来だったが、相変わらずシロフクロタケの大発生が続いていた(雑記2009.11.21)。昨日は、カサ径10〜18cm、柄下部の径3〜5cmの大きなものが数十個、それよりやや小振りの個体が数十個あった(d〜f)。 地面には霜柱が立ち、一部では氷で覆われていた。このためか、きのこの大半は地下の部分が凍っていた。ヒダも一度凍ったような状態であり、持ち帰った成菌はいずれもヒダがグショグショに濡れて崩れていた。連日強い風が吹き寒い日が続いていたためか、人出が少なく、きのこも踏みつぶされずに残っていたようだ。 |
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ムラサキシメジも大きく育ち、大きな個体が束生〜群生していた(a〜c)。ハタケキノコもまだまだ健在であったが、なぜかヒトヨタケの仲間には全く出会わなかった。 | |||||||
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乾燥機の底をふと見ると,紙袋が落ちていた。開いてみると、しっかり乾燥してパリパリになったきのこが出てきた(a)。おそらく乾燥途中で袋ごと底におちて、何度も何度も熱乾燥させられたのだろう。梅雨の頃だったら黴びているはずだ。袋の番号から11月20日にさいたま市で採集したコザラミノシメジらしい(雑記2009.11.22)。格納前に念のためにチェックした。 |
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よく乾燥していて、ちょっとヒダに触れると簡単に崩れてしまう(b)。とりあえず3%KOHで封入してヒダの縁をみると、それらしいシスチジアがある(c)。ヒダの横断面を切り出してみた。やはり生標本からのようなワケにはいかない(d)。ヒダ実質や側シスチジアの確認は問題ない(e, g)。胞子のアミロイド反応も間違いない(f)。カサ表皮はよくわからなかった(h)。 博物館などの収蔵庫に出向いて、そこの標本と自分の手元標本とを比較することがある。古い標本の中には、カサやヒダがすっかり潰れて崩れていたり、部分的に粉状になってしまっているものもある。でも、たいていは胞子のアミロイド反応とかシスチジアの形はわかるものだ。 |
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昨日ヒメキクラゲを覗いたので、あいまいな記憶の再整理のためキクラゲ仲間のミクロの姿を整理しておくことにした。雑記2006.5.18以来のことだろう。これまでに雑記で取り上げたものを拾い出したつもりだが、この他にも漏れがあるに違いない。 これまで出会ったなかでも印象的だったのはサカヅキキクラゲとジュズタンシキンだった。屋外に出たときには意識的に探すようにしているが、以後ほとんど出会っていない。
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今月5日に採取したヒメキクラゲは、胞子紋とりの処置だけ行って冷蔵庫に放置したままになっていた。半乾燥状態で薄片作成にはちょうどよい状態だ(a)。表層を含めて切り出し(b)、フロキシンで染め倍率を上げると子実層がよくみえる(c)。柄を伸ばした担子器は見つからなかった(d)。ソーセージ形の胞子を(e)、フロキシンとコットンブルーで染めた(f)。キクラゲ類の観察では、基本的な留意事項に配慮するとうまく観察できる(雑記2006.5.10、同2006.1.26)。
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しかし、やはり肝心なことはよく切れる新しいカミソリ刃を使うことだ。今朝は、すでに数十回ほど使用して刃先がなまくら状態のカミソリを使ったため、ゴム状となったゼラチン質を引きずるような状態となって、うまく薄片を切り出すことができなかった(b, c)。 | |||||||
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先日乾燥標本にしたヌメリイグチをみたので、今朝は11月20日にさいたま市で採取したハタケキノコを覗いて遊んだ。当時は大群落があちこちにできて、新鮮な個体が溢れていた(a, b)。しかし、他に見る必要のあるきのこがあったので、胞子紋だけとって直ちに乾燥させた。今朝取り出してみると、比較的原形を保っている(c)。しかしヒダは結構クシャクシャになっていた(d)。
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胞子には発芽孔があり(e)、封入する水をやや多めにすると、何ヵ所かで発芽孔が上を向いていた(f)。ヒダをスライドグラスに寝かせてフロキシンと水で封入した。縁には縁シスチジアがある(g)。ヒダ切片は生標本から切り出した方が綺麗な姿を得られるが、かなり縮れた乾燥標本からでも撮影に堪えうる切片を切り出せるものだ(h)。これを見ると側シスチジアはなさそうだ。フロキシンで染めると縁シスチジアが浮かび上がってきた(i)。 あとは生標本からのときと同じく、ヒダを押しつぶせば、担子器や縁シスチジアの形やサイズを計測できる(j)。担子器の基部にはクランプがあり、ヒダ実質やカサ肉の菌糸にもクランプがある(k)。カサ表皮の様子はいまひとつはっきりしない(l)。 |
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「きのこ雑記」の Profile で趣味として「ハイキング・秘湯探訪」と記しているが、秘湯探訪の方は最近とんとご無沙汰している。秘湯を楽しむ時間と金がなかったからだ。事故車の修理も終わりタイヤも冬季用に交換したので、今日明日は久しぶりに温泉とこけを楽しんでくることにした。 きのこの詳細な観察をはじめたのは2001年のこと。記録や考察などは「きのこ雑記」の「観察覚書」に記していた。当時は会社勤めの身で「観察覚書」への掲載ペースは年間100種ほどだった。しかし、記録とか考察といったものはいたって単調で退屈だ。そこで「観察覚書」は1年目(2002年)に廃止して、生態写真だけを「フォトアルバム」に載せるようにした。 「こけ雑記」の「観察覚書」掲載種が299種となった。100種を越えたのが2007年4月(「いつのまにか百種」)、さらに200種を越えたのが2008年4月のこと(「スローペース:200種まで」)。昨年と今年は10〜11月はもっぱらミズゴケの観察ばかりやっていたので(「ミズゴケ観察月間」)、取扱種数は増えなかった。きのこと同じく、これまた年間100種弱という観察ペースになる。 撮影と採取のあと、顕微鏡や試薬も使い詳細に記録・撮影して、継続的にWEB上にアップするにはそれなりの意欲と時間が必要だ。会社勤めであれ年金生活であれ、また対象がきのこであれこけであれ、年間100件というのはその限界なのかもしれない。 |
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「こけ雑記」を始めたのは3年前の9月のこと、[観察覚書] (= [種の記載] もどき) には、ていねいに、というよりも執拗に観察した結果を記してきた。ああでもないこうでもないとさんざん調べてやっと判明した種名であれば、たいていの人は覚え込んでしまうという。 ところが先天的に極度に記憶力の劣るわが身にはそれができない。記憶内容を保持していられるのはせいぜい数時間から数日。だから、昨日詳細に観察した種に今日また出会っても、それが「なに」かをおぼろげには理解できても、たいていは名前を思い出せない。せめてもの救いは、それが「なに」であるかを一定期間は何となく思い出せることだ。 だから多くの種の名前を覚えていて、フィールドなどで出会ったときに、その名を言える人には、ただただもう脱帽である。他人は「覚える気がないからだ」と非難するが、それは違う。いくら図鑑を眺めてすがたと名前を脳裡に焼き付けようと努力しても覚えられないのだ。これはこけ(蘚苔類)でもきのこでも同じだ。せめて人並みの記憶力があったらなぁ〜。 |
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近くの園芸店には早々とエリカの若木や苗が並び始めた。鉢をのぞき込んでみると、多くの鉢で子嚢菌が多数出ていた。ツツジ型菌根菌だ。このタイプの菌根菌はエリコイド型菌根(Ericoid mycorrhiza)といわるようにエリカとは特に相性がよいようだ。寒い時期に店頭に並ぶエリカの鉢にはたいてい着いている。2鉢購入してきて遊んだ(a〜c)。 |
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今年の1月にもこの子嚢菌を覗いたり、エリカの毛根を切り刻んで菌根を探して覗いてみたが、今回はエリカを掘り出したり、毛根を解剖することはせずに、子嚢菌を一つ取り出して、子嚢や側糸を覗くだけでやめた(雑記2009.1.25、同2009.1.26、同2009.2.1)。 | |||||||
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