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日( )
2009年9月30日(水)
 
ハードディスククラッシュ!
 
 悪夢の朝! あまりにも短命だった。内蔵ハードディスクの一つがクラッシュ。昨日までは何事もなく稼働していたのに! 今朝電源を入れるとカチャカチャといつまでも異音がして、なかなか起動しない。起動後も異音はやまず、ハードディスクの姿がまるまる一つ消えていた。
 今年7月購入したパソコンに標準装備の一台目のハードディスクは何事もなく動いているので、Windowsは起動する。破損したのは2007年11月末に購入した2台目のハードディスクだ。1TBの容量があって、画像データと記載データをすべて格納していた。
 バックアップ用外付けハードディスクをチェックしたところ、最後にバックアップしたのは今年の9月21日。22日から昨日までの画像データ・記載データはすべて失われたことになる。よりによって、この10日間には新たに貴重なデータが加わり、しかも、バックアップをしていなかった。
 この中には、久しぶりに出会ったキショウゲンジ、蘚苔類のミヤマチリメンゴケ、チシマシッポゴケ、コウライイチイゴケ、フソウツキヌキゴケも含まれている。クラッシュしたディスクからデータを救い出すのは難しく確率も低い。専門業者に頼めばビックリするような高価な価格を請求される。今日以降の予定を大幅に変更しなくてはならなくなってしまった。

[追記:2009.9.30 pm4:00]

  1. クラッシュしたハードディスクは専門業者による復旧見積りによると、重度の物理障害のため30〜50万円、データ取り出しに1週間ほど必要とのこと。復旧依頼は止めて、amazonに1TBのハードディスクを発注した。
  2. 今日の早朝、先日キショウゲンジを採取した場所まで往復してきた。たった一個体だったが採取することができ、生きのこからの検鏡写真を撮り直した。160km、4時間の浪費。10日間バックアップを怠ったツケは大きなものとなってしまった。
  3. 9月23日の雑記で「カラマツベニハナイグチ(h)」としたきのこはキノボリイグチの誤り。鹿沼市の石原さんの指摘で気づき、加筆修正した。ご指摘ありがとうございます。

2009年9月29日(火)
 
久しぶりのキショウゲンジ
 
 一昨日は千葉菌類談話会の観察会だった。例年だとよく出ているウラムラサキシメジはたった1個体だけしか鑑定会には並ばなかった。久しぶりに多数のキショウゲンジに出会ったが、新鮮なよい状態の個体は少なかった(a〜c)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 胞子紋から採取した胞子を水で封入するとレモン型の特徴的な姿が見えた。ただ、胞子表面の様子ははっきりしない。そこで3%KOHで封入すると、表面に細かい皺のような微細な模様があることがわかる(e)。ヒダをそのままスライドグラスに寝かせると、縁に棍棒状の薄膜シスチジアが多数みえた(i)。ヒダを切り出すと同じものがみえた(h)。ヒダ実質は並列形(g)。カサ表皮には丸形の細胞が連なりてっぺんに棍棒状の細胞が立っている。

2009年9月28日(月)
 
なんだこれは?
 
 南会津昭和村で水溝脇にミズゴケが多数でていた。そのすぐ脇には大形のキツネタケの仲間が幾つも単生していた(a)。掘り出してみると、いずれも柄の基部に紫色の綿状の菌糸がまとわりついている(b)。どうやらオオキツネタケらしい。球形の胞子には微細な疣がある(c)。子実体本体ばかりでなく、紫色の綿くず状の菌糸にもクランプがある。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 ヒダ切片を切り出して(d)、子実層を覗いていると側シスチジアのようなものがある(e)。倍率を上げてみると、頭部は結晶に被われ、基部は子実層托実質にまで突き刺さっている。オオキツネタケにこのような側シスチジアはない。そこで、何枚もヒダを切ったり、縁を取り去って押しつぶしてみたが、他には同じような構造物は見あたらない。
 どうやら、付近にあった別のきのこのシスチジアか剛毛が、たまたまオオキツネタケのヒダに突き刺さったものらしい。カサをじっくりと調べてみると、そこにも何本かの同じような構造物がみられた。春先に地上生キノコのヒダやカサに、大形で緑色球形のシスチジアのような構造が見られることがある。飛散した杉花粉が付着したものだ。

2009年9月27日()
 
ベニヒガサではなかった
 
 会津で採集した紅色のアカヤマタケ属菌は Hygrocybe cantharellus だろうと思っていた(ベニヒガサとアカヌマベニタケの和名を逆に覚えていたので、現地ではアカヌマベニタケと仮同定していた)。ヒダは柄に長く下延した垂生で、切ると赤い汁をだし変色性はない(b)。
 ヒダは脆くボテッと厚いので、切片は幅広い。スライドグラスのひっかき傷がもろにいくつも写っている(b)。傷の少ない部分を選んでフロキシンで染めた(c)。子実層を覗くとなんとなく担子器に大小ある(d)。わかりにくいので、KOHで封入して押しつぶしてみた。確かに大小の担子器が入り交じり、未成熟の胞子をつけたものもある(e)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 帰宅直後に採取した胞子紋を覗いてみた(f)。胞子には大小二種の胞子が混じっている。落下胞子から採取した胞子紋を覗いているので、未成熟胞子が多量に混入したわけではなさそうだ。どこをみても大小の胞子の割合が一定しているからコンタミの可能性もない。
 どうやらネッタイベニヒガサらしい。先月初めにも福島県土湯付近で同じようなきのこを採集している(雑記2009.8.4)。それにしても、大小二種の担子器が同一視野に存在する場所を探すのは骨が折れる。しかも、そこにスライドグラスの傷がない場所はさらに少なかった。

2009年9月26日()
 
傷だらけのスライドグラス
 
 コケやキノコの同定にはプレパラートの作成が欠かせない。1点につき何枚かのプレパラートが必要となる。その都度スライドグラスを交換していると膨大な数を消費する。そこで、何年か前から、原則として1種につきスライドグラス1枚としてきた。
 今年からは数日〜1週間で1枚を使い回してきた。別のキノコやコケを検鏡する場合、消毒用アルコールとティッシュペーパーでスライドグラスを拭って使う。カミソリ刃による傷や多少のコンタミに対しては目をつぶる。撮影はコンタミ部分をよけて撮ってきた。
 今月は2枚のスライドグラスを交互に使って、コケとキノコを検鏡してきた。ティッシュペーパーで拭っては使うので、スライドグラスの洗浄は今年に入って一度もやっていない。かつての洗浄頻度が嘘のようだ(雑記2005.6.4)。超音波洗浄機は宝の持ち腐れ状態だ。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(c) x 10
(e)
(d)
(f)
(d) x 10
 今月はコケ17点、キノコ40点ほどを検鏡した。作ったプレパラートは300〜400枚ほどになる。昨夕、数日前に採取したアカヤマタケ属菌のヒダを切り出した(a)。接眼レンズを覗くと、汚れとひっかき傷がすさまじい(b)。1枚のスライドグラスを150〜200回使った結果がこれだ。よく見ると数百の傷がある。極細ピンセット(c)とカミソリ(d)がつけた傷が最も多い。同定にはこれで構わないが、撮影結果は美しくない。新品は手元に400枚弱、さて明日からはどうしよう。

2009年9月25日(金)
 
クヌギタケのそっくりさん
 
 クヌギタケを Mycena galericulata と捉えるならば、クヌギタケであるとするためには、(1) 胞子がアミロイド、(2) 縁シスチジアが棍棒状で上半部が突起に被われる、(3) カサ表皮が小突起を持った多分枝菌糸からなる、という条件を満たす必要があると思う。ただ、原記載には顕微鏡的記載はなくて、これらは後日タイプ標本の観察から得られたものだろう。
 2000年5月14日に富士山で出会ったキノコは上記の3条件を満たしていた。そこで、他の形質状態をさらに観察して、その結果を M. galericulata についての複数文献と比較した。その結果、クヌギタケとして「キノコのフォトアルバム」にアップしたという経緯がある。
 以来つい最近まで何十回か、外見がクヌギタケそっくりなきのこに出会っている。それらの多くは胞子がアミロイドだった。ただ、いずれも上記条件の(2)と(3)をともに満たすことはなかった。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
 先日クヌギタケ?を採取した(a, b)。胞子はアミロイド(c, d)。ヒダ実質は並列型(e)。縁シスチジア上半部には小突起が多数ある(f〜i)。条件(1)と(2)はクリアしているが、(3)が微妙で、カサ中央部の表皮細胞には小突起があるが、他の部分では小突起がない(j, k)。

 同じ日に別の倒木からクヌギタケ?を採取していた(l, m)。これも胞子はアミロイド(m)。でもヒダをスライドグラスに載せて縁をみると、縁シスチジアの形からまるで違っていた(o, p)。カサ表皮の菌糸にも小突起はない(q)。したがって、M. galericulata ではない。
 

(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
 クヌギタケのそっくりさんは結構多い。上記の二標本は外見と胞子は似ていたが、縁シスチジアの形はまるで違っていた。キヌハダトマヤタケとキヌハダニセトマヤタケ、シロトマヤタケとシロニセトマヤタケといった例もある。やはりキノコは微生物なのだと感じさせられた。

2009年9月24日(木)
 
日光のツキヨタケ
 
 日光ではツキヨタケはブナとミズナラからでる。先日も両者から若いツキヨタケをいくつか採集した(a〜e)。なぜか、これまで採集した日光のツキヨタケはいずれも発光しない。また、以前にも一度記したが(雑記2008.10.5)、カサ表皮はKOHをかけるとたちまち青色〜緑色に変色する(f)。乾燥標本でも数分待てば青変する。でも、ヒダや柄にKOHをかけても変色しない。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 保育社図鑑など、多くの図鑑には「担子器は4胞子をつける」と記されている(j)。しかし、じっくりと観察すると、たいていのツキヨタケでは2胞子性の担子器がかなり高い比率で存在する(h, i)。KOHで封入してみたカサ表皮には、青色〜緑色を帯びた菌糸が匍匐している。子実体のどの部分にもクランプが見られる。もちろん、カサ表皮の菌糸にもクランプがある(l)。

2009年9月23日(火)
 
きのこ不作の南会津
 
 夏の異常気象と雨不足のせいか、南会津地方ではどこに行ってもきのこの発生は非常に悪かった。街道のキノコをメイン看板にした出店は元気がなかった。野生キノコがないために店を閉じてしまっている所も多かった。屋台の店主や古老の話では、これほどまできのこ不作の年はかつてなかったという。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
 山はすっかり乾燥しきって、湿原までがまるで草原のように干からびていた。ミズゴケからでるきのこを観察したが、ミズゴケタケ(a)、キミズゴケノハナ(c)、ミズゴケノハナ(d)はよく出ていた。ナラタケが湿原のミズゴケの間から出ているのには驚いた(d)。
 ミズゴケ湿原を取り巻く周辺の山には、少数のきのこが見られた。いつもの年なら決まって見られるホンシメジ、コウタケ、ウラベニホテイシメジ、クリフウセンタケ、シャカシメジ、サクラシメジなどは全くなく、かろうじてヤマイグチ(e)、オシロイシメジ(f)、アカヌマベニタケ(g)、キノボリイグチ カラマツベニハナイグチ(h)などがでていた。
 カラマツベニハナイグチ(h)はキノボリイグチの間違いゆえ修正した。誤りをご指摘下さった鹿沼市の石原喜久雄さんに感謝いたします。ありがとうございました。[2009年9月30日追加修正]

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