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日( )
2009年6月30日(火)
 
赤くなって黒くなる
 
 蒸し暑い日が続きいよいよ夏本番となってきた。ここ1週間ほどは総じてきのこは少ないが、近場の雑木林を歩いてみたところ、クロハツらしいきのこが多数でていた(a)。柄が短く、全体に汚れているものが多かった。すでにヤグラタケの発生した個体もあった(b)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 いくつかをひっくり返すと、手を触れた部分がすぐに赤くなった(c)。持ち帰った個体を袋から出すと、いずれも黒変していた(d)。以前撮影したものだが、松林に出る子実体は一般に泥汚れが少なく、赤くなってから黒くなるまでの様子が分かりやすい。
 カバーグラスに落とした胞子を見た後(e)、ヒダを切り出した(f)。ヒダは硬くてしっかりしているので楽に切り出せる。メルツァー液で封入したら縁シスチジアが見えにくくなってしまった。
 東京大学の三四郎池周辺にもクロハツのすがたがあったが、最もよく出ていたのはクモタケとオリーブサカズキタケだった。

2009年6月29日(月)
 
ノウタケが大量発生
 
 智光山公園(狭山市)にはウッドチップを広範囲にまいた地域がある。ここにたくさんのノウタケが発生していた(a)。個体数で数百はあり、大きなものでは径30cmを超え、まるでオニフスベのようだった。幼菌(b)、成菌(a)、老菌(c)と一通りそろっていて観察にはちょうどよい。
 辺り一面に老熟した群れ(d)や、崩れきってまるで人糞や牛糞のようにみえる群れ(e)が異臭を放っていた。若い菌の群れは大半が蹴飛ばされたり踏みつぶされていた。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 いわゆる腹菌類をていねいに観察するには、幼菌・成菌・老菌が必要となる。胞子や弾糸を観察するのであれば、十分成熟した老菌がなくてはならない(c, f, g)。しかし、担子器や組織を観察するのであれば、未熟な若い菌が必要となる。殼皮の観察には成菌がよい。
 内部が黄色くなり始めた個体では担子器の大半は消失しているので、探すのに苦労する(j, k)。逆に、内部が硬くしまって白色のものでは、まだ担子器そのものができていない(l)。手で触れて軽くフワフワして内部が真っ白のもの(h)だと、担子器や成熟直前の胞子が多量に見られる(i)。なお、写真(i)はコンゴ−レッドとフロキシンを併用して、細胞の表面と内容物の両者を染めている。熱気球型の担子器はフロキシンだけではうまく染まらない(k)。

2009年6月28日()
 
きのこがない
 
 昨日、富士山(山梨県鳴沢村)、都民の森(東京都奥多摩)、智光山公園(埼玉県狭山市)など5〜6ヵ所を歩き回った。先週とは打って変わって、総じてきのこの姿は非常に少なく、出会ったきのこの多くは乾燥して干からびていたり、カビなどにおかされて変形していた。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 富士山は思いの外残雪が多く、今週の山開きには雪を踏みしめて登頂することになりそうだ。二合目付近でウラジロモミの根元を掘ると、ツチダンゴなどの地下生菌が出てきた。落ち葉やコケの間をよく見ると、アカヤマタケ属(a〜f)やケコガサタケ属の小形菌がでていた。林道脇にはフミヅキタケ(g, h)やアミタケ(i, j)、アセタケ類、ベニタケ類が見られた。
 奥多摩湖周辺でも、都市公園の雑木林でもきのこは少なく、汚れたり干からびたイグチ類とベニタケ類ばかりが目立った。早朝の富士山は寒くて指先が凍えるほどだったが、低地は予想外に暑く、早めに富士山を下りてしまったことを後悔した。走行450km、油の浪費旅だった。

2009年6月27日()
 
マイタケ型のベニタケ類
 
 日光では老杉の樹下にミヤマトンビマイが花盛りだ。若い食用になるもの(a, b)から、径40cmを越える大きなもの(e)まで、30分ほど歩いただけで10数個体に出会った。例年だと6月前半に最盛期を迎えるのだが、今年は発生が半月ほど遅れているようだ。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 このきのこが興味深いのは、形こそマイタケやら多孔菌のようなすがたをしているが、ベニタケ目の腐生菌であり、オキナクサハツやクロハツなどと近縁のきのこだということだ。広葉樹下に出るオオミヤマトンビマイと針葉樹下に出るミヤマトンビマイを別種ととらえるか同一種ととらえるかについてはいろいろ議論があるが、両者ともミクロの姿はほとんど同一で、アミロイドの胞子だけ見せられたら(f)、ベニタケ類だと思ってしまう(雑記2008.6.23)。

2009年6月26日(金)
 
昨日の日光
 
 昨日、日光までヒロメノトガリアミガサタケを求めて出かけてきた。結果は新鮮な個体は全くなく、老熟したものが7〜8個体あったのみだった(j〜l)。ちょっと触っても崩れてしまうから、福島県までは冷凍便で送るしかなさそうだ。先週は全く出ていなかったところから判断すると、数日前に一気に発生したと思われる。今年の気候はかなり変だ。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 バスの中からだったが、日光で初めて身近に熊を見た。残念ながら撮影はできなかったが、バスや人をみて慌てて山に戻って行ってしまった。ホシアンズタケ(a, b)、タモギタケ(c, d)、マスタケ(e)、ハナビラタケ(f)がよく出ていた。驚いたのはハルニレや樺からスギヒラタケと思われるきのこが多数でていたことだった(g, h)。チシオタケ(i)や多孔菌があちこちに出ていた。

2009年6月25日(木)
 
死体脇のキノコ
 
 多摩湖畔の緑地にHebeloma(ワカフサタケ属)のきのこがでていた(a〜c)。22日にも同じ場所に新しいきのこがでていた。この日はひどい雨のため、現地で撮影できず自宅で泥にまみれた個体を撮影した(d〜f)。そういえばこの場所は何度も猫やネズミの死体をみたところだった。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 昨日、22日採取の個体を調べたところ、12日に採取した個体とミクロの姿はほぼ同一で、同じシロから発生したものだろう。ヒダを一枚スライドグラスに寝かせてフロキシンをかけてヒダの縁をみると、縁シスチジアが多数みえた(h, k)。次いでヒダを切り出して(i)、側面をよく見ると側シスチジアもある(j, l)。先日も泥にまみれた小さなオリーブサカズキタケの観察に難儀したが、形が大きくても泥にまみれたきのこの観察は辛いものがある。

2009年6月24日(水)
 
泥汚れのきのこ
 
 一昨日雨の中で小形のきのこを数種類採集した。ひどい降りだったので屋外での撮影はできなかった。オリーブサカズキタケと思われるきのこをポリ袋に入れて持ち帰った。
 今朝取り出してみると、柄やヒダには泥がこびりついている(a, b)。胞子紋をとるためカバーグラスにカサを伏せて放置し、その間にヒダなどを観察することにした。実体鏡の下で複数枚のヒダとカサを一緒に切り出すと、カサ側に反り返ってしまった(b, c)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 どうやら縁シスチジアはあるが側シスチジアはなさそうだ。ヒダ実質の構造がはっきりしないので、あらためてヒダを一枚取り外しスライドグラスに寝かせて切り出した(e)。ヒダ実質はやや開き気味の並列型で(f)、縁シスチジアは薄膜の棍棒型をしている(g)。担子器の基部にはクランプがあり(h)、カサ表皮は並列に菌糸が走る(i)。
 ヒダやカサを観察している間にも、カバーグラスにはうっすらと白い胞子紋ができていた。泥も多数付着していた。泥を取り除いて、これを水(j)、メルツァー試薬(k)、フロキシン+KOH(l)で覗いてみた。オリーブサカズキタケでよさそうだ。泥に汚れたきのこは取り扱いにくい。

2009年6月23日(火)
 
ベニタケ、イグチの大発生
 
 昨日朝のこと、一週間日程を間違えて東京本郷まで行ってしまった。現地で間違いに気づいたあと、いったん帰宅しあらためて多摩湖畔の緑地に出かけてみた。朝のうち曇っていた空模様はにわかに悪くなり、ひどい雨が降り続く中を歩くことになってしまった。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 傘をさして歩き出すと、足下にはベニタケ類、チチタケ類、アワタケ類、イグチ類、ニガイグチ類、イッポンシメジ類、フミヅキタケ類をはじめ、大形菌がしっかりした姿をみせていた。日曜日が雨だったこともあり、きのこは蹴飛ばされたり踏みつけられることなく素直に成長していた。
 ひどい雨のため何も持たずに歩いていたのだが、途中からカメラを取りに戻って、濡れながら少数のきのこを撮影した。暗い樹林の中でカメラを濡らさないように撮影するのが精一杯だった。小形のきのこを含めると、1時間半ほどの間に40種以上をみることができた。標本として持ち帰ったのは5〜6種だけだった。

2009年6月22日(月)
 
ふたつの Boletus
 
 4日ほど前に採集したBoletus(ヤマドリタケ属)のきのこが残っていた。ヤマドリタケモドキとムラサキヤマドリタケらしいが、両者とも腐臭を発して白色のウジ虫がうごめいていた。ヤマドリタケモドキは触った感触も全体にブヨブヨしはじめている。管孔部実質を横断面(b, c)と縦断面(d, e)で切って覗いてみた。ウジ虫をよけて切り出すのに難儀した。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 保育社の図鑑では、子実層托実質の散開型の構造に対してヤマドリタケ亜型という名称が用いられている(雑記2008.7.17)。ブヨブヨになり始めたイグチ類の切り出しは難しい。

 ヤマドリタケモドキの切り出しに難儀したあと、ムラサキヤマドリタケを切り出してみると、あっけないほど簡単に子実層托実質などを切り出すことができた(h〜k)。両者ともほぼ同じような構造を見せてくれる。胞子の形では区別できないが(g)、カサ表皮の構造はまるで異なる(l)。
 

(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 両イグチは傷み具合がかなり異なっていた。ムラサキヤマドリタケはまだブヨブヨにまでなっていなかった。それに対してヤマドリタケモドキは鼻を突く異臭を発していた。
 イグチの切片を作るのなら、乾燥状態あるいは半乾燥状態にから切り出すのが確実だ。「牛肝菌研究所」(種山さん)に掲載された管孔部実質の写真は散開型の実質がよく表現されている。イグチ類の検鏡写真としてこれほど明瞭で美しい画像はこれまでなかった。お勧めである。

2009年6月21日()
 
たまには硬質菌
 
 ふだんは滅多に採集しないのだが、先日に引き続いて硬質菌を持ち帰った。硬質菌とはいっても、水っぽくて肉質で、柔らかくやや脆いきのこだ(a)。子実層面は管孔状(b)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 一部を切り取ってカバーグラスに載せて一晩放置すると、たくさんの胞子が落ちていた(c)。水で封入するとコントラストが弱くて目が疲れるので、フロキシンで染めて撮り直した(d)。子実層を構成する菌糸は、原菌糸と骨格菌糸の2タイプがある(e)。カサ肉やカサ表面の菌糸は、太めの原菌糸ばかりだった(f)。オシロイタケということになる。

 今日は富士山に行くつもりだったが、早朝の強い雨と天気図から中止にした。


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