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千葉の海岸に出かけるつもりだったが、ひにちと曜日を振り返ってみてやめた。五十日(ゴトウビ)で金曜日、道路が大渋滞する典型的な日だ。往きは良いよい、帰りは怖い。 先日の生田緑地ではカゴタケが出ていたが、近場の公園のウッドチップにはカニノツメがよく出ている。発生期間もずいぶんと長く、未だに小さなタマゴも多数みられる。 |
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先週はカニノツメの担子器ばかりを覗いて遊んだが(雑記2009.11.10)、今回は単純に現地でタマゴを切ってみただけで、持ち帰ることはしなかった。例年ならキツネノタイマツやツマミタケがよくみられるのだが、今秋はほとんど姿をみない。 | |||||||
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担子器にいくつ小柄がついているのかわかりにくいケースがある。顕微鏡では倍率が高くなるほど焦点深度の関係からピントの合う範囲は狭くなる。担子小柄のすべてを同時に合焦させてみることは一般的に難しい(雑記2004.9.18)。 でも微動ノブで合焦位置をずらしながら観察すれば、たいていの場合4小柄なのか2小柄なのかはすぐわかる。でも、一枚の画像でこれを表現するのは難しい。そんなとき、遊び気分でよくやるのが、担子器を上から覗いた画像を撮影することだ。 |
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ややこしい理屈はいらない。ただヒダ(b)をスライドグラスに寝かせればよい(c)。ピントをずらして観察する(d〜f)。ついで胞子の発芽孔を上から覗いてみた(g)。さらに合焦位置を下げていくと担子小柄がみえてきた(h, i)。ヒダをよく洗って余分な胞子を減らすとさらに見やすくなる(j)。フロキシンで染めて軽く押しつぶした。担子小柄の部分は色も違って面白い(k, l)。 ササクレヒトヨタケでは、担子器も大きく小柄も顕著なのでこの作業は簡単だ。ただ胞子がやたらに多くてそれが邪魔となって視野が暗くなり、小柄がわかりにくい。そこで、最初にエタノールでヒダを洗ってからスライドグラスに置いた。 厚ぼったいヒダの場合は、そのままでは真っ暗となって何も見えないので、ヒダを薄切りにする。薄切りといっても横断面でなく横薄切りだ。魚の切り身の三枚おろしならぬ、ヒダの三枚おろしだ。でもササクレヒトヨタケのヒダは薄いからそのままでよい。 |
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久しぶりにササクレヒトヨタケに出会った(a)。まだ円筒形でカサの縁は反り返っていなかったが、既にヒダは真っ黒で一部は溶け出していた。10分間ほどで多量の胞子がカバーグラスに落ちた。ドロドロの液もいっしょだ。水(b)と濃硫酸(c)で封入して胞子を撮影した。 ヒダを観察しようと思って、カサの一部を切り出してみると、すでにかなり溶け始めている(d)。こうなるともう上手く切り出すことはできない(e)。多量の胞子に邪魔されてヒダの側(f)や先端(g)の様子はよくわからない。なんとか、子実層や担子器の様子はわかる(h, i)。 |
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ヒダの切片をフロキシンで染めて3%KOHでバラしてみた。水封のとき(i)よりもコントラストが強くなって、担子器の姿が捉えやすくなった(j〜l)。場所を選ぶと4胞子をつけた担子器の様子も捉えられる(l)。担子小柄がいくつあるのかをお手軽安直に見分ける方法について、明日の雑記に記してみよう。願わくは明日までヒダが溶けてしまわないことを。 | |||||||||||||
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近場の緑地でもきのこの姿はめっきり少なくなった。それでもハタケシメジ(a, b)、ヒラタケ(c, d)、アラゲキクラゲ(e, f)、キクラゲがよく出ている。今年はなぜかハタケシメジはほとんどが単生で貧相なものが多かったが、久しぶりに束生したやや肉厚な株にであった。ヒラタケは日曜日に大きな株をほとんど取り尽くされてしまったらしく、中形から小形の株しか残っていなかった。キクラゲもアラゲキクラゲもとても肉厚で、まるで栽培物のようだった。
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なぜかナラタケ、エノキタケには出会うことがなかった。持ち帰ったきのこは食用に回して乾燥することになった。ひとつも標本となったものはない。 | |||||||
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昨日はひさしぶりに菌懇会の例会に出席した。神奈川県の生田緑地にある青少年科学館の改築工事がじきに始まる。この緑地で採集して、青少年科学館で顕微鏡を用いて同定作業をできるのも、当面は今月と来月でおしまいだ。 恒例のコースを一回りしてみたが、きのこの姿は急激に少なくなってきた。コケの上などからでる小さなきのこは幾つもみられたが、図鑑に掲載されるような大型菌はとても少なくなってきた。採集品にはおのずと硬いきのこが増える。カメラを向けたきのこはほとんどなかった。 今朝は観察すべききのこが何もないので、そのぶん標本のたまっているミズゴケ類を、じっくりと観察して覚書を残すことができた(No.768:ワタミズゴケ)。昨日、こけから出ていた Hygrocybe の仲間は潰れていなければ観察できるかもしれない。 |
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竹林のヒラタケメモ(a)。姿こそ大きいがまだ充分成熟していないらしく胞子紋がほとんど落ちなかった。ヒダを一枚スライドグラスに寝かせて縁をみた。ヒダが厚いことと、縁がはっきりしないのでフロキシンで染めてみた(b)。縁シスチジアの有無や形はよくわからない。 |
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胞子紋はほとんど落ちなかった。ヒダを一枚切り出してフロキシンで染めた(c)。側シスチジアはなくヒダ実質は並列型。ヒダの縁をみてもシスチジアの有無はよくわからない(d)。KOHを流し込んで押しつぶすと、どうやら縁シスチジアらしきものがみえた(e)。 多くの担子器や偽担子器の基部にはクランプがある(f, g)。カサ上表皮は細い菌糸が平行に走るが、これも水で封入するとよくわからない(h)。フロキシンで染めて3%KOHで封入すると明瞭に捉えられた。カサ表皮ばかりではなく、カサ肉、柄にもクランプがある(j)。 |
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先日採取したサクラタケ(a, b)は、胞子紋だけは帰宅後すぐにとっておいた。胞子は透明でコントラストが弱く、見にくい(c)。胞子はアミロイド(d)。保育社図鑑のサクラタケを開いてみた(p.109)。胞子について、サイズは書いてあるが、アミロイドかどうかには触れていない。 そこで、上位概念であるクヌギタケ属「日本産既知属」のサクラタケ節 Sect. Purae をみると、「胞子,組織ともにアミロイド,あるいは胞子非アミロイド,組織アミロイド」とある。これを素直に読むと、句点の使い方などから、(1) 胞子・組織ともにアミロイド、(2) 胞子は非アミロイド、(3) 組織はアミロイド、という3パターンがあることを示唆していると読み取れる。 |
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さて、先日採取したサクラタケではどうか。胞子はアミロイドだが(d)、ヒダ実質をはじめ、カサ肉や柄などの組織は非アミロイドだ。ということは、上記保育社図鑑サクラタケ節の解説にある3パターンのどれにも該当しないことになる。 図鑑のサクラタケ節の説明にある「あるいは」を前後を分ける接続詞と考えると、パターンは二通りとなって、(1') 胞子・組織ともにアミロイド、(2') 胞子は非アミロイドで組織はアミロイド、となる。そう解釈しても、ここで取り上げたサクラタケ?は、どちらでもない。 |
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スイスのきのこ図鑑ではArmillaria(ナラタケ属)の解説では、Cystidia(シスチジア)とは書かずに、あえてMarginal cells(縁細胞)という用語を用いている。このMarginal cellsという用語だが、同図鑑の中ではどのように使い分けられているのだろうか。この用語が最も頻繁に出てくるのはAmanita(テングタケ属)のきのこの解説だ。
Amanitaのきのこでは、ヒダ縁の嚢状組織はたいていMarginal cellsと書いてあるが、一部の種でCheilocystidia(縁シスチジア)が使われ、両者を使い分けているようにみえる。 Vol.3のGlossary(用語解説)によれば [marginal cell] とは [cystidiumlike hyphal end on the edge of a lamella, less conspicuous than and as strongly differentiated as a true cystdium (see also cheilocystidium).] とある。ついで [cheilosystidium] をみると [a cystidium one the edge of a gill.] とある。そこで [cystidium] をみると [large, conspicuous, terminal cell of a hypha of peculiar shape, which occurs on the surface of gills, pileus, or stipe.] と記されている。 どうやら Cheilocystidia と Marginal cells との境界線は多分に主観的で明瞭に区別できるものではなさそうだ。イラスト入り菌類図鑑として著名なM. Ulloa & R. Hanlin「Illustrated Dictionary of MYCOLOGY」(2000)にも、かの有名な「Dictionary of the Fungi」にも Marginal cell という見出しはない。日本菌学会編「菌学用語集」にも Marginal cell という用語はみられない。Marginal cell は菌学の専門用語として広く認識されている用語ではなさそうだ。 保育社図鑑ではコタマゴテングタケをはじめテングタケ属の解説では「ひだの縁細胞」と記して「縁シスチジア」とは書いていない。その理由として、テングタケ属の解説の項で「多くはひだの縁部に球形,楕円形,洋なし形,こん棒形などのシスチジア様の細胞が存在するが,これらは傘が開くさいにつばの組織の一部が付着したものである。」と述べている(p.115)。 |
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相変わらずナラタケ類がよく出ている(a, b)。先日所沢航空記念公園やら多摩湖畔で採集したものには、ナラタケとキツブナラタケの両者が混じっていたようだ。食用に回さず残しておいた数個体を覗いてみた。胞子は非アミロイド。 ヒダ断面を切り出すと、[縁シスチジア] があるものとないないものの両者がある。ヒダ実質は、ヒダの中程では並列型だが(f)、ヒダの縁近くでは類散開型のものが目立った。ヒダを一枚スライドグラスに寝かせて縁をみると、束生する [縁シスチジア] がみえる(g)。KOHで組織をバラして、この [縁シスチジア] をみると薄膜棍棒状のものをベースにいろいろな形をしている(h, i)。 |
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担子器や偽担子器には、ベーサルクランプ(担子器の基部に見られるクランプ)のあるもの、ないもの両者が見られる(j, k)。カサ上表皮の組織は細い菌糸が匍匐している(l)。あえて [縁シスチジア] と表記したのにはワケがある。保育社図鑑ではナラタケ属について属や種の解説にシスチジアのことは一切触れていない。この点はかねてよりずっと疑問に思っていた。
池田「北陸のきのこ図鑑」にはナラタケ属の解説に「シスチジアまたは縁細胞を有するものがある」と記されている。そして、ナラタケの解説に「偽担子器 縁に棍棒形や嚢状のものときにあり」と記し、図の脇に「ch (縁シスチジア)」とある。キツブナラタケの解説ではシスチジアに言及してないが、図には「ch」としてシスチジアが掲載されている。ほかにもキヒダナラタケ(仮)に縁シスチジアと記し、クサミノナラタケ(仮)にシスチジアと記しシスチジアの図も掲載している。 |
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チャダイゴケの仲間では、カップの中にペリジオールという硬い殻の碁石状のものが入っている(b)。ペリジオールの内部には、厚い細胞壁を持つ胞子が多数格納されている。スジチャダイゴケを採集したので、胞子と担子器を覗いて遊んだ(雑記2005.8.25、同2006.9.17)。 胞子を見るのは簡単だ。ペリジオールを切って中をみれば、多数の胞子が直ぐに見られる(c)。だから、胞子の姿は広く知られている(f)。しかし、担子器を見たことのある人は少ないようだ。 |
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昨日も書いたが腹菌類とよばれてきたきのこには、成菌になると担子器が溶けて消失するものが多い。したがって担子器を確認するには、まだカップを広げていない若い菌の採取が必要となる(a)。あまり若い幼菌だとまだ子実層ができておらず担子器の確認はできない(e)。 観察には適度に生育した幼菌を使う(d)。今朝は目的がスジチャダイゴケの担子器だったので、殼皮やペリジオールの層構造などには目もくれず、もっぱら担子器ばかりを覗いた(g〜l)。 |
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