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日( )
2009年5月30日()
 
公費の無駄遣い
 
 先日早朝、警察から電話があった。何事かと思いきや、紛失自転車を保管しているという。2004年頃に登録された自転車登録証が付いていたので所有者がわかったという。過去にも同じようなことがあり、盗難自転車を警察署まで受け取りにいったことがある。
 受け取りに来いというのかと思ったらそうではなかった。こちらの都合に合わせて自転車を届ける。ついては、その際に書類に印鑑が欲しいとのことだった。紛失してすでに5年も経過すればかなり傷んでいると思われる。電話の話では、傷んではいるがまだ乗れるという。
 当該自転車はもはや不要だから、処分して欲しいといっても聞き入れてもらえない。その警察は道路距離で100kmほど離れた埼玉県北西部にある。古い紛失自転車一台を、遠方までわざわざ届けるなど聞いたことがない。

 不動産やら株売買のセールス電話がよくある。さらに過去何度か詐欺まがいの怪しい電話もあった。もしや昨今はやりの振り込め詐欺かもしれない。そうでなければ、当該自転車が何らかの犯罪に関わっているのかもしれない。いずれにせよ、時間をおいて、電話で名乗った担当者が、はたして当該警察署に在籍するのか否かの確認が必要だ。
 番号を調べて昨日電話を入れてみた。先日名乗った担当者は確かにその警察の地域課の職員だった。犯罪に絡んだものではないという。あらためて、問題の自転車は不要だから適宜処分して欲しいと言ったが、それはできないという。早朝でも夜遅くでも構わないから、受け取りできる日時を指定して欲しいとまでいう。
 遠方からわざわざ傷みの激しい古い自転車を届けるという真相はまだ不明だ。何か裏があるように思えてならない。届けに来るというのは来週月曜日の夜だという。


2009年5月29日(金)
 
ケコガサタケ属のきのこ
 
 広葉樹の腐朽倒木がコケですっかり厚くおおわれ、その一角にニッケイ色のきのこが束生していた(a)。ひっくり返すと早落性の膜質のつばをつけていた(b)。胞子はアーモンド形で表面には微細なイボがあり、胞子盤がみられる(c)。あまり意味はないが、ドライ(d)、エタノール封入(e)、メルツァー(f)の画像も掲載した。偽アミロイドだ。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 ヒダを実体鏡でみると、縁シスチジアと側シスチジアがあるらしいことが読める。ヒダを一枚切り出してみると、縁や側にはやや疎らにシスチジアがあり、ヒダ実質は並列形だった(h)。あらためてヒダを一枚、そのままスライドグラスに寝かせた。フロキシンで染色してKOHで封入して縁をみると、縁シスチジアが見えた(i)。そのまま、カバーグラスの上から消しゴムでこするとシスチジアや担子器がバラバラになった(j, l)。なお、カサ表皮は細い菌糸が匍匐している(k)。
 ケコガサタケ属 Galerina のきのこだろう。ヒメアジロガサやヒメアジロガサモドキなどに近い種だと思うが、それ以上の探索は面倒なのと関心がないのでやめにした。

2009年5月28日(木)
 
シロホウライタケ属のきのこ
 
 一昨日八王子城趾の杉植林地で採取したシロホウライタケ属 Marasmiellus のきのこを覗いてみた。現地ではヒノキオチバタケだろうと思っていたものだ。ヒダは非常に疎で幅は狭く、このままでは横断面などは切り出せない。ヒダを見るまでもなく、カサ裏すべてが子実層だ(a)。
 カサをひっくり返した状態でカミソリをあてて切り出したところ、スライドグラスに載せるとたちまち反り返ってしまった。円の内側、大きな気泡の見える側がカサ側で、円の外側が子実層になる(b)。ヒダ実質はカサ肉がそのまま楔の内側に入り込んだ構造をしている(c)。
 フロキシンを加えて、水道水を3%KOHで置き換えると、組織が潰れて見にくくなった(d)。ヒダの先をみても縁シスチジアははっきりしない(e)。えいゃっと押しつぶすと、樹状の縁シスチジアと担子器などが見えてきた(f)。水だけで封入して倍率を上げても、縁シスチジアやよくわからない(g)。菌糸にはいたるところに多数のクランプが見える(h)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
 カサ表皮(i)にも柄の表皮(j, k)にもシスチジアがあるが、うまく切り出さないと、何が何だかわからなくなる。柄を輪切りにして(l)、倍率をあげて表皮付近を覗いてみた。無数のパイプの寄せ集めのような構造が面白い(m)。胞子は透明で見にくいので(n)、途中でフロキシンを加えた(o)。どうやらヒノキオチバタケとしてよさそうだ。

2009年5月27日(水)
 
昨日の八王子城趾
 
 顕微鏡を整備してもらうために、重い鏡体を車に積んで八王子まで出向いた。八王子まで行くのならどこかに寄ってみようということになり、八王子城趾に立ち寄った。一昨日の雨の効果はまだ出ていないが、杉林ではヒノキオチバタケらしきキノコが、杉の葉や落枝、雄花などから多数でていた(a〜d)。暗い杉林のなかで、そこだけが遠目にも白く明るく感じた。
 道ばたのアオキの落ち葉からは、アオキオチバタケのような小さなキノコが出ていた(e, f)。両者ともまだ、カサ表皮やシスチジアを確認していないので断定はできない。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 顕微鏡は思いの外重症で、パーツ交換5〜6点が必要で、特殊工具を必要とする分解整備も必要なことがわかった。部品代金と整備料金を見積もると15万円を越える。部品取り寄せと整備のため、1週間ほど入院させることになった。八王子周辺の道路は慢性渋滞、埼玉県南部から八王子は近いようで遠い。しかし、久しぶりにT氏宅で一日のんびりした。

2009年5月26日(火)
 
子嚢胞子両端の突起
 
 日光で採集したオオシャグマタケは二つは、サイズこそ大きかったが、一つは子実層がすっかり崩れきっていた。すでに子嚢は全く見つからず、子嚢胞子がわずかにみられるだけだった。今ひとつは未成熟だったが、ごく一部に胞子がおおむね成熟した子嚢がわずかにあった。
 やむを得ず未成熟気味の個体から子実層を切り出した。最初に水道水(a)、次いで3%KOH(b)、フロキシン+水(c)、メルツァー液(d)で封入して遊んだ。
 
 
水道水
KOH
フロキシン
メルツァー
4通りの方法で封入 (↓)
(↓)
(↓)
(↓)
(↓)
(↓)
(↓)
(↓)
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)

(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
 保育社図鑑(II p.269)には「オオシャグマタケは、外観がシャグマアミガサタケに似るが、胞子の両端に嘴状突起があり、表面に網目模様があるので区別できる」と記される。でも、これは十分成熟した個体の(落下)胞子を水で封入した時のことだ。少しでも未成熟の場合、胞子両端の突起ができていなかったり、表面の網目模様はみられない。

 KOHや強い酸などで封入すると、両端の嘴状突起はたいてい溶けて消失してしまう。この標本では、嘴状突起は十分完成しておらず、単なる団子状の塊がついているだけに見える(e, f)。さらに、KOHで封入すると、直後にはまだわずかに突起がみえるが(g)、数分もするとすっかり見えなくなってしまった(h)。メルツァー液では突起に影響ない(i)。
 さらに胞子表面の網目模様は、非常に細かいために、対物40倍レンズではわかりにくい。対物100倍レンズでも、胞子表面に合焦してコントラストを強くしないとわかりにくい。同じことは2003年にも試みている(雑記2003.5.12)。オオシャグマタケに限らずフクロシトネタケでも同様のことが起こる(同2008.6.13同2006.5.6)。


2009年5月25日(月)
 
ミズゴケから出るキノコ
 
 フウセンタケ科 Cortinariaceae ケコガサタケ属 Galerina には、コケから発生するキノコが多い。ミズゴケタケ節 Sect. Mycenopsis にいたっては、節の名にまで「ミズゴケ」がつく。他にも、ヒメコガサ節 Sect. Calyptrospora、フユノコガサ亜属 Subgen. Tubariopsis などでは、一般的にコケの間からでるものが多い。フユノコガサ G. heterocystis、ヤマノコガサ G. sphagnorum、ヒメコガサ G. hynorum、ケコガサタケ G. vittaeformis の他にも、疑問種がいくつかある。
 フウセンタケ属以外でも、キミズゴケノハナ Hygrocybe turunda f. macrospora、ヒナノヒガサ Gerronema fibura、ハイイロサカズキタケ Cantharellula umbonata、サカズキガサタケ Hydropus hypnorum、エイザンモミウラモドキ Rhodophyllus mycenoides などコケから出る種はいくつもある。ミズゴケノハナ H. coccineocrenata は草原によくみられ、ミズゴケから出ることは少ないので、これは命名が不適切だったといえよう。さらに、コケからではなく、コケの間から出るキノコを数え上げたらきりがない。

 昨年来、ミズゴケから出るキノコに関心をもって多くの湿原を歩いてきた。ミズゴケタケ G. tibiicystis、ミズゴケタケモドキ G. sphagnorum にいたっては、その名もずばり「ミズゴケ」がつく。ミズゴケからでるキノコの観察は難しい。そもそも、ミズゴケ自体が保護された湿原に多く、近寄ったり採取することが困難である。また、ミズゴケからキノコが出ていることを確認しても、湿原ゆえに接近することが難しい。それゆえこれまで何度も悔しい思いを繰り返してきた。
 ミズゴケから出るキノコの撮影には広角系や標準レンズではむずかし。一般にキノコやコケの観察・撮影を目的に出かけるのに、わざわざ望遠系マクロレンズを持ち歩きはしない。今年は何とか望遠系マクロレンズを入手して持ち歩きたい。


2009年5月24日()
 
昨日の日光
 
 昨日好天の日光を歩いた。広い駐車場は早朝からほぼ満車だった。例年クリンソウ開花の時期になると、土日を中心に大混雑する。まだ開花までには1週間ほど早いので、早朝のバスにはまだ何とか座ることができた。来週から6月末頃までは、バスに乗車することが一仕事になる。発車時刻の30〜50分ほど前には行列に並ばなくてはならないだろう。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 日光はよく乾燥しており、きのこの姿はきわめて少なかった。タモギタケはかなり大きなもの(a)から、幼菌(b)までよく出ていたが、そのまま乾燥標本になっている姿が目立った。オオシャグマタケは大きくてずっしりと重かったが、最盛期は過ぎたように思えた(c, d)。キララタケらしきものがよく出ていたが(e, f)、持ち帰ったものは、おおかたが黒くなってドロドロに溶けていた。
 午後、日光をあとにしてから、鬼怒川温泉、鶏頂山、川治温泉と夕方まで歩き回ってみたが、どこも乾燥していて、きのこはほとんどみられなかった。鶏頂山の「湿原」では、登山靴でそのまま歩けるほどに水が涸れており、乾燥標本と化したミズゴケが「草原」に広がっていた。

2009年5月23日()
 
実体鏡による作業例
 
 落ち葉についたチャワンタケを、実体(顕微)鏡で切り出した時の画像が残っていた(a〜d)。この作業をしたのは5月10日のこと(雑記2009.5.10)。実体鏡を用いてきのこなどを切り出す流儀はいろいろあり、人によってかなり異なるようだ(雑記2008.7.5同7.6)。
 切る前の準備として、微小きのこなら基物ごとスライドグラスに載せる(b)。ヒダなら一枚を寝かせる。小形のきのこならカサを上にして伏せて置く。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 ふだんのやり方は、実体鏡に向かって、試料とカミソリがハの字になるように置き、カミソリを斜め手前に引く。その際、柄付き針の先を平らに潰したもので試料を押さえる(a, b)。スライドグラスにはあらかじめ少量の水を滴しておく。ポイントはハの字方向に手を引くこと。

 カミソリをまっすぐ向こうからこちらに引いて切るのは難しいが(e, f)、カミソリの垂直を確認しながら切れる。カミソリの幅が極細線状に見えるので、正確に切り出すことができる。この場合も、指先だけでカミソリを引くのではなく、手先を引いて切ることがポイントだ。

 上記に紹介したのは、「押し切り」ではなく「引き切り」をする場合の一例だ。押し切りの場合には、刃先の一点を固定して、円弧状にカミソリを次々落とすと楽だ。片手でカミソリの一端を押さえておいて、もう片方の手で刃をおろすことが多い。
 コケカッターはきのこに不向きと結論づけてしまったが、これは撤回したい(「コケカッターでキノコを切る」2006.10)。今では、キノコ切り出しにコケカッターは有用だと再認識している。


2009年5月22日(金)
 
基本は実体鏡による作業
 
 ゴールデンウイークに採集したコケの群れに複数種が混成していた。胞子体をつけた純群落を採集したつもりだったが、採集した標本には、ハイゴケ科、アオギヌゴケ科、シノブゴケ科の蘚類3種が複雑に絡み合っていた(a)。観察に先立って、葉や枝の特徴などから3群に分別した。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 (capsule)をつけていたのはシノブゴケ科の蘚類だった。凾ニはコケ植物の胞子嚢のことで、内部には多数の胞子が作られる。凾フ蓋を外すと、剋(peristome)が現れる(b)。剋浮ヘ外剋(exostome)と内剋(endostome)からなる(c, d)。観察するだけならいちいち両者をバラす必要はないが、撮影するには外剋浮ニ内剋浮完全に分離しなくてはならない(e, f)。
 内外の剋浮バラすのは思いの外難しい。作業は、実体鏡を高倍率にして、先細ピンセット2本とカミソリを使って行う。ところが、剋浮ヘ薄く小さく軽いので、ちょっとした呼吸で見失ってしまう。外剋浮ヘ乾燥すると開き(d)、湿ると閉じて内剋浮ノ密着してしまう(b, c)。密着してしまうと作業はいっそう困難となるので、慎重な作業が必要となる。

 コケ植物と比較するときのこは非常に脆い。特にヒトヨタケ属やナヨタケ属などは、ヒダをピスなどに挟んだだけで、いとも簡単にペシャンコになってしまう。簡易ミクロトームによる切り出しは難しい。だからといって、凍結ミクロトームや包埋処理などは日常環境の中では使えない。
 しかし、実体(顕微)鏡を使えば脆いきのこでも薄片を作成することができる。きのこの切片作りでは、これまで主に実体鏡を使ってきた。きのこの切り出しと比較すると、コケの解剖や切り出しは組織がしっかりしているので案外楽にできる。簡易ミクロトームを使うか実体鏡を使うかはそれぞれ一長一短だが、基本は実体鏡による切り出しだろう(雑記2008.8.7)。


2009年5月21日(木)
 
ヒダ実質がアミロイド
 
 倒木からミミナミハタケ属のきのこが出ていた(a)。たいていは複数の個体が重なり合うように発生するのだが、ポツリポツリと横並びについていた。カサ表面の基部は白色の毛でおおわれ(a)、ヒダは比較的疎で(b)、ヒダの縁は鋸歯状になっている(c)。ヒダにメルツァー液を滴らすと、ヒダ面が暗紫色に変色した(d)。このヒダの断面を切り出すと、実質部が紫色に変色していた(e)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 ヒダ実質部は全体として並列型+錯綜型となっていて、並列に並んだ菌糸を縦糸とするなら、グシャグシャに錯綜した菌糸が横糸のように絡み合った構造となっている(f)。
 胞子は非常に小さな類球形で、表面には微細な粒点状突起があるように見える。メルツァー液による反応は典型的なアミロイドだ(g)。カサ表皮は強靱な菌糸が匍匐している(h)。担子器も非常に小さくてわかりにくい(i)。菌糸には多数のクランプがある(j, k)。
 厚壁で隔壁のない長い骨格菌糸が多数あるから(l)、2菌糸型(dimitic)といえる。菌糸型の判定には、きのこの微細片をフロキシンで染めてKOHで封入して、カバーグラスの上から消しゴムなどでゴシゴシこすって、菌糸をもみほぐしたものを検鏡した(雑記2003.9.18同9.19同9.20)。
 どうやらイタチナミハタケらしい。イタチナミハタケを検鏡したのは、ほぼ6年ぶりのことだった(同2003.10.8)。ヒダ実質がアミロイド反応を示すのが大きな特徴らしい。

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