Top | since 2001/04/24 | back |
|
|||||||
昨日は房総半島中部の山中で行われた青空地衣観察会に参加してきた(a)。講師は千葉県立中央博物館の原田博士(b)。ウメノキゴケ Parmotrema tinctorum の子器を見たのは初めてのことだった(c)。房総の照葉樹林ではどこもカシタケやカラムラサキハツが最盛期を迎え、場所によっては足の踏み場もないほどの大量発生をしていた(e, f)。
|
|||||||
|
|||||||
マスコミの報道によれば、4月17日に関東地方に降雪をみたのは半世紀ぶりのことだという。早朝出発時には車の屋根や窓ガラスは雪ですっかりまっ白になり、重い雪でワイパーが動かない。窓を除雪して走り出すと、路面はシャーベット状の雪に覆われよく滑った。そのせいか、車の数はいたって少なく、どこも渋滞とは全く無縁だった。am10:00頃までは、突然の春の雪にコケもきのこもすっかり縮みあがっていた(d)。行楽の車は非常に少なかったらしく、帰路も非常に順調で、ふだんの半分の時間で帰り着いた。 | |||||||
|
||
昨日の天気予報で「明朝は雪になる」といっていたが半信半疑だった。今朝am3:00起床してみると家々の屋根が白い。路面はさすがに濡れているだけにしか見えないが、どうやら雪が降っているようだ。今日はこれから山の中に向かうが、途中の道はまず間違いなく雪がついたり凍っていることだろう。昨年末から履いたままのスタッドレスタイヤが久しぶりに役に立ちそうだ。 | ||
|
|||||||||||||
先日東丹沢で採集した黒いチャワンタケは見るからに未成熟だったが、材ごと持ち帰った個体は少なかったので、あきらめて観察してから処分することにした。念のために胞子紋をとってみたが、一日経過して落ちた胞子は数十個に過ぎなかった。
|
|||||||||||||
|
|||||||||||||
実体鏡の下で子実層から托外皮までの厚い層を切り出した(b)。切断面で白色部分は絡み合い菌組織(d)、托外皮に近い黒褐色の部分は多角菌組織(e)。托外皮からは厚壁の短い毛が出ている。案の定、まだ未成熟で胞子のできた子嚢は少ない。胞子は球形。 メルツァー試薬では全体が褐色となり、側糸が暗褐色となった(f, g)。子嚢先端は非アミロイド(h)。フロキシンで染めてから、KOHで封入して組織をバラして遊んだ(i〜k)。側糸の先端は、真っ直ぐなものが多く、一部にかぎ状、分枝するもの、などが含まれていた。 先端が膨大したりかぎ状に屈曲する側糸は少ないがニセクロチャワンタケ Pseudoplectania melaena (サルコソーマ科 Sarcosomataceae) かその近縁種なのだろう。 たしかクロニセチャワンタケ Otidea grandis (ピロネマ科 Pyronemataceae) という紛らわしい和名で、汚褐色の脆いチャワンタケがあったように記憶しているが、出典を思い出せない。手元にある図鑑をいくつか見たが、そのどれにも載っていない。 |
|||||||||||||
|
|||||||
ケコガサタケ属のきのこの担子胞子には一般に明瞭な胞子盤がみられるという(Singer "The Agaricales in Modern Taxonomy 4th."(1988) p.79)。保育社図鑑(I) (1987)では、フユノコガサ亜属には胞子盤がないとされる(p.244)。先日東丹沢で採取したケコガサタケ属菌の胞子盤を確認するのに先だって、胞子がどの位置で単子小柄についているのかを確認した。 胞子紋をいわゆるドライマウントでみると、対物40倍レンズでも胞子盤がわかる(a)。油浸100倍にするとより明瞭になった(b)。水封の対物40倍レンズではちょっとわかりにくい(c)。油浸対物100倍レンズでみても、合焦位置によっては確認が難しい(d〜f)。 |
|||||||
|
|||||||
日本菌学会編「菌学用語集」で「胞子盤」を引くと「plage, suprahilar depression, suprahilar disc」とある。そこで、"Dictionary fo the Fungi 10th. ed."(2008) で「plage」にあたると「esp. a smooth spot above the hilar appendage」と説明され、さらに「hilar appendage」には「the small wart-like or cone-like projection which cennects the spore with the sterigma」とある。 "Illustrated Dictionary of Mycology" (2000) には、Galerina phillipsi の胞子盤が下手くそな描画で示され、易しい英語でわかりやすく説明されている。さらに「suprahilar depression」、「suprahilar disc」、「suprahilar plage」、「suprahilar spot」などと表現されることが示されている。 山渓カラー名鑑「日本のきのこ」(1988)の用語解説には胞子盤を「胞子の小柄(担子器から生じて胞子を外生している小さい柄)への付着点付近にある丸い平坦な部分。コガサタケ属などの胞子にみられ、この部分にはいぼ状突起がない。」(p.16)と平易に記される。例示のコガサタケ属 Conocybe には胞子盤はなく、これはケコガサタケ属 Galerina の誤植。 |
|||||||
|
|||||||
今朝も同じく東丹沢から持ち帰ったケコガサタケ属のきのこを観た。実体鏡でヒダをみると確実に縁シスチジアがあることがわかる。そこで、ヒダを一枚取り外して、そのままスライドグラスに載せて水で封入し、カバーグラスをかけた。透明な縁シスチジアがあるらしいことは分かるが、どうにもはっきりしない(a)。コンデンサ絞りを思い切り絞るとややはっきりした(b)。
|
|||||||
|
|||||||
フロキシンで染めると、コンデンサ絞り開放でもシスチジアの有無と形が分かる(c, d)。シスチジアの形やサイズを知るには、封入液をKOHに換えて軽く押し潰すのが楽でよい(e, f)。同定のための観察では、ヒダ実質の構造が決め手になるケースを除いて、ヒダの横断面をわざわざ切り出す必要は全くない。横断面切り出しが重要なのは、むしろカサ表皮だろう。 | |||||||
|
|||||||||||||
東丹沢の林道から持ち帰ったきのこの一つを観て楽しむ・・・、はずだった。そのためには、確実に胞子紋を採り、ヒダやカサの横断面をうまく切り出せるとよい。なまじ、一画面で鮮明なヒダ断面の写真を撮ろうと、変な色気を出すとろくなことにならない。きのこはヒメアジロガサなどに近い Galerina ケコガサタケ属のものだろう(a〜f)。ヒダを切り出した(g〜l)。
|
|||||||||||||
|
|||||||||||||
薄く切れたと思えばヒダ先端が欠如している(g〜i)。やっとヒダ先端が切れたと思えば、封入にしくじって気泡が入ったり(j)、やや厚すぎて不明瞭となった(k)。今度こそと思えば、カバーグラスをかぶせるときに子実層を一部つぶしてしまった(l)。脆いきのこや小さなきのこの切片作りはむずかしい。あいかわらず、滅多にうまくいかない。簡単にヒダ切片を作れるのであればそれもよいだろうが、同定目的であればヒダ切片の作成は単なるマスターベーションに過ぎないだろう。 | |||||||||||||
|
|||||||
神奈川県の東丹沢で遊んだ。橋の近くに車を駐めて、沢に沿って続く閉鎖された林道を延々と終点まで歩いた(a, b)。かつて沢登りを楽しんだキュウハ沢の名が、標識にあるのに驚いた。林道は終点で突然なくなるが、それまではずっと舗装されていた。途中まではたまに林業関係者が通行するらしいが、路面は荒れ落石に混じって四脚獣の死骸も転がってる(c)。
|
|||||||
|
|||||||
きのこの姿は希で、材状生のものがいくつか見られただけだった。弾力性のあるゴム質のクロチャワンタケ属が苔むしたモミの倒木から出ていた(d, e)。コケはオオベニハイゴケのよううだ。ボロボロになった腐朽材からはフウセンタケ科の小型きのこが多数でていた。 首都高速五号線から中央環状線に入り、山手トンネルを走って大橋ジャンクションから首都高三号線を経て東名自動車道に入った。都心の環状線を経由しないですむので、これまでの半分くらいの所用時間で東名東京インターまで辿り着いた。それにしても、大橋ジャンクションのループはRがきつく、車に強い横Gがかかって目が回るようだった。 |
|||||||
|