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先日三重県勢の富士山ツアーに参加してきた。乾燥気味の富士山ではあったがぼちぼちきのこの発生はみられた。宴会後の同定会もどきでは他のきのこの会では絶対ありえない事が起きた。なんと立派なマツタケが机の上に出されていたのである。採取した本人は場所もよく覚えておらず、当然ながらマツタケとは思っていなかったのである。このツアーでの唯一採れたマツタケなので全員から非難を受けていた。 翌日観光予定を変更してきのこ観察へ出かけたのもさすがである。 |
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乾燥気味の富士山で比較的きれいなきのこがイグチ類であった。我が家の冷蔵庫がからっぽになっているのを思い出し採取することにした。胞子紋はうまくとれなかった。子実層の構造はどうもゆるやかに散開しているようだ。最初は並列型かと思っていたが何回も切片を作っているうちに散開らしいと気づいたのである。 しかし縁シスチヂアを切り出すのは難しい。最近はすべて実体鏡下で切り出しているのでピス使用がかったるくなっているのである。柄の黒い粒点が管孔部のシスチヂアと同じような姿であったのも感激。当然菌糸の塊かなと思っていたのである。しかも縁・側共にシスチヂアの形、付き方はほぼ同じように見えた。 つばはなく、クランプもみられなかったのでワタゲヌメリイグチと思われる。 (Y. A.) |
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先日の大弛峠でなんの仲間だろうと思ったきのこ2種類である(a,c)。 (a)は胞子紋が取れたが(b)はほとんど胞子が落ちなかった。どちらも外見からはイッポンシメジ属とは思っていなかったので胞子を見てびっくりであった(b,e)。(a)は柄にねじれはみられず、シスチジアはなし、ひだ実質は並列型、クランプなしであった。ひだは最初赤褐色に見え、シスチジアかなと思ったがすべて胞子でひだは実は白色であった。ひだの観察で胞子がじゃまになりついには水で洗浄してしまった。 |
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(b)もシスチジアなし、ひだ実質は並列型、クランプはみられた。なにより変だったのはひだである(d)。横脈がありひだそのものが波打ち、なおかつ縦にも線状に隆起している。最初なにか他の菌に侵されているのかとも思ったがどうもそうではないように思えた。ともあれ手持ちの本で私の語学力で読める範囲ではイッポンシメジ属までしか判らなかった。 (Y. A.) | ||||||
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この仲間達の顕微鏡下での観察はあまりおもしろくない。胞子は皆同じように丸いし、シスチジアもなくこれといった特徴がない。しかし野外で見る姿の美しさ、幼菌のかわいらしさは大好きである。今年の狭山緑地でのテングタケ仲間の大発生で写真を撮ってしまったのが始まりであった(a,b)。撮った以上観察記録をする事に決めていたので採取してきたのである。 この仲間の同定には顕微鏡観察より形態観察記録が大事であることは教えられていたので形態観察記録の訓練にしようと思った。スケッチは楽しい! 色をどうやってだすか外被膜の形状をどう描くか悩みながらおおいに楽しませてもらった(c,e)。 |
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自分の記録で本郷図鑑や小田さんの資料そのほかを見ながら同定を試みて不十分な観察に気づき、次の形態観察記録をするということを繰り返した。その後も出かける度についついテングタケ仲間に手が出てしまった(d,f)。ほんとにテングタケの仲間達にとって形態観察記録をいかにきちんとするかの大事さを実感した。 (Y. A.) | |||||||
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先週富士山で、コケの間から柄の長いキンチャワンタケが多数でていた(a, b, c)。タッパウエアに容れ冷蔵庫に保管しておいた。連日の猛暑にも関わらず、蒸れて傷むこともなく昨日まで形を保っていた。紙袋ではなく密閉容器を使ったのがよかったのかもしれない。 あらためて胞子紋を取ってみると結構落ちた。表面模様がきれいな胞子だ(d, e, f)。対物40倍レンズでも、表面模様はよく分かる(g)。子嚢は非アミロイド(j)。胞子の姿を見ていると、子実体のサイズも形も異質のオオシトネタケの胞子(k, l)を思い出してしまった(雑記2010.5.5)。 |
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今朝これから出発して、Y. A. は富士山を歩き山中湖泊まり。三重県勢、関東勢と一緒にきのこ観察と懇親。一方、I. A. は千葉県清澄の東大演習林で地衣類の勉強、夜は清澄の宿舎泊まり。それぞれ別行動。富士山は涼しいだろう。清澄では猛暑とヒルに悩まされそうだ。 | |||||||||||||
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富士山のコケの中からはいろいろな種類のフウセンタケ属のきのこがでる。先日の富士山でコケを採集した時に、そこに出ていたフウセンタケの仲間を持ち帰っていた(a, b)。この仲間は未知種、未記載種がやたら多くて、図鑑類をいくら見たところで種名にまでたどり着けることは希なので、種名への探索はせずに専ら観察して楽しむだけにしている。 |
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フウセンタケ属のきのこは一般に、日持ちがよく虫も少ない。この点イグチ類とは対照的だ。冷蔵庫に野菜と一緒に放り込んで既に10日ほど経つが、やや乾燥してはいるものの、ほとんど崩れていない(c)。胞子が結構丸みを帯びている(d)。ヒダを切り出して水で封入(e)した後、KOHで置き換えると濃黄色の色素がしみ出した(f)。縁シスチジア(g, i)も側シスチジア(h, j)もある。いい加減に処理したせいか、カサ表皮の様子はよくわからない(l)。 スライドグラスにはいつの間にか多数の傷がついている。実体鏡の下でカミソリをあてるので、線状の傷が圧倒的に多い。ヒダ断面を封入したプレパラートでもよく分かる(e, f)。ここまで傷がひどいと洗うだけ無駄だ。今朝は久しぶりにスライドグラスを1枚処分した(雑記2010.8.29)。 |
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先週富士山のお中道近くで、日射の強い溶岩帯の窪みにアミハナイグチが出ていた(a, b)。周辺には小さな灌木が若干あるが、樹林帯からは50m以上離れている。まるで誰かがいたずらをして溶岩の間にきのこを埋め込んだかのような印象だった。樹林帯には多数でていた(c)。 溶岩帯のきのこと、樹林帯のコケの間から出ていたきのこを計5〜6個持ち帰った。カバーグラスに胞子紋をとって、その後冷蔵庫に入れたまま放置してあった。今朝袋を開いてみると、内側面には到る処にウジ虫が這い回っていた。きのこは崩れ始めてヒダの間には多数のウジ虫が蠢いていた。比較的ましなものを2つだけ残して他は捨てた(d, e)。胞子紋にはたっぷり胞子が落ちていたが(f)、ちょっと触れただけでもきのこは簡単に崩れてしまう。腐敗臭もすさまじい。 |
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管孔部の縁を少し切り取って縁をみるとシスチジアが見えたが、コントラストが弱いので、フロキシンで染めた(g)。管孔部の一小片をピスに挟んで横断面を切り出した(雑記2010.9.1)。多数の虫を一緒に切ってしまった。一つずつ取り除いたが、管孔部実質はすっかり崩れている(h, i)。 次いでヒダの一部をつまみ出した。最初の仕事は虫を取り除くことだった。その後に組織をフロキシンで染めKOHで封入してから押しつぶした。シスチジアは縁にも側にもあり、大きさはまちまちだった。いつの間にやら、テーブル上には到る処にウジ虫が這い回っていた。 |
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ヒダをもったきのこのシスチジアやヒダ実質を確認するのは簡単だ。縁シスチジアの有無であれば、ヒダを一枚スライドグラスに寝かせて、縁をみればよい。狭い幅に縁を切り出してみてもよい。側シスチジアの有無と形を確認するのであれば、ヒダの中程から数ミリ四方の小片を切り出して押しつぶせばよい(雑記2009.4.1)。また、子実層托実質を確認するにはヒダの横断面を切り出せばよい。これには実体鏡を使うなり、簡易ミクロトームなどを使えば楽だ。 ところがイグチの場合はちょっと事情が異なる。側シスチジアの有無と形は、孔口部を避けて管孔部の中程からひとつまみの小片を取り出して押しつぶせば簡単にわかる。やっかいなのが縁シスチジアの有無と形の確認、管孔部実質の確認だろう。本当に孔口部の先端のシスチジアなのか否かを確認するのが意外と難しいようだ(同2010.7.21)。 |
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そこで、先日富士山で採取したクリカワヤシャイグチ(a)を素材に、一つの方法を紹介してみた。ふだんやっているように、半乾燥にはせず、生のままの状態から切り出した。
ピスを支柱として使い、脆くて弱い切片が潰れないようにする方法は、応用範囲が広い。過去にもヒメヒガサヒトヨタケ節のきのこ(同2005.6.24、同2006.4.15、同2009.6.5)などでやっている。 イグチ類の美しいプレパラートはこのやり方では無理だろう。ただ、多少厚い切片であっても、こうすれば楽に管孔部実質や縁シスチジアの確認ができる。 |
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