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昨日狭山の緑地帯を歩いてみた。きのこの姿はほとんどない。ウッドチップを敷いた遊歩道からは大きなスッポンタケがいくつも出ていた。地表部の高さは20cmを超え(a)、卵の径も10cm以上あった(b)。立ち枯れの広葉樹からはウラベニガサ科のきのこが(c)、腐りきった切り株からはアシグロタケ(d)やらチチタケ属のきのこが出ていた(e, f)。でもこれだけだった。
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冬場は菌類の基本を勉強するに適した季節なのだろう。菌類懇話会では来年1月に「顕微鏡講座・顕微鏡写真講座(2011/1/29-30:つくば市:菌学教育研究会研修棟)」、3月に「胞子計測・画像トレース講座」(2011/3/26-27:都内:会場未定)などが予定されている。申込先は菌類懇話会事務局となっている。ときには、こういった講座に参加するのも面白いかもしれない。きのこの楽しみ方に深みが増すかもしれない。 | |||||||
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武蔵野の雑木林にはチャダイゴケの仲間がよく出ている。ウッドチップからはハタケチャダイゴケ、落枝からはコチャダイゴケがよく目立つ。先日採取したコチャダイゴケ(a)を切り刻んで遊んだ。今朝袋を開けるとすっかり乾燥して、ゼラチン質はほとんど不明瞭となっている(b)。カップの外側は白毛におおわれる(c)。この白毛は細長い菌糸からなる(l)。まずはカップを縦断した(d)。カップは一層からなり、内側は平滑でつやがある。碁石のような姿のペリジオール(小塊粒)も一緒に縦断した(e)。ついで、ペリジオールをつまみ出して並べた(f)。
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ハタケチャダイゴケ、スジチャダイゴケ、ツネノチャダイゴケのペリジオールには片面にへそがあって、へその緒(funiculus)の先はカップの内面に付着している。しかし、コチャダイゴケにはへその緒がなく、ペリジオールはゼラチン質の中に浮遊している。だから小塊粒に表裏はない。 ペリジオールを縦横に切ってみると胞子の入った層が現れる(g)。ペリジオールの外皮膜はキンチャクタケに似たイバラ状突起のある厚壁の菌糸からなり剥がれやすい(h, i)。外皮膜や外皮層は強酸や強アルカリに弱く、これらに浸すと簡単に壊れてしまう。胞子はペリジオール内部の液中に密集し膜が厚い。液中の菌糸にはクランプがある(j, k)。 雑記2006.7.25には、生のコチャダイゴケからの観察結果が記されているが、担子器の画像はない。一方、同2009.11.11にはスジチャダイゴケの、同2006.12.15にはツネノチャダイゴケの、同2006.6.27にはハタケチャダイゴケの、それぞれ担子器やへその緒が掲載されている。 |
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10日ほど前に狭山の緑地で採取したキツネタケ属 Laccaria の仲間が残っていた(a)。これも捨てる前に覗いた。Laccaria の胞子は、一般に球形で表面に顕著な刺が多数ある。対物40倍レンズでも明瞭に特徴を捉えることができるが、刺の長さまではよくわからない(b)。 胞子が大きいので油浸100倍対物レンズでみると、全体像を一度に捉えることはできない。そこで、なるべくいろいろな合焦位置の胞子がみえる状態を選ぶことになる(c)。今朝はまたまた懲りずに、メルツァー液(d)とフロキシン(e)を使って合焦位置をずらしながら撮影してみた。 |
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Laccaria の仲間は今月14日に岡山市でも新鮮な状態のものがみられたが、例年首都圏でも今月いっぱいはみられそうだ。半乾燥状態のきのこからでも、ヒダ横断面(f, g)やカサ表皮(h, i)、担子器(j)などを観察することができた。組織にはクランプがある。担子器には基部にクランプのあるものとないものとの両者がある。
キツネタケ属のきのこの胞子については、またかというほど何度も取り上げている。
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届いた包みを開くと標本袋の他にスライドグラスとカバーグラスが入っていた。このところの「雑記」掲載画像が汚らしいのに業を煮やして、「いいかげんに新しいスライドグラスやカバーグラスを使用せよ」との「暗黙の警鐘」だ(同2010.8.29、雑記2009.9.26)。 この1年間に使用したスライドグラスはおそらく5〜6枚ほどだろう。一度使ったら消毒用アルコールで拭き取ってまた使う。たまに中性洗剤をつけて洗う。しかし9月以降洗った記憶がない。作成したプレパラートは1,000枚以上になるから、1枚のスライドグラスを160〜200回ほど使い回したことになる。スライドグラス上ではカミソリを頻繁に使うので傷が多数できる。傷そのものや溝に入り込んだ異物はそのまま写ってしまう。またシミやら汚れも次第に蓄積されてくる。 だから何度も使い回したカバーグラスで撮影した画像は露骨に汚ならしい。面倒なのでそのままアップしてきた。割れたり油浸オイルがこびりついた場合のみ廃棄していた。これまた反省だ。1枚あたり1円強だから、多量に使ってもたいして経費増にはならないはずだ。 今後当面は、スライドグラスやカバーグラスは傷がついたら直ちに処分して交換するつもり。発泡酒などを少し減らせればすむことだ。でもこれがなかなか難しい! |
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10日ほど前に採取したムラサキシメジ(a, b)をずっと冷蔵庫に放置してあった。カバーグラスに胞子紋もとってあったので処分する前に覗いてみた。水道水で封入したものでは、合焦位置によっては微イボがあるようにも見えなくもない(e)。メルツァー液で封入するといま少し微イボがわかりやすくはなる(f)。いずれにせよ、保育社図鑑p.67の「キシメジ科検鏡図」にあるような明瞭な微イボをみることは決してできない。いくつかの染色剤で試してみたが、微イボを明瞭に浮かび上がらせるものは見つからなかった(雑記2008.11.21)。
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10日経過しても子実体の姿は大きく変わってはいなかった(c, d)。指先でカサをつまんでヒダを切り出してみた。一回目は完全に失敗(g)、再度の試みで何とか切り出せた。そのままフロキシンで染めてみた(h, i)。この仲間にシスチジアはないからわざわざヒダの断面を切り出す必要性は全くない。だからこれは単なるお遊びに過ぎない。ヒダ実質でもクランプはみられる(j)。カサ表皮はすっかり乾いていて、水による封入では構造が不明瞭だ(k)。KOHでほぐして染めると何となく細い菌糸が匍匐しているのがわかりやすくなった(l)。 | |||||||||||||
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房総半島の海浜砂地にでていたきのこを覗いてみた。ちょっと見たところはスナジクズタケによく似ている(a, b)。ヒダをみると小さな砂粒が多数ついている(c)。短時間で胞子紋はたっぷり落ちた。胞子サイズの2〜3倍程度の小さな砂粒も多量に落ちた。実体鏡の下で砂粒を取り除いて胞子をみた(d)。濃硫酸で封入すると発芽孔は明瞭になったが、サイズ計測にはなじまない(e)。
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砂粒をよけながらヒダの断面を切り出してみた(f, g)。側シスチジアはなく、薄膜透明の縁シスチジアがある(i, j)。ヒダを一枚取り外して縁をみると透明で薄膜のシスチジアらしきものはある(h)。カサ表皮は柵状被のようにみえる(l)。どうやらスナジクズタケとは違うようだ。それにしても、終始ミクロサイズの砂粒との闘いだった。海浜のきのこを覗いたのは久しぶりだった。 今日はこれから岡山県の倉敷に向かう。久しぶりの新幹線だ。それにしても新幹線価格には驚いた。煩わしい搭乗手続きや保安検査こそないが、岡山往復は飛行機より高い。 |
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昨日千葉県房総半島の内房の浜、外房九十九里の浜、茨城県鹿島灘の浜を一巡りしてきた。久しぶりにいろいろな種類のケシボウズタケ属 Tulostoma に出会った。多くは最近1ヶ月前から数日前までに発生したものらしい。どこでも圧倒的に多かったのがナガエノホコリタケ(a, b)、ついでケシボウズタケ T. brumale (c)だった。ウネミケシボウズタケ(d)は比較的少なかった。他にもT. kotlabae とおぼしき幼菌が多数出ていた(e, f)。
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海浜砂地には他にもスナジクズタケに近い仲間、フミヅキタケ属のきのこ、スナヤマチャワンタケなどが出ていた。一方、アカマツ防風林には、ニセマツカサシメジはよく出ていたが、どこも松枯れがますます激しくなり、きのこの姿は非常に少なかった。 埼玉県から海は遠い。家を暗いうちに出発して走行400Kmを走って帰宅したのは夕方だった。 |
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スッポンタケ仲間の卵のすぐ隣に小ぶりの卵が2つあった。当然スッポンタケだと思っていたのだが、切断してみると構造が全くちがっていた(a)。基本体が何室かになっている。開きかけた卵をよく見ると脊梁みたいな白いものが見える(b)。担子器も胞子の形も、大きさは先日観察したスッポンタケに似ている(c)。担子胞子の数は8個のようだ(d)。短い担子小柄もみえた。ゼラチン質部の菌糸はまれにクランプがみられ(e)、菌糸の先端にバルーン状の細胞がついているものがある(f)。このウッドチップ上には以前からカゴタケとスッポンタケが見られていたという。
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隣り合わせで似て非なるものがあるということを改めて教えられた。(Y. A.) | |||||||
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