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日( )
2010年7月20日(火)
 
なぜか秩父へ
 
 昨日の早朝多摩湖畔の緑地に向かっていた。主たる目的はテングタケ類とイグチ類だった。所沢市を走っているとき、途中で前日夕方に得た情報を思い出した。狭山市の自然公園ではテングタケ類やイグチ類はあまりみられず、小形のきのこばかりしかなかったという。そこで、急遽秩父市に向かうことにした。am7:00には秩父の山中を歩いていた。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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 テングタケ、ツルタケ、タマゴタケ、キタマゴタケ、コテングタケモドキ、ヘビキノコモドキ、など8〜10種類がみられた。イグチ類ではアワタケ属、ウツロイイグチ属、オニイグチ科(旧分類)だけをみた。目的のイグチ類は7〜8種あったが、持ち帰ったのは数点で、撮影もあまりしなかった。連日のこの暑さでは、多数持ち帰ってきても、観察する前に腐ってしまう。1日に観察できるのはせいぜい2点だ。散策は2時間で打ち切って、昼前には帰宅していた。

2010年7月19日()
 
再びヒカゲウラベニタケ
 
 数日前の多摩湖畔でもヒカゲウラベニタケがいくつも出ていた(a, b)。このきのこ、孤生を好むのか複数個体がまとまってでてくれない。先に川越の保護林で採取したものを観察しているが(雑記2010.7.13)、どうあがいても胞子の正面観の撮影がうまくいかなかった。
 
(a)
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(g)
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(i)
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(k)
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(l)
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(a, b) 子実体、(c) 胞子:ドライ、(d) 胞子:エタノール、(e) 胞子:グリセリン、(f) 胞子:水道水、(g) 胞子:濃硫酸、(h) ヒダ横断面、(i, j) 胞子をつけた担子器、(k) ヒダを寝かせて上から胞子を観察:合焦位置を変化、(l) カサ表皮:3%KOH

 胞子は封入液によって形が変わる(c〜g)。グリセリンではなぜか籾殻のようになり(e)、濃硫酸では全く姿を変えた(g)。多量の胞子紋をとったので、これを多めの封入液で全体を浮かせ気味にすれば、多数の胞子が縦を向いてくれるのではないか、との甘い期待があった。意に反して、立ち上がった状態の胞子は思いの外少なかった(青色矢印)。
 そこで、ヒダをスライドグラスに寝かせて、担子器を上から眺める形にしてみた。合焦位置を少しずつ下げて見ると、胞子の正面観が五角形〜六角形をしていることが明瞭にわかる。最近はほとんど使っていないが、これなどは、SEM(走査型電子顕微鏡)で撮影すれば、実にきれいで鮮やかな胞子の正面観と側面観を捉えることができるはずだ。

2010年7月18日()
 
たのしいシスチジア
 
 先日の秩父の美の山でみつけたカサヒダタケ?である(a)。1個体しかないが美しい状態のものを採取した。大事にフィルムケースに入れ、冷蔵庫の野菜室で5日ほど放置してしまったが良い状態で保存できていた。
 縁シスチジアを観察してびっくりである。伸びた針のような部分が80μmもあり、しかもこんなシスチジアがけっこう沢山観察された(b)。スイスの菌類図鑑も日本きのこ図版もこの針?の長いシスチジアの記載はなかった。日本きのこ図版ではカサヒダタケの記載に続いて載っているトガリハリベニヒダタケの記録に似た様なシスチジアが書かれている。側シスチジアは当然沢山あると思い、ひだ切片を切ったがまれにしかみられなかった(c)。ウラベニガサの仲間は当然側シスチジアが沢山あると思っていたのでちょっとがっかりした。ひだ実質は逆散開型(d)。傘表皮もシスチジアだらけ(e)、おまけに柄にもシスチジアがある(f)。
 
(a)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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 こんなにシスチジアが豊富なものをみているのは楽しいのだが、スケッチ、計測に時間がかかる!でも書きあげた時のノートを後から見ると満足感もひとしおである。(Y. A.)

2010年7月17日()
 
焦げ茶色の保護色
 
 採集した暗褐色のイグチを観察した。カサ、孔口や管孔部の色、柄の表面模様、柄基部の毛状菌糸、青変性などから、とりあえずコゲチャイロガワリとしてよさそうだ。保育社図鑑には「表面は乾燥し,ややビロード状,暗褐色。肉は黄色(柄の基部は帯暗赤色),空気に触れるとすぐに濃青色に変わる」とある。図鑑にもあるように、特徴的な味や臭いはない。
 
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(p)
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(r)
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(a) 子実体、(b) 裏面、(c) 孔口面、(d) 柄の基部、(e, f) 縦断面、(g) 孔口、(h, i) 管孔の横断面、(j) 管孔断面の一部、(k) 管孔の縦断面、(l) 孔口の縦断面、(m) 胞子、(n) 管孔部実質、(o) 縁シスチジア、(p) 側シスチジア、(q) 担子器、(r) カサ表皮

 「孔口はこげ茶色,微小(2〜3個/mm),円形」「(柄の)基部には黄褐色の粗い菌糸がある」はその通りだ。管孔部がしっかりしているので、表面を薄く削いでプレパラートを作っても縁が崩れず、きれいな円形が並ぶ(i)。青変性は弱く、1時間ほどすると赤褐色に変わった
 奥日光の針葉樹林にもそっくりな暗褐色のイグチがでる。これは柄の基部に黄色の毛状菌糸はなく、側シスチジアも少ない。保育社図鑑によれば、奥日光のものはクラヤミイグチということになるようだ。同じ日光でも、東照宮近辺に出るものはコゲチャイロガワリのようだ。

2010年7月16日(金)
 
足の踏み場もない!
 
 早朝多摩湖畔の緑地で、道路脇の狭いスペースに車を駐めた。外に出て足を一歩踏み出すと、一面にいろいろなきのこが群れをなして発生していた。テングタケ類、イグチ類、ベニタケ類などの大形菌はもちろん、小さなきのこがいたるところに無数に出ていた。
 
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 車から半径30mほどの範囲で出会ったテングタケ類とイグチ類の一部だけを並べてみた。先月末からずっと見られる息の長いきのこもあれば、最近になってようやく姿を見せ始めたきのこもある。これらのきのこの周辺には、他の菌に冒されてすっかり姿を変えた個体が多数みられた。相変わらず、梅雨時のきのこ最盛期が続いているようだ。

2010年7月15日(木)
 
キツネノハナガサ
 
 薄暗い林のなかではかなげにゆれるその姿にいつも引き寄せられてきた。でも今までは見つめるだけで採取しようとは思ってもいなかった。撮影もちょっとした空気の動きでゆれるため、皆が難しいといっていた。今回は無風状態だったため手を出してしまった。一度は検鏡したいとあこがれていたキノコでもある(a, b)。すぐそばに幼菌もあり一緒に採取した(c)。
 翌日冷蔵庫に置いておいたものを観察開始である。成菌はくしゃくしゃになっていた。やっぱり採取後すぐに観察しないとダメみたいだ。いつも帰宅後かたづけやら食事のしたくやらを優先するくせがついている。一応切片を作ろうとしたがまったくだめで、押しつぶし法で作ったプレパラートを顕微鏡でのぞいてみると、傘表皮らしき部分に球形組織があるではないか(d)。胞子は厚膜のレモン型だがはっきりとみられる(e)。
 
(a)
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(e)
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 幼菌を観察してみることにした。透明感のある傘なので当然傘表皮は薄い、表面に球形細胞がみられる。ひだ実質構造は並列型で薄く(f, g)、側シスチジアは大きいがまれにしかみられない(i)、縁シスチジアは沢山みられるが小形である(h)。青木図版(No.17 & No.1784; 名部編「日本きのこ図版」Vol.II pp.509-511)によれば側シスチジアは幼菌でしかみられないと記載されている。
 
(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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  今回は成菌での観察が充分できなかったので、次は採取してきたらその日に観察しよう。幼菌であるため担子器は充分観察できなかった。ともあれ気になっていたキノコをまたひとつ観察できた。(Y. A.)

2010年7月14日(水)
 
久しぶりの試薬作り
 
 今年に入って既に何度もベニタケ属やチチタケ属を観察している。少なくとも硫酸鉄、グアヤク、フェノールの3種の試薬による呈色反応はチェックしてきた。ところが、一昨年春に調合した試薬は室内にずっと放置していたためか、グアヤクはまだしも硫酸鉄とフェノールはすっかり劣化して試薬としての価値はほとんど失われているようだ。そのことはわかってはいたが、今年に入ってからもずっと放置してきた(雑記2010.7.2同2010.3.24)。
 
(a)
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(c)
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 今朝はしぶしぶ試薬6点ほどを調合した。三角フラスコやらメスシリンダーを使ったのも久しぶり。フェノールを呈色反応試薬として使うには、湯せんして液体となったところで、蒸溜水に溶かし込んで一定濃度とするのだが、なぜかしばしば皮膚に触れてしまう。今朝も薬傷ヤケドだ。さらに、うかつにもアニリンのついた指先を舐めてしまった。それにしても、きのこや地衣の呈色反応試薬にはどうしてこうも毒物や劇物が多いのだろうか。

2010年7月13日(火)
 
胞子撮影で難儀 !!
 
 雑木林にヒカゲウラベニタケがよく出ている(a〜d)。イッポンシメジ科 Entolomataceae ヒカゲウラベニタケ属 Clitopilus に属するこのきのこの詳細は図鑑に任せるとして、特徴的で興味深いのが胞子の姿だ。保育社図鑑には、胞子は「楕円状紡錘形で6本の縦に走る肋状隆起があり,横断面は六角形」とある。ヒダは垂生で、菌糸にクランプはない。
 
(a)
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(j)
(k)
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 今回採取した個体では十分な胞子紋が落ちなかった。このため、胞子がいろいろな方向を向いて重なりあった画面は得られず、水(e)やメルツァー(f)で封入すると、ほとんどの胞子が側面を見せて横たわった。あまりに小さな胞子ゆえ、断面を切り出すことは一般的にはできない。
 では、「断面は六角形」を確認するにはどうしたらよいのだろう。胞子を立てて尖った部分を上か下にすればよいことになる。胞子の重心が偏っていれば楽にできるはずだが、ヒカゲウラベニタケの胞子ではうまくいかない。たっぷり多めの封入液に胞子を浮かせると、回転しながら転がっていく胞子がいくつもあって、その途中で六角形が見える。しかし撮影は困難となる。
 胞子が立った状態を固定しようと、グリセリンやらラクトフェノールで封入してみたがどうもうまくいかない(g)。ヒダを寝かせて担子器についた状態で撮影できれば正面観を撮影できるはずだ。ところがやってみると、ヒダが厚いため暗くてうまく撮影できない。やむなく、ヒダの一部を押し潰して、一定の厚みを持たせると、あちこちに立ち上がって六角形を見せている胞子をやっと捉えられた(h, i)。縁シスチジアの有無はよくわからない(k)。カサ表皮は細い菌糸が匍匐している(l)。

2010年7月12日(月)
 
第9回地衣学会にて
 
 昨日は千葉県立中央博物館を会場に行われた日本地衣学会第9回大会に参加した。こういった地衣類の大会に参加したのは初めてのこと。生き物としての地衣類の分類、分布、生理、生態、環境といった生物学的方面からの発表内容は少なく、多くは二次代謝産物の成分の生化学的あるいは有機化学的解析や構造式の決定などが主たる話題となっていた。
 愛媛県総合科学博物館の川又さんの「地衣類の展示方法に関する事例」、岐阜大の川上さんの「地衣類調査をテーマにした科学教育プログラムの構築に向けて」といったような異質の話題もあったが、若い研究者の発表ほど、前記のような傾向が強く、ふと、生化学会、薬理学会の大会に出席しているかのような印象すら覚えた。
 菌類や蘚苔類でも、揶揄をこめて「絶滅危惧種:分類学者」などといわれるようになって久しいが、地衣類も例外ではないようだ。菌類でも、生物学というよりDNA分子データの操作に関するものばかりが目立って、生き物としての対象に対する関心の低下を強く感じてしまう。

 今日はウメノキゴケの分類に関するワークショップ。千葉に向かうのに、ちょうど通勤ラッシュの時間と重なってしまう。都心から千葉方面はよいが、都心に出るまでが辛い。


2010年7月11日()
 
イグチ全盛
 
 この数日間に出会った大形イグチ類の一部を列挙してみた。アワタケ、コウジタケ、コショウイグチ、ハナガサイグチなどの小さなイグチにも出会っているが、これらの画像は取り上げなかった。胞子の形に個性があって楽しいオニイグチの仲間は、これから8月末までの時期が発生のピークになるのだろうか。今週はまだひとつも出会っていない。
 
(a)
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(c)
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(e)
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(g)
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(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 画像(k)と(l)は、雨で撮影できず採取したものを板の上に置いて撮影した。先週出会ったイグチ類を数え上げてみると、なんだかんだと30種を超えていた。

 今日はこれから千葉市で行われる地衣学会の大会へ参加。もろにバッティングしているため参加はできないが、神奈川県入生田では菌類懇話会の観察会が行われる。


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