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富士山で採取した Dermocybe (ササタケ属) のうち残りの一つを覗いてみた。現地では赤みをかなり感じたのだが、写真をみるとさほどでもない(a)。持ち帰ってからやや日数が経過しているせいか、全体が赤みを帯びた褐色となっている(b)。昨日のアカタケ(or 近縁種)同様に胞子紋はあまり落ちなかったので、落下胞子はごくわずかだ(c)。ヒダの一部を押しつぶしてフロキシンを加えた状態で再度胞子を撮影した(d)。ヒダ実質は並列型で(e)、シスチジアの類は見あたらない。
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ヒダを1枚KOHで封入すると赤褐色の汁がでたが(f, g)、昨日の Dermocybe のヒダと比較すると赤みが弱い。担子器の基部にも(h)、他の組織にもクランプがある(i)。カサ表皮の菌糸は昨日の Dermocybe のそれとほとんど同じだ。アカササタケかその近縁種のようだ。 一般に Dermocybe (ササタケ属) のきのこは、ヒダの断面が赤色を帯びたものが多く、KOHやアンモニアでヒダを封入するとたいてい、赤色〜弱赤褐色の汁がにじみ出す。色素のアントラキノンを含むためだという。でも、担子器やクランプなどの観察にはやはりフロキシンが必要だ。 |
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富士山には何種類かの Dermocybe (ササタケ属) が出ていた。3種類ほど持ち帰ったが、うち1種は虫に食われてすっかりボロボロになっていた。今朝は残り2種のうち赤みが強い方を覗いて遊んだ(a, b)。乾燥気味だったのか胞子紋がほとんど落ちなかった。いちおう落下胞子を撮影したのち(d)、ヒダを押しつぶして再度胞子を撮影した(e)。
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ヒダの縁をみようと、スライドグラスにヒダを1枚寝かせてKOHで封入すると濃赤色の色素がしみ出してきた(f)。ヒダの縁にはシスチジアらしきものはない(g)。ヒダ断面に側シスチジアらしきものはない(h)。ヒダ実質は並列型(i)。担子器の基部にも(j)、ヒダ実質にもクランプがある(k)。カサ表皮はやや太めの菌糸がほぼ平行に走り、所々で錯綜して立ち上がっている(l)。それにしてもやたらと赤色の汁を出すきのこだ。どうやらアカタケかその近縁種らしい。 | |||||||||||||
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今月はきのこ・こけ・地衣の観察で、多いときには1日に30枚以上プレパラートを作った。でも、使ったスライドグラスは計1枚だ。消費したカバーグラスは10枚ほどになる。終日自宅に不在だった日を除いて、ほぼ毎日1〜2時間は顕微鏡を使っていた。 ふだんは使い終わったスライドグラスにハァーっと息を吹きかけ、ティッシュでサッと拭き取って次のきのこに使う。胞子やシスチジア、カサ表皮などの確認目的であれば、多少コンタミがあっても大勢に影響がない。「雑記」用にはコンタミの少ない部分を撮影する。 スライドグラスは汚れがひどくなったら中性洗剤で洗い、傷がひどくなったら捨てる。今月はまだいちども洗っていない。2005年頃までは、実際に毎週一度25〜30枚ほどスライドグラスを洗っていた(雑記2005.6.4、同2003.11.17)。使い終わったカバーグラスはティッシュに消毒用アルコールを浸して拭き取ってまた使う。油汚れがしみついたり割れたら捨てる。 今年もすでに8ヶ月を経過したが、スライドグラスを洗ったのは4〜5回ほどだろうか。それぞれ3〜4枚程度。傷だらけになったために捨てたスライドグラスは4〜5枚。この間に、きのこ240種ほど、コケ160種ほど観察しているが、消耗したカバーグラスまだ1ケース(200枚)に充たない。建前と現実、というより無精がますます進んだのだろう(同2006.12.13、同2006.12.16)。 |
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富士山の針葉樹林にはニオイカワキタケが多い。強烈な匂いのため、風向きによっては数十メートル離れていても、そこに発生していることが分かる。先日倒木に横向きになって着いている姿に出会った(a)。発生後に枯れ木が倒れてしまったのだろう。よく見かけるのは、横になった倒木に直立している姿(b)。たいていは柄の基部にわずかに朱色部分がある(c)。ヒダの縁は微鉅歯状とでもいうのだろうか(d)。カサ肉やヒダはとても強靱だ。
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革質で強靱なヒダの断面を切り出して子実層をフロキシンで染めた(g, h)。ヒダを一枚スライドグラスに寝かせて縁をみると、モヤモヤゴチャゴチャしている(i)。ヒダから小片を切り出して押しつぶしてみた。担子小柄が小さくて、すべてがまるで偽担子器だ(j)。原菌糸と骨格菌糸からなる2菌糸型 (dimitic) だ(k)。カサ上表皮の姿はうまく捉えられなかった(l)。 それにしてもフロキシン+消しゴム法(雑記2010.7.31、同2003.9.18〜2003.9.20、同2006.12.23)で菌糸組織をほぐすのに難儀した。カイガラタケなどの硬いキノコよりも遙かにほぐしにくく、ちょっと力を入れすぎるとすぐにカバーグラスが割れてしまう。2〜3mm四方くらいの小さな断片を根気よくほぐすしかなかった。 |
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富士山からキイロイグチを何となく数本持ち帰ってしまった(a〜c)。胞子紋をとるつもりで管孔部の一部をカバーグラスに載せて一晩放置した。朝になると小さな白色のウジ虫が多数転がっていた。まだ多数のウジ虫が蠢いている。そして、胞子もごくごくわずか落ちていた。ウジ虫とその死骸をていねいに取り除くと、ようやく胞子の検鏡ができた(d)。 カミソリをあてると、管孔部がゴムのように伸びてうまく切れない。やむなく新しい刃を一枚おろして、何とか管孔部の断面を切り出した(e)。実質部は散開型でいわゆるヤマドリタケ亜型(f)。切り出した管孔部実質の先端を見ても、縁シスチジアの有無や形はよく分からない。 |
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あらためて孔口部付近を実体鏡下で切り出して押しつぶすと縁シスチジアらしきものがある。水やKOHだけだとコントラストが弱すぎてよくわからないので、フロキシンで染めた(g)。同様に、孔口部を取り去って管孔部の一部を押しつぶしてみると、同じような形の側シスチジアがある(h, i)。担子器もいちおう撮影してみた(j)。カサ表皮は水で封入したのでは構造がよく分からないが(k)、KOHで封入すると細い菌糸が匍匐していることが分かる(l)。 猛暑の中、柔らか系のイグチは猛烈に傷みが速い。テーブル上にきのこを置いてスケッチをしたり、管孔の一部を切り出したりしている間にも、どんどん腐敗が進んでいくのがわかる。あわせて白い小さなウジ虫がテーブルの上で賑やかに盆踊りをやっている。 |
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仲間5人で富士山を歩いてきた。主たる目的は納涼。思いの外キノコの種類と量が多く出ているのに驚いた。里山や低地の緑地帯には全くといってよいほどキノコが出ていないのに、先日の奥秩父の主稜線と同じく、亜高山帯から高山帯の斜面ではキノコが溢れていた。 富士山を代表するキノコともいえるクロカワ(a, b)、ショウゲンジ(c, d)、ホウキタケ類(e, f)、ドクヤマドリ、フジウスタケ、バライロウラベニイロガワリ、ミキイロウスタケ、などに出会った。 |
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はじめて富士山に来たという75歳のおばあちゃんが、マツタケを採ったといって見せてくれた。篭の中には大きなマツタケが3本入っていた。帰路、駐車場で東京キノコの会のメンバー5人ほどにも出会った。五合目駐車場はam5:00には満杯で、3kmほど下の道路脇に作られた駐車スペースに駐められていた。まだまだ登山者の数はとても多かった。pm6:00過ぎには帰宅して、クロカワの付け焼きを肴にビールを飲んでいた。 | |||||||
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先週の土曜日、奥秩父亜高山帯の針葉樹林にはムラサキフウセンタケが到る処にでていた(a, b)。紛らわしいきのこも少なく肉眼で同定できることもあって、ミクロの姿を覗く人は少ない。顕微鏡を使ったところで、せいぜい胞子を見る程度だろうか。
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ヒダを1枚スライドグラスに寝かせて縁をみると縁シスチジアが多数ある(e)。次いでヒダの中程から小片を切り出して押しつぶしてみると、側シスチジアがあって縁シスチジアと同じような形とサイズをしている(i, j)。ヒダの横断面を切り出すまでもないが、一応切片をつくってみた(f)。ヒダ実質は並列型(g)。縁シスチジアもなんとなくわかる(h)。大部分の担子器には基部にクランプがない。カサ表皮(l)を見ていると腐敗臭が激しくなってきたので直ちに処分した。 | |||||||||||||
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川越市の雑木林や狭山の緑地帯では、わずかにクロチチダマシがみられるが、このところの乾燥でまともな個体はほとんどない。一方、奥秩父の針葉樹林にはいたる処にクロチチタケが出ていた(a, b)。一年ぶりにクロチチタケを覗いて遊んだ(雑記2009.8.13)。 |
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持ち帰ったきのこの大半は、この2日間ですっかり傷んでスケッチや検鏡には耐えられなくなっていた。クロチチタケもヒダが黄色っぽくなり、ヒダの間にはウジ虫が多数蠢いていた。胞子紋には多量の桿菌が蠢き、きれいな姿の胞子を捉えることはできなかった(d)。 ヒダを1枚外して縁を顕微鏡でみると、薄膜で細長い棒状のシスチジアがある。透明で見にくいのでフロキシンで染めた(e)。あらためてヒダの断面を切り出して(f)、ヒダ実質を見た後(g)、メルツァー液を加えて(h)、先端を見た(i)。縁シスチジアがわかりにくい。あらためてヒダの一部を押しつぶしてフロキシンで縁シスチジアを確認できた(j)。担子器の基部にクランプはない(k)。カサ表皮はいわゆるアイタケ型(l)。押しつぶしてしまうと、カサ表皮の構造は不明瞭になる。 今回観察したクロチチタケは乳液が比較的少なかったが、それでもすぐにカミソリの刃がべたついて切れなくなる。検鏡している合間に、机上にはウジ虫が多数這い出していた。 |
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シイノトモシビタケ、ヤコウタケ、ツキヨタケなどが発光することは広く知られている。一方、ヒカリゴケ Schistostega pennata は、場所によっては国や県の天然記念物に指定されている1属1種の原始的な蘚類で、北半球の北方域に広く分布する。 きのこと違って自ら発光するわけではない。光って見えるのは、原糸体の一部である球形のレンズ状細胞が暗所に到達した微光を反射するからだ。だから、茎や葉(配偶体)、胞子や(胞子体)などは光らないし、原糸体も真っ暗闇では光らない。 一昨日国師岳周辺で出会ったヒカリゴケの光には2種類の色が感じられた。色の違いはレンズ状細胞に含まれる葉緑体の量の違いからくるようだ。ほとんど葉緑体を含まない細胞(b)からは弱い緑色、葉緑体を多く含む細胞(a)からは金緑色ないし銅緑色。 |
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ヒカリゴケのように永続性の原糸体をもつコケは少ない。ハミズゴケ Pogonatum spinulosum では、胞子体をつけない状態は地上生の藻類のようだ。この原糸体はむろん光らない。 ヒカリゴケの植物体を見たことのある人は意外と少ないようだ。非常に小さくなよなよとした姿は、微細なシダ植物を感じさせる(c〜e)。葉は三角状披針形で、茎の左右に二列につき、基部が上下の葉とつながっている(f)。小さな雌性の茎の先にはをつける。 |
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涼を求めて奥秩父の稜線に遊んだ(a)。早朝の稜線(標高2,400〜2,600m)は肌寒く、多くの人が長袖のシャツの上に厚手の上着を着て歩いていた。カンバ、ミズナラの混じる針葉樹林には大形のきのこが溢れていた。タチハイゴケやイワダレゴケなどに被われた林床にはヤマドリタケ、ショウゲンジといった大形の食菌をはじめ、亜高山帯のきのこが溢れていた。
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最も多かったのはベニタケ属、フウセンタケ科(b〜g)、チチタケ属(h〜k)、クヌギタケ属、ヤマドリタケ属、ヤマイグチ属だった。山のきのこは今が最盛期かと思わせられるほど、今シーズン最も多くのきのこに出会った一日となった。ヒカリゴケも印象的だった(l)。 | |||||||||||||
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8月11日に日光で採取して放置したままのイグチがある(a, b)。捨てる前に覗いてみた。カサはややビロード状、孔口も管孔も黄色、柄の基部は赤みがかり、管孔面は柄に垂生気味で、強い青変性がある(c)。当日帰宅後に撮影した写真(d)と冷蔵庫に放置し今朝袋を開いた写真(e)を並べてみた。胞子は採取当日にとった胞子紋からのもの(f)。
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イグチ類の管孔部実質を確認するのは難しい。実体鏡の下で慎重に管孔部を切り出した。管孔に平行に切り出したつもりでもたいていやや斜めになってしまう(g)。とりあえず実質の菌糸構造をみてから(h)、先端、つまり孔口部を覗いてみると縁シスチジアが見える(i)。次いで管孔の横断面を切り出した。これまた柔らかくて大半が崩れてしまう(j)。孔の縁をみると濃色で紡錘形の側シスチジアらしきものがある(k)。 あらためて管孔部をフロキシンで染めてから3%KOHで押しつぶしてみると、先ほど確認した縁シスチジア(l)や側シスチジア(m)、担子器(n)などを確認することができた。カサ表皮は水で封入してもよく分からず(o)、封入液をKOHで置き換えると急に明瞭になった(p)。何となくビロード状に感じた理由はやや立ち上がり気味の菌糸のためかもしれない(q, r)。 |
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イグチ類のことはごく一部のきのこを覗いてほとんど何も知らない。したがって、このきのこが何かは分からないが、イロガワリなどに近い仲間なのだろう。真夏のイグチにしては珍しく、虫がほとんど見られなかった。 | |||||||||||||
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