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今朝は梅雨時の今の時期としては非常に珍しく、自宅ベランダから富士山が見える。過去に梅雨時に富士山を見たという記憶はない。話変わって、今日と明日は千葉市で日本地衣学会の大会が、明後日はワークショップが行われる。一方、蓮田市のワイさん宅で菌懇会の試薬作りを行うので手伝って欲しい、とジイさんから要請があった。千葉に行くかそれとも蓮田に行くか、少々迷ったが今日は蓮田に行くことにした。明日の大会と翌月曜日のワークショップには参加するので、明日の小田原市には行かないことになる。
保育社図鑑では、上表皮層の構造の一つとして「アイタケ型」という用語が使われている。偽柔組織の最上部の細胞上に直立したシスチジア状の末端細胞があるものをいうとある。具体的には、アイタケ、ヒビワレシロハツ、カラムラサキハツ、クロチチダマシ、クロチチタケ、フチドリクロチチタケ、ウスイロカラチチタケ、ヒロハウスズミチチタケなどのカサ表皮がそうだとされる。
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川越市や狭山市ではアイタケが最盛期を迎えている。カサ表面の独特のひび割れ模様が出たものはわかりやすい(a, b, c)。しかし若い菌では、カサ表皮が割れていないケースも多々ある。そんな場合、カサ表皮の構造を見ると、アイタケか否かの手がかりが得やすい。 ただ、見慣れていないとアイタケ型か否かがわかりにくい。ここでは、カサ表皮を含めた横断面を切り出し(d)、それを水で封入(e, f)、フロキシン染色(g, h)したものを列挙してみた。見慣れると、カサ表皮部分を押し潰しても特徴はわかる(i, j)。この場合もフロキシンで染めた方がコントラストがはっきりしてわかりやすい(雑記2008.7.25、同2009.8.13、同2009.7.17)。 |
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昨日に引き続き、キヌガサタケの画像を掲載した。上段の画像は、雨のなか位置を固定したカメラにポリ袋をかぶせて随時シャッターを切ったもの。下段の画像は、思い切って近づいてマントの一部分を撮影したり、頭部を上から、さらに卵を縦断したものだ。 |
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卵の頭部が割れグレバを帯びた頭部が現れてから、徐々にマントを伸ばし、最終的に大きく広がった成菌になるまでの過程をていねいに撮影しようと思ったら、やはり卵を持ち帰って室内でじっくりと撮影するに限る([キヌガサタケの成長]、雑記2001.7.12)。過去には、持ち帰って2週間冷蔵庫に保管しておいた卵からでも、美しく開く姿を刻一刻と観察できた。冷蔵庫のなか、苦しい姿勢で成長してしまい、何とも妙な姿のキヌガサタケができあがったこともあった。 さらに、いたずら気分で成長変化を楽しんだものはこれまで何度か雑記で取り上げている(同2006.8.3)。担子器や胞子については過去の雑記に記してある(同2004.7.19)。やはりキヌガサタケはきのこの女王様にふさわしい。 |
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長瀞の知人からキヌガサタケが出たとの知らせを受けたので、昨日早朝、雨の中を約90kmほど車を走らせて竹林まで行ってきた。ちょうど卵、幼菌、成菌といろいろの成長段階のものが揃ってとてもよい状態だった。その一方で、卵が割れて頭部を出すところから、少しずつ成長し、すっかり延びあがってマントを大きく広げた姿になるまでじっくりと観察することができた。 |
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昨年は、キヌガサタケに関しては全般的によい状態のものは少なく、マントが破れた状態のものしか観察できなかったが(雑記2009.7.2)、今年は非常にタイミングがよかったようだ。しかし、すさまじい湿気に悩まされた朝だった。 | |||||||
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検鏡にあたっては水で封入した後、KOHやアンモニアなどで確認することが多い。生きのこの場合だと、最初に水道水で封入する。乾燥標本の場合はアンモニアを使うことが多い。シスチジア頭部の結晶などが溶けて消えてしまうことがあるので、KOHを最初に使うことはない。もっとも、アルカリに弱い結晶でも3%KOHに数分間程度では、そう簡単に解けて消え去ることはない。
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水道水にしろKOHにしろ、コントラストが弱くてシスチジアの存否が不明瞭だったり、透明でわかりにくいような場合には、染色剤を使うとわかりやすくなる。具体的にはフロキシンやコンゴーレッドを使う。サフラニンは植物細胞の表面は染まるが菌糸の表面は染まらない。 縁シスチジアの姿が不明瞭な場合など、しばしばいカバーグラスの端からフロキシンなどを少量注いで、スライドグラスを傾ける。こうすると切片の内部は染まらず、外周部だけが染まるのでシスチジアや子実層だけが染まって見やすくなる(b → c、d → e)。カサ表皮などもKOHでコントラストが弱くなってもフロキシンでわかりやすくなることが多い(f)。もっとも、だからといって何でもかんでもフロキシンなりコンゴーレッドで染めればよいというものではない。かえって組織構造がわかりにくくなるケースも多い。 今朝は何とか代用カメラで検鏡画面を撮影した。修理に出しているE-410(実体鏡専用)は9日以降でないと修理が終わらない。思いがけないところからE-330の後継となる顕微鏡専用カメラを調達できた。ヒロキーベこと「きのこ屋」さんから同型機E-330を無償で譲ってもらった。とりあえずこれでひといきつけそうだ。ありがとうございました。 |
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最近の日光では猛暑と多湿のためか、きのこの寿命がとても短い。例年だと発生した翌日くらいまでは鑑賞・観察に耐えうるホシアンズタケ(a, b, c)やタモギタケ(d, e, f)だが、今年はやや違うようだ。小さな幼菌と、グズグズに崩れた老菌が混在している現場がやたらに目立つ。きのこ自体は次々に発生しているらしいが、たちまち高温のため崩れてしまうようだ。
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カバノアナタケ(g, h)やムカシオオミダレタケ(i, j)がやたらに目立つのも今年の特徴だ。また、平日の日光ではいろいろな動物との出会いが多い(k, l)。埼玉県南部と同じく、クヌギタケの仲間、イグチ類、テングタケ類の発生も非常に目立った。ただ、興味深いきのこや美しい姿のきのことの出会いはなく、一眼レフの出番は全くなかった。久しぶりに温泉を楽しんだ。 | |||||||||||||
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先に川越の保護林で採取したベニタケ属のうち5つを取り出して並べたが(雑記2010.7.2)、カサ表皮、シスチジア、担子器の画像は省略した。以下にそれらを追加した。(5)の黄色いベニタケ属のカサ表皮(j)以外はすべてフロキシンで染めた。検鏡画像はすべて先月末に撮影したものだ。
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カサ表皮は、カサ表皮とカサ肉とを一緒に断面を切り出したもの。(2)の紅色のきのこだけはカサ表皮を楽に引き剥がすことができるが、他のきのこはカサ表皮だけを剥がすことはできない。断面の多くは透明でコントラストが弱くわかりにくいのでフロキシンで染めた。 シスチジアと担子器は、ヒダの先端付近を3mm角くらいに切り出して、これをフロキシンで染めてから3%KOHで封入して、カバーグラスの上から消しゴム法で押し潰したもの。「押し潰し法」というより、むしろ「組織ときほぐし法」と言うのが妥当なのだろう(雑記2008.2.9、同2006.12.23、同12.22、同12.21)。観察結果から種の推測はついても、さしあたっての関心事ではない。 |
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多摩湖畔や狭山湖畔の緑地帯では、相変わらず多くのきのこが大発生している。特に目立つのはテングタケの仲間だ。アカハテングタケ(a, b)、ツルタケ(c)、オオツルタケ(d, e)、ガンタケ(f)、テングタケ、テングタケダマシ、ヘビキノコモドキ、コテングタケモドキ、キタマゴタケなどを数えた。多くの種で幼菌から成菌まで各ステージをそろえることができる(g〜j)。蚊とスズメバチの襲撃に耐えきれず、藪にしゃがみ込んでの撮影はガンタケでおしまいにした。カワリハツとヒビワレシロハツをはじめ、ベニタケ属も多くの種類を見ることができる。
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先週よく出ていたヤマドリタケモドキ、アカヤマドリ、ムラサキヤマドリタケなどは、大半が既に最盛期を過ぎて、腐敗したり崩れて倒れていた。相変わらずキツネノハナガサがいたるところに出ていた(k)。カゴタケは残念ながら2個体ともすっかり開いて倒れていた(l)。現地で最初にその場所に行っていればタイミング良く開く場に立ち会えたのかもしれない。ウッドチップからは他にも悪臭を放つ腹菌類がいくつか出ていた。 | |||||||||||||
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実体鏡専用カメラのOlympus E-410が故障し、修理に出した。4月に故障したC-5060WZの後を受けて使うようになってまだ数ヶ月(雑記2010.4.6)。応急処置として、屋外撮影用に使っているカメラのボディを取り付けた。修理見積は11,025円という。中古相場は13,000円、何ともバカバカしい。顕微鏡撮影専用機のE-330もついにまともに稼働しなくなってしまった。修理見積の結果は基盤交換が必要で30,150円とか、中古相場の倍以上だ。中古のE-410等を買うしかない。それにしてもE-330はよく今まで故障知らずできたものだ。嘆かわしいがそれだけよく使った証でもあるのだろう。いずれにせよ金の工面が大変だ。
相変わらずミドリニガイグチがよく出ている。昨年7月26日にならって再び顕微鏡で覗いて遊んだ。今日もまた生のままのきのこから管孔部を切り出したので(同2010.6.26)、管孔部実質の構造をうまく捉えられなかった(f)。おまけに複数の管孔部実質がくっついたまま離すこともままならなかった(d, e)。カバーグラスの重みで潰れるよりはよかろう。
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カサ表皮(g, h, i)と柄の表皮も覗いてみた(j, k)。担子器(l)とほぼ同じ大きさの小さなシスチジアは撮影しなかった。カサ表皮を切り出している間にも、孔口部から白色のウジ虫が多数這い出してきていた。夏のキノコ観察は腐敗ばかりではなく虫とのバトルでもある。 | |||||||||||||
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それがベニタケの仲間であることはすぐにわかる。ではいったい何という種なのか、となると殆どお手上げになるのがこの属 Russula だ。肉眼的特徴に加えて、胞子やシスチジアの形、呈色反応などから、節や種の見当がつくものもあるが、多くはそれでもどうにもわからない。先日川越の保護林で採取した8種のベニタケ属のうちから、5つを取り出して並べてみた。やたらに画像が多くなるので、カサ表皮、シスチジアと担子器などの画像は省略した。
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メルツァー試薬はすべて同一条件で使ったのだが、(1)のキノコだけやや赤紫色を帯びた。3%KOHで胞子を封入し、10数秒後に水洗いしたのち、メルツァー液を注ぎ、多すぎる液を濾紙で吸い取った。水洗いは、スライドグラスを傾けカバーグラスの端に水を滴して反対側から濾紙で吸い取る。これを数回繰り返した。ポイントは水をごくごく少量ずつ注ぐこと。水洗いを省略すると酸(Melzer's Reagent)とアルカリ(KOH)による中和反応が起こって、白色の塩(エン)の結晶が生じてしまう。もっとも、KOHを使わず最初からメルツァー試薬で封入してもよい。 胞子表面の模様は(4)だけが他と顕著に異なり明瞭な網目がある。メルツァー試薬のかわりにイソジンなどのうがい薬を使うとベニタケ属やチチタケ属、ザラミノシメジ属の胞子表面では、有効に作用しない(雑記2004.8.4、同2003.12.19、同2009.11.22)。一般的にイソジンなどのヨードを含む代用品が役立つのは子嚢菌の場合だけだ(同2009.11.29、同2008.5.14、同2002.12.21)。
ヒダの断面を切り出して低倍率でみただけで、縁シスチジアや側シスチジアの存在がすぐにわかるケースもあるが、多くは、倍率を上げないとわかりにくい。倍率を上げても側シスチジアが確認できなければ、たいていは存在しないと考えて間違いないようだ。存在する場合には、そのシスチジア類がヒダ実質に由来するのか、子実下層に由来するのか、あるいは托実質に由来するのかを確認する必要がある。これを確認するにはヒダ切片の切り出しが必要となる。
呈色反応は、採取し持ち帰ったものに対して、硫酸鉄、グアヤク、フェノールの3種の試薬をヒダに滴下し、それぞれ1分後と60分後の色の変化をみた。カサ肉なり柄の内部組織に滴下した方がより適切な反応を得られるケースもある。一時間もテーブルに放置しておくと、どのキノコも暑さと湿度でたちまち傷みはじめた。硫酸鉄はどうやら有効期限を過ぎてしまっているようだ。フェノールもかなり怪しいが、まだ作り直していない(同2010.3.24)。 |
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川越市の保護林で見慣れないイグチが7〜8個体でていた(a)。コナラやスギの落ち葉と似通った色であやうく踏みつぶすところだった。焦げ茶色のカサ、黄色い肉、わずかな青変性、柄上半に繊細な網目、柄下半に粒点がある。ルーペでみると孔口が濡れたように光る。図鑑類には掲載されていないと思われるイグチだったので3個体ほど持ち帰ってきた。
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しっかりして管孔部も硬かったので、胞子が成熟していないのではと懸念したが、2時間ほどで多量の胞子紋ができあがった。胞子紋は褐色。管孔部を縦に切り出してみた。托実質はヤマドリタケ亜型。管孔部の先端を見て驚いた。薄膜で熱気球のような縁シスチジアが密生している。孔口部をルーペでみたとき濡れたように輝いたのは、この縁シスチジアのためだったようだ。 縁シスチジアが球形〜楕円形で、柄をもち全体として熱気球のような姿をしたイグチなんて見たことがなかった。何かちょっと違うのではないか、という妙な直感は当たっていたようだ。クランプはなく、カサ表皮は直立気味で色素を帯びた菌糸からなる。 イグチのことはほとんど何もわからないが、縁シスチジアが類球形のものといえば、知る限りでは青木実氏によるクロアミアシイグチ(青木新称 Boletus sp.)しかない。そこで、名部編『日本きのこ図版』第五巻(2008 日本きのこ同好会2)を開いてみると、183〜184p.に掲載されていた。図版番号はNo.1089。図版には、「1989-VIII-12、所沢市北中、コナラの根元で2個体採取したが、1個体はすでに、くずれていた」とある。記載にそって他の形質状態を確認していくと、胞子は非アミロイド、柄シスチジア、肉眼的呈色反応などもほぼ記載どおりだった。
熱意あるアマチュア研究者であれば、普通はこの時点でさらに詳細な記載をすると同時に、文献探索を開始し、新種ないし新産種として論文発表する準備にかかることになる。ここ数年、そういったことができる「ハイアマチュア」が一昔前には考えられないほど増えた。 |
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