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久しぶりに子嚢菌を覗いた。ズキンタケ類のロクショウグサレキンモドキとチャワンタケ類のトビイロノボリリュウだ。ロクショウグサレキンモドキの子嚢には蓋が無く、メルツァー液で青色に染まる孔がある(c)。一方、トビイロノボリリュウの子嚢には蓋があり、メルツァー液では色に変化はなく、側糸が偽アミロイド反応を示す。この両者の子嚢の大きさはまるで違う(c, f)。
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相変わらずヒカゲウラベニタケがよく出ている(g, h)。このきのこの胞子は保育社図鑑によれば「楕円状紡錘形で6本の縦に走る肋状隆起があり,横断面は六角形」。肋状隆起はエタノールで封入すれば明瞭に捉えることができる(i)。水で封入すると肋状隆起は不明瞭となるが、封入液をやや多めにすると一部の胞子が横断面(に相当する正面観)をみせてくれる(j)。 |
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今夜愛媛に向けて出発し、9〜11日は日本菌学会の愛媛フォレーに参加。今回の遠出には三眼の中型生物顕微鏡は車から降ろして、小型の単眼顕微鏡と簡易実体鏡を積んだ。フォレーの後は四国・中国地方を少し巡るつもりなので、最終的にいつ帰宅することになるのかは成り行き次第。この雑記メモもしばらくはお休み。 |
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公園や緑地では、あちこちに大形のニガクリタケが大量発生している(a〜c)。束生したり群生することなく、単生している子実体も多い(d)。なかにはカサ径8cm、柄長15cm超という子実体もある。特に今年のニガクリタケはクリタケのそっくりさんがよく目立つ。
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あまりに大きかったので一部を持ち帰ってきた(e)。子実体にKOHを滴下すると赤変する(f)。胞子をドライ(g)、水道水(h)、3%KOH(i)、濃硫酸(j)でみても、普通のニガクリタケと変わりない。ヒダの横断面(k)、ヒダ実質の構造(l)、シスチジア(m)、担子器(n)も同様だ。カサ上表皮の様子は、水で封入したのではよくわからないが(o)、3%KOHで封入する(p)と有色の菌糸やら細い菌糸が平行に走っているのがよくわかる(q, r)。 | |||||||||||||||||||
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先月末房総半島に出かけたときに採取してすっかり忘れられていたきのこがあった(a, b)。かなりしなびて色も変わっていたが、生時の面影は失われていなかった。採取時、ヒダは帯紫褐色だったが(b)、暗褐色に変わっていた。しなびてカミソリをあてるとズルズルと引きずられる。 ヒダの付き方は湾生のようだ(d, e)。胞子は思いの外小さく、発芽孔はない(f)。ヒダを寝かせて縁をみると縁シスチジアらしきものがある(g)。あらためてヒダの断面を切り出して(h)、先端部をみたが、縁シスチジアを捉えきれていない(i)。おまけに気泡が多数付着して見苦しい。 |
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3%KOHでバラして、縁シスチジア(j)、担子器(k)などを確認した。クランプはみつからなかった。カサの上表皮は細長い菌糸が平行気味に匍匐する(l)。千葉に行くとよくみるきのこで、フミヅキタケ属の仲間だとは思うのだが、未だに名前はよく分からない。 |
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2年ぶりにイヌセンボンタケを詳細に観察してみた(雑記2008.10.17)。多摩湖畔の緑地の腐朽材に群が広範囲に広がっていた(a)。大きな子実体ではカサ釣り鐘部の径が7mmほどあった(b)。観察の主たる目的は縁シスチジアとカサシスチジアの確認だ。 ルーペでみただけでも、カサ表皮と柄の表面にはキラキラ光るシスチジアらしき構造がみられる(c, e)。ヒダの付き方は上生(d)。胞子には発芽孔がある(f)。ヒダを一枚取り外してスライドグラスに載せて縁をみた。幾つもの個体から何枚ものヒダを見たが、どのヒダにも縁シスチジアはみあたらない(g)。どうやらこの子実体群にも縁シスチジアをもったものはなさそうだ。 ヒダ横断面を切り出してみた(h)。念のため数個体から10枚ほどのヒダを切り出して先端を見た(i, j)。どこにも縁シスチジアらしきものはない。側シスチジアはない(k)。ヒダ実質は類並列型(k, l)。子実層には担子器の間をbrachycystidiaが埋めている(l)。 |
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カサ表皮は球形細胞が層をなして広がっている。カサの条線の部分にはくさび形にカサ表皮が入り込む(m, n)。ルーペでも見えたとおり、長い首をもったフラスコ型のカサシスチジアが多数みられる(o, p)。柄の表面にもカサ表皮と同じような姿の柄シスチジアが多数ある(q, r)。2年前に観察した子実体ではカサシスチジアがまったく見られなかった。保育社図鑑には、縁シスチジアがあるとされるが、今回の子実体にもそれは見られなかった。 それにしても、旧ヒトヨタケ属のヒダやカサの断面切り出しは面倒だ。若い菌を選ばないと切り出しは難しい。さらにせっかく薄く切れてもカバーグラスの重みで潰れてしまう。7〜8枚のヒダをカサと一緒に切り出せば、カバーグラスの重みが分散されて、比較的潰れにくい。いずれにせよ、実体鏡を使わないと切り出しは困難だ。 |
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武蔵野から所沢にかけての緑地では、一気にいろいろなきのこが発生し始めた。なかでも、ナラタケモドキ、ニガクリタケ、ニガクリタケモドキ、ザラエノハラタケ、ナカグロモリノカサ、シロオオハラタケ、ヨソオイツルタケ、コテングタケモドキ、ドウシンタケ、ヒカゲウラベニタケ、ヤマドリタケモドキ、ベニタケ類などが数多くみられる。
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小さなきのこやありふれたところでは、イヌセンボンタケやモリノカレバタケ、ハナオチバタケの群落もよくみられる。先月26日の頃とはずいぶん様子がかわってきた(雑記2010.9.26)。ちょっと歩くときのこにぶちあたる。昨日は、久しぶりに多くのきのこの胞子紋をとる処置をした。 いよいよ愛媛フォレーが近づいてきた。そろそろ荷物の準備をしなくてはならない。iPodとカメラはいつもどおりだが、顕微鏡は単眼の簡易型を持っていくことになりそうだ。
今月1日に取り上げたきのこは、アカヒダカラカサタケ Melanophyllum echinatum らしい。たまたま、竹しんじさんの「ドキッときのこ」→「きのこ探して (10月3日)」を見たところ、アカヒダカラカサタケの写真が載っていた。柄の長いスタイルはちょっと違うが、全体の印象がよく似ているので、日本きのこ図版(名部版)と保育社図鑑にあたってみた。幼菌の会編「きのこ図鑑」のアカヒダカラカサタケの写真(p.99)はまさにそっくりだ。どうやら間違いない。
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アカヒダカラカサタケの菌糸にはクランプがあるとされる。ところが、先に観察したものにはクランプが見あたらなかった。そこで、今朝はあらためて乾燥標本から数ヶ所の組織を取り出して、クランプを探した。たまた残してあった乾燥標本は既に真っ黒になっていた(g〜j)。KOHでバラして探したがクランプは見つからない。そこで、あらためてフロキシンで染めて観察し直した。非常に頻度は低いがクランプが見つかった(k, l)。 アカヒダカラカサタケという名のきのこがあることは今まで知らなかった。ふだん図鑑をほとんど見ないことの証でもある。竹しんじさん、ありがとうございました。 |
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ハナガサタケにKOHを滴下すると、カサ表皮でもヒダでも柄でも暗赤色に変色する。ミクロレベルでは赤褐色ではなく濃黄色に変わる。カサ表皮を水で封入(j)したあとKOHで置き換えると濃黄色に変わる(k)。濃縮された結果が暗赤色なのだろう。 先月19日に日光で採取したハナガサタケがまだ残っていたので、捨てる前にチラっと観察した。縦断すると黄色の肉があらわれた(a)。さすがに胞子紋は殆ど落ちなかった。わずかな胞子をみた(b)。ヒダはしっかりと横断面を切り出せた(c)。水を3%KOHで置き換えても縁シスチジアの様子はいまひとつよくわからない(e)。側シスチジアがあることはよく分かる(f)。 |
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ヒダの一部を押しつぶしてフロキシンで染めてみた。縁シスチジア(g)、側シスチジア(h)、担子器(i)はきれいな姿を捉えることができなかった。柄の表面は水で封入したが(l)、KOHを用いるとカサ表皮(k)と同じように透明黄色となる(雑記2005.8.26、同2009.8.29)。 | |||||||||||||
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先日サマツモドキを捨てる前に切り刻んで遊んだので、キサマツモドキでも同じようなことをやってみた。冷蔵庫に保管しておいたが、採取からすでに10日以上経過しているので、かなり痛み始めていた。さらに悪いことに、ヒダをルーペでみるとあちこちでウジ虫が動き回っている(d)。胞子紋はすでに全く落ちなかったので、胞子はヒダを押しつぶした副産物として見た(e)。
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水で封入したときも強い黄色味を感じたが、3%KOHで封入するとさらに黄色味が強くなった。ヒダの横断面をみると、子実層があちこち虫に食われている(f)。縁シスチジアは薄膜で大形のものが多数あるが、サマツモドキと比較するとやや小振りだ(g, i)。側シスチジアはサマツモドキのそれとよく似ている(j)。担子器が長いのも面白い(k)。カサ表皮の細胞は淡黄色を帯びている(l)。 | |||||||||||||
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多摩湖畔の緑地で9月25日に落枝が地面と接する部位に発生していきのこを観察した。地上から発生していたのか、地中の材からでていたのかは確認しなかった。 カサと柄とはしっかりついていて簡単には分離しない。ヒダは赤紫色で胞子紋も同色。カサ表皮をルーペでみるときらきら輝いている。ヒダは離生〜湾生。柄は丈夫で表面には白粉をまとっている。シスチジアはない。ヒダ実質は類並列型。特別な臭いなどは感じられない。 |
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胞子は水道水でもKOHでも色に変化はない。濃硫酸では淡色透明になる。表面はほぼ平滑に見えるが、合焦位置によっては微細な粒点があるようにも見える。何となく発芽孔があるように感じる。菌糸にクランプはなく、担子器基部にもクランプはない。カサ表皮が興味深い。20〜40μmほどの球形の細胞が重なって層をなしている。 ヒダをスライドグラスに寝かせて縁をみると、シスチジアはなく球形の細胞が随所にみられた。球形細胞の出自がどこなのか不思議だったが、カサ表皮をみて納得した。柄の表面の白粉もカサ表皮と同様の球形細胞の集まりだった。カサの横断面を切ってみると、やや平行気味に走る菌糸の上に球形の細胞群が5〜6層に重なっている。この部分だけを剥がしてみると、球形細胞の膜になっていた。カサ表皮をルーペでみるときらきら輝いてみえるのは、この組織ゆえのものだったようだ。何科のきのこなのだろうか。モエギタケ科あたりに落ちるのか?
[2010.10.4 補足] |
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