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日( )
2011年11月10日(木)
 
3年ぶりに覗いた
 
 3年ぶりにセンボンイチメガサのミクロの姿を覗いた(雑記2008.11.17同2007.4.24)。図鑑には胞子に「明瞭な」発芽孔があると書かれている。しかし対物40倍レンズで見る限り、発芽孔を捉えるのは難しい。油浸100倍レンズでようやく、それらしきものが見える(d〜f)。KOHで封入すると胞子の色がハチミツ色になる(e)。濃硫酸に30分ほど浸しても膨潤もせず破裂もしない(f)。
 側シスチジアはなく、縁シスチジアは小さい。ヒダの断面を切っても(h)、ヒダを寝かせて縁をみても(i)、縁シスチジアは透明で小さく、とてもわかりにくい。フロキシンで染めてKOHでバラすと形が明瞭になった(j)。担子器の基部のクランプもわかりにくい(k)。多量の胞子に邪魔されてカサ表皮の菌糸の様子はかなり不明瞭になってしまった(l)。菌糸にはクランプがある。
 黒バックの写真(b, c)は、意識して背景を黒色にしたわけではない。スキャナーの蓋をせずにそのままスキャンした結果こうなっただけだ。スキャンの一瞬はとてもまぶしい。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 このきのこはたいてい材上に束生するが、地中の材から出ていると、地上生に見える。一方よく似た毒きのこのコレラタケは、多くは地上生であまり束生しないが、時に束生することもある。新鮮な時は、両者ともとてもよく似ている。しかし、胞子を見れば違いは一目瞭然だ。

2011年11月9日(水)
 
川越市の雑木林で
 
 川越市の雑木林では、車が林に侵入するのを防ぐためか、コナラやシデの丸木を車道の縁に積み上げて境界にした場所が多い。薄暗い林を歩いていると、そんな境界の材に白い塊状のきのこがついていた。近づいてみるとヤマブシタケだった。近郊の雑木林でヤマブシタケに出会ったのは川崎市の緑地、多摩湖畔の緑地に続いてこれが3回目のことだ。図鑑などにはしばしば「深山幽谷」に出るなどと書かれているが、マイタケ同様に都市近郊でも案外みられる。
 きのこは少なくいかにも晩秋を感じさせる光景が広がっていた。足下を見ると、センボンイチメガサ(a, b)、ミネシメジに似たきのこ(c, d)、ナヨタケ属?のきのこ(e, f)、ベニタケ類、アセタケ類、ニガクリタケなどが見られた。例年ならしばしば見られるクリタケには出会わなかった。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)

2011年11月8日(火)
 
お粗末なプリンタ
 
 インクジェットプリンタ(HP Photosmart 2575a)が春頃から不調続きだったが(雑記2011.4.16)、見積もりでは修理に1万円以上かかるという。そこで、EPSONのPX-203という単機能のプリンタに買い換えた(a)。無線LANで接続でき価格は8,600円とお買い得に思えた。しかし届いた梱包を開けると、いかにも安物然としたペランペランなプラスチックの製品だった。開梱途中で固定用テープを剥がすと、用紙ケースのプラスチック中蓋がいとも簡単に割れてしまった。しかたないので、プラスチック下敷きを副え木として、上からガムテープで固定した(b)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
 無線LANで使えること、さらにカラー両面印刷ができること、この2点については不満はない。しかし、印刷時の騒音がひどく、標準モード以外は劣悪な画質。インクの減りが早く、交換インク一式(4色)が4,000千円以上と非常に高価で、ランニングコストはお世辞にも安いとはいえない。造作のお粗末さと相まって、これまでのプリンタのように5年超は持ちそうもない。
 同じように不調続きのモノクロレーザープリンタは、トータル40万枚を超えたが、だまし騙しもうしばらく使えそうなので、新たにリサイクル製品のトナー(4,700円)を注文した。ちなみに、説明書には「装置寿命:20万枚または5年間」とある。枚数も年限も超過している。

2011年11月7日(月)
 
コケとキノコの観察会
 
 昨日、東京理科大野田キャンパスで、初心者を対象とした「コケとキノコの観察会」が行われ、ボランティアとして参加した。午前中は教室で簡単なレクチャー、午後フィールドで観察。途中から雨がやや強くなってきたが、参加者は少しもめげることなくカサをさして樹幹や地面にへばりついていた。何事かと警備員が寄ってきた。第三者からは何とも異様な光景なのだろう。
 催しの案内はコケ関係のブログにのみ掲載されたこともあって、参加者の主たる関心はコケ。しかし、キノコや地衣類に関心を示す参加者もあり、少人数の催しとしては盛会だった。コケと違って、キノコは運まかせだが、ヒロハチチタケ、ミドリスギタケ、ワカフサタケ属、ベニタケ属、コオトメノカサ、アカヤマタケ属、サケバタケ、ムレオオイチョウタケなどが見られた。不思議とニガクリタケがなく、全般的に種類・発生数とも少なかった。
[修正] コオトメノカサという和名を間違えて、現地でヒメオトメノカサといってしまった。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)

2011年11月5日()
 
愚の骨頂 狂気の沙汰
 
 河底「ギリシア語入門」(a)の演習にはクセノフォンの「アナバシス (敵中横断6000km)」が頻出する。断片だけ読まされても面白くないので、LOEBシリーズを入手して読み始めた(b)。あわせて例文によく取り上げられているツキジデス「歴史 (ペロポンネソス戦史)」も入手したが(c)、最初の1ページに3〜4時間もかかった。これでは話にもならないので、しばし棚上げにした。ソフォクレスの「オイディプス王」のようなわけにはいかなかった(d)。
 その点、新約聖書は逐語訳の書籍が豊富にあり、価格も非常に安く、言葉の学習にはうってつけの読み物だ(e)。このところの円高も影響してか、900ページもあるのに2,000円以下だった。また、ケンブリッジ大学出版局のReading Greekシリーズ(全3冊)のText and Vocabularyは、文章が易から難へ配列され、歴史や文化につての解説もあって面白い(f)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 それにしてもずいぶん遠回りをしているものだ。菌学用語や概念をより正確に理解したいと思ってラテン語の勉強を始めたところ、ギリシア語由来の語彙の多さを痛感した。そこで、ギリシア語を勉強してみることになったが、これまた一筋縄ではいかない。ギリシア語学習にかけた経費で、菌類関係の専門書を佐野書店あたりから10数冊は購入できたろう(ん〜×10万円?)。
 ただ、ラテン語の語彙をみたときそれがギリシア語由来のものか否かはすぐに分かるようになった。でも、だからどうだといわれれば返す言葉はない。何の役にも立たない古典語などに金と時間をかけるのは愚の骨頂だ。まともな人ならこんなものに手を出しはしない。

2011年11月4日(金)
 
PDFと拡大の効用
 
 県立図書館から今年8月にはじめて河底尚吾著『ギリシア語入門』の貸出を受け、その後3回ほど借り出して、ようやく一通り読み終えた。他の貸出希望者と競合して、夏休み中の読了はできなかった(雑記2011.8.11)。各課の演習問題ができたら次の課に進むというやり方で読むので、どこに何が書かれているかはすぐに分かるようになった。しかし、動詞活用やら語彙は次から次へと忘れてしまい、悔しいが記憶には数パーセントしか残っていない。
 昨年12月以来複数の教科書を使って学習してきたが(同2011.5.13)、一度や二度の通読で基礎が習得できるほど生やさしくはない。今後は古川晴風著『ギリシア語四週間』をボロボロになるまで何度も読み直すことなりそうだ。ところがこの本は文字があまりにも小さくて、拡大鏡を使わないと気息記号やアクセント記号がわからない(b, d)。
 そこで、全ページをスキャンしてPDFファイルに落とし、ほぼ倍の大きさのA4用紙にプリントアウトして製本した(a, b)(同2011.7.31)。携帯性は悪くなったが、気息記号などがよくわかるようになった(c, e)。パソコン上でもAcrobat Readerで読めるようになった。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)

2011年11月3日()
 
同一種としてよさそうだ
 
 一昨日の雑記にメモしたケコガサタケ属についての補足(雑記2011.11.1)。(a)〜(f)はカサ中央が凹んだタイプ甲についての画像、(g)〜(l)はカサ中央が山形のタイプ乙についての画像だ。以下同じような構造についてはどちらか一方の画像を掲げた。
 両者のヒダ切片には側シスチジアが疎らに見られる(a, g)。そのまま倍率を上げてみたが、担子器の基部の様子はよくわからない(h)。ヒダをスライドグラスに寝かせて縁をみると縁シスチジアがある(b)。シスチジアは縁も側も同じような形とサイズであり、タイプ乙についても同様(c, j)。
 担子器の基部にはクランプがあるもの、ないものの両者があるようだが、明瞭には捉えられなかった(e)。菌糸にはクランプがある(d)。両者ともカサの上表皮は菌糸がほぼ並行に走る(f)。柄上部の表皮にはシスチジアがあるが(k)、下部にはそういった組織は見られない(l)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)

(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 甲乙両タイプともに、顕微鏡観察の結果からは、差異は見られない。両者ともに胞子には明瞭な胞子盤がみられる(i)。あらためて、標本をじっくり眺め回してみると、束生した一つの株から、カサ中央が凹んだ子実体と、丸山タイプの子実体の両者をつけたものがあった。甲乙に分けて持ちかえった標本だが、どうやら同一種としてよさそうだ。ヒメアジロガサモドキらしい。

2011年11月2日(水)
 
最近気になるヌメリガサ科
 
 先日(10/30)長岡市の公園の芝生上で採取したものである(a)。不快な臭いがあり、傷付けても赤変はしない。かさは丸山型、中心に凹みがあり、灰褐色〜黒褐色、肉は白色。放射状に繊維状鱗片があり、溝線があり、粘性はない。柄は中心性、中空、下方やや太まり、肌色、肉は白色。棒状のものや偏圧状のものがあり、軽い粘性がある。ひだは灰色、湾性、疎で小ひだがあり、横脈がある。胞子は平滑、非アミロイド(b)。
 観察するのに非常に苦労したが、縁シスチジアがあると思える(c)。子実層托実質は並列型(d)。クランプはいたるところにあり、担子器のベーサルクランプも確認できた(e)。かさ上表皮は並行菌糸被(f)。本郷図鑑ではオオヒメノカサ Hygrocybe obinaにたどりついたが、スイスの図鑑をみると縁シスチジアはないと記載されていた。???????  (Y. A.)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 
 同じ公園内の芝生で採取したものである(g)。かさは丸山型、中心が平らで粘性があり、溝線がある。橙色の地に部分的に緑色がみられ、肉は橙色。柄は上下同大、中心性、中空。色はかさと同色で上部が緑色がかったものもあり、粘性がある。ひだは疎、上生、小ひだがあり、横脈もある。かさと同色で部分的に緑色がみられる。胞子紋は白色、胞子は平滑、油球あり、非アミロイドであった(h)。シスチジアはない。子実層托実質は類並列型(i)。担子器は4胞子性である(j)。かさ上表皮は切片作成時に菌糸がカミソリにひかれてしまうが平行菌糸被のようだ(k)。クランプの有無は確認できなかった。子実体は放置しておくと緑色が退色して橙色になる。以上のことからワカクサタケ H. psittacina ではないかと思う。 (Y. A.)
 
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
 
[ちょっとしたコメント] (I. A.)
 観察覚書からの抜粋らしいけれど、何かちょっとした違和感。せっかくよく観察しているのに、表現が尻切れトンボで肝心なところが省略されているような気がするなぁ。少数の視点だけに絞って日常語で書いてきた従来の「今日の雑記」とはひと味ちがうね。でも、まぁ、記録のまとめ方や表現方法など、今後の成長を楽しみにして、温かい目でみていかなくちゃね。
 ただ、顕微鏡写真では、注文が三つ。一つは、目的にかなった画像、二つ目はホワイトバランスに注意。今一つはピントのあった写真を撮ることかなぁ。

2011年11月1日(火)
 
御神木周辺のケコガサタケ属
 
 10月30日、長岡市の神社で御神木のスギの周囲に、小さなきのこの群れが複数個所に出ていた。いずれも地中のスギ枝などの材から発生していた。よく見ると二通りの群れがある。
 一方は暗褐色で、カサの中央部が凹み、湿っていてもカサの条線は弱く、柄にはツバの痕跡がわずかに見られる。3〜5本くらいずつ束生している(a)。
 もう一方は、やや明るい暗褐色で、カサ中央部に凹みはなく、中には中央部が軽く突出するものもある。カサの条線は明瞭で、柄にはツバの残ったものが多い(b)。
 両者ともカサ表面に滑りはなく、乾燥するとカサの条線は不明瞭になった。この日の午後は長岡市の公民館にいたので、標本を撮影し(b, c, d; b', d', e')、手持ちの単眼顕微鏡で胞子を確認した(e, e')、ヒダの切片もよく似ている(f, f')。現地ではここで時間切れ。両者とも側シスチジアのあることは確認できたが、両者が同一かどうかの確認は帰宅後の課題となった。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(a')
(a')
(b')
(b')
(c')
(c')
(d')
(d')
(e')
(e')
(f')
(f')
 神社で見たとき、ひょっとするとコレラタケかもしれないと思った。しかし公民館でヒダ切片を見たとき、側シスチジアがあることが分かったので、コレラタケの線は消えた。しかし近縁のケコガサタケ属のきのこにはかわりなさそうだ。

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