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梅雨が近くなったせいか、いわき市界隈でも急に色々なきのこが顔を出し始めた。海辺の防風林ではナヨタケ属、ベニタケ属やテングタケ属(a)くらいしかみないが、コナラ林では大型で青変性のあるイグチ類が見られるようになってきた(b; c, d; e, f)。キリンタケ近縁種(g, h)や胞子にこぶのあるアセタケ属(i)やフウセンタケ属のきのこも見られる(j, k)。広野町の松林では道ばたにアミタケも出てきた(i)。ウスタケもまだまだよく出ている。
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パンを買うために行列に並ぶのは止めた。2月には開店時刻に店頭に並ぶ人は4〜5名ほどで、12:00ならまだ食パンやフランスパンは楽に買えた。それが、5月頃から様子が一変した。食パンやフランスパンの予約もできなくなった。行列はエスカレートし開店40分前から人が並ぶようになった。昨年の原発事故以前はこれほどまでの行列騒ぎはなかったという。 | |||||||||||||
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昨日ヒメベニヒダタケ(Pluteus nanus)としたきのこについて、Pluteus(ウラベニガサ属)に造詣の深いHさんから適切な指摘と意見をいただいた。 それによれば、P. nanusではなく、Sec.hispidoderma(ベニヒダタケ節)に属する広義の P. plautus ではないか、さらに絞りこむならコゲチャベニヒダタケ(P. phaeocephalus)に極めて近いものではないかという。論拠として以下の五点が指摘されていた。
そこで再検討してみると、確かにこれをヒメベニヒダタケとするのは過っている。あらたに、カサ表面とその表皮組織(b, d, e)、柄シスチジア(f, g, h)、側シスチジア(i〜l)などの検鏡写真を追加した。(b)は(a)の、(d, e)は(c)のかさ表皮。P. plautus ないしその近縁種と思われる。 |
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柄のシスチジア(g, h)はあらためて乾燥標本から撮影した。柄のシスチジアは、透明で縁シスチジアに似た形のものだとばかり思い込んでいたが、色素を帯びたものがかなりあることもわかった(g, h)。また、側シスチジアには確かに便腹〜フラスコ形で色々な姿形をしたものがある。 Hさん、適切なご指摘ありがとうございます。 |
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古いシイタケほだ木からはいろいろなハラタケ型のきのこが出てきた。特に目立って多いのがPluteus(ウラベニガサ属)の仲間だ。ウラベニガサが圧倒的に多いが、他にも5〜6種あるようだ。カサ表皮がややビロード状に見える小さなきのこを持ち帰ってきた(a〜c)。 ヒダをルーペで見ると縁シスチジアがキラキラひかっている(d)。カサを縦切りにしてルーペで見ると尖った組織が一面に立ち並んでいる(e)。ここまでは現地で観察できる。 帰宅してヒダを切り出したが、簡単に潰れてしまって鮮明なプレパラートは作れなかった。それでも、縁シスチジア(g)、側シスチジアとヒダ実質(h)の様子はわかる。カサ表皮のプレパラートからは柵状に並ぶ様子も見て取れる(i)。柄の表面にもシスチジアがある(j)。 |
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今日は胞子を除いて、対物20倍レンズで見られる画像を並べた(g〜j)。中学校の理科室などにある学習用顕微鏡ではこのあたりが見える限界だ。カサ表皮、ヒダのシスチジア、柄のシスチジアなどを考慮するとヒメベニヒダタケのようだ。 |
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昨日も結局クロワッサンを買うことはできなかった。店に到着したのは開店23分前だったが、既に3人が並んでいた。開店時刻には行列は10数名になっていた。先頭の二人でクロワッサンは売り切れ。この間にも行列はさらに長くなっていた。最後尾の人は何も買えないだろうなぁ。
先月末に採取したウスタケのメモ。ヒダに硫酸鉄を滴下すると青変する(a)。胞子表面は微疣に被われている。ドライ(b)でも水封(c)でもよくわかる。わざわざ染める必要などないがフロキシン(e)でも同様だ。コットンブルーで染めても、微疣が特にはっきりするわけではない(d)。 |
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昨年3月11日の地震で壊れた土蔵、納屋、二階建て部分などの解体が来週から始まることになった。一昨日は母屋と二階建て部分の切り離し準備の工事で賑やかだった。 | |||||||||||
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昨日少し遅く着いたら商品棚はすでに空っぽだった。店は開いているのに、店主の口からでた言葉は「売り切れです」。空しくそのままご帰還となった。今日はこれから再挑戦。
毎週1〜2回パンを買うため23kmほど離れた小名浜まで行くようになった。往復でざっと90分ほどの行程だ。店は普通の住宅街の一角にあり看板はなく、幅の狭いテントとブラインドに書かれたBREAD GARDENの文字だけがパン屋であると主張している。
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はじめてこのパン屋に行ったのは2月の寒い日。店の外まで10数人が震えて並んでいた。行列に並んでまで物を買うなどという経験は過去になかった。この日はなぜか列の後尾についた。パンを手にするまでに30分かかった。食パンとクロワッサンの味が絶品だった。是非とも再びあのクロワッサンを食いたいと思った。こういう想いは長いことなかった。 次に昼近くに行ったときパンの姿はほとんどなかった。常連客の話では、開店時刻のam11:00には店の前に長い行列ができる。せっかく並んでも自分の直前ですべてのパンが売り切れになることなど日常茶飯事。好みのパンを買えるのは先頭近くの人だけだという。 行列に並んでまで物を買うのは昔から大嫌いだった。唯一の例外が東京四谷の鯛焼き専門店「わかば」だった。ただ「わかば」では列に並びさえしたら確実に鯛焼きを買うことができる。しかし、ここBREAD GARDENでは並んだからといってパンが入手できるとはかぎらない。そこで4月から開店20〜15分前には文庫本を手に店頭に並ぶことになった。 |
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一昨日に引き続き、微細で扱いの難しいきのこを楽しむ、いや苦しみを味わうことになった。ブナの殻斗から出る白い小さな子嚢菌を覗いてしまった(a)。保育者の図鑑にはシロヒナノチャワンタケとして掲載されている。胞子紋はよく落ちた。胞子は非アミロイド(d)。 このきのこ、小さな上にすぐに乾燥して丸まってしまう。子嚢盤の辺縁と托外皮、柄の表面には白色の毛が生えている(b, c)。子嚢盤の切り出しは予測どおりなかなか上手くいかない(e)。子実層托は錯綜型で、托外皮は矩形菌糸組織からなるが、その外側の随所から、高い頻度で球形細胞が数珠状に連なりそこから毛が伸びる(f, g)。毛の表面は微細な棘あるいは疣に被われている(j)。子嚢には頂部に孔がありメルツァー液で青く染まる(h)。側糸がとても分かり難いのでフロキシンで染めてみると、尖った槍の様な姿を見いだすことができた(i)。 |
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渾名分類というか独善的分類で、こういった微細な盤菌類をホソヤ茸とかホソヤ菌と呼んでいるが、共通項はプレパラート作りの難しさだ。実体鏡下で切ろうとすると押さえが利かない。ピスに挟もうとするとすぐに行方不明となり、やっと上手く挟めたと思えばペシャンコになってしまう。小さいくせにたいていは托実質や托外皮の構造に特徴がある。 | |||||||||||
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菌懇会通信No.179が届いた。2月刊のNo.178に引き続いて掲載の種山裕一氏による「ミクロトームの有効活用 よりよい切片をつくるために」が興味深い。実体顕微鏡を持っていて、鮮明で美しいプレパラートを作成したり美しい画像を撮影したいならば、是非とも熟読して氏の提案を実践されることをお勧めしたい。以下の画像(a〜k)はそこでも紹介されている市販の簡易ハンドミクロトーム(卓上ではない!)、画像(l)はその構造の主要部分の模式図だ。 No.178では、ボルトナット製やPV製の簡易型ミクロトーム(b 左2つ)と市販のハンドミクロトーム(a, b 右)とを比較し、それぞれの問題点をあげつらい、最終的に市販の卓上型ハンドミクロトーム(株式会社 テックジャム、ケニス株式会社、etc.)を選んだ理由、そしてそれら市販品をいかに改良すれば問題点を克服できるかについて実例に則して詳細に述べている。No.179では、そうやって改良したミクロトームを有効活用するための数々の工夫とテクニックについてわかりやすく述べている。よいと思われることはどんどん公開する、その姿勢がとても好ましい。 |
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ボルトナット製やPV製の簡易ミクロトームの最大の致命的欠陥は、種山氏も指摘しているように、押さえたピスを直接ピストンで押し出していることだ。ピスはかなりの弾性があるので、一定の精度で押し出すことができない。 地震じゃないが、プレート同士のもぐり込みのような現象がおこり、ピスにひずみが溜まる。ノブを回しているのにまったくせり出して来ないで、突然ピスが予期した以上にせり出してきたりする。それが主因で20μm以下の厚みの切片を次々と切り出すのは難しい。
多くのアマチュアは実体顕微鏡を持っていない。よしんば持っていても実体顕微鏡を使って切片をつくるのは思いの外難しい(雑記2008.8.7)。ボルトナット式、池田式、PV製などの簡易ミクロトームの最大の「売り」は、実体顕微鏡を使わなくともピスを使って比較的楽に切片が作れることにある。対照的にカミソリとピスだけで切片を切り出すのはやはり職人芸だ。 PV製と市販品の長所を併用したシリンダー押し上げ方式による簡易ミクロトームは可能だが、問題はコストと特許。両者をクリアしたミクロトームを誰か造ってくれないものだろうか。 |
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駐車場脇のコツボゴケの間から小さなGalerina(ケコガサタケ属)がいくつも出ていた。いくつかのカサに小さな昆虫がしがみついていた(a)。フユノコガサやヒメコガサかもしれないと思い、5〜6本を採取した。帰宅するとやや乾燥して、カサは縁が丸まり全体にクシャとなっていた。 何とかヒダを一枚取り外し、スライドグラスに寝かせて縁を見た。縁シスチジアがあるようだがとても見にくい(c, d)。そこでカバーグラスの脇からフロキシンを流し込み、次いでKOHを流し込んで、カバーグラスの反対側のへりから濾紙で余分の液を吸い取った。すると縁シスチジアの形が鮮明になった(e, f)。 次いで、ヒダの縁をカミソリで取り除いてから、ヒダをスライドグラスに載せ、フロキシンで染めKOHで封入し、寝かせたヒダを軽く押しつぶした。すると、縁シスチジアと同じような姿形のシスチジアが多数見えた。これは側シスチジアのはずだ(雑記2011.6.5)。 |
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これで止めておけばよいものを、きれいなヒダ切片を撮影しようなどと余計な色気を出したのがいけなかった。きのこは既にかなり形が崩れてきている。ヒダをピスに挟むと、そのとたんに潰れてピスにへばり付いてしまい、切り出しどころではない。そこで実体鏡の下で切り出したが、何度やってもきれいなヒダは切り出せない(g, h)。10数片切ってみたがついに諦めた。 再度ボルトナット製の簡易ミクロトームを使ってみることにした。実体鏡の下で、ピンセットとカミソリを使ってヒダを取り外した。とても小さくて扱いが大変だ。そこで、ピスへの挟み込みも実体鏡の下で慎重に行った。何とか潰さずにピスに挟み込むことができた。 片刃カミソリで切り出した。カバーグラスに載せる時にしくじって捻れたり(i, j)、切片が厚すぎて寝てしまう(k, l)。しかし先端には縁シスチジアが明瞭に捕らえられている(j, l)。でもこれじゃあ、まともな画像にはほど遠い。今一度切り出してみるか・・・ こんなことを繰り返している間に、ピスに挟み込まれた切片は、ピスに水分が吸い取られてペシャンコになってさらに切り出し困難となった。そこで新たに、再びきのこからヒダを取り外してピスにセットした。慣れも手伝って薄く切れるようになったが、スライドグラスに移すときに先端がすぐに捻れてしまう(m)。いい加減面倒くさくなり嫌になってきた。 5〜6回目、やっとのことで薄く切れ、捻れたり潰すことなくカバーグラスをかぶせることに成功した(n)。しかし、先端部にシスチジアがない(o)。縁シスチジアが疎らな部分を切り出したようだ。しかし、側シスチジアは明瞭にわかる(p)。ヒダの側には胞子をつけた担子器が無数に見える。ちょっと見たところ、二胞子性か四胞子性か分かり難い。顕微鏡の微動ノブを上下しながら合焦位置をずらすと、ほとんどの担子器が四胞子性だとわかった(q)。 最後にかさ表皮の構造をチェックするために、これまた簡易ミクロトームにカサの一部を挟み込んで切り出した。上表皮は匍匐気味に平行に菌糸が走る。菌糸の表面には色素顆粒がついている(r)。柄の表皮も確認したが、どうやらフユノコガサやヒメコガサではなくケコガサタケのようだ。余計な色気をだしたせいで、時間がかかってしまった。 同定のためだけだったらこんな面倒な作業はいっさい不要だ。まず胞子を見て、ヒダを押しつぶしてシスチジア有無と形を見ればよい。必要ならかさ表皮を摘んで確認する。 |
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5月31〜6月1日、福島市の土湯峠温泉郷にある幕川温泉、鷲倉温泉でのんびりすごしてきた。磐梯吾妻スカイラインは今年度も無料で、吾妻小富士をはじめ雄大な景観を楽しむことができた(d)。遊歩道はまだ残雪に被われ(e)、ようやく水芭蕉が花をつはじめた(f)。 土湯峠に向かう道筋、高柴山では杉の球果からMycena(クヌギタケ属)がよく出ていた(a, b)。放射線ホットスポットの川俣町山木屋地区ではいたるところで「除染」作業が行われていたが(c)、田畑は荒れ、周辺の民家に人気はなく、手持ちの線量計は非常に高い値を示していた。 |
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幕川温泉の周辺にはサワグルミの大群落が広がっているが(g)、遊歩道の橋は壊れたままだった。いくつかのスキー場の斜面を探索してみたが、目的のきのこには出会えなかった。昨日出会ったきのこは、ブナノヒナノシロチャワンタケ(h)、ヌメリツバタケモドキ(i)、マスタケ(j)、スギタケ(k, l)など少数だった。 | |||||||||||||
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いわき市の新舞子浜公園ではマツ林に小さなきのこが何種も見られるようになった。その中にひときわ目立つやや大きめのきのこがあった(a〜c)。カサ表面にはマツの花粉が多量に付着している(d)。柄には微毛が密生し下部は菌糸に被われる(e)。 胞子は非アミロイド(g)。ヒダの断面を切り出したところ、側面にシスチジアのような組織がみえた(h, i)。念のためにバラしてフロキシンで染めると確かにシスチジアがある(j)。カサ表皮は水で封入してもよくわからないが(k)、KOHで置き換えると上表皮の菌糸には色素が螺旋状に取り巻いている(l)。油浸100倍レンズでみるとさらにはっきりする。おそらくアマタケなのだろう。 |
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最初に見たときには(a), (b), (c)のいずれもCollybiaだろうとは思ったが、これらが同一種なのか別種なのか、同一種だとすれば何なのか、さっぱりわからなかった。 最初に見たのは若い子実体(a)で、これはヒダがさほど密ではない。(a), (b), (c)はそれぞれ別袋で持ち帰り、それぞれに胞子、ヒダ、シスチジア、かさ表皮、柄表皮を観察した。その結果、これらは同一種で、それぞれ成長段階が異なるだけであると判断した。 |
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