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先日ツチカブリとして掲載したきのこ(a〜c)は、どうやらアオゾメツチカブリとするのが適切のようだ(雑記2012.8.8)。現地で薄暗い中、乳液が白色からじわりと灰白緑色に変わったようにも見えたが、はっきりしなかった(b→c)。そこで「広義の」ツチカブリとして扱っておいた。 今朝あらためて冷蔵庫から出して縦断してみると、ヒダはとても密で(k)幅が狭い(d)。そのまま30分ほど放置すると乳液が灰白緑色に変わっていた(e, f)。硫酸鉄、グアヤク、フェノールによる呈色反応は、20分ほど経過してようやく鮮明になった(g〜j)。 ヒダの縁を見ると多数のシスチジアがあるので(m)、ヒダを切り出してみると縁に側にも同じようなサイズと形のシスチジアが多数ある(n〜q)。カサ表皮(r)はフロキシンで染めると明瞭になった(s, u)。傘シスチジアもヒダのシスチジアと似たような姿をしている(t)。柄の表皮もフロキシンで染めるとわかりやすくなった。柄にもシスチジアがある(v, w, x)。 |
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今日はなぜか久しぶりに多量の画像を掲げることになった。このところの激しい湿気で、顕微鏡の対物レンズにもカビが発生していた。とりあえずアルコール洗浄したが、以前よりかなり見えが悪くなった。今後のことを考えると由々しき問題なので、試し撮りのつもりで、今朝は多数の検鏡写真を撮ることになった。対物レンズの調達は当分難しそうだ。 | |||||||||||||||||||||||||
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磐梯吾妻スカイラインの起点近くの土湯峠付近の湿地でミズゴケからGalerina(ケコガサタケ属)のきのこが出ていた(a〜d)。胞子には微疣があり胞子盤も見られる(e)。ヒダの断面を切り出すと(f)、側シスチジアはなく縁シスチジアがある(f, g)。縁シスチジアはまるでボーリングのピンを思わせる(g, h)。菌糸にはクランプが見られ、担子器にもベーサルクランプがある(i)。カサ表皮は細い菌糸が匍匐している(j)。これらからミズゴケタケとしてよさそうだ。
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これまで見てきたミズゴケタケやミズゴケタケモドキ、ミズゴケノハナ、キミズゴケノハナは、いずれもすべてミズゴケ節(Sect. Sphagnum)のコケからでていた。一見他の節のコケからでているように見えても、脆くて長い柄の先をたどるとその先は必ずミズゴケ節のコケにたどり着いた(雑記2009.10.9、同2009.7.9)。そこで、つい最近まで、きのこが発生するミズゴケはミズゴケ節のコケに限るのではないかと思っていた。 ミズゴケ節のコケは一般に葉がボテッとしていて、他の節のコケとは肉眼的に簡単に区別できる。顕微鏡で見ると茎や枝の表皮細胞にはこの節特有の螺旋状肥厚がある(一例:オオミズゴケ)。ところが、このきのこの周辺にミズゴケ節のコケはない。そこで変だなぁと思って、きのこの柄の先をていねいにたどった。ところがやはり、ミズゴケ節のコケではなかった。調べてみると、ハリミズゴケ節(Sect. Cuspidata)のアオモリミズゴケ(Sphagnum recurvum)だった(k〜r)。 |
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どこに行ってもカラカラに乾燥した天候のためか、きのこの姿が全く見られない。そこで、湿度の高そうな那須北部で分水嶺西側に位置する下郷村の山に行ってみた。ブナやマツ、ヤマザクラやカンバの混じったミズナラ林には多種多量のきのこが出ていた。 特に多かったのがチチタケ。道路脇には栃木県ナンバーの車が数台停車し、何人もの人が目の色を変えて「チダケ」を探していた。放射能怖さは消えたのだろうか。きのこ狩りのつもりは全くなかったのだが、結果として数十本のチダケを持ち帰ってきた。 |
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かなりの頻度で発生していたのは、タマゴタケ(a)、ツルタケ(b)、カバイロツルタケ(c)、シロオニタケ?の幼菌(d)、アメリカウラベニイロガワリ(e, f)、ツチカブリ(g, h)、ケシロハツ(i, j)、ケシロハツモドキ(k, l)。ベニタケ類は数種類が見られたが撮影や採取はしなかった。 観音沼の周辺ではほとんどきのこの姿は見られなかった。また、土湯峠の周辺でもきのこはとても少なく、湿地が原野になっていたが、ミズゴケの中から数種類のきのこが出ていた。会津地方や福島市の周辺は猛烈に暑かったが、いわき市に戻ると涼しかった。 |
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このところずっと雨は降らず湿度ばかりがやけに高い。日中猛暑となっても朝夕は涼しくなるので助かるが、部屋の湿気がひどく、このところカビに悩まされ続けている。当初は、カビも菌類などと悠長に顕微鏡で覗いて楽しんでいたが、尻に火がついた。 きのこ採集袋を取り出すと、底の部分にカビ。押し入れのスライドプロジェクターのケース表面をみるとここにもカビ。心配になって押し入れの実体鏡を引っ張り出したところ、接眼レンズ表面やプラスチック部分にカビ。カメラを格納している棚の戸を開いてみると、望遠レンズ表面にうっすらとカビが・・・。交換レンズを入れたケース表面にもカビ。 慌ててカメラの交換レンズや顕微鏡、実体鏡などレンズ表面のカビを消毒用アルコールで拭き取るが、時既に遅く何本かのレンズがダメになっていた。ネット上から防湿ケースを注文し、あちこちをアルコールで拭き、除湿剤を随所に配置した。 カビに対する場当たり的処理と併行して、昨日は終日庭の手入れ。といってもスギの枝打ちの後始末と草刈り、などなどで猛暑の中の作業に明け暮れた。 |
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先日Micromphale(サカズキホウライタケ属)のきのこを取り上げたとき(雑記2012.7.23)、過去のデータにオオホウライタケのカサ表皮があったはずだと思い探したが見あたらなかった。かつてハードディスクのクラッシュなどで大量にデータを失ったが、その折にオオホウライタケの検鏡データもすべて失ってしまったらしい(同2011.11.27、同2004.8.2)。 7月21日に家の近くの石森山で採取したオオホウライタケは子実体の状態はあまり良いとはいえず(a)、カサ表皮は上手く捉えられなかった(b, c)。そこで、24日に再びいわき市の鬼ヶ城から比較的新鮮なオオホウライタケを持ち帰っていた(d, e)。その乾燥標本を引っ張り出した。 |
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胞子やヒダ切片は全く無視して、専らカサ表皮ばかりをみた(f〜i)。しかし、このきのこのカサ表皮を鮮明に捉えた検鏡画像を得ることは思いの外難しく、今回も納得できるプレパラートを作ることはできなかった。画像(j〜l)はついでに撮影した柄表皮の部分だ。 | |||||||||||||
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昨日仲間6人で川内村やいわき市北西部など四ヵ所ほどを歩いてみた。例年今頃だときのこが豊富に見られる地域を選んだのだが、どこもほとんどきのこの姿はなかった。ごくわずかにベニタケ類、チチタケ類などがいくつか見られたに過ぎなかった。夜は久しぶりに零時過ぎまで宴会になった。一雨来ないとどうにもならないようだ。 | ||
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いわき市の自宅から30km圏にはきのこがほとんど見られないので、昨日早朝に50km圏まで足を伸ばしてみた。福島県と茨城県の境界付近のブナやシデが混じるミズナラ林を歩いてみたが、やはりきのこの姿はきわめて少なかった。ガンタケ(a)、ヒメコナカブリツルタケ(b, c)、束生するタマゴタケ(d)、ツエタケ(e)、カワリハツ(f)など4〜5種のベニタケ類、アワタケに似たイグチ(g, h)、ニガイグチモドキ、ウラグロニガイグチ、5〜6種のアセタケ類などが見られた。 ミズナラの倒木からコカンバタケが出ていた(i〜l)。屋外でコカンバタケに出会ったのは初めてだった。若い菌なのか、まだとても柔らかく胞子紋は全く落ちなかった。 |
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このところパソコンの前に座って作業をしていると、しばしばキイロスズメバチが近寄ってくるようになった。最初は目の前や顔のすぐ脇でホバリングを繰り返していただけなのだが、最近はカチカチと音を立てて威嚇をするありさまだ。周辺を見る限り巣のようなものはない。食堂や勝手口周辺を飛び回ることも増えた。天井裏に巣でもあるのかもしれない。 昨日埼玉県から一人、今朝三重県から三人、友人がやってきた。今日はこれから川内村へ。 |
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先日暑い日に朱色のベニタケを採取した(a, b)。呈色反応と胞子確認だけは帰宅後直ちに行った(c, d, e)。湿時ややヌメリがあり、柄には弱い縦シワが走り全体が白色だった。そのまま2週間ほど冷蔵庫に放置しておいたところ、異臭を放ちぼろぼろになって、ヒダのいたるところでウジ虫が蠢いていた。あまりに虫が多いので処分することにした。棄てる前に少々観察した。 予想通りヒダ断面の切り出しは難儀した(f)。ヒダ切片からは、縁シスチジアを確認することができなかった(g)。ヒダの縁をスライドグラスに載せ、縁をみて押し潰すと、シスチジアのあることがわかった(h)。側シスチジアは疎らにある(i, j)。カサ表皮は比較的剥がれやすい(d)。カサ表皮は菌糸が絡み合い(k, l)、KOHで封入すると次第に色が消えていった。 |
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保育社図鑑やスイスの菌類図鑑などに従うとシュイロハツに限りなく近い。ベニタケ類は形態的特徴や検鏡結果と呈色反応だけで種名を特定するのは困難だ。分枝系統解析が重要な武器となる典型的な属だと思う。それもあって、ごく一部の特定の仲間を除いて、ベニタケ類に出会っても見なかったことにしてきた。たぶん今後もこの姿勢は変わりそうもない。 | |||||||||||||
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中通りや会津地方では、あちこちでチギレハツタケが頻繁に見られる(a, b, c)。Russula(ベニタケ属)は種の同定にあたり、これといった決め手に欠けるのでなるべく手を出さないようにしてきた。先日の下郷村でも大量発生していたので少し持ち帰った。 おきまりの呈色反応は現地で試みた(d)。持ち帰ったものはカサ部を1cm角ほど切り出しカバーグラスに載せて胞子紋をとり、それ以外は直ちに乾燥した。胞子はメルツァー試薬で封入し(e)、ヒダ断面は乾燥標本から切り出しメルツァーで封入した(f)。 シスチジアは縁も側も同じような姿形でサイズにはかなり幅がある(g〜j)。カサ表皮を水で封入してもよくわからないので、KOHで再度確認したが、コントラストが弱いためかなり目が疲れる。そこでフロキシンで染めて確認した(k, l)。 |
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いわき市は、福島県の中では夏涼しく冬暖かいという過ごしやすい気候の土地だが、ここしばらくは猛暑が続いている。ただ、朝夕は涼しくなるのが川口市とは違う。最近ずっと降雨がないせいか、自宅から半径30km圏ではほとんどきのこの姿が見られない。 | |||||||||||||
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先月末ネッタイベニヒガサを福島県内の2ヵ所で採取した。ひとつは磐梯吾妻スカイライン起点近くの土湯峠(alt 1200m)、いまひとつは昭和村矢ノ原湿原(alt 700m)で採取している。 土湯峠の子実体はサイズこそ大きかったが十分成熟しておらず(a, b)、矢ノ原湿原の子実体は十分成熟していたが乾燥のためか(a')、両者とも胞子紋がほとんど落ちなかった。ただ、ヒダの一部を押しつぶして見ると、大小の胞子と、大小の担子器がまるでコンタミのように、視野の中に広がっていた。どうやら両者ともにネッタイベニヒガサとしてよさそうだった。 両者ともヒダを薄く切るとボロボロに崩れてしまうので、やや厚めの切片を作ってみた(c, b')。シスチジアはないが、(b')を見るとまるで縁シスチジアがあるかのように見える。この正体は、大小の胞子がヒダ先端付近に無数に集まったものだった(c')。 |
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大小の担子器を一枚の画像の中に捉えたいと思った。薄片の子実層をいくら見ても、両者を上手く撮影できる場所は見つからない(d')。そうなりゃ、ヒダを押し潰してバラバラにした状態で、大小の担子器が同一視野に入るシーンを見つけるしかない。ところがそれらのサイズがあまりに違うものだから、焦点深度の関係で両者にピントを合わせることは難しい。 ピントに関しては対物20倍レンズあたりまでが限界だが、そうすると今度は担子器なのか子実層実質を構成する菌糸の一部なのかわからない。対物40倍レンズで試みたり、いろいろやったが上手くいなかい。そこで、諦めて対物100倍油浸レンズで甘いピントで妥協した(d, e, f; e', f')。あらためて人間の目の補正能力の優秀さを感じた。 |
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