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日( )
2013年8月20日(火)
 
早くもセンボンキツネノサカズキの幼菌が
 
 庭に転がしたミズナラ腐朽材に小さな白色の塊がついていることに先週気づいた(a, b)。この材は昨年11月にもち帰ったもので、樹皮の裏側にセンボンキツネノサカズキらしき菌糸がついていた。そのことをすっかり忘れていて、材を被っていた草叢を刈払機で刈ってしまった。この白い塊をルーペでみるとセンボンキツネノサカズキの幼菌だった(c)。
 昨日は別の材の下側にも白い塊が見えた(d)。これはさらに成長が進んでいた(e)。材を裏返してみると、少し大きなピンク色の幼菌が育っていた(f)。草叢を刈ってしまった事を悔やんだが後の祭り。しょうがないので、乾燥を防ぐために刈り取った草の葉などを被せた。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 今現在も富士山の「きのこ入山鑑札 (1シーズン:2000円 期間:8/10〜11/30)」が中止となっている。昨年富士吉田地番で食品衛生法で定められた基準値(100Bq/Kg)を超えるセシウム137が検出され、県から採取・出荷・摂取を自粛するよう要請が出されたことによる措置らしい。

2013年8月19日(月)
 
オクヤマニガイグチで遊ぶ
 
 先日採取したオクヤマニガイグチを覗いて遊んだ。肉眼的にはコビチャニガイグチと酷似している。コビチャニガイグチはカサ肉や柄を傷つけるとゆるやかに赤変(ないし褐変)するとされ、オクヤマニガイグチは白色のまま変色しないとされる。・・・でも、はたして?
 採取した子実体の胞子は大きさのばらつきが大きかった。管孔部実質は典型的なヤマドリタケ亜型だが、若い菌ではキヒダタケ亜型に見えるほど菌糸が並列に密集している。管孔部の切断面をよく見れば縁シスチジアや側シスチジアの有無と形は分かるが、低倍率では縁シスチジアの形は分かりにくい。カサ表皮の組織はKOHで封入すると明瞭に捉えられる。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(a, b) 子実体、(c) 子実体縦断面、(d) 孔口、(e) 管孔断面、(f) カサ肉断面、(g, h) 胞子、(i) 管孔部縦断面、(j) 管孔部実質:ヤマドリタケ亜型、(k) 孔口部先端、(l) 縁シスチジア、(m) 管孔部側面、(n) 管孔部横断面、(o) 側シスチジア、(p, q) カサ表皮:水封、(r) カサ表皮:KOHで封入

2013年8月18日()
 
きのこ探しは朝のうちに
 
 連日の猛暑のため、日中太陽の下で動いていると熱射病気味となって辛い思いをする。そこで昨日も、早朝明るくなる頃に出発し、楢葉町の高線量地帯で立木の基部から出るキクバナイグチ(a〜c)とニガイグチモドキだけを採取して、朝食前に帰宅した(往復70Km)。
 朝食後に近くの石森山に行ったが、暑さのため短時間で逃げ帰った。コビチャニガイグチが大量発生していた(d〜f)。いびつな形のキニガイグチ(g, h)、きな粉をまぶしたようなカサをもつフウセンタケ属(i, j)、シロツルタケ(k)、ケロウジの仲間(l)など多くのきのこが見られた。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
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(e)
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(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 猛暑と雨不足のためか、このところ自宅の馬糞堆とアンモニア過剰地からはきのこがまるで出ていない。先月までの早朝のきのこ乱立がまるで嘘のようだ。

2013年8月17日()
 
ウツロイイグチ:カサ表皮に特徴
 
 Xanthoconium(ウツロイイグチ属)は小さな属で国内で和名のついた種の数も少ない。基準種の X. affine (ウツロイイグチ)は特にこれといった大きな特徴もなく、あまり目立たないが、いくつか興味深い点がある。以下は数日前持ち帰った標本からのメモだ。
 まず幼菌(a)と成菌(b)とではカサと柄の色合いがかなり異なる(雑記2013.8.11)。また幼菌の柄は中実で堅く、管孔も非常に小さいが、成菌になると柄は中空気味になり、管孔も大きくなる。しかし、柄の表面に縦に走る条線様の模様は成菌でも幼菌でも変わらない。
 カサ表皮にアンモニアを滴下するとそこだけ色がやや抜けたようになる(c)。胞子を水で封入すると明るい黄色だが(d)、KOHで封入するとさらに鮮やかな黄金色になる(e)。管孔部実質はどうやらキヒダタケ亜型のようだ(f)。シスチジアは小さく、管孔部を縦切りにしたり横切りにしてもなかなか捉えられない。縁シスチジア(i)の方が側シスチジア(j)よりやや小さい。
 面白いのがカサ表皮。楕円形の細胞が縦に3〜4個連なったものが表面全体を柵状に覆っている(k)。これをKOHで封入すると、色素が抜けて透明な槍の穂先状の組織が密集して見える(l)。ウツロイイグチかどうか迷ったら、胞子をKOHで封入してみたり、カサ表面にアンモニアを滴下したり、顕微鏡でカサ表皮を観察すればよい。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)

2013年8月16日(金)
 
生きのこがたちまち腐る
 
 高温多湿の日々が続いている。夏の時期、採取したきのこは原則として持ち帰ると直ちに乾燥器にかけ、生状態で検鏡の必要なごく一部のきのこだけを冷蔵庫に保管する。ところが、冷蔵庫の中でそれらのきのこがたちまち腐敗して棄てることになるケースが頻発している。
 昨日採取したきのこを冷蔵庫から出して袋を開けると、多数の白いウジ虫がウヨウヨしていた。腐敗臭も凄まじいので、検鏡意欲も消え失せてそのまま棄てた。そこで、今朝は検鏡作業は中止して、家から20分ほどの寺社林で昨日採取したきのこからテングタケ類とイグチ類の一部の画像を列挙してごまかすことにした。いずれも多数の子実体に出会ったものばかりだ。
 シロオニタケ(a, b)、アケボノドクツルタケ(c, d)、テングタケ(e, f)、アシナガイグチ(g, h)、セイタカイグチ(i, j)、コオニイグチ(k)、オニイグチ(l)、アシベニイグチ(m, n)、キイロイグチ(o, p)、ウツロイイグチ(q, r)。[種名などどうでもよいのだが、気まぐれに写真のきのこにいちいち名前を表示した]
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
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(h)
(h)
(i)
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(j)
(j)
(k)
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(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
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(o)
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(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 家から20分ほどの寺社林ではシロオニタケが大発生している。アシナガイグチ、ウツロイイグチ、アカヤマドリは終わりを告げはじめた。セイタカイグチはほとんどがナメクジなどに食われている。オニイグチ類が多数見られるが、いずれも胞子を検鏡するまで種名はわからない。カサ表皮の様子からの種名推定は頻繁にどんでん返しにあう。

2013年8月15日(木)
 
中通りの亜高山帯にて
 
 昨日四人で福島市の吾妻スカイラインから白河市を経て下郷町のミズナラ林を歩いた。スカイラインの標高1,600m付近でセンニンタケ(a, b)、タマテングノメシガイ(c, d)はじめ、多くのテングタケ類、イグチ類にであった。お盆のまっただ中、首都圏ナンバーの車が溢れていた。
 下郷町の標高1,000m付近ではタマゴタケ、アカヤマドリ、チチタケなどが大発生していた。7〜8年ぶりにタマゴタケとチチタケを「食用」として持ち帰った。昨夜はタマゴタケを肴に宴会となった。今日の昼は多分「チダケうどん」になりそうだ。
 久しぶりにミズナラ林でオクヤマニガイグチに出会った(e, f)。一見するとコビチャニガイグチに似ているが、孔口部の色が異なり、肉は苦く、傷つけても変色しない。
 昨日は5〜6種のテングタケ類、10種ほどのイグチ類はじめ、多数のフウセンタケ属、チチタケ属、ベニタケ属に出会うことができた。高速道路は使わず、走行程約420kmに及んだ。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 早朝出発しpm4:30頃の帰宅となった。家に入ると、留守番をさせていたロシアンブルーのネコが、待ってましたとばかりにまとわりついてきた。

2013年8月14日(水)
 
急にきのこが少なくなった
 
 雨が降らず猛暑が続いていたせいか、どこもすっかり乾燥してきのこの姿が急激に少なくなってきた。昨日午前中に川内村まで行って放射線量測定用にきのこをいくつか採集した。
 秋のきのこのサクラシメジがもう出ていた(a, b)。キアミアシイグチは水分不足のためか成長が悪い(c, d)。ミドリニガイグチは柄の基部からナメクジに食われはじめていた(e, f)。タマゴタケ(g)、シロオニタケ(h)、アメリカウラベニイロガワリ(i)、ハナガサイグチ(j)、アカイボカサタケ、ケシロハツ、ミネシメジなども出ていた。チチタケはまだよく出ていた。
 大きなハイカグラテングタケが柄の基部を虫に食われて倒れていた(k)。セイタカイグチは十分育たないうちに柄の半分ほどをナメクジに食われてしまっていた。小径の脇には、黴びてすっかり白くなり異臭を放つイグチ類が累々と転がっていた。
 夕方近くの新舞子浜を三人で歩いてみると、久しぶりにナガエノホコリタケの姿に出会った。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)

2013年8月13日(火)
 
ヤマドリタケ亜型とキヒダタケ亜型
 
 保育社『日本新菌類図鑑』には子実層托実質の菌糸模様が並列型、錯綜型、散開型、逆散開型と四タイプ掲載されている(雑記2008.7.19)。さらにイグチ類の両側型(散開型)に関して、シンガーにならってヤマドリタケ亜型(イグチ亜型)とキヒダタケ亜型に分けて文字だけで簡単に説明している。でもこの両者の説明を何度読んでも、やはり違いがよく分からない。両者の違いを把握するには、ヤマドリタケとキヒダタケの管孔やヒダを切り出してみるのが最もよい。

ヤマドリタケ亜型
 (イグチ亜型)
両側型の一型で,その側層は中軸から外側に向かって散開した,ゆるく交錯して走る菌糸から構成されており,中軸よりも淡色(ほぼ無色)で,一般にゼラチン化している(b)
キヒダタケ亜型両側型の一型で,側層は互いに密着して走る菌糸より構成され中軸から外側にわずかに開散し,中軸と同色を呈する(b')

 ヤマドリタケにはなかなかお目にかかれないが、ヤマドリタケモドキなら国内どこにでも出る。ちょうどキヒダタケもヤマドリタケモドキも今頃はよく発生している。管孔部実質を確認するためなら、顕微鏡は安物の学習用単眼顕微鏡で十分だ。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(a')
(a')
(b')
(b')
(a)
(a'')
(d)
(b'')
ヤマドリタケモドキ
キヒダタケ
ハナガサイグチ

 [参考] 雑記2010.7.1同2009.8.27同2009.7.25同2008.10.2同2008.9.13、etc.

2013年8月12日(月)
 
胞子表面の刻紋が面白い
 
 ここ二週間ほど多数のアシナガイグチにであったが、なかでも川内村で出会ったものは、カサ径10cmほどで柄は50cm以上あり、自重で折れていた。撮影は叶わなかった。採取当日にとった胞子紋から胞子を検鏡した(b, c)。今日は乾燥標本から検鏡した。
 管孔部をピンセットで摘み押し潰して胞子を見た。胞子紋からみた時よりも表面の刻紋が明瞭にわかる(d)。管孔部を切り出すと実質部のヤマドリタケ亜型(散開型)は明瞭に捉えられるが、縁シスチジアの有無はよくわからない(e, f)。シスチジアはないのかも知れない。
 押し潰し法でヒダの縁や管孔の縁をみてもシスチジアらしき構造はよく分からない(g, h)。担子器は面白い形をしている(i, j)。カサ表皮は細い菌糸が入り乱れており(k)、柄の表皮には薄膜で棒状のシスチジア様組織が見られる(l)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 スズキアルトに装着したバッテリーはめでたくエンジン始動に成功し、エアコンをオンにして快適に走れた。古いバッテリーはいくら充電しても「かろうじて使える」状態にしか回復しないので、こちらは電気柵専用としたが、遠からず廃棄処分することになろう。。

2013年8月11日()
 
放射能高線量地帯にて
 
 久しぶりに楢葉町の放射能高線量地域にある自然公園に入った。一年半以上もの間、警戒区域として立入禁止となり、未だ「除染」対象にもされずに荒れたまま放置されている。遊歩道は見る影もなく荒れ果てて、径の随所には背丈を超えた草が茂っている。
 モミの根元の暗がりにアオミドリタマゴテングタケが出ていた(a, b)。崖にはニワタケが多数発生していた(c, d)。開けた斜面にはムラサキフウセンタケがあちこちに見られた(e, f)。遊歩道の真ん中に大きなシロオニタケが屹立していた(g)。キクバナイグチの幼菌が樹木の根元付近からいくつかでていた(h)。法面からはコウモリタケやらホウキタケの仲間もでていた(i)。
 ベンチの下にオニイグチ類とウツロイイグチが並んでいた(j)。持ち帰ったオニイグチ類の胞子を確認したところオニイグチであるとわかった。ウツロイイグチは他にも多数出ていたが、幼菌はカサの色が暗褐色で、成菌は明褐色のものが多かった。クダアカゲシメジに似たきのこもいくつか束生していた(k, l)。ちなみに一帯の線量は0.48〜0.86μSv/hだった。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 下駄車のスズキアルトが突然始動不能となった。外出先での故障でなくてよかった。前科のあるバッテリーが原因と思われたので、電気柵のバッテリーを流用することにした。昨夜開始した充電が今朝になってようやく完了した。アルトよ、これで動いておくれ!

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